最強暗殺者の末裔と王族の勘当娘 ~偶々出会った2人は新たな家族として世界を放浪します~

黄昏詩人

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~看板娘とウェイター編 第3章~

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[頼み]

 「父さん、その人達が今回臨時で入ってくれる方達か?」

 机を挟んでロメリア達の正面に座っているジョージに銀色の短髪の男が訪ねた。ロメリア達が席に座って暫くしてから、店の2階から彼ともう一人の男性に細身の妙齢の女性が下りてきたのだった。恐らく息子達と母親だろう。

 ジョージは嬉しそうに息子達に返事をする。

 「ああ、そうだよ。祭りまで準備する時間がもう無いとはいえ、手を貸して頂けるのは大変助かります。貴女達にはしっかりと相応の報酬をご用意致しますよ。」

 「ありがとうございます!皆様のお役に立てるよう一生懸命働きますのでこちらこそ宜しくお願いします!」

 ロメリアが元気に返事をして頭を下げると、ジョージの妻と思われる女性が感心したようにロメリアに話しかける。

 「あらまぁ、しっかりとしたお嬢さんね~。こんな子ならうちの看板娘の代わりをしっかりと務めてくれそうだわ~。」

 「代わり?」

 ロメリアが聞き直すと、その女性は少し困ったように腕を組んで首を傾けた。

 「私達には娘が1人いるんだけどね、あの子・・・最近あまり調子が良くないっていうか顔色が悪いのよ。あの子が注文の受け子もお客の引き込みもやってくれるからうちの店も大分回っているんだけど、お客様が心配する程顔色が日に日に悪くなってきてね・・・それで昨日、とうとう倒れちゃったのよ。」

 「・・・何かの病気にかかっているんですか?」

 「それが良く分からないの・・・医者に見せても特に体に異常はないと・・・過剰なストレスによる疲労だと言っていたけれど。」

 「それにしても、あの疲れ方は異常だぜ?一昨日もずっと寝かせてたのに顔色がどんどん悪くなっていってたじゃねえか?」

 「そうだな・・・食べ物も碌に口にしないし・・・」

 ジョージが悩ましそうに首を傾げていると黒髪の男が静かに呟いた。

 「多分『あの男』のせいだ。・・・妹にしつこく言い寄っていたからな。」

 「『あの男』って『あの人』の事だろ?でも『あの人』って・・・」

 銀髪の男が聞き返した時、女性が少し怒った口調で2人を叱る。

 「こら、あんた達!そんな話をこの場所でするんじゃないよ!」

 女性の言葉で男性2人が黙り込んだ。女性はフォルト達の方を振り向き、笑顔で話しかける。

 「ああっ、すみません!こんなみっともない所を見せてしまって・・・」

 「いいえ、そんな事・・・」

 ロメリアが右手を胸の前で軽く横に振って返事をすると、ジョージが喉を鳴らして業務の説明を始める。

 「・・・お2人方には、本日限りという事で祭り期間中の配膳業務とお客様の引き込み、注文の受け子を行って頂きます。」

 「引き込み・・・ですか?」

 ロメリアがジョージに質問をする。

 「ええ。お店の前に立って、皆さんに『うちの店に食べに来ませんか~』っていう仕事です。祭りの期間中は何処の店も可愛い女の子やかっこいい男の子を使ってお客様を引き込むので結構過酷な仕事ですよ。」

 「お嬢さんの様な綺麗で可愛らしい子が来てくれて嬉しいわ~!よろしく頼むわね?」

 「はい!元気さでは他の人達に負けない自信がありますので!」

 「おお!これは心強いな!」

 ロメリアはすっかりジョージ達と意気投合しているようだ。ジョージがフォルトの方を見る。

 「君は・・・男の子だね?」

 「えっ、そうなのかい?女の子じゃないのかい?」

 「母さん・・・どう見たって男だろ。」

 「マジで?兄貴、俺この子、女の子かと思ったんだけど・・・」
 
 4人中2人が俺の性別を間違えた・・・相変わらず半々だな。
 
 ジョージが小さく咳をすると、フォルトに話しかけた。

 「それじゃあ君には配膳業務を主に行ってもらおうかな?・・・今まで食べ物を運んだ経験は?」

 「・・・無いです。」

 「そうか。それじゃ営業が始まるまでの僅かな時間で私が沢山料理を運んでも落とさない運び方を教えるから、後で少し練習をしましょう。」

 「分かりました、助かります。」

 フォルトは静かに返事をすると、頭を下げた。女性はフォルトを少し変わった目で見る。

 「あら・・・この子はとっても大人しそうな子ね?・・・お2人は姉弟なの?」

 「はい、そうなんです!今2人で世界中を旅して回っているんです!」

 ロメリアはそう言うとフォルトに抱きついた。フォルトは頬を緩ませ女性に微笑む。

 「まぁ、そうなの!・・・坊や、いいわねぇ。こんな美人なお姉さんが傍にいてくれて・・・」

 「はい・・・僕も姉さんの弟で幸せです。」

 「もうっ、フォルトったら!」

 ロメリアがよりフォルトを強く抱きしめる。フォルトは少し息が苦しくなってきた。

 『ロメリアっ!く・・・苦しい・・・』
 
 「姉さん・・・少し離れて・・・暑苦しい・・・」

 フォルトがロメリアを軽く右手で優しく突き放すと、恥ずかしがり屋さんなんだからぁと言って元の体勢に戻った。

 その様子を見た女性は2人の微笑ましい光景を見て笑みを浮かべると、話しかけてきた。

 「じゃあ2人共、今日はよろしくお願いね。私はロイナ。ジョージの妻よ。」

 「俺はバンカー。調理担当だ、宜しくな。」

 銀髪の男が元気よく挨拶をすると、隣にいた黒髪でやや長髪の男が挨拶をする。
 
 「俺の名前はラック。バンカーの弟で同じく調理担当だ・・・今日はよろしく頼む。」

 ラックの挨拶が終えると、フォルトとロメリア達も自己紹介を始める。

 「私の名前はロメリア・サーフェリートって言います!本日はよろしくお願いいたします!」

 「僕はフォルト・サーフェリート・・・ロメリアの弟です・・・宜しくお願いします。」

 2人が挨拶を終えると、ジョージが手を叩いて2人に声をかける。

 「よしっ!それじゃあ今から準備をするとしましょうか!お2人共私について・・・」

 ジョージが2人を店の奥へと案内しようとしたその時、2階へと続く階段から可愛らしい女の子の声が聞こえてきた。

 「その人達・・・誰・・・?」

 階段から銀色で肩にかからないぐらいの長さの髪を持ち、毛先にウェーブがかかっている女性がゆっくりと手すりをもって降りてきた。年齢はロメリアと同じぐらいだろうか・・・目の下に薄っすらと隈が出来ており顔も異常に白く、酷く顔色が悪そうに見える。

 ロイナが慌てて彼女に駆け寄る。

 「リティ!貴女大丈夫なの⁉顔色・・・更に悪くなっているわよ⁉」

 「・・・大丈・・・夫・・・だよ、母さん・・・」

 「大丈夫じゃねえだろ⁉お前は寝てろ、リティ!そんなんじゃ客がびっくりしちまうだろうが!」

 「・・・」

 リティは手すりに寄りかかって顔を俯けると、ジョージが声をかける。

 「リティ?・・・今日はロメリアさんとフォルト君が君の代わりに入ってくれたから、無理をせずゆっくりと休みなさい。・・・いいね?」

 「・・・はい。」

 リティはロメリア達の方を見る。

 「ロメリアさん・・・フォルト君・・・私の代わりに手伝ってくれてありがとう・・・今日はよろしくね・・・」

 「はい・・・リティさんもゆっくり休んで早く元気になって下さいね。」

 ロメリアの言葉にリティは微笑み、再び2階へとロイナと一緒に上がっていった。2人の姿が見えなくなると、ジョージがロメリア達に声をかけた。

 「・・・ではロメリアさん、フォルト君・・・今から作業着とほんの少しの研修をしたいと思います。・・・祭りの開始時刻は今日の12時から・・・そして今の時刻は11時20分。もうあまり時間はありませんが、要点だけを手短に教えたいと思います。」

 ジョージはそう言ってロメリア達を連れて奥の部屋へと消えていった。残されたバンカーとラックは開店時間までの準備を急いて始めた。
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