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 自分が女っぽい顔立ちをしているということは、うすうす感づいていた。
 というのも俺と亜里沙は、二卵性のいわゆる、双子というやつであるから。

 双子であるゆえか、顔のパーツがところどころ似通っているのである。
 亜里沙は女らしく丸みを帯びた顔で、俺は男なので少しばかりエラがシャープなのが大きな違いだろう。
 
 ついでに、あんまり言いたくはないのだが、このクソ姉貴はそれなりの美人である。

 荷物持ちとして一緒に買い物なんかに行くと、男どもの視線を集めたりするし、声をかけられたりもする。
 ただまぁ、そのたびにガンを飛ばしたりするせいで、全くと言っていいほどモテないが。

 そんな姉貴とほぼ似た顔立ちをしているのだ。
 女ものの制服なんか着たら、こうなるのも頷けるな。

 「あんたやっぱり女ものの服似合うわね。女装の才能、あるんじゃない?」
 「いやいやいや、金輪際やるつもりはないぞ」

 変な沼に引き込まれそうになったので、きっぱりと断りを入れた。
 姉貴の話とセールスには裏がある、俺はそう思ってる。

 「あっそう。ま、無理強いはしないけど」
 「えっ」

 いつものように強制力を働かせて来るのかと思いきや、やけにあっさりと引いたことに驚きを隠せない。
 栗色のウェーブがかった毛先を弄りながら、亜里沙はスマホを操作し始める。
 本人としては、もはやどうでもいいことのようだ。

 ……なんだよ、もっとこう突っかかってくるかと思ったのに。
 これじゃあ拍子抜けだ。

 「あんたいつまであたしの制服着てるのよ。臭いついたら洗濯させるからね」
 「っ……!」

 こ、この女! 無理やり着させといてどの口が言うか!

 イラっとしながらも、制服を脱ぎ脱ぎし、元の格好に戻る。
 制服は一応、クローゼットの中に戻してやった。
 また放りっぱなしっていうのも忍びないしな。

 「じゃ、戻るからな」 
 「んー」

 姉貴のそっけない返事を聞きながら、俺は自室へと戻ることにした。

 ……まったく、ひどい目に遭ったぜ。 
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