残虐王は 死神さえも 凌辱す

寄賀あける

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第5章 こいねがう命の叫び

どこから

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「なんでこんな時に留守なんだろう?」
魔術師の塔蔵書庫でチュジャンエラがつぶやいた。届いたばかりの手紙を手にしている。模写の手を休めてジャルスジャズナが『どうしたんだい?』と尋ねた。

「いやさ、サシーニャさまがついでだからバチルデア王宮に立ち寄りたいって言っててね」
いつも蔵書庫にルリシアレヤとエリザマリはさっき帰ったばかりだ。

「サシーニャさまが『魔術師同士の親交を望んでいる』って言えって。だからその通りに伝えたんだけど、『魔術師は国内調査でいつ帰るか判らない』って返事が来た」
「それってララミリュースあてに手紙を出したのかい?」
「うん、エネシクル王あてだと正式文書にしなくちゃならないからね。で、グレリアウスはサシーニャさまと一緒にジッチモンデに行ったから、代わりにコペンニアテツがダンガシクに居る。コペンニアテツに伝令カラを飛ばしてバチルデアに手紙を持って行って貰ったんだ。ダンガシクからならバチルデア王宮まで半日だ」

「ま、コペンニアテツ自身がバチルデアには行かないだろうさ。部下に行かせる」
「そりゃそうさ。って、ジャジャ、そんな細かい事まで気にする?」
鼻白はなじらむチュジャンエラ、すぐに気を取り直して話を続ける。

「手紙には『ララミリュースさまからエネシクル王に頼んでください』って書いた。ちゃんと『魔術師に会いたい』って書いたんだよ。なのに『魔術師は留守だが、サシーニャさまならいつでも歓迎する』って返事なのさ。エネシクル王がそう言ってるって」
「でもサシーニャの目的はその魔術師……名前も判らないのか?」
「えっと、どこかに書いてあった……ノンザッテスだって」
「聞いたことのない名だねぇ」

 ルリシアレヤがフェニカリデにおもむく直前、バチルデア王宮が雇い入れた魔術師が気になると言うサシーニャ、外遊の途中でバチルデアに足を延ばしたいが魔術師の事を知ったのは出発前日、バチルデア王宮との日程調整を任されたチュジャンエラだ。

「ジャジャが知らない魔術師なら、やっぱり大したことないんじゃないの? サシーニャさまが警戒し過ぎているとか」
大事だいじの前の小事しょうじ、万が一を考えて、確認しておくに越したことはないってことだろうさ」
「サシーニャさまって完璧主義だよね」
「本人は小心なだけって言ってるし、わたしもそう思うよ」
「あぁ、よく言ってるね、わたしは怖がりなんです、って。冗談はいい加減にって思っちゃう」

「ま、知ってるとは思うけど、サシーニャは子どものころは泣き虫だったんだ。そう簡単に変わりゃしないさね」
「でもさ、それを言ったらリオネンデさまは? 子どものころはリューデントさまの影に隠れて、いるかいないか判らないほどだったらしいし」

「リューデントは豪胆だったって聞くね……即位してからのリオネンデはリューデントが乗り移ったようだって」
「リューデントさまの代わりを務めるって気概でそうなったってサシーニャさまは言うけど、リオネンデさまを見てると、地をさらけ出してるだけに感じる」
「まぁ、リオネンデとリューデントは双子、リオネンデと同じ素地だったって事じゃないの?」
「リューデントさまに遠慮していたけど、亡くなられた事と必要に迫られたことで解放した、とか?」
「あぁ、それ、なんか納得する」
「子どものころはどうだか知らないけどさ、今のリオネンデさまは押しが強くて強情だし、なかなか自分を曲げそうにない」

「覚悟が違うんだってサシーニャが言ってた」
「覚悟……王としての覚悟?」
「それもあるだろうけどさ」
目混ぜするジャルスジャズナに『復讐か』と察するチュジャン、
「それを言ったらサシーニャさまだって覚悟を決めているでしょう?」
と不服そうだ。

「さぁねぇ、サシーニャがそう言ったってことだよ。自分じゃ覚悟がたりないって感じているのかもね?」
「あぁ、確かにサシーニャさまは煮え切らないところがあるかも、いろんなとこで」
「いろんなとこ?」
「例えば……女の事とかね」
クスッと笑ってチュジャンエラが立ちあがる。

「どう煮え切らないかは内緒。言ったらサシーニャさまに怒られる」
「だったら最初から口にするなよ。気になっちまうじゃないか――執務室に行くのかい?」
「うん。バチルデアからの返事をサシーニャさまに知らせなきゃなんないからね。カラス、行ってくれるかな?」
「ハギならサシーニャがどこにいたって見つけ出すだろうさ」
ハギはサシーニャの飼い鳥、鳥類最速・長距離飛行を誇るペレグリンハヤブサだ。

「問題は、ハギが僕の手紙を預かってくれるかってこと――ま、どうにかなるさ」
「そう言えばヌバタムとゲッコーはどうしてる?」
「サシーニャさまからお世話を頼まれたんで、鳥籠と寝床を僕の部屋に運んだんだけど……帰って来ないんだよね。どこに行ったんだか?」
「ま、アイツらなら、自分でどうにでもするだろうから心配ないさ」
「うん、サシーニャさまには言えないけど、僕も心配してない」
それじゃあね、と自分の執務室に向かうチュジャンエラだった――

 王館内後宮・王の寝室で長椅子に寝そべるようにして本を読むのはリオネンデだ。本音は禁書の絵本を持って来たかったが、持ち出せないのでは仕方ない。いつかスイテアが読んでいたような鳳凰ほうおう伝説が書かれたお伽噺とぎばなしを何冊か選んできた。

 スイテアは敷物に腰を降ろし、やはり本を読んでいる。新たに用意した文机に広がられた本は歴史書、真剣な眼差しで文字を追う。
「読む本が逆だな」
リオネンデが苦笑いした。

「あら、それって女が小難こむずかしい本を読んでなんになるって言われた気分がするわ」
「そんなつもりはないって」
「リオネンデさまは、どこかで女を馬鹿にしてますよね?」
「そんな事はないぞ」
「本当かしら?」

 身体を起こしたリオネンデが怒ったように言った。
「俺は男も女も関係なく、人それぞれだと考えている。その人にはその人の役割があり、それは他者が軽んじていいものじゃない」
「それではなんで読む本が逆だなんておっしゃいますか?」
「それは俺が国王だからだ。お伽噺を読む暇があれば歴史書を読めと言われそうだ」
「なるほど、わたしにお伽噺を読めと言ったわけではないとおっしゃりたいのね?」
「まぁ、そんなところだが……まだ不満そうだな?」
「なんで国王はお伽噺を読んではいけないのかしら、と思っただけです」
「いや、いけないとは思っちゃいないが――なんだ、やけに機嫌が悪いな」

 リオネンデを無視したスイテアがわんに冷め始めた茶を注ぎ足す。、茶請けは栗だ。
「予定通りジッチモンデにはついたのかしら?」
長椅子に横たわり直したリオネンデが、
「昨夜の内についているはずだ」
と本を眺める。

「ジロチーノモ王ってくせの強い人なんですって?」
「いろいろ聞くがどうせ噂だ。本当のところは会ってみなくちゃ判らんさ――ジロチーノモのに興味があるならサシーニャが帰ってきたら聞いてみるといい」
「美しいもの、珍しいものがお好きだとか?」
「あぁ、噂だとそうらしい。ジロチーノモと言えば、って感じだ」
「中でも若い男には目がないとか? ジロチーノモに呼ばれて気に入られた男は家族のもとに帰って来ないって聞いたわ。サシーニャさまが心配ではないのですか?」
「サシーニャが美しくて珍しいからか?」
「珍しいだなんて……」
「いや、そう思っても仕方ない。サシーニャの髪の色とか、サシーニャ以外で見たことがないんだから」

 リオネンデがチラリとスイテアを見て苦笑する。そして面倒そうにまたも体を起こす。
「ジロチーノモは前王にヘンな育て方をされているんだ」
「ヘンな育て方?」
「生まれてからずっと王宮の奥に閉じ込められて、他者との接触を禁じられていた」
「なに、それ?」
「父王の偏愛が原因って言われているが事実はどうだかな――で、王位を継いだのは十二の時、六十八で病死した父を継いだ」
「十二に六十八? ずいぶん遅い子だったのね」
「ちなみに母王妃は四十五での初産でジロチーノモを産んだ。出産に耐え切れず落命したらしい――重臣も含め、ジロチーノモの存在は知っていたが、父王が病の床に伏せるようになって初めてジロチーノモの顔を見た。病床の父親に付き添ったからだ」

「それにしても十二で王位を継ぐって大変だったでしょうね」
「が、ジロチーノモは暫く政治に携わっていない。父王が身罷みまかり一連の儀式、そして即位……その後また王宮に引き籠った」
「他人との接触に慣れていなかった?」
「うーーん。どうだかな。自分から引き籠って人を遠ざけたってのが通説だけど、摂政がジロチーノモを追いやったって噂もある」

「摂政?」
「幼少の君主に代わってまつりごとを取り仕切るヤツを摂政って言う。大臣よりも上の立場と思えばいい」
「それじゃあ、ジロチーノモさまは今でも王宮に引き籠ってらっしゃるの?」
「いいや、摂政を勤めた男はそうなって欲しかっただろうがジロチーノモは立ち上がった。十六の時だ――摂政は国政を私物化していた。己の縁者で要職を固め、あろうことか国庫まで使い込んだ」

「まぁ! とんでもないことを――誰がそんな人を摂政にしたの?」
「亡き王の遺言らしい。摂政はジロチーノモの母の兄、ジロチーノモを大事にすると考えたんだろうが飛んだ見込み違いだ」
「で、立ち上がったってことはその摂政を退けて、政権を取り戻した?」
「どうやって? ジロチーノモがこれからは王である自分が全てを取り仕切ると言い出したところで、摂政だった男が簡単に権力を手放すか?」

「それもそうね。じゃあ、ジロチーノモはどうしたの?」
「ある日、十数人の兵士を引き連れていきなり摂政を襲ったんだと」
「まぁ、乱暴な……でもそうするしかなかったんでしょうね」
「その十数名の兵士をジロチーノモはどうやって集めたのか、それが判らない――摂政は軍部を含めて国を掌握していた。一方ジロチーノモは王宮に閉じこもっていた」
「だとしたら?」

「それが判らない。サシーニャはジロチーノモが顔を隠していることと関連しているんじゃないかと考えている」
「顔を隠しているって?」
「なんでもジロチーノモは政権を奪回し表に出るようになってからも面紗ベールで顔を隠して誰にも見せないんだそうだ」
「どう関連するのでしょう?」
「多分、後宮に引き籠ってなどいないのだろうってサシーニャは言ってた。顔を知られていないのだから、どこに行っても王と知られることはない。そうやって同調者を集めたのではないか?」
「なるほど……」

「ジロチーノモは若い男が好きで、よく王宮に呼び寄せる。呼ばれた男はどこに行ったか判らなくなる、なんて言われているが、そう考えるとと思えないか?」
「男好きを装って味方を集めている?」
「ま、本当のところは判らないさ。噂通り、食っちまって帰さないのかもしれんしな――ジロチーノモにとらえられてしまうサシーニャじゃない。心配はいらないさ」
愉快そうに笑うリオネンデ、スイテアは笑うどころではなかった。
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