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「……」
「……」
澄み渡るような青空のもと、俺たちは並んで歩いていた。
亜里沙に遊んで来いよと言われたものの、特に行く当てもないのでブラブラと散策をしているだけだが。
「麻子さん、今日はいい天気ですね」
「はい……っ」
京介の言葉に俺は小さく頷く。
あまり目を合わせず、声量も控えめだ。
これは脳内で決めたシミュレーションに従っているから……とかではない。
単刀直入に言わせてもらおう。
この格好、めっちゃ恥ずかしい!
いきなりお外で女装姿を披露はさすがにハードルが高かった。
京介だけでなく、道行く通行人までもが俺の方をじろじろと見てくるのだから。
「(なぁおい、アレ見てみろよ)」
「(うぉ、すっげー綺麗な人)」
「(モデルさんかな?)」
「(隣にいるの彼氏? めっちゃイケメンじゃん)」
「(美男美女のカップルとか羨ましい~!)」
……ヤバい、めっちゃひそひそ声が聞こえるんですけど。
絶対キモいとか変態じゃんとか言われてるんだろーな、これ。
はぁぁ……死にたい。
「麻子さん、大丈夫? 顔色悪いよ」
顔を上げ振り返ると、京介が心配そうな顔で覗き込んできていた。
瞳の中に映る俺はなるほど確かに青白い。
「……いえっ、そんなことは」
「隠さなくてもいいよ。困ったことがあったら僕を頼って? これでも一応、男だからさ」
これでも一応男です、俺も。
なんて言えるはずもなく、ぼろを出さないようにというプレッシャーに押しつぶされそうにもなっていたので、ここは京介の厚意に甘えさせてもらうことに。
近場にある公園での休憩を提案し、俺たちはそこへ向かうことにした。
やや足元がふらついていたのを見かねたのか、さりげなく肩へと手を回される。
「え!? あ、あの……っ!」
「少しの間だけだから、我慢してね」
はにかみながら、ぎゅっと抱き寄せられた。
男らしい筋肉の付いた腕は服越しでもやけどしそうなくらいに熱く感じて、思わずそちらに意識が向いてしまう。
俺と肩を組んだりするときは、こんなことならないのにな……。
言いようのない複雑な気持ちが胸に渦巻き、もやもやがこみあげてくる。
それがなんなのか分からないでいるうちに、公園にあるベンチが見えてきた。
「座ってて、少しは気分が楽になると思う。僕は自販機で飲み物を買ってくるから」
「う、うん」
腰を下ろし、小さく首肯してみせる。
はぁ……っ、やっぱ慣れないことはするもんじゃないな。
でもこれも京介のためだし、頑張らないと。
緩みそうになる気を引き締め、ぎゅっと拳を握り締める。
そんな風に自分に言い聞かせていると、場を離れていた京介が戻ってきた。
手には二つ、ペットボトルが握られていて。
「はい、これどうぞ。口に合うかどうかわからないけど」
「あ、ありがとう。――そうだ、お金」
「そんなのいいから、ほら」
うっ、やっぱ優しいなお前。姉貴とは全然違うぜ。
受け取ったペットボトルを開け、ごくごくとのどを潤していく。
つーかこれ、俺の好きな「ほーい粗茶」じゃん。分かってる~。
ふぅっと一息ついて、隣を見やる。
そしたら京介のやつが固唾をのんでいる様子でいたから、思わず笑ってしまった。
「え、どうしたんですか?」
「い、いえっ……舞浜くん、って優しいなあって、思ったから」
「そんなことないですよ。見せかけですから」
ウソ言うなよ、お前普段からこうじゃねーか。
俺が困ってるとき、いっつも手を差し伸べてくれる。
最高の親友だよ、まったく。
笑い声を上げたおかげか、いくばくか気分がほぐれてきた。
緊張とか恥じらいとかはまだあるけども、家を出た時ほどじゃない。
これ女装に慣れてきたとかだろうか? いやだななんか大事なものを失いそうな気がして。
男らしさとか、京介とのこれまで積み上げてきた関係性とか。
でも、今のこの瞬間を楽しいなと感じている自分も、心のどっかにいることは間違いないんだろう。
じゃなきゃ、胸の中に渦巻いているこのもやもやした感じがなんなのかわかんないし。
……複雑だな。
嫌われようとシチュエーションをこなすのに必死な自分と、馴染んで楽しもうとしているお気楽な自分がいる。
俺はこの先、どうするのが正解なんだろうか?
京介が辛い思いをせず、俺も納得のいく答えって、果たしてあるのだろうか?
「……」
澄み渡るような青空のもと、俺たちは並んで歩いていた。
亜里沙に遊んで来いよと言われたものの、特に行く当てもないのでブラブラと散策をしているだけだが。
「麻子さん、今日はいい天気ですね」
「はい……っ」
京介の言葉に俺は小さく頷く。
あまり目を合わせず、声量も控えめだ。
これは脳内で決めたシミュレーションに従っているから……とかではない。
単刀直入に言わせてもらおう。
この格好、めっちゃ恥ずかしい!
いきなりお外で女装姿を披露はさすがにハードルが高かった。
京介だけでなく、道行く通行人までもが俺の方をじろじろと見てくるのだから。
「(なぁおい、アレ見てみろよ)」
「(うぉ、すっげー綺麗な人)」
「(モデルさんかな?)」
「(隣にいるの彼氏? めっちゃイケメンじゃん)」
「(美男美女のカップルとか羨ましい~!)」
……ヤバい、めっちゃひそひそ声が聞こえるんですけど。
絶対キモいとか変態じゃんとか言われてるんだろーな、これ。
はぁぁ……死にたい。
「麻子さん、大丈夫? 顔色悪いよ」
顔を上げ振り返ると、京介が心配そうな顔で覗き込んできていた。
瞳の中に映る俺はなるほど確かに青白い。
「……いえっ、そんなことは」
「隠さなくてもいいよ。困ったことがあったら僕を頼って? これでも一応、男だからさ」
これでも一応男です、俺も。
なんて言えるはずもなく、ぼろを出さないようにというプレッシャーに押しつぶされそうにもなっていたので、ここは京介の厚意に甘えさせてもらうことに。
近場にある公園での休憩を提案し、俺たちはそこへ向かうことにした。
やや足元がふらついていたのを見かねたのか、さりげなく肩へと手を回される。
「え!? あ、あの……っ!」
「少しの間だけだから、我慢してね」
はにかみながら、ぎゅっと抱き寄せられた。
男らしい筋肉の付いた腕は服越しでもやけどしそうなくらいに熱く感じて、思わずそちらに意識が向いてしまう。
俺と肩を組んだりするときは、こんなことならないのにな……。
言いようのない複雑な気持ちが胸に渦巻き、もやもやがこみあげてくる。
それがなんなのか分からないでいるうちに、公園にあるベンチが見えてきた。
「座ってて、少しは気分が楽になると思う。僕は自販機で飲み物を買ってくるから」
「う、うん」
腰を下ろし、小さく首肯してみせる。
はぁ……っ、やっぱ慣れないことはするもんじゃないな。
でもこれも京介のためだし、頑張らないと。
緩みそうになる気を引き締め、ぎゅっと拳を握り締める。
そんな風に自分に言い聞かせていると、場を離れていた京介が戻ってきた。
手には二つ、ペットボトルが握られていて。
「はい、これどうぞ。口に合うかどうかわからないけど」
「あ、ありがとう。――そうだ、お金」
「そんなのいいから、ほら」
うっ、やっぱ優しいなお前。姉貴とは全然違うぜ。
受け取ったペットボトルを開け、ごくごくとのどを潤していく。
つーかこれ、俺の好きな「ほーい粗茶」じゃん。分かってる~。
ふぅっと一息ついて、隣を見やる。
そしたら京介のやつが固唾をのんでいる様子でいたから、思わず笑ってしまった。
「え、どうしたんですか?」
「い、いえっ……舞浜くん、って優しいなあって、思ったから」
「そんなことないですよ。見せかけですから」
ウソ言うなよ、お前普段からこうじゃねーか。
俺が困ってるとき、いっつも手を差し伸べてくれる。
最高の親友だよ、まったく。
笑い声を上げたおかげか、いくばくか気分がほぐれてきた。
緊張とか恥じらいとかはまだあるけども、家を出た時ほどじゃない。
これ女装に慣れてきたとかだろうか? いやだななんか大事なものを失いそうな気がして。
男らしさとか、京介とのこれまで積み上げてきた関係性とか。
でも、今のこの瞬間を楽しいなと感じている自分も、心のどっかにいることは間違いないんだろう。
じゃなきゃ、胸の中に渦巻いているこのもやもやした感じがなんなのかわかんないし。
……複雑だな。
嫌われようとシチュエーションをこなすのに必死な自分と、馴染んで楽しもうとしているお気楽な自分がいる。
俺はこの先、どうするのが正解なんだろうか?
京介が辛い思いをせず、俺も納得のいく答えって、果たしてあるのだろうか?
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