隣の席のヤンデレさん

葵井しいな

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他の女の匂いがする

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 「千歳ちゃん、一緒に食べましょ?」

 午前の授業が終わって昼休み。
 ご飯を食べるために移動しようとしたら、真白ちゃんに腕を掴まれました。
 瞳を覗けばまだ透き通るような透明度。……良かった、まだ病んでない。

 「うんいいよ。どこにする?」
 
 お弁当を持って来てれば学校内のどこで食べてもいいし、無ければ学食に行くという手もある。それと購買で買うという手もある。

 「他の所だと落ち着かないから、ここがいい」
 「そっか。じゃあちょっと待ってて」
 「……どこに行くの」
 「お弁当を忘れてきたから、今から購買で買ってくるね」
 「……分かった。早く戻ってきてね。ずっと、待ってるから」

 教室を出るまで背中に視線をビシバシと感じながら、下の階へと移動。

 購買に着くと予想以上に他の生徒で賑わっていた。
 生徒の波をかき分けながら適当にパンとか飲み物とかを購入。
 戻る際に他の友達と談笑しつつ無事に到着。

 「ん? 真白ちゃん、急にどうしたの」

 突然、真白ちゃんが私に抱きついてきた。そんなに寂しかったんだろうか?

 「……他の女の匂いがする」

 うーーん、予想の斜め上を行く発言だった。
 それとここ女子高だから女子しかいないんだけどね。

 「どういうこと? 私に隠れて他の女と会ってたの?」

 なんかドロドロしてきた。昼ドラみたい。
 お昼だから間違ってないけど。

 「違うよ。購買にたくさん人がいたから、きっとその時についたんだよ」
 「ふーん、そっか」
 「と、とりあえず食べようよ。お昼終わっちゃうし」
 「うん。机のセッティングはしておいたから」

 とりあえず向かい合わせに座る。
 
 うっ、濁った瞳から放たれるプレッシャーがすごい。
 耐え切れずに視線を下げると、真白ちゃんの手元にあるお弁当が目に入ってきた。

 「うわぁ、真白ちゃんのお弁当カラフルだね」
 「えへへ、これ全部ママの手作りなの!」
 「そっかー。お母さん料理上手だね~」
 「うふふ、そうでしょー」

 そういって誇らしげに笑う真白ちゃん。
 美少女ぶりを存分に発揮するその笑顔は、同性の私でも思わず見惚れてしまうくらい美しい。

 「はい、千歳ちゃん口あけて」
 
 急にどうしたんだろうと見れば、おかずを一品つまんだままニコニコする真白ちゃんの姿が目に入った。

 「いいの?」
 「うん。ママの手料理を千歳ちゃんにも食べて欲しいし」
 「それじゃ遠慮なく……うんっ、おいしいね」
 
 素直に感想を伝えると「良かったぁ」と笑みを深めた。
 その後は和気あいあいとした雰囲気のまま昼食を取ることが出来たので良かった良かった。
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