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番外編?「悪役令嬢はお菓子作りに夢中です」
アリアーナと謝罪のお菓子ができるまで①
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わたくしは、アリアーナ・ロゼリウス。このクラリス王国で王家に次ぐ権力を持った公爵家の令嬢である。
わたくしにはある秘密がある。実は前世の記憶を持っているのである。
それを思い出したのは、わたくしの兄ハルバートの婚約式があった日の事だ。恥ずかしい話になるが、わたくしはあの日、来客用に振る舞われていたお菓子を食べて、喉に詰まらせて気絶した・・・ということになっている。本当は、お菓子のあまりの未完成度に衝撃をうけて前世の記憶を思い出し、いきなり流れ込んだ前世の記憶に頭が耐えきれず気絶したのである。
それから、お菓子のためにも弁解するが、わたくしの前世基準でもって不味いと思ったのであって、決してこの世界基準でお菓子が劣っている訳ではない。
「・・・お嬢様!私を弟子にして下さい!!」
そしてわたくしは自分の前で土下座しそうな勢いの料理長を前にどうしようか途方に暮れていた。
どうしてこうなった!?、と。
*
ことの起こりは、わたくしが気絶から起き上がる時に叫んでしまった言葉である。
「・・わたくしが!わたくしならもっと美味しいお菓子がつくれますのよ!」
これは、わたくしを心配していた家族はもちろん、使用人も聞いており、料理を担当していた料理人たちも知るところになるのだった。
飛び起きたわたくしは心配する家族を横にいきなり思い出した前世の記憶に目眩がする。
その日は騒動を起こしてしまった謝罪をし、まだ体調が優れないとすぐに休むことにした。
次の日わたくしは、今起きている状況を整理することにした。はじめはぼんやりしていた頭も少しずつすっきりとし冷静に考えられるようになる。そもそも何故自分ならもっと美味しいお菓子が作れると思ってしまったのか、倒れている間に思い出した、こことは全く違う世界で生きている女性の記憶。何故かストンとこれは生まれる前のわたしだと思ったのだ。そして、今わたくしに何が起きているのか考えた。考えられる可能性の中に、前世のわたしと仲の良かった友人が異世界転生なるものについて熱く語っていたなと思い出す。これがそうなのではないかと思い至るのにそこまで時間はかからなかった。
また、わたくしは今までアリアーナとして生きてきた記憶もしっかり持っていた。そこへ前世の記憶を急に思い出し情報量の多さに頭がパンクし倒れてしまったのだが、その間に2つの記憶は合わさって今のわたくしになっていると確信できる。こういう場合、何日か熱でうなされたりするパターンもあったと思うが、たった数時間で飛び起き、次の日には行動出来ているわたくしは我ながらタフだなと呆れてしまう。
そして、自分の名前に既視感を覚え、前世の友人が勧めてくれた乙女ゲームを思い出す。それに出てくるヒロインを邪魔して断罪される悪役令嬢の名前が自分と同じだったり、婚約者の名前が攻略対象と同じだったりする事に思わず頭を抱えてしまう。
「なんで!?」
でも、今更どうすることも出来ないし、もしかしたら名前が同じだけで、ゲームと似ている世界なだけかもしれない。あのゲームのような断罪が本当に起こるとは限らない。本当は、もしなってしまったら・・・と考えなくてはいけないだろう。しかしである、今はそんな事よりも気にすべきは前世の記憶を思い出すきっかけになったお菓子である。ゲームの話は二の次だ。
何故そこまで執着してしまうのかと思わず苦笑いを浮かべつつ、前日に食べたお菓子を思い出す。
それは、立食形式の食事でも取りやすく食べやすいサイズの焼き菓子だった。
味は素朴で、今思うと決して不味い訳では無いが、今ひとつ決め手にかける味をしていた。また、少し硬くパサつきを感じたので混ぜ方が悪かったのではないかと思う。この世界に生まれ、公爵令嬢として生きてまだ5年である。知らない事の方が多い。食べ物やお菓子の材料が前世と全く同じでは無いだろう。
それに思い出した前世の世界はこちらとは明らかに違った発展をとげていて、魔法がない代わりに科学が発展していた。また、前世の自分が暮らしていた日本という国は食に関してはおそらくこの世界より安全だと思う。前世の自分は、お菓子を作る事を仕事にしていた。お菓子を作るのは本当に楽しかったし、作ったお菓子を食べてもらうのも好きだった。毎日、お菓子を作っていた。それが、わたしの幸せだった。
ふと、自分の小さな手に目線を落としこの手でどの程度のものが作れるか考えてしまう。どんな物が作れるのか分からないが、やはり自分でお菓子を作りたいなと思ってしまう。
そうなると居てもたってもいられなくなり、わたくしは今までのわたくしならば絶対行かなかったであろう料理場へ行く事を決め、時室を後にした。
わたくしにはある秘密がある。実は前世の記憶を持っているのである。
それを思い出したのは、わたくしの兄ハルバートの婚約式があった日の事だ。恥ずかしい話になるが、わたくしはあの日、来客用に振る舞われていたお菓子を食べて、喉に詰まらせて気絶した・・・ということになっている。本当は、お菓子のあまりの未完成度に衝撃をうけて前世の記憶を思い出し、いきなり流れ込んだ前世の記憶に頭が耐えきれず気絶したのである。
それから、お菓子のためにも弁解するが、わたくしの前世基準でもって不味いと思ったのであって、決してこの世界基準でお菓子が劣っている訳ではない。
「・・・お嬢様!私を弟子にして下さい!!」
そしてわたくしは自分の前で土下座しそうな勢いの料理長を前にどうしようか途方に暮れていた。
どうしてこうなった!?、と。
*
ことの起こりは、わたくしが気絶から起き上がる時に叫んでしまった言葉である。
「・・わたくしが!わたくしならもっと美味しいお菓子がつくれますのよ!」
これは、わたくしを心配していた家族はもちろん、使用人も聞いており、料理を担当していた料理人たちも知るところになるのだった。
飛び起きたわたくしは心配する家族を横にいきなり思い出した前世の記憶に目眩がする。
その日は騒動を起こしてしまった謝罪をし、まだ体調が優れないとすぐに休むことにした。
次の日わたくしは、今起きている状況を整理することにした。はじめはぼんやりしていた頭も少しずつすっきりとし冷静に考えられるようになる。そもそも何故自分ならもっと美味しいお菓子が作れると思ってしまったのか、倒れている間に思い出した、こことは全く違う世界で生きている女性の記憶。何故かストンとこれは生まれる前のわたしだと思ったのだ。そして、今わたくしに何が起きているのか考えた。考えられる可能性の中に、前世のわたしと仲の良かった友人が異世界転生なるものについて熱く語っていたなと思い出す。これがそうなのではないかと思い至るのにそこまで時間はかからなかった。
また、わたくしは今までアリアーナとして生きてきた記憶もしっかり持っていた。そこへ前世の記憶を急に思い出し情報量の多さに頭がパンクし倒れてしまったのだが、その間に2つの記憶は合わさって今のわたくしになっていると確信できる。こういう場合、何日か熱でうなされたりするパターンもあったと思うが、たった数時間で飛び起き、次の日には行動出来ているわたくしは我ながらタフだなと呆れてしまう。
そして、自分の名前に既視感を覚え、前世の友人が勧めてくれた乙女ゲームを思い出す。それに出てくるヒロインを邪魔して断罪される悪役令嬢の名前が自分と同じだったり、婚約者の名前が攻略対象と同じだったりする事に思わず頭を抱えてしまう。
「なんで!?」
でも、今更どうすることも出来ないし、もしかしたら名前が同じだけで、ゲームと似ている世界なだけかもしれない。あのゲームのような断罪が本当に起こるとは限らない。本当は、もしなってしまったら・・・と考えなくてはいけないだろう。しかしである、今はそんな事よりも気にすべきは前世の記憶を思い出すきっかけになったお菓子である。ゲームの話は二の次だ。
何故そこまで執着してしまうのかと思わず苦笑いを浮かべつつ、前日に食べたお菓子を思い出す。
それは、立食形式の食事でも取りやすく食べやすいサイズの焼き菓子だった。
味は素朴で、今思うと決して不味い訳では無いが、今ひとつ決め手にかける味をしていた。また、少し硬くパサつきを感じたので混ぜ方が悪かったのではないかと思う。この世界に生まれ、公爵令嬢として生きてまだ5年である。知らない事の方が多い。食べ物やお菓子の材料が前世と全く同じでは無いだろう。
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ふと、自分の小さな手に目線を落としこの手でどの程度のものが作れるか考えてしまう。どんな物が作れるのか分からないが、やはり自分でお菓子を作りたいなと思ってしまう。
そうなると居てもたってもいられなくなり、わたくしは今までのわたくしならば絶対行かなかったであろう料理場へ行く事を決め、時室を後にした。
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