転生した俺は身バレしたくない〜ニ鬼を追うもの〜

海月ウミヅキ

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はじまり

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寝返りをうとうと身体を動かそうとしたが、何かに阻まれ思うように身体が動かない。
不思議に思い目を開くと、眼前に広がるのは、それはそれは逞しい肌色


「やっとお目覚めか?」


少し上から降り注いだその声の元を辿ると、シャープな顎に、赤く薄い唇、スッと通った鼻梁に、宝石の様に輝く金色の瞳の片方は黒い布で覆われている。
精悍な美形に見惚れていると、ちゅ、と額に柔らかく温かいものが触れた。
それと同時に思い出す、昨夜のあれこれ
もう無理だと泣いて、泣いて、身体が動かないと言うとポーションを飲まされ
意識が飛んでる間もガツガツと突かれ、一体何度絶頂を迎えたのか分かったもんじゃない
身体を清める為にと、クタクタの身体を支えられシャワーを浴びるも、そこで訳も分からないまま何故か挿入され、頭が真っ白になって記憶が飛び飛びだ。



窓の外では小鳥が元気よく囀り、日差しが部屋へと入り込む



ああ、これ、知ってる
ベッドの上で全裸の…若くは半裸の男女
今回はどちらも男だが。
柔らかい朝陽と、ちゅんちゅんと囀る小鳥

そうか、これが…朝チュンか。








「パンでいい?」
「パンがいい」


俺が目覚めた後、胸焼けする様な甘い雰囲気だったのはほんの一瞬で、腹が減ったと言うアルドと、身体が痛いと喚く俺
バツの悪そうな顔をしたアルドが俺にポーションを差し出し、何やかんやあり今へと至る。

ベッドに腰掛けた俺の横に、テーブルを引き寄せたアルドが腰を下ろした。

今何時だ?チェックアウトとか大丈夫なのか?と思いながらも、アルドの空腹を満たすため、ノギノ商店を開いた。


「………え??」
「?どうした」


ノギノ商店の画面を開くと同時、ポップアップの様に新しい画面が勝手に開き
そしてそこには、ランクアップしますか?の太文字

以下の条件をクリアしたことにより、ランクアップができます。
①転生より3日経過
②10,000G以上使用

YES/NO


とてもシンプルなその文字を読み、アルドへと目線を投げかける



「スキルってランクアップするの?」
「いや、聞いたことねェな」


ま、でも?ランクアップした方がいいよね、どうなるかは未知数だけど。
画面へと向き直りYESの文字を選択すると、シュンとポップアップ画面と共にノギノ商店の画面も消えた
そして、ステータス画面の下部、スキルの表示部分に浮かび上がった文字は

コンビニエンスストア



ランクアップ?したぁぁあ!!!
しょぼい商店から、突然のコンビニ…!!!
え?うそ?本当???

ドキドキしながらコンビニをタップし画面を開くと、出るわ出るわ、見覚えのある品々
お茶と水以外の飲み物!カップ麺!弁当だってある……やばい、やばいぞこれは



「アルド、本当にパンでいい?」
「おう」



アルドにも画面は見えている筈だが、彼の決意は揺るがないようだ。
うんうん、君がいいなら良いよ、でも俺は違うの食べさせて貰いますからね!!

アルドの分は…考えるの面倒だしドッグ系を攻めよう。ホットドッグ、焼きそばドッグ、卵ドッグ、コロッケドッグ…とりあえず全部3つずつ買って……

はい、どーぞ!アルドさん!暫く大人しくしててね!!

アルドの前へとパンを積み上げ、俺は画面と睨めっこ。
草だ、草がいる、野菜だ。野菜を食べなければ
まずは、半日分緑黄色サラダ!これだーー!
それと…うん、1番好きなものを食べよう。ハンバーグ弁当。これに限る。弁当を選択すると、温めますか?の文字。サービス良すぎか!!
あと必要なのは紅茶。水と緑茶のみの生活からオサラバだ!たった2日程だったけど、無いと思うと非常に恋しかった!!!!
ささっと買い物を済ませてテーブルの上に並べ、初日に買った業務用の割り箸をとりだした。


「いただきます!!!」


パチンと手を合わせ箸を割り、目の前のご馳走へと手を伸ばした
野菜が胃に染みる。米が、体に染みる…ハンバーグが心に染みる……
コンビニの弁当で泣きそうになる日が来るとは、夢にも思わなかった



「トーヤ、これ5個くれ。それと俺もお前が食ってるの食いてェ」


いいよいいよ、コロッケ気に入ったんだな
今の俺は機嫌がいいからね、何でもしてあげる
俺が食べてる…ってハンバーグだよね、野菜なんか必要なタイプじゃなさそうだもん
オーケーオーケー、俺は出来る男、ご機嫌ないい男、お望みのものを全て授けようでは無いか!


「はい、どうぞ」


「っくッッそ、うめええ!!」



言葉が汚いよ、なんて今はなーんにも気にならない。
いやあ、やっぱり美味しいご飯って人を幸せにするよね、本当。




◇◇◇




「今日はどうすンだ?」


お腹が満たされてご機嫌なアルドのその言葉に、まってました!と前のめりで言葉を紡ぐ


「スキルがランクアップしたじゃん?!
もしかしたら、ステータスの上がり幅とか変わったりしないかな?!」

「あーーーー、どうだろうな?
俺には分かんねェけど…試しに狩に行くか?」


いきます!行かせていただきます!
でもアルドさん、分かるよね?俺の今のステータス知ってるよね??
俺1人でモンスターなんて狩れると思う?

真剣な眼差しでアルドの隻眼をジッと見つめると、後頭部を掻いたアルドが窓の外へと視線を外した。
真剣に見てたっていうのに失礼な奴め。でも俺は機嫌がいいから気にしない!ハンバーグパワー!


「昨日みてェに俺が鷲掴みにしてやるよ」


その言葉を待ってました!!!!!
ニヤリと笑ったアルドの大きな掌が、ポンポンと俺の頭を撫でた。
いざ!モンスター狩りへ!



「あ、それなら、冒険者ギルド寄って行こーぜ」


いそいそと食事の後片付けをする俺にアルドが放った言葉

冒険者ギルド

異世界の定番も定番。ぜひ見てみたい
小さい町だから無いのかも…とか思っていたが、どうやら意外とあるみたいだ。
そうだよなぁ、せっかく異世界に来たんだから冒険者として自由気ままに生きるのも有りだよなあ…
いやでも、落ち着いた決まった場所で自由にスローライフ!が一番の望みかな


そもそも、俺のこのステータスで冒険者登録ってできるのだろうか?


「アルド、俺でも冒険者ってなれる?」
「身分証が無けりゃァ、無理だな」

「ミブンショウ…」
「身分を証明するものな」


そんな事は分かってる!流石にバカな俺でも身分証くらいは分かる!!文字通りだし!
そうじゃなくて、つい先日、突然異世界の森の中へ放り出された俺が、身分証なんて持ってる訳もなく…
ええ…じゃあ俺は冒険者にはなれないという事だろうか。


「身分証あっても厳しいだろォな。
ステータスは最低100求められる
ただの荷物持ちでも、自分の身くらいは守ってもらわねーとなァ??」


はいはい、自分すら守れないヘボステータスでごめんなさい!でもこれは俺にはどうにも出来ないと思うんです!
これから行くモンスター狩りに賭けるしか無いと思うんです!スキルがランクアップしたし、可能性は感じるよね?俺は感じている…!!

さっさとゴミを片付けて、早く行こうとアルドを見ると、丁度剣を腰に差しマントを羽織る寸前だった。
よしいこう、早く行こう、ささっとギルドに寄って、モンスター狩ろう!それで余った時間で求職活動だ…!!!


先に部屋を出たアルドに続いて、宿屋の階段を降りる
受付のおばちゃんへとアルドが鍵を返すと
「いってらっしゃい」と素敵な笑顔で言われた
久々に聞いたその言葉に、じーんと胸が熱くなり、自然と口元が綻んだ


「いってきます!!!!」




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