ミックスブラッドオンライン・リメイク

マルルン

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始まりの森編

北の樹海と妖怪モンスター2

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 おやっ、何か別の存在がトレントの枝に乗っかっているように見えるな。サルかな、何故かサングラスを装着しててヤンキー風だ。
 いや、名前を確認すると“視ザル”って言うモンスターらしい。その名前に由来して、猿にそぐわない装備サングラスを付けているのかな?

 妖怪カテゴリーに所属しているのなら、一癖も二癖もありそうで嫌なんだけど。嫌な特殊攻撃とか、持ってそうな雰囲気がヒシヒシ伝わって来る。
 臆する事は無いけど、相手の戦闘パターンが分からないのは怖いな。しかもタッグを組んで来るとは、ちょっと今までに無い流れかも。

 それでも、対峙する俺に変な焦りは無い……今まで何度かレア種と遣り合っているせいで、経験予測的なナニカは付いて来ている筈。
 ついでに試合慣れみたいな度胸もかな、これが意外と実戦では大事なのだ。このバーチャル世界で、生き残るための財産的な意味合いで。

 案の定、サル型モンスターはいきなり魔法を飛ばして来た。トレントとはもう殴り合える間合いなので、そんなに射程の長い呪文では無いのだろう。
 そして次の瞬間、いきなり俺の視界が真っ黒に染まってしまった。どうやらその魔法、暗闇付与とかそんな系統の魔法だったらしい。

 これには俺も大慌て、これじゃ大体の敵の方角しか分からないぞ!? 視界を奪われるって、喰らってみると厄介この上ないな!
 んむっ、敵の位置もこの状態の治療の仕方も分からない! ゲーム慣れしてないって、ある意味怖いなぁ……琴音なら、何かしらの対処法を知ってるのだろう。

 とは言え、この状況ではさすがにメールで尋ねる訳にも行かない。ってか、そもそも目が見えない状態だし。そう言えば、鞄の中の薬品箱に“万能薬”ってのが入っていた気がする。
 何でも治せるのか、凄いなぁと思ったのをかすかに覚えていたがこの状況も改善可能かも。まぁ、鞄の中なのでこれも今は使用不可だけどね。

 それを鞄の中からちゃんと取り出して、スパッと使える確信がまるでない。さぁ次だ、次の最善策を思い付くんだ俺、なるべく早くっ!
 とか思っていると、身体に重い衝撃が響いて吹き飛ばされた。恐らくトレントに殴られたんだろう、こんな時は感覚の鈍い身体は不便である。

 何となく殴られた部位は分かるが、どんな攻撃が来たのかサッパリ。物凄く痛いよりはマシだが、こんな時だと判断材料になってくれない。
 ビビッて吹き飛ばされた場所から後ずさったら、今度は背中に衝撃が。これは攻撃の類いでは無いな、恐らくは周囲に生えている樹だと思う、確信は無いけど。

 それを盾に廻り込もうとしたら、身体のバランスを崩してしまった。根っこか何かにつまづいてしまったらしい、思わず武器を取り落しそうになって冷や汗を掻く破目に。
 さすがに視界をふさがれた上に、武器まで手放したら洒落にならない。

 何かを引きる音は、依然として近くから聞こえて来ている。これが唯一の手がかり、トレントが根っこを使って移動する音だ。
 聞こえて来る方角は、丁度俺が背にした樹の真後ろから。つまりは、どうやら上手く回り込めたみたい。距離は……近い様な遠い様な、ちょっと分からない。

 そして未だに視界は真っ暗で、さてこれは困った。この窮地をどうやって切り抜けよう? 悩んでいると、暗かった視界に急に光の斑点が出現した。
 何事だと思わず注視するように身を乗り出すと、鼻先に何やら柔らかい感触が。それから目蓋まぶたをパタパタと叩く音が……これは、ファーの羽根の音?

 どうやらこの前みたいに、羽根の鱗粉パワーで俺の暗闇を治療してくれているらしい。と言う事は、鼻に触れたのはファーのお尻だったか。
 これは知らぬとは言え失礼、ってか本当にそんな効果はあるのか? そう思った瞬間、視界が一気に晴れて行ったのに気が付いた。

 おおっ、これは霊験れいげんあらたかな妖精パワーを頂いちゃいましたか! この鱗粉はひょっとして、HP回復どころか万能薬的な作用があるのかなぁ?
 とにかく有り難い、俺は素直にファーに短く感謝の意を述べて立ち上がる。何しろまだ戦闘中だからな、ってかさっきの視ザルの特殊技をまた浴びたら厄介過ぎる。

 どうしたもんかと、取り敢えず武器を持ち替えて振り返って敵との距離を窺う。そして樹の影から、視ザル目掛けて素早く石斧の投擲からの反撃を敢行。
 この攻撃で、視ザルが落ちてくれたら儲けモノなんだが。まぁ、そう都合よくは行かないよね。石斧は一応、巨体なトレントに命中して幾分か体力を削ってくれた。

 それに怒ったのは何故かサルの方で、奇声をあげて俺の側の樹に飛び移って来た。近付かれると厄介かな、いや殴り合いの方が特殊技を気にせずに済むのか?
 武器を棍棒に持ち替えて、樹の上を気にしていると。やっぱり後ろからトレントの蔦攻撃、それをモロに浴びて気を散らしてしまう破目に。
 おのれ、お前はそんなに早く倒されたいか!


 予定変更だ、危険な視ザルを放置は怖いけど、変則的な攻撃を繰り出すトレントを標的に変える。試しにくっ付いて《Dタッチ》を飛ばすが、効きはイマイチな様子。
 吸収したHPも少ないし、暗闇効果も付いていないみたい。そもそも視覚に頼っていないのかも、まぁいいやと続いて打撃を繰り出す俺。

 それに応じるように、鞭のような腕の反撃がトレントから飛んで来た。そして背後からは、もちろん無視された視ザルの襲撃の気配が。
 ただし今回は、目潰し技では無くて普通の引っ掻き技だった。そこはこっちも織り込み済み、そう何度も連続しては来ないだろうとの読みは大当たり。

 もし来ても、これだけ密着してたら棍棒の振り回しで何とでもなるとの甘い目論見もくろみである。所詮しょせんは雑魚の体力とこちらのHP、とことん比べてやろうって根性論だ。
 それを実行するため気合いを入れて、棍棒をフルスイング!

 結局は、この決定が勝負の運気を引き込んで、まずは小柄な視ザルが脱落した。SPが貯まってからのスキル技を放り込んだとはいえ、元々HPは低かったらしい。
 逆に木のモンスターのトレントは、大型だけあってタフだった。しかも戦闘音を聞きつけてなのか、樹海の奥からもう1匹追加のトレントが。

 思わずその大木モンスターの枝上を見るが、コイツは相棒を持ってないらしい。ホッとしてしまうのは仕方が無い、現状この樹海の妖怪モンスターの中で一番怖い敵じゃないかな?
 対応方法を知っていればともかく、その知識をこちらは持ってないもんね。とにかく相手は、こちらを殴ろうと近付いて交通渋滞を起こしている。

 木々の間隔の狭い樹海だもの、大型のモンスターはすこぶる不利に出来ているよね。お陰でこちらは、1体ずつ相手をすれば良いと言う。
 それでも鞭のようにしなる攻撃は、避けにくい事この上なかった。ポーションを使う暇が無かったので、こっちの体力は戦闘終了時にはかなり削られていた。

 それでも今回の戦闘で、もう視ザルの特殊技だか魔法だかの目潰しが来ない安心感は大きい。こちらの体力をかなり減らしつつも、波乱含みの戦闘は無事に終了。
 何とか勝ててホッと一息、雑魚戦だったと言うのに力が入ったなぁ。

 そしてドロップ品は、全く大したモノは入手出来なかったと言うね。そんなもんかな、あいつ等はレア種でも何でもない雑魚だったんだし。
 木切れとか闇や土の水晶の欠片とか、まぁいつもの品だねって感じ。ちょっとでも良いモノを落としたら、大変な敵でも連日通う気力にもなったのに。

 つまりこの北の森は、ダルマさんのポーションが一番のドロップご褒美で確定っぽい。今後積極的に狙うのも、樹上のダルマさん一択で決まりかな。
 まぁ、他でポーションが得られるのなら話は別だけど。




 ――そんな訳で、獲物も決まったし探索を続けようかな。






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