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「姉貴いるかー? って、いねえし」
俺――鶴見麻耶が隣の部屋を訪れると、そこはもぬけの殻だった。
室内には甘ったるい香りが立ち上り、鼻をつまみたくなる。
いつもは入りたくもない場所ではあるのだが、今回は事情があった。
貸していたお金(五千円)がいつまで経っても帰ってこないのである。
そのせいで学校の昼休みに購買でご飯が買えず、親友の京介からお金を借りる羽目になってしまったのだ。
今後もこんなことが続くのは由々しき事態であるので、こうして催促に来た次第なのである。
「アイツいねえけど、財布はまぁ置いてあるだろ」
見たところ、学校からは帰って来てるらしかった。
ベッドの上には乱雑に放られた制服があり、化粧品やらなんやらで散らかり放題の机には通学カバンが置いてある。
ずかずか足を踏み入れつつ、カバンを開けてみた。
「うっわぁ、汚ったねぇ……。女として終わってんな」
綺麗好きの俺としては、目も当てられないほどである。
気になって仕方ないので、ぐちゃぐちゃのプリントはファイルにまとめてやり、中身の飛び出したペンなども筆箱に戻す。
途中、埋もれ気味になっていた財布を見つけ、中を開けるとそこそこ入っていた。
貸した五千円プラス利子として千円ほど貰っておこう。
「さてと……。部屋に戻るか」
ミッションをこなし、意気揚々と部屋を出ようとした時、ふいに姉貴の制服が目に入った。
姉貴の制服はこの辺では有名な女子高のもので、女子なら一度は着てみたいと思う制服No.1に選ばれたりしていた。
そしてアイツはこれが着たいがために偏差値が高いそこを選び、見事に合格したという異色の経歴を持っている。
なので、俺なんかよりもはるかに頭が良いはずなのだが……。
「着過ぎてて飽きちまったのか、今は見るも無残な姿に……」
頭のいい奴がやることじゃないだろ、ベッドの上に放っておくって。
しわになるし、このままじゃ埃も被るし。
「……クローゼットに戻しててやるか」
ひとつ頷き、俺はそれを手に取った。
持ってみると羽のように軽くて、生地も上等なものを使っているのか肌触りがいい。
鼻を近づけてみると、姉貴の体臭に混じってさわやかな香りもする。
多分、消臭スプレーの効果なんだろうが、不思議と落ち着く……。
「……あ、あんたなにやってんの」
ふいに、引きつったような声が耳に届いた。
それは部屋のドアがある方から聞こえてきた。
うすうす察しがついた俺は、背中に嫌な汗をかきながら声のした方を振り返る。
「あ……」
無意識にかすれた声がもれた。
それもそのはず。
俺の視線の先にいたのは、この部屋の主である姉の鶴見亜里沙だったのだから。
俺――鶴見麻耶が隣の部屋を訪れると、そこはもぬけの殻だった。
室内には甘ったるい香りが立ち上り、鼻をつまみたくなる。
いつもは入りたくもない場所ではあるのだが、今回は事情があった。
貸していたお金(五千円)がいつまで経っても帰ってこないのである。
そのせいで学校の昼休みに購買でご飯が買えず、親友の京介からお金を借りる羽目になってしまったのだ。
今後もこんなことが続くのは由々しき事態であるので、こうして催促に来た次第なのである。
「アイツいねえけど、財布はまぁ置いてあるだろ」
見たところ、学校からは帰って来てるらしかった。
ベッドの上には乱雑に放られた制服があり、化粧品やらなんやらで散らかり放題の机には通学カバンが置いてある。
ずかずか足を踏み入れつつ、カバンを開けてみた。
「うっわぁ、汚ったねぇ……。女として終わってんな」
綺麗好きの俺としては、目も当てられないほどである。
気になって仕方ないので、ぐちゃぐちゃのプリントはファイルにまとめてやり、中身の飛び出したペンなども筆箱に戻す。
途中、埋もれ気味になっていた財布を見つけ、中を開けるとそこそこ入っていた。
貸した五千円プラス利子として千円ほど貰っておこう。
「さてと……。部屋に戻るか」
ミッションをこなし、意気揚々と部屋を出ようとした時、ふいに姉貴の制服が目に入った。
姉貴の制服はこの辺では有名な女子高のもので、女子なら一度は着てみたいと思う制服No.1に選ばれたりしていた。
そしてアイツはこれが着たいがために偏差値が高いそこを選び、見事に合格したという異色の経歴を持っている。
なので、俺なんかよりもはるかに頭が良いはずなのだが……。
「着過ぎてて飽きちまったのか、今は見るも無残な姿に……」
頭のいい奴がやることじゃないだろ、ベッドの上に放っておくって。
しわになるし、このままじゃ埃も被るし。
「……クローゼットに戻しててやるか」
ひとつ頷き、俺はそれを手に取った。
持ってみると羽のように軽くて、生地も上等なものを使っているのか肌触りがいい。
鼻を近づけてみると、姉貴の体臭に混じってさわやかな香りもする。
多分、消臭スプレーの効果なんだろうが、不思議と落ち着く……。
「……あ、あんたなにやってんの」
ふいに、引きつったような声が耳に届いた。
それは部屋のドアがある方から聞こえてきた。
うすうす察しがついた俺は、背中に嫌な汗をかきながら声のした方を振り返る。
「あ……」
無意識にかすれた声がもれた。
それもそのはず。
俺の視線の先にいたのは、この部屋の主である姉の鶴見亜里沙だったのだから。
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