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エピローグ
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数名の応援部隊が到着し、屋敷内を調査され、アマリアと前侯爵が牢から発見された。
精神的に打ちひしがれて、憔悴しきっていたアマリアから、昔の違法薬物事件の真相までが明らかにされ、前侯爵、セレスタンが拘束された。
セレスタンは違法薬物事件のみならず、我が子の殺害未遂の罪も加わった。
過去の事件を知って放置していたアマリアと前侯爵夫人も連れていかれ、ようやくリュカの名誉が回復された。
前侯爵は、「ノエルが死んだ息子だ」、と訳の分からないことを叫び、錯乱していると判断され、よりきつく拘束されて連れていかれた。そして、それを聞いたセレスタンは、何かを悟ったようにうなだれ大人しく拘束された。
「坊ちゃま!よくご無事で!」
意識が戻ったノエルにハンナは泣いて喜んだ。
「私がおそばを離れたばっかりに!」
「ううん、僕が騎士を呼んできてとお願いしたのだから。ハンナのおかげで僕は助かったんだよ、ありがとう。」
ハンナはうっと泣いてノエルを抱きしめた。
「坊ちゃまがおかしくなった時・・・あの時から坊ちゃまは侯爵様から殺されるかもしれないと・・・それであんなに取り乱されていたのですね。」
「・・・。僕が父上に殺されるかもしれないって・・・ハンナが信じてくれてよかった。」
「だって、奥様や前侯爵様を牢にいれたりしておかしなことばかりされていたのですもの。坊ちゃまも怯えてらしたし・・・。」
「ありがとう。」
「・・・でも、坊ちゃま、一人になってしまいましたわ。」
「一人じゃないよ、ハンナがいてくれる。ハンナがいてくれたから僕は生き残れたんだ、本当にありがとう。」
初めは、一人一人精神的に追い詰めて、家族の絆をばらばらにした後、自分の正体をあかし、火をつけて全員を殺そうと思い詰めていた。
そして復讐のためだけに費やした短い人生を一緒に閉じようと思っていた。
メイドとしてはともかく、ノエルの為に一生懸命になってくれた感情豊かで愛情たっぷりに接してくれたハンナ。彼女が助けると言ってくれたノエルの命を無駄に散らすことにためらいを覚え、ハンナとこの先も生きていきたいと思うようになった。
ハンナはノエルの命と心を救ってくれた。
サンテール家は即取り潰された。前侯爵とセレスタンは極刑に処され、前侯爵夫人とアマリアは厳しい修道院に送られることになった。
最後に見送ってよいと許可が出たが、会いに行かなかった。
ノエルはお咎めなしだったが、もう家は失い、使用人は全員解雇された。誰も引き取り手はなく、平民として孤児院に送られることになった。
「大丈夫だよ、僕は新しい人生を頑張る。」
ハンナは覚悟を決めたように
「坊ちゃま、貧乏生活になりますけれど一緒に暮らしませんか?」
「もうハンナは使用人じゃない、自由になっていいんだよ。ありがとう。」
ハンナは涙をこらえながら
「私は坊ちゃまをお守りすると言いました。その気持ちは変わっておりません、もうメイドではないですがお側で守らせてください。お願いします。」
「ハンナ・・・」
ハンナにぎゅっと抱き着いた。
「ありがとう、うれしい。」
前世では得られなかった無償の愛をこのハンナが与えてくれた。乾ききった心が満たされるようだった。
この屋敷を最後に出るとき、僕は隠しておいたカバンをハンナに見せた。
「まあ!坊ちゃま!これは?!」
「うん、きっと財産何もかも没収されると思ったからとっておいたんだ。僕だって被害者なんだから慰謝料としてもらってもいいんじゃない?」
ノエルはにこっと笑った。
ハンナは、一瞬だけ考えたが
「そうですね。坊ちゃまにはその権利がありますね。」
「・・・だからね、お金の心配ないから。その・・・僕が大きくなるの待っててくれる?」
「もちろんですよ。そのお金は万が一の時に取っておいて、それまで私が頑張りますから!」
「じゃなくて!僕が・・・ハンナを養えるようになるまで結婚しないで待ってて!」
「坊ちゃま・・・」
ハンナは泣き笑いで
「嬉しいです。坊ちゃまが大きくなっても気持ちが変わらなかったらお嫁さんにしてもらいます。」
「変わらないよ、絶対に変わらない。」
だって精神は大人なのだから。大人の心でハンナを愛しているのだから。
「じゃあ、坊ちゃまが大きくなるの楽しみに待っています。」
「絶対だよ、早く大きくなるから待っててね。」
二人は大きなカバンを持って、屋敷を後にした。
終
精神的に打ちひしがれて、憔悴しきっていたアマリアから、昔の違法薬物事件の真相までが明らかにされ、前侯爵、セレスタンが拘束された。
セレスタンは違法薬物事件のみならず、我が子の殺害未遂の罪も加わった。
過去の事件を知って放置していたアマリアと前侯爵夫人も連れていかれ、ようやくリュカの名誉が回復された。
前侯爵は、「ノエルが死んだ息子だ」、と訳の分からないことを叫び、錯乱していると判断され、よりきつく拘束されて連れていかれた。そして、それを聞いたセレスタンは、何かを悟ったようにうなだれ大人しく拘束された。
「坊ちゃま!よくご無事で!」
意識が戻ったノエルにハンナは泣いて喜んだ。
「私がおそばを離れたばっかりに!」
「ううん、僕が騎士を呼んできてとお願いしたのだから。ハンナのおかげで僕は助かったんだよ、ありがとう。」
ハンナはうっと泣いてノエルを抱きしめた。
「坊ちゃまがおかしくなった時・・・あの時から坊ちゃまは侯爵様から殺されるかもしれないと・・・それであんなに取り乱されていたのですね。」
「・・・。僕が父上に殺されるかもしれないって・・・ハンナが信じてくれてよかった。」
「だって、奥様や前侯爵様を牢にいれたりしておかしなことばかりされていたのですもの。坊ちゃまも怯えてらしたし・・・。」
「ありがとう。」
「・・・でも、坊ちゃま、一人になってしまいましたわ。」
「一人じゃないよ、ハンナがいてくれる。ハンナがいてくれたから僕は生き残れたんだ、本当にありがとう。」
初めは、一人一人精神的に追い詰めて、家族の絆をばらばらにした後、自分の正体をあかし、火をつけて全員を殺そうと思い詰めていた。
そして復讐のためだけに費やした短い人生を一緒に閉じようと思っていた。
メイドとしてはともかく、ノエルの為に一生懸命になってくれた感情豊かで愛情たっぷりに接してくれたハンナ。彼女が助けると言ってくれたノエルの命を無駄に散らすことにためらいを覚え、ハンナとこの先も生きていきたいと思うようになった。
ハンナはノエルの命と心を救ってくれた。
サンテール家は即取り潰された。前侯爵とセレスタンは極刑に処され、前侯爵夫人とアマリアは厳しい修道院に送られることになった。
最後に見送ってよいと許可が出たが、会いに行かなかった。
ノエルはお咎めなしだったが、もう家は失い、使用人は全員解雇された。誰も引き取り手はなく、平民として孤児院に送られることになった。
「大丈夫だよ、僕は新しい人生を頑張る。」
ハンナは覚悟を決めたように
「坊ちゃま、貧乏生活になりますけれど一緒に暮らしませんか?」
「もうハンナは使用人じゃない、自由になっていいんだよ。ありがとう。」
ハンナは涙をこらえながら
「私は坊ちゃまをお守りすると言いました。その気持ちは変わっておりません、もうメイドではないですがお側で守らせてください。お願いします。」
「ハンナ・・・」
ハンナにぎゅっと抱き着いた。
「ありがとう、うれしい。」
前世では得られなかった無償の愛をこのハンナが与えてくれた。乾ききった心が満たされるようだった。
この屋敷を最後に出るとき、僕は隠しておいたカバンをハンナに見せた。
「まあ!坊ちゃま!これは?!」
「うん、きっと財産何もかも没収されると思ったからとっておいたんだ。僕だって被害者なんだから慰謝料としてもらってもいいんじゃない?」
ノエルはにこっと笑った。
ハンナは、一瞬だけ考えたが
「そうですね。坊ちゃまにはその権利がありますね。」
「・・・だからね、お金の心配ないから。その・・・僕が大きくなるの待っててくれる?」
「もちろんですよ。そのお金は万が一の時に取っておいて、それまで私が頑張りますから!」
「じゃなくて!僕が・・・ハンナを養えるようになるまで結婚しないで待ってて!」
「坊ちゃま・・・」
ハンナは泣き笑いで
「嬉しいです。坊ちゃまが大きくなっても気持ちが変わらなかったらお嫁さんにしてもらいます。」
「変わらないよ、絶対に変わらない。」
だって精神は大人なのだから。大人の心でハンナを愛しているのだから。
「じゃあ、坊ちゃまが大きくなるの楽しみに待っています。」
「絶対だよ、早く大きくなるから待っててね。」
二人は大きなカバンを持って、屋敷を後にした。
終
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面白かったです!
日本の社会人の私自身の価値観で5,6歳で同じ立場になっても
それなりのダメージを与えつつかなり短期間で復讐もできる、
いいプランだと思いました。笑
こんな事情じゃあ、家族ごっこはできない。
ましてやリュカ自身ならなおのこと、
自分ごとキレイに終わらせる決意も納得でしたが、
ノエルとしての未来を見れたことは本当にハンナによる救いですね。
ハンナは良き人間である、2人に幸せになって欲しい。
うれしいです(*´▽`*)
ハンナを登場させたときはこれほどのキーマンになるとは思いませんでした。ハンナがいなければリュカの心は復讐心で壊れてしまったかもしれません。
年の差を気にして、姉変わり、親代わりに徹しようとするハンナを押して押して押しまくって幸せになること間違いなしです!
お読みいただきありがとうございました!(^^)!
2人の年の差が知りたい(笑)
え~と( ;∀;)
詳細設定しておりませんでした。
でもメイドとして未熟なハンナを15,6歳としてノエルは5,6歳として年の差10歳!
セーフです!(何が?)
ありがとうございました(❁ᴗ͈ˬᴗ͈)ペコリ♡...*゜
前侯爵は反省していませんね、きっと。
口先で謝ったとしても。
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ハンナの誘いを断ったのは、もう主従の関係ではないのに自分の世話をさせるなんて申し訳ないと思っていたからですね。お荷物になってしまうから。
それでも側にいると言ってくれたハンナに、それならばもう遠慮しないよ!ってところでしょうか(*´▽`*)
続けてお読みくださりありがとうございました!