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~真夏のビーチバレー編 第9章~
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[決着]
「はぁ・・・はぁ・・・」
ロメリア達は息を切らしながら相手を睨みつける。リティ達も息を乱しながらフォルト達を同じように睨みつけている。
陽はもう半分ほど沈んでしまって、空には星々が砂の様に輝いて見え始めていた。コートの周囲には少し離れて火が焚かれ始めてその灯りと僅かな日の光を頼りにバレーをしているという状況になっていた。ボールが上へ行きすぎると見失ってしまうので、味方に上手くパスを回す時にも高く打ち上げることが出来なくなっていた。
ケストレルが審判員の横にある点数表に視線を移す。
「20対20・・・最後の最後までもつれ込んだな・・・」
「デュースは・・・無かったよね・・・という事は・・・これが最後?」
「だな・・・次、ロメリアがサーブを打ったらもうボールは落とせねえぞ。落とせるとしたら・・・」
「相手のコートの中・・・だね。」
フォルトとケストレルは互いに顔を見合わせて静かに頷くと、ロメリアが2人に向かって檄を飛ばす。
「フォルト!ケストレル!ここが一番の踏ん張り時だよっ!死に物狂いでボールに食らいついていこっ!」
「了解!」
「おう!」
フォルトとケストレルは肺を大きく膨らませると、一気に吐き出して自身を励ます為にも大声で叫んだ。
同じタイミングでバンカーもリティとラックに声をかける。
「行くぞっ、ラック、リティ!気ィ引き締めていけよ!」
「うんっ!」
「おっけっ!」
リティとラックもフォルト達に負けない様に声を張り上げると、両チームの気合の入った声を聞いて周りの観客達も大地を揺るがすほどの歓声を上げた。ボールを持っているロメリアの手が周囲の歓声を受けて震え始める。
『落ち着いて私・・・周りの空気に支配されちゃダメ・・・』
ロメリアが呼吸を正しながらフォルトの方を見ると、フォルトは真っ直ぐにロメリアの目を見つめていた。その目はロメリアに大丈夫だと励ましているように一切の曇りのない瞳をしていた。
『そうだよ・・・私の傍にはフォルトとケストレルがいるんだよ?・・・何も怖がるような事は無いんだよ!』
ロメリアはふぅっと軽く息を吐いて手の震えを止めると、リティ達がいる方を向いて声を張り上げた。
「行きますっ!」
ロメリアは自身に喝を入れるというのも兼ねて叫ぶとボールを空へと舞い上げた。ボールは星が輝く夜空に落ちていき、そして再び世界に帰ってきた。ロメリアはその帰ってきたボールを迎え入れるように右腕を掲げると、勢いよく弾き飛ばした。ボールはネットの少し上を通って、綺麗な曲線を描いて相手コートの中へと入って行く。
「はいっ!」
リティがそのボールの着弾地点に潜り込むと、ボールをネットの傍へと打ち上げる。するとラックがボール目掛けて飛び上がり、フォルト達のコートを睨みつける。その様子を見たケストレルが短く舌を打った。
『あいつっ、2発目から打ち込んでくる気かっ!』
ケストレルはラックがボールを打ち込んでくるのを防ぐ為にその場から飛び上がった。
しかしケストレルは飛び上がるのが少し遅く、ラックが放った強烈なスパイクがケストレルのまだネットの上へと出ていない両手を通過し、フォルト達のコートへと飛び込んでいった。
「わぁぁぁっ!」
ボールがケストレルの上を通過した瞬間、ロメリアは叫び声をあげながらボールの着弾地点へと右手を伸ばして飛び込んだ。ロメリアの拳にボールが当たると、ボールは軌道を変えて横へと低く飛んでいった。
『うあああああああ!絶対取るっ!』
「ぬぁぁぁっ!」
フォルトは雄叫びを上げながらボール目掛けて頭から飛び込んでいくと、手を丸めてボールを下から力任せで打ち上げた。打ち上がったボールがネットのほんの少し上にまで接近すると、ケストレルが飛んできたボールを裏拳で反対側のコートに弾き飛ばした。ケストレルの裏拳を受けたボールはロメリアから続いてきた勢いを殺すことなくより加速する。
『やべぇ!』
ネットの近くにいたバンカーが流れる水の様にぬるりと入ってきたボールが自分達のコートの浜辺に落ちて行っているのを視認した瞬間に咄嗟に飛び込んでボールを打ち上げた。ボールはそのままネットとは反対方向へと飛んでいった。
「ラック!」
「任せろっ!」
ラックはバンカーが打ち上げるのを予期しており、飛び込む動作をした時には既に兄が飛ばしてくるであろう着地点へと走っていた。ボールが重力に従って下へと落ちて来る時には、もうその真下で安定して打ち上げる体勢を取っていたのだ。
『畜生っ!こいつら・・・あの球も取るのかっ!大会優勝経験チームはそこいらのチームとは違うってか⁉』
ケストレルが額から冷や汗を流してラックを見つめていると、ラックは落ちてきたボールを正確にネットの真上にまで打ち上げた。
「リティ!行けっ!」
「はいっ!」
リティは砂を後ろへと蹴り飛ばして一気に加速すると、ネットに飛び込んでくるかと思うぐらい前へと高く跳躍し、激しいスパイクをお見舞いした。リティの視線が彼女から見て左側にいる砂浜に倒れた状態から起き上がった瞬間のロメリアを捉えたのを見たケストレルは息が止まった。
『まずいっ!今体勢を整えたばかりのロメリアの方に打たれたらヤバいっ!』
「くっ!」
ケストレルがリティのスパイクを止めるべく、横に思いっきり飛び上がってボールを防ごうとした。
・・・だが遅かった。
激しい音と共に、ボールは真っ直ぐとロメリアを射抜く様に突き進んでいった。ロメリアはこちらに直進してくるボールを視界に入れると一瞬だけ頭の中が真っ白になり、時間が緩やかになった。
ボールがゆっくりと回転しながらこちらにやって来ているように見える。
『早く・・・早く構えないとっ!ここで落とす訳には・・・いかないっ!』
ロメリアは緩やかな意識の中で両手を組むと、腕を真下に構えてボールを迎え入れる体勢を整える。
「うおりゃぁぁぁっ!」
バァァァァン・・・と腕を思いっきり振り上げてボールを夜空に吸い込ませるように打ち上げると、ボールはすっかり見えなくなった上に、ネットとは反対方向のそれもコートから随分離れた所にまで飛んでいってしまった。
「ああっ!ボールがぁぁぁ!」
「いやぁぁぁぁぁ!ごめんなさ~いっ!」
「・・・終わったな。」
フォルトとロメリアは喉が張り裂けんばかりの叫び声を上げ、ケストレルはもう負けたとばかりに諦めムードに入っていた。フォルトがロメリアの方を見ると『やってしまった・・・』とばかりに目から光が無くなってお通夜ムードを全身から滲みだしていた。
『負けた?もう負けたのか僕達は・・・』
フォルトがそう心の中で呟くと、フォルトは激しく首を振った。
『いや!まだ負けてないっ!だってボールはまだ地面についていないじゃないか!』
フォルトは夜闇に溶け込んだボール目掛けてコートの外へと飛び出していった。
「フォルト⁉」
「おいフォルト!お前何してんだ!」
ロメリアとケストレルが走り去っていくフォルトに対して叫ぶがフォルトは一切反応を示すことなく人混みの中を蛇の様にするりと潜り抜けていく。その際にも常に空高く打ち上げられたボールに意識を向けていた。
『落としてたまるものかっ!ロメリアの行動を・・・無駄にはさせないっ!』
ロメリアは確かにこんなコートの外にまで弾き飛ばしてしまったが、彼女は彼女なりにボールを落とすまいと必死に体を動かしたのをフォルトは知っていた。もしこれでボールを落としてしまえば、ロメリア自身が自分のせいで負けてしまったのだと思い込むに違いない・・・彼女は笑顔でそのことを否定するかもしれないが、心の中ではずっと後悔し続けるかもしれない。
『折角楽しい思い出を作ろうって思ってたのに・・・ボールを落としたらロメリアが悲しんじゃう・・・悲しい顔をしたロメリアなんて・・・見たくないっ!』
フォルトの背中に電流の様な鋭い感覚が走る。
フォルトは人混みを潜り抜けて少し開けた所に出ると、ボールが風に扇がれてふらふらと宙で軌道を不安定にさせながら大体の予測地点に落ちてきた。フォルトは息を思いっきり吸い込んで体全体に酸素を行き渡らせると、落ちてきたボールを全力でコートにまで打ち戻した。
「はああああああああッ!」
体を仰け反らせながら打ち上げたボールは再び夜空に消えていくとロメリア達がいるコートへと戻ってきた。リティ達も何がどうなっているのか分かっていない様子だったので目を細めてフォルトが消えていった人混みをネット越しに見つめていた。
「どうなったのかな・・・さっきフォルト君の雄叫びが聞こえたけど・・・」
「まさか打ち返したとか無いよな?」
「まさか!ロメリアさんが打ち上げたボールはコート超えて相当向こう側にまで飛んでいったんだよ?いくらフォルト君でも届く訳が・・・」
その時、ふと上を見たラックが目を大きく開いて叫んだ。
「リティ!上だ、構えろっ!」
ラックの声を受けて咄嗟に体勢を整えて上を見ると、先程ロメリアが盛大に吹っ飛ばしたボールが夜空からネットを超えてリティの真上へと落ちてきていたのだ。リティが着地点に立っているので気がついたラックはボールを取ることが出来ず、リティに叫ぶしかなかったのだ。
「嘘でしょっ⁉あのボールを返してきたのっ⁉」
リティはあまりの動揺の余りボールを打ち上げることには成功したがそのままフォルト達のコートへと入れてしまった。
・・・そしてその瞬間をロメリアは見逃さなかった。
ロメリアはボールがネットより10㎝上位で入ってくるのを確認すると、さっきのお返しとばかりにネットに突撃するかのように飛び込んでいき、右腕を大きく振りかぶった。
『フォルト・・・ありがとう・・・』
ロメリアはフォルトの事を頭に思い浮かべながらボールを思いっきり叩き落とした。
バァンッ!というパンパンに張った皮が破けたような音が浜辺に轟くと、そのすぐ後でその音を吹き飛ばすほどの歓声が周囲から巻き上がった。
「はぁ・・・はぁ・・・」
ロメリア達は息を切らしながら相手を睨みつける。リティ達も息を乱しながらフォルト達を同じように睨みつけている。
陽はもう半分ほど沈んでしまって、空には星々が砂の様に輝いて見え始めていた。コートの周囲には少し離れて火が焚かれ始めてその灯りと僅かな日の光を頼りにバレーをしているという状況になっていた。ボールが上へ行きすぎると見失ってしまうので、味方に上手くパスを回す時にも高く打ち上げることが出来なくなっていた。
ケストレルが審判員の横にある点数表に視線を移す。
「20対20・・・最後の最後までもつれ込んだな・・・」
「デュースは・・・無かったよね・・・という事は・・・これが最後?」
「だな・・・次、ロメリアがサーブを打ったらもうボールは落とせねえぞ。落とせるとしたら・・・」
「相手のコートの中・・・だね。」
フォルトとケストレルは互いに顔を見合わせて静かに頷くと、ロメリアが2人に向かって檄を飛ばす。
「フォルト!ケストレル!ここが一番の踏ん張り時だよっ!死に物狂いでボールに食らいついていこっ!」
「了解!」
「おう!」
フォルトとケストレルは肺を大きく膨らませると、一気に吐き出して自身を励ます為にも大声で叫んだ。
同じタイミングでバンカーもリティとラックに声をかける。
「行くぞっ、ラック、リティ!気ィ引き締めていけよ!」
「うんっ!」
「おっけっ!」
リティとラックもフォルト達に負けない様に声を張り上げると、両チームの気合の入った声を聞いて周りの観客達も大地を揺るがすほどの歓声を上げた。ボールを持っているロメリアの手が周囲の歓声を受けて震え始める。
『落ち着いて私・・・周りの空気に支配されちゃダメ・・・』
ロメリアが呼吸を正しながらフォルトの方を見ると、フォルトは真っ直ぐにロメリアの目を見つめていた。その目はロメリアに大丈夫だと励ましているように一切の曇りのない瞳をしていた。
『そうだよ・・・私の傍にはフォルトとケストレルがいるんだよ?・・・何も怖がるような事は無いんだよ!』
ロメリアはふぅっと軽く息を吐いて手の震えを止めると、リティ達がいる方を向いて声を張り上げた。
「行きますっ!」
ロメリアは自身に喝を入れるというのも兼ねて叫ぶとボールを空へと舞い上げた。ボールは星が輝く夜空に落ちていき、そして再び世界に帰ってきた。ロメリアはその帰ってきたボールを迎え入れるように右腕を掲げると、勢いよく弾き飛ばした。ボールはネットの少し上を通って、綺麗な曲線を描いて相手コートの中へと入って行く。
「はいっ!」
リティがそのボールの着弾地点に潜り込むと、ボールをネットの傍へと打ち上げる。するとラックがボール目掛けて飛び上がり、フォルト達のコートを睨みつける。その様子を見たケストレルが短く舌を打った。
『あいつっ、2発目から打ち込んでくる気かっ!』
ケストレルはラックがボールを打ち込んでくるのを防ぐ為にその場から飛び上がった。
しかしケストレルは飛び上がるのが少し遅く、ラックが放った強烈なスパイクがケストレルのまだネットの上へと出ていない両手を通過し、フォルト達のコートへと飛び込んでいった。
「わぁぁぁっ!」
ボールがケストレルの上を通過した瞬間、ロメリアは叫び声をあげながらボールの着弾地点へと右手を伸ばして飛び込んだ。ロメリアの拳にボールが当たると、ボールは軌道を変えて横へと低く飛んでいった。
『うあああああああ!絶対取るっ!』
「ぬぁぁぁっ!」
フォルトは雄叫びを上げながらボール目掛けて頭から飛び込んでいくと、手を丸めてボールを下から力任せで打ち上げた。打ち上がったボールがネットのほんの少し上にまで接近すると、ケストレルが飛んできたボールを裏拳で反対側のコートに弾き飛ばした。ケストレルの裏拳を受けたボールはロメリアから続いてきた勢いを殺すことなくより加速する。
『やべぇ!』
ネットの近くにいたバンカーが流れる水の様にぬるりと入ってきたボールが自分達のコートの浜辺に落ちて行っているのを視認した瞬間に咄嗟に飛び込んでボールを打ち上げた。ボールはそのままネットとは反対方向へと飛んでいった。
「ラック!」
「任せろっ!」
ラックはバンカーが打ち上げるのを予期しており、飛び込む動作をした時には既に兄が飛ばしてくるであろう着地点へと走っていた。ボールが重力に従って下へと落ちて来る時には、もうその真下で安定して打ち上げる体勢を取っていたのだ。
『畜生っ!こいつら・・・あの球も取るのかっ!大会優勝経験チームはそこいらのチームとは違うってか⁉』
ケストレルが額から冷や汗を流してラックを見つめていると、ラックは落ちてきたボールを正確にネットの真上にまで打ち上げた。
「リティ!行けっ!」
「はいっ!」
リティは砂を後ろへと蹴り飛ばして一気に加速すると、ネットに飛び込んでくるかと思うぐらい前へと高く跳躍し、激しいスパイクをお見舞いした。リティの視線が彼女から見て左側にいる砂浜に倒れた状態から起き上がった瞬間のロメリアを捉えたのを見たケストレルは息が止まった。
『まずいっ!今体勢を整えたばかりのロメリアの方に打たれたらヤバいっ!』
「くっ!」
ケストレルがリティのスパイクを止めるべく、横に思いっきり飛び上がってボールを防ごうとした。
・・・だが遅かった。
激しい音と共に、ボールは真っ直ぐとロメリアを射抜く様に突き進んでいった。ロメリアはこちらに直進してくるボールを視界に入れると一瞬だけ頭の中が真っ白になり、時間が緩やかになった。
ボールがゆっくりと回転しながらこちらにやって来ているように見える。
『早く・・・早く構えないとっ!ここで落とす訳には・・・いかないっ!』
ロメリアは緩やかな意識の中で両手を組むと、腕を真下に構えてボールを迎え入れる体勢を整える。
「うおりゃぁぁぁっ!」
バァァァァン・・・と腕を思いっきり振り上げてボールを夜空に吸い込ませるように打ち上げると、ボールはすっかり見えなくなった上に、ネットとは反対方向のそれもコートから随分離れた所にまで飛んでいってしまった。
「ああっ!ボールがぁぁぁ!」
「いやぁぁぁぁぁ!ごめんなさ~いっ!」
「・・・終わったな。」
フォルトとロメリアは喉が張り裂けんばかりの叫び声を上げ、ケストレルはもう負けたとばかりに諦めムードに入っていた。フォルトがロメリアの方を見ると『やってしまった・・・』とばかりに目から光が無くなってお通夜ムードを全身から滲みだしていた。
『負けた?もう負けたのか僕達は・・・』
フォルトがそう心の中で呟くと、フォルトは激しく首を振った。
『いや!まだ負けてないっ!だってボールはまだ地面についていないじゃないか!』
フォルトは夜闇に溶け込んだボール目掛けてコートの外へと飛び出していった。
「フォルト⁉」
「おいフォルト!お前何してんだ!」
ロメリアとケストレルが走り去っていくフォルトに対して叫ぶがフォルトは一切反応を示すことなく人混みの中を蛇の様にするりと潜り抜けていく。その際にも常に空高く打ち上げられたボールに意識を向けていた。
『落としてたまるものかっ!ロメリアの行動を・・・無駄にはさせないっ!』
ロメリアは確かにこんなコートの外にまで弾き飛ばしてしまったが、彼女は彼女なりにボールを落とすまいと必死に体を動かしたのをフォルトは知っていた。もしこれでボールを落としてしまえば、ロメリア自身が自分のせいで負けてしまったのだと思い込むに違いない・・・彼女は笑顔でそのことを否定するかもしれないが、心の中ではずっと後悔し続けるかもしれない。
『折角楽しい思い出を作ろうって思ってたのに・・・ボールを落としたらロメリアが悲しんじゃう・・・悲しい顔をしたロメリアなんて・・・見たくないっ!』
フォルトの背中に電流の様な鋭い感覚が走る。
フォルトは人混みを潜り抜けて少し開けた所に出ると、ボールが風に扇がれてふらふらと宙で軌道を不安定にさせながら大体の予測地点に落ちてきた。フォルトは息を思いっきり吸い込んで体全体に酸素を行き渡らせると、落ちてきたボールを全力でコートにまで打ち戻した。
「はああああああああッ!」
体を仰け反らせながら打ち上げたボールは再び夜空に消えていくとロメリア達がいるコートへと戻ってきた。リティ達も何がどうなっているのか分かっていない様子だったので目を細めてフォルトが消えていった人混みをネット越しに見つめていた。
「どうなったのかな・・・さっきフォルト君の雄叫びが聞こえたけど・・・」
「まさか打ち返したとか無いよな?」
「まさか!ロメリアさんが打ち上げたボールはコート超えて相当向こう側にまで飛んでいったんだよ?いくらフォルト君でも届く訳が・・・」
その時、ふと上を見たラックが目を大きく開いて叫んだ。
「リティ!上だ、構えろっ!」
ラックの声を受けて咄嗟に体勢を整えて上を見ると、先程ロメリアが盛大に吹っ飛ばしたボールが夜空からネットを超えてリティの真上へと落ちてきていたのだ。リティが着地点に立っているので気がついたラックはボールを取ることが出来ず、リティに叫ぶしかなかったのだ。
「嘘でしょっ⁉あのボールを返してきたのっ⁉」
リティはあまりの動揺の余りボールを打ち上げることには成功したがそのままフォルト達のコートへと入れてしまった。
・・・そしてその瞬間をロメリアは見逃さなかった。
ロメリアはボールがネットより10㎝上位で入ってくるのを確認すると、さっきのお返しとばかりにネットに突撃するかのように飛び込んでいき、右腕を大きく振りかぶった。
『フォルト・・・ありがとう・・・』
ロメリアはフォルトの事を頭に思い浮かべながらボールを思いっきり叩き落とした。
バァンッ!というパンパンに張った皮が破けたような音が浜辺に轟くと、そのすぐ後でその音を吹き飛ばすほどの歓声が周囲から巻き上がった。
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