最強暗殺者の末裔と王族の勘当娘 ~偶々出会った2人は新たな家族として世界を放浪します~

黄昏詩人

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~闇の帝都~

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 [不穏]

 「失礼します、陛下。」

 白銀の星の下に広がっている帝都の中央に聳える城の中・・・蝋燭の薄暗い仄かな光に照らされた廊下をただ1人、1つの大きな茶封筒を腕に抱えた白髪で髪を後ろに束ねた老執事は廊下の奥にある金色の茨の絵が描かれている白の扉を軽く3回ノックする。

 「・・・入れ。」

 中から重く威圧するような低い声で返事を受けると、老執事はドアを開けてお辞儀をすると、部屋の中に入る。

 室内は中央に机があり、部屋の隅々には帝都の職人が作成した美しい椅子やベッドが綺麗に並べられていたが、室内の大きさに比べて家具の量が少ない為寂しく感じる。そして先程老執事に声をかけた男は窓際に立って、その日の新聞を眺めていた。

 老紳士は机の前に立つと、男に話しかける。

 「陛下。何をご覧になられているのですか?」

 男は老紳士に一切返事をすることなく、机の方を振り向いて歩き始めると机の上に手に持っていた新聞を放り投げた。新聞の一番上にはビーチバレー大会にて表彰台に上っているロメリア達の絵が載っていた。

 「ロメリア様の記事を見ていたのですか?」

 「ああ・・・如何やら娘は元気に過ごしているらしい。・・・幸せそうで何よりだ。」

 男の声を受けて老紳士が質問を投げかける。

 「陛下含め親族の皆様でロメリア様を勘当なさったのに、未だに娘として認識しておられるのですか?」

 「お前こそ、まだ『様』をつけているではないか。もうロメリアは平民・・・王族ではないのだぞ?」

 「癖の様なものでして・・・どうしても自然と口に出してしまうのですよ。」

 「ふん・・・癖か・・・」

 ロメリアの父で帝国の王であるザックリンは曇らせた表情のまま小さく鼻で笑うと、老執事に顔を向ける。

 「ところでこんな夜中に何の用だ?まさか雑談をするために来た訳ではあるまい。」

 「ええ、左様でございます。」
 
 老執事は腕に抱えていた茶封筒をそっと机の上に置いた。ザックリンはその茶封筒に視線を向ける。

 「こちらの封筒の中身をご覧いただければ、今から説明いたします内容の詳細が書かれておりますので後程目をお通し下さい。そう言う事ですので、今から2件ほど簡潔に口頭で説明させて頂きます。」

 「ああ。」

 「ではまず1つ目の内容ですが・・・陛下含むフォルエンシュテュール家の品位を貶めたロメリア様を粛清するべく陛下の指示のもと、暗殺部隊を送り出しましたが・・・1週間ほど前から連絡が途絶えています。」

 「何?・・・気づかれたのか?」

 「いいえ、ロメリア様には気づかれていないと思います。恐らく我々の知らない他の勢力が関わっている可能性があり得ます。」

 「・・・最後の報告は?」

 「エルステッドにて葡萄狩りをしているロメリア様を確認し、事故死と見せかける為に周囲の結界を斬り、魔物を襲わせました。結果としてはロメリア様の傍にいた癖毛のある蒼髪の少年に魔物は撃破され、暗殺は失敗・・・それが最後の報告です。翌日の昼に報告をするように伝えておりましたが、連絡はありませんでした。」

 老執事の言葉を受けてザックリンは窓の方に視線を移す。窓の外は暗闇に包まれており、本来一望できるはずの城下町は闇に沈んでしまっていた。

 「分かった。その件に関しては後程対応するとして・・・他は?」

 「2つ目についてですが・・・『彼ら』から催促が来ております。」

 「催促?」

 「ええ・・・『直ぐに2000万カーツを北にあるロメスティルニア大陸の魔術都市ウィンデルバーグへと送金せよ。』・・・ということだそうです。」

 「・・・大きく出てきたな。『ならず者共』の分際で・・・」

 ザックリンが捨て吐く様に言葉を発すると、室内に2人以外の声が静かに響く。

 「俺達によくもまぁそんな口が利けるものだな・・・貴様ら一族の『尻ぬぐい』をしてやっているのは誰だと思っている?」

 ザックリンと老執事が周囲を見渡すと、窓際にかけられているカーテンの傍からぬるりと影の中から這い出てくるように全身黒のフードに身を包んだ男が現れた。男の顔はフードによって隠れており、素顔は見えなかった。

 「何時の間にそこに・・・」

 「さぁ?何時からだろうな?・・・まぁ、そんなことはどうでもいい。俺は今回、貴様らから金を受け取りに来た。我々の今後の活動には大量の資金が必要だからな。」

 「・・・」

 「返事が無いな?・・・どうするんだ?」

 男の心臓にナイフを突き立てている様な冷たく突き刺さる低い声が2人の耳の中に入って行く。ザックリンは男に返事を述べる。

 「・・・明日までには用意しよう。用意した後は、貴方に渡せばいいのか?」
 
 「そうだ。明日の夜に今度は部下を数人引き連れて回収しに来る。それまでには準備をしておけ。」

 男はそう言ってザックリン達に背中を向けると、窓際へ行き、暗闇の海が広がる窓を開けた。窓を開けた瞬間、夜風が室内に勢いよく吹き込み、カーテンが激しく揺れる。

 男は窓際に足をかけると、ザックリン達の方を振り向いて頬を上げた。フードが風によって少し捲れて吊り上がった口元だけが目に映る。

 「安心しろ。資金さえ提供してくれれば、俺達は必ず貴様らの願いを叶えてやる。・・・貴様らの目的は我々の目的の一部でもあるから・・・な。」

 男はそう言うと、窓の外へと飛び降りていった。深い闇が彼を包み、その姿は直ぐに気失ってしまった。

 老執事がザックリンに恐る恐る声をかける。

 「陛下・・・何故あのような者達を信用しているのですか?」

 「・・・仕方あるまい。我々が今この帝都を支配できているのは彼らのおかげ・・・我々の弱みは全て掌握されてしまっているのだからな。彼らがその気になれば・・・我ら一族は直ぐにでも滅ぼされてしまうだろう・・・」

 「この事は他の親族の皆様は・・・」

 「知らないな。その事実を知らされるのは王となった者のみ・・・家族であろうとも誰にも話してはならない。そしてその時、王だけが知るのだ・・・自分が奴らのマリオネットであったことをな。」

 ザックリンは唇を強く噛むと、男が消えていった窓を見つめた。
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