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ドラゴナ神国サイド 珠に封じられた記憶
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ようやくアリエルに会える。ドラゴナ神国でシャルルは待ちわびていた。
昔に一度会っただけの孫娘。
ドラゴナ神国の国民、特に王族は長命であるが、それゆえ新しい命の誕生は稀であった。末娘のフレヤの子供の誕生に大いに一族は喜び、宝物のように慈しんだ。
しかし、シャルルは接近を禁止された。
フレヤが小さいアリエルを連れて帰ってきた時、神気の強いシャルルが近寄るとアリエルは大声で泣き、高熱をだし、痙攣を起してしまったのだ。
アリエルの父はただの人間、そのか弱い未熟な身体ではシャルルの強い気を受けきれなかった。
皆が可愛がるのを悔しい思いで眺め、フレヤも双方の為にいつしか里帰りを控えるようになり、シャルルは可愛い一族の末っ子になかなか会うことが出来なかったのだ。
シャルルは会えなくなった孫娘が心配で、セロー公爵家の三男を側につかせた。
あのクロウはシャルルが国王を引いた後、威圧に負けることなく弟子入りを志願してきた見どころのある男だった。ちょっと口が悪く、軽い所もあるが信用は出来る。
そのクロウからアリエルを連れて帰ると連絡があったのだ。
シャルルは可愛い孫の為にせっせと別邸に迎える準備をさせた。
それなのに。
待ち望んでいた孫娘のアリエルとの久しぶりの対面は気を失ってクロウに抱きかかえられた血まみれの姿。
本人の身体に傷はなかったが、衣服には血しぶきが飛び散っていた。
ベッドに寝かされたアリエルは意識が戻らぬまま高熱をだし、ごめんなさいと魘され涙を落とす。時折、意識を取り戻しては死にたいと漏らし、また意識を失う事の繰り返し。
クロウに事情を問いただすと
「アリエルが・・・覚醒いたしました。」
そう事情を語りだした。
アリエルとクロウはワトー領へ向かっていた。
ワトー領の森の奥にはドラゴナ神国につながる秘められた隧道があった。海に囲まれたドラゴナ神国にここからだと馬車のまま行けるのだ。
そんな道があるとは知らなかったアリエルは驚きながらも、馬車の中から外を見ていると急に馬車が止まった。
「お嬢!鍵をかけて絶対に出てこないでください!」
クロウの叫び声が聞こえてくる。
クロウの緊迫した声にアリエルは震える手で鍵をかけた。
山を越える道の前方を塞がれ、剣を持った男たちに馬車の周りを囲まれたのだ。
しかし窓の外に見えるのは一人や二人ではない。いくら強いクロウでも心配でたまらない。
窓の外を覗いていると、 ニヤリと下卑た笑いを浮かべる一人の男と目が合う。
「ひっ」
アリエルは思わず座席にうずくまるが、直後馬車の窓が割られる。
男の手が入り込んでくるが、その手は目の前で消えた。
「お嬢に触れるんじゃねえ!」
クロウは後ろから賊の頭を蹴り上げ、地面に沈めた。
しかしそれに憤った仲間たちが一斉にクロウに切りかかる。
クロウはいとも簡単に、相手の剣を取り上げ、易々と大勢の男を沈めていく。
そして、賊の一人の剣を弾き飛ばしたとき、飛ばされた剣が運悪く馬の尻に刺さった。痛みで暴れた馬に引っ張られて馬車が急に動き出してしまった。
「きゃあ!」
馬車の中にいたアリエルはバランスを崩して倒れ込み、そのまま暴れた馬車に連れて行かれそうになった。
クロウは馬車に飛びつき、咄嗟に馬車の扉を開くとアリエルを助け出した。
しかし、襲撃者たちに背を向けたその隙を逃さず男たちはクロウに切りかかった。
意識をアリエルに取られていたクロウは躱しきれずに背中を切られた。
「いやっ!クロウ!」
アリエルが悲鳴を上げる。
それに沸き立った襲撃犯どもは一斉にクロウに襲いかかってきた。
「やめて!!」
クロウがアリエルの悲鳴を聞いて、ここで力を見せるのも仕方がないかと思った時、隣ですごい勢いで気が膨れ上がるのを感じた。
止めを刺そうとクロウに剣を振り上げた賊が迫ってくる、その男が腕を振り下ろすまえに男の首筋から血が噴き出て声も立てずに崩れ落ちた。
「お嬢!」
クロウがアリエルを振り返ると、アリエルの顔から表情が消え、冷たい目で襲撃者たちを見据えている。
男たちは何が起こったかわからないまま、恐ろしくなり一斉に切りかかる。
そして・・・剣を持った手ごと地面にごとんと落ちる。
アリエルの周りには風が舞っていた。それが刃物のように鋭くなり男たちを切り裂いてゆく。
男たちの悲鳴が上がり、地獄のような光景が広がる。
「お嬢!もういい!後は俺がする!」
そう叫ぶクロウの声も届かず、賊たちは一人残らず息絶えた。
我に返ったアリエルはその惨状を見て、錯乱した。
人を殺した・・・そのことも、訳の分からない力が自分から湧き出たことにも恐怖した。
混乱したアリエルを眠らせたクロウは、賊の死体を崖下の川に放り込み、ドラゴナ神国へと連れて帰ったのだった。
それを聞き、酷く険しい顔をしたシャルルはアリエルの額に手を当てた。
シャルルは神の領域に近い力を持っている。噂通り、竜神の血族・・・王家の血の濃いものほど神の領域に近い力を持っている。
姿があまり変わらないことから、他国の者にあまり姿を見せることはない。シャルルとて何十年も前からこの若々しい姿を保っている。
その一族の中でも比類なき力を持つシャルルはアリエルが見る悪夢、記憶をアリエルの流す涙に乗せて抜きだした。
要らぬ記憶を宿した涙は頬を伝い、流れ落ちるまでにコロンと丸い珠となった。
そこには惨劇の記憶のみならず、セドリックの事、学院での事などアリエルを苦しめてきた記憶も含まれていた。
壊れそうなほどもろくなってしまったアリエルに心を痛めたシャルルは、惨殺という忌まわしい記憶が封じ込まれた玉を粉々に砕いたのだった。
昔に一度会っただけの孫娘。
ドラゴナ神国の国民、特に王族は長命であるが、それゆえ新しい命の誕生は稀であった。末娘のフレヤの子供の誕生に大いに一族は喜び、宝物のように慈しんだ。
しかし、シャルルは接近を禁止された。
フレヤが小さいアリエルを連れて帰ってきた時、神気の強いシャルルが近寄るとアリエルは大声で泣き、高熱をだし、痙攣を起してしまったのだ。
アリエルの父はただの人間、そのか弱い未熟な身体ではシャルルの強い気を受けきれなかった。
皆が可愛がるのを悔しい思いで眺め、フレヤも双方の為にいつしか里帰りを控えるようになり、シャルルは可愛い一族の末っ子になかなか会うことが出来なかったのだ。
シャルルは会えなくなった孫娘が心配で、セロー公爵家の三男を側につかせた。
あのクロウはシャルルが国王を引いた後、威圧に負けることなく弟子入りを志願してきた見どころのある男だった。ちょっと口が悪く、軽い所もあるが信用は出来る。
そのクロウからアリエルを連れて帰ると連絡があったのだ。
シャルルは可愛い孫の為にせっせと別邸に迎える準備をさせた。
それなのに。
待ち望んでいた孫娘のアリエルとの久しぶりの対面は気を失ってクロウに抱きかかえられた血まみれの姿。
本人の身体に傷はなかったが、衣服には血しぶきが飛び散っていた。
ベッドに寝かされたアリエルは意識が戻らぬまま高熱をだし、ごめんなさいと魘され涙を落とす。時折、意識を取り戻しては死にたいと漏らし、また意識を失う事の繰り返し。
クロウに事情を問いただすと
「アリエルが・・・覚醒いたしました。」
そう事情を語りだした。
アリエルとクロウはワトー領へ向かっていた。
ワトー領の森の奥にはドラゴナ神国につながる秘められた隧道があった。海に囲まれたドラゴナ神国にここからだと馬車のまま行けるのだ。
そんな道があるとは知らなかったアリエルは驚きながらも、馬車の中から外を見ていると急に馬車が止まった。
「お嬢!鍵をかけて絶対に出てこないでください!」
クロウの叫び声が聞こえてくる。
クロウの緊迫した声にアリエルは震える手で鍵をかけた。
山を越える道の前方を塞がれ、剣を持った男たちに馬車の周りを囲まれたのだ。
しかし窓の外に見えるのは一人や二人ではない。いくら強いクロウでも心配でたまらない。
窓の外を覗いていると、 ニヤリと下卑た笑いを浮かべる一人の男と目が合う。
「ひっ」
アリエルは思わず座席にうずくまるが、直後馬車の窓が割られる。
男の手が入り込んでくるが、その手は目の前で消えた。
「お嬢に触れるんじゃねえ!」
クロウは後ろから賊の頭を蹴り上げ、地面に沈めた。
しかしそれに憤った仲間たちが一斉にクロウに切りかかる。
クロウはいとも簡単に、相手の剣を取り上げ、易々と大勢の男を沈めていく。
そして、賊の一人の剣を弾き飛ばしたとき、飛ばされた剣が運悪く馬の尻に刺さった。痛みで暴れた馬に引っ張られて馬車が急に動き出してしまった。
「きゃあ!」
馬車の中にいたアリエルはバランスを崩して倒れ込み、そのまま暴れた馬車に連れて行かれそうになった。
クロウは馬車に飛びつき、咄嗟に馬車の扉を開くとアリエルを助け出した。
しかし、襲撃者たちに背を向けたその隙を逃さず男たちはクロウに切りかかった。
意識をアリエルに取られていたクロウは躱しきれずに背中を切られた。
「いやっ!クロウ!」
アリエルが悲鳴を上げる。
それに沸き立った襲撃犯どもは一斉にクロウに襲いかかってきた。
「やめて!!」
クロウがアリエルの悲鳴を聞いて、ここで力を見せるのも仕方がないかと思った時、隣ですごい勢いで気が膨れ上がるのを感じた。
止めを刺そうとクロウに剣を振り上げた賊が迫ってくる、その男が腕を振り下ろすまえに男の首筋から血が噴き出て声も立てずに崩れ落ちた。
「お嬢!」
クロウがアリエルを振り返ると、アリエルの顔から表情が消え、冷たい目で襲撃者たちを見据えている。
男たちは何が起こったかわからないまま、恐ろしくなり一斉に切りかかる。
そして・・・剣を持った手ごと地面にごとんと落ちる。
アリエルの周りには風が舞っていた。それが刃物のように鋭くなり男たちを切り裂いてゆく。
男たちの悲鳴が上がり、地獄のような光景が広がる。
「お嬢!もういい!後は俺がする!」
そう叫ぶクロウの声も届かず、賊たちは一人残らず息絶えた。
我に返ったアリエルはその惨状を見て、錯乱した。
人を殺した・・・そのことも、訳の分からない力が自分から湧き出たことにも恐怖した。
混乱したアリエルを眠らせたクロウは、賊の死体を崖下の川に放り込み、ドラゴナ神国へと連れて帰ったのだった。
それを聞き、酷く険しい顔をしたシャルルはアリエルの額に手を当てた。
シャルルは神の領域に近い力を持っている。噂通り、竜神の血族・・・王家の血の濃いものほど神の領域に近い力を持っている。
姿があまり変わらないことから、他国の者にあまり姿を見せることはない。シャルルとて何十年も前からこの若々しい姿を保っている。
その一族の中でも比類なき力を持つシャルルはアリエルが見る悪夢、記憶をアリエルの流す涙に乗せて抜きだした。
要らぬ記憶を宿した涙は頬を伝い、流れ落ちるまでにコロンと丸い珠となった。
そこには惨劇の記憶のみならず、セドリックの事、学院での事などアリエルを苦しめてきた記憶も含まれていた。
壊れそうなほどもろくなってしまったアリエルに心を痛めたシャルルは、惨殺という忌まわしい記憶が封じ込まれた玉を粉々に砕いたのだった。
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