セラフィーヌの幸せ結婚  ~結婚したら池に入ることになりました~

れもんぴーる

文字の大きさ
22 / 26

セラフィーヌサイド 10

しおりを挟む
 フェルマン様との楽しい時間はあっという間に過ぎ、気が付けば数カ月が経過していた。
 多忙のフェルマン様の負担を減らしたくて書類整理から、清書、調べ物などできることをお手伝いさせてもらった。だんだん重要な仕事も手伝わせてくれるようなり、少しはお役に立てているのだ感じながら過ごす日々は本当に幸せだった。

 このまま何食わぬ顔で一緒に暮らせるのではないかと思っていたのに、フェルマン様は縁談を持ってきた。
 離婚歴があるというのに、私にはもったいないくらいの相手を紹介してくれる。
 フェルマン様は超鈍感だ。
 初めによろけた時に手を借りたのをいいことに、それ以来しれーっとエスコートしてもらっている。一緒にお茶したり、会話をするときには大好きオーラを振りまいているというのに何にも伝わっていなかったらしい。

 持ち込まれる縁談をすべて断っていたけど、ついに陛下のお墨付きという畏れ多すぎる良縁をフェルマン様は持ってきた。
 もしかして、陛下に頼んでまで私を早く追い出したいってこと?
 優しかったのはただ申しわかなかったから? 悲しくて泣いちゃう。 
 しかしどれだけ好条件でも、陛下のお墨付きであっても首を横に振っていると、とうとう困った顔をされてしまった。
(こちらの方が泣きたいくらい困っているのですよ、フェルマン様。もう一度私の望みをお伝えしておかなくては!)

「フェルマン様、私のためにいろいろ手を尽くしてくださりありがとうございます。とてもうれしいのですが、御迷惑でなければこのままずっとクローズ家においていただけませんか」
「私はセラフィーヌ嬢に幸せになってほしいのだ」
「こちらでフェルマン様の傍に置いていただくのが私の幸せですわ」
「……。そうか。もう縁談を無理に勧めるのはやめておこう。セラフィーヌ嬢がそれでいいならここで暮らしなさい」

 私の言葉をフェルマン様はどのように受け取ったのかわからないけど、一瞬驚いたように目を見開いたが構わないと言ってくれた。
(やったわ! フェルマン様に必要と思われるように頑張らなくっちゃ!)
 私はこれまで以上にフェルマン様の仕事を手伝ったり、ハンカチやスカーフに刺繍をしてプレゼント渡したりした。そこに自分の想いをこっそりとこめる。
(フェルマン様、気が付いてくださるかしら)
 思いを込めて刺した刺繍のデザインは赤いチューリップ。『愛の告白・真実の愛』の花言葉を持つ。

 それを知ってか知らずか、お礼にとたびたびフェルマン様が綺麗になったガゼボでのお茶に誘ってくれるようになった。
 同じ敷地に住んでいるガエル達が本邸に突撃してきた時のために、特別区域から出るときは顔がわからないようにベールで隠すことになったのだが……なんだか秘密の恋みたいでドキドキして楽しい。
 というかもはや夫婦じゃなかろうか。

 そんな嬉し恥ずかし、楽しい毎日を過ごしていたある日、フェルマン様はため息をついてガエルを追い出すことに決めたといった。
 これ以上チャンスを与えても無駄だと少し疲れたようにため息をつかれた。。
「一度本気で怒らねばあいつはわからないのだろう。一人息子だから何をしても安泰だと思っている。いざとなれば縁戚のものから養子をとれるというのに」
「フェルマン様……」
(フェルマン様はお気の毒だけれど、これはチャンスだわ! セラフィーヌ、頑張るのよ!)

「あいつに継がせる前に本性や能力がわかってよかったと思う。あれには侯爵家を守っていくことなどできない」
「でしたら、私をずっとフェルマン様のそばにいさせてください。私のせいでお一人になってしまうのですもの」
「それは違う。あいつ自身の資質の問題だ。あなたには幸せになってほしい、ここに残っておかしな噂になれば困るから……」
 出ていった方がいいと言われる前に、話を遮る。
「……私は噂されても構いません。むしろ噂になって欲しいと思っています」

 鼻息荒くセラフィーヌは一世一代の勇気を出して告白した。
 顔が熱く真っ赤になっているのがわかる。でもここは負けられないと震えそうになる手を握り締めてフェルマン様の目を見つめた。

 私の言葉を聞いたフェルマン様は目を見開き、固まってしまわれた。

しおりを挟む
感想 42

あなたにおすすめの小説

セレナの居場所 ~下賜された側妃~

緑谷めい
恋愛
 後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。

可愛い妹を母は溺愛して、私のことを嫌っていたはずなのに王太子と婚約が決まった途端、その溺愛が私に向くとは思いませんでした

珠宮さくら
恋愛
ステファニア・サンマルティーニは、伯爵家に生まれたが、実母が妹の方だけをひたすら可愛いと溺愛していた。 それが当たり前となった伯爵家で、ステファニアは必死になって妹と遊ぼうとしたが、母はそのたび、おかしなことを言うばかりだった。 そんなことがいつまで続くのかと思っていたのだが、王太子と婚約した途端、一変するとは思いもしなかった。

愛してくれないのなら愛しません。

火野村志紀
恋愛
子爵令嬢オデットは、レーヌ伯爵家の当主カミーユと結婚した。 二人の初対面は最悪でオデットは容姿端麗のカミーユに酷く罵倒された。 案の定結婚生活は冷え切ったものだった。二人の会話は殆どなく、カミーユはオデットに冷たい態度を取るばかり。 そんなある日、ついに事件が起こる。 オデットと仲の良いメイドがカミーユの逆鱗に触れ、屋敷に追い出されそうになったのだ。 どうにか許してもらったオデットだが、ついに我慢の限界を迎え、カミーユとの離婚を決意。 一方、妻の計画など知らずにカミーユは……。

【完結】離婚しましょうね。だって貴方は貴族ですから

すだもみぢ
恋愛
伯爵のトーマスは「貴族なのだから」が口癖の夫。 伯爵家に嫁いできた、子爵家の娘のローデリアは結婚してから彼から貴族の心得なるものをみっちりと教わった。 「貴族の妻として夫を支えて、家のために働きなさい」 「貴族の妻として慎みある行動をとりなさい」 しかし俺は男だから何をしても許されると、彼自身は趣味に明け暮れ、いつしか滅多に帰ってこなくなる。 微笑んで、全てを受け入れて従ってきたローデリア。 ある日帰ってきた夫に、貞淑な妻はいつもの笑顔で切りだした。 「貴族ですから離婚しましょう。貴族ですから受け入れますよね?」 彼の望み通りに動いているはずの妻の無意識で無邪気な逆襲が始まる。 ※意図的なスカッはありません。あくまでも本人は無意識でやってます。

[完結]だってあなたが望んだことでしょう?

青空一夏
恋愛
マールバラ王国には王家の血をひくオルグレーン公爵家の二人の姉妹がいる。幼いころから、妹マデリーンは姉アンジェリーナのドレスにわざとジュースをこぼして汚したり、意地悪をされたと嘘をついて両親に小言を言わせて楽しんでいた。 アンジェリーナの生真面目な性格をけなし、勤勉で努力家な姉を本の虫とからかう。妹は金髪碧眼の愛らしい容姿。天使のような無邪気な微笑みで親を味方につけるのが得意だった。姉は栗色の髪と緑の瞳で一見すると妹よりは派手ではないが清楚で繊細な美しさをもち、知性あふれる美貌だ。 やがて、マールバラ王国の王太子妃に二人が候補にあがり、天使のような愛らしい自分がふさわしいと、妹は自分がなると主張。しかし、膨大な王太子妃教育に我慢ができず、姉に代わってと頼むのだがーー

10年間の結婚生活を忘れました ~ドーラとレクス~

緑谷めい
恋愛
 ドーラは金で買われたも同然の妻だった――  レクスとの結婚が決まった際「ドーラ、すまない。本当にすまない。不甲斐ない父を許せとは言わん。だが、我が家を助けると思ってゼーマン伯爵家に嫁いでくれ。頼む。この通りだ」と自分に頭を下げた実父の姿を見て、ドーラは自分の人生を諦めた。齢17歳にしてだ。 ※ 全10話完結予定

地獄の業火に焚べるのは……

緑谷めい
恋愛
 伯爵家令嬢アネットは、17歳の時に2つ年上のボルテール侯爵家の長男ジェルマンに嫁いだ。親の決めた政略結婚ではあったが、小さい頃から婚約者だった二人は仲の良い幼馴染だった。表面上は何の問題もなく穏やかな結婚生活が始まる――けれど、ジェルマンには秘密の愛人がいた。学生時代からの平民の恋人サラとの関係が続いていたのである。  やがてアネットは男女の双子を出産した。「ディオン」と名付けられた男児はジェルマンそっくりで、「マドレーヌ」と名付けられた女児はアネットによく似ていた。  ※ 全5話完結予定  

四の五の言わず離婚届にサインをしてくれません?

白雲八鈴
恋愛
アルディーラ公爵夫人であるミレーネは、他の人からみれば羨ましいと思える立場にいた。 王妹の母譲りの美人の顔立ち、公爵夫人として注目を集める立場、そして領地の運営は革命と言えるほど領地に潤いを与えていた。 だが、そんなミレーネの心の中にあるのは『早く離婚したい』だった。 順風満帆と言えるミレーネは何が不満なのか。その原因は何か。何故離婚できないのか。 そこから始まる物語である。

処理中です...