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13 疑惑
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何の意味があるのだろうか? 安原はずっと首を傾けている。
そんな安原の姿をちらちらと目で追う。誰も寄せ付けない空気を纏っているのに、三十度ほど傾げた首は注目に値するもので、もう小一時間は安原の首を観察していた。
子供じゃあるまいし、寝違えてあんな姿になるものだろうか? それか何か他に別の理由が? 気になって山ほど積み上げられた雑務にも手が付けられない。
「安原さん、首大丈夫ですか?」
「ああ、何がだ?」
不自然に傾いたままの首を心配したが、返事をした安原の首は真っ直ぐと伸びていた。その姿を見せられれば、自己完結するしかない。
「ずっと首が傾いていたんで、何でもないなら良かったです」
「ああ、だから何が良かったんだ?」
さっきまで不自然に傾いていた、首への興味など安原にはないようだった。開いたパソコンから目を上げない安原。何のデータを見ているのか覗き見ようとしたが、それはそれで面倒な事になる事が分かっている。
「小林が勤めていた三鷹の塾の顧客データだよ」
「そうなんですね」
関心はあるが面倒な事になりそうな気がして、軽く受け流してみる。だが安原の耳にはそんな声は届いていない。
「……さすがに三鷹の進学塾だからな、小林が殺された新宿に住んでいるとか、新宿の学校に通っているって言う子供はいなかったんだが、親の中で一人、新宿の小学校で教師をしているって奴がいるんだ。偶然かもしれないけど、小林も小学校で教師していた訳だし、何かあるかもしれない」
「えっ? それって」
咄嗟の言葉が口を突く。
「おいおい、何だ? 何か知っているのか?」
頭の中で数日前の由之の言葉を探る。
「いや、あの……」
「なんだよ、何か知っているなら言えよ」
「気にしないでください。ただ知り合いに小学校の先生がいて、どこの小学校かも知らないです。最近その話を聞いたばかりで」
パソコンから目を上げた安原がギロリとした目で睨みつけてくる。一歩後退りしそうなったが、ぐっと堪え意味のない笑みを作ってみせる。だが鮟鱇の目からは逃げる事が出来ないらしい。
「何て奴だ? そのお前の知り合い」
逃げきれない諦めに、弱腰な体勢で小さく息を吐いた。
もしここで何か繋がってしまえば、もうどこにも逃げる事が出来ないような。何か大きなものに何故か追われているような気になり、思わず腰を引いた。だが安原の目は獲物を捕らえたままだ。
「三芳貴久って言う同級生です。この間久々に会ったんですけど、関係のない話です」
大きく息を吐いて、パソコンにもう一度目を落とす安原。画面に羅列したデータを指差し、二度目、大きく息を吐いている。
「ビンゴだ! その三芳だよ。三芳貴久。新宿東小学校の教員だ。航太って言う息子が小林の勤める塾に通っている。……何か繋がりがありそうだな」
安原の推測に体がピクンと跳ねた。一つ一つ填められていくパーツは何を象っているのだろう。まだ何も全容は見えていないのに、自分がパーツとして填められていく過程が容易く想像できる。
安原の目から鋭さが消える。
——もし逃げ出すなら今だ。
そんな考えがふと掠めたが、足が動きだす事はない。誰が小林を殺したのだろうか。真相を知りたいと思うのは、やはり自分が刑事だからだろうか。それとも他に何か理由があるのだろうか。
「安原さん。俺にも何か手伝わせて下さいよ。」
刑事としての当たり前の言動のはずだった。だが安原の答えは意外なものだった。
「お前に手伝ってもらう事はないな」
安原の態度に呆気を取られる。どうしてですか? そう口にしてもよかったが、投げそうになった言葉を飲み込む。貴久同様に、自分も安原に疑われている一人である事を思い出す。
「そんな役には立たないかもですけど、何かあったらいつでも言って下さい」
何かを悟られる訳にはいかない。何故かそんな考えに囚われ小さな笑みを作ってみせた。
「……それよりお前、この間、二丁目で飲んだんだって?」
「えっ? ああ。何でそれを知っているんですか?」
安原の口から二丁目と言う固有名詞が出た事に少し不安になった。新宿東署の管轄ではあるが、歌舞伎町や三丁目で飲むのとは意味が違ってくる。軽蔑に似たニュアンスを含む者もいる。もし自分に向けられる軽蔑があるのであれば、早めに拭い去るのが得策だ。
「……同級生がやっている店です」
「同級生ねえ。さっきから同級生ばっかりだな」
言い訳ではなく事実だ。嘘を付いている事も、隠している事も何もない。聞かれた事に対し素直に答えているだけだ。だが安原の態度には何か隠されている。真っすぐでない視線が、値踏みをするようにこちらを向いている。幾ら疑われようと疚しい所などないが、そんな自信さえ揺らいでいきそうになる。何か大事な事を忘れているのだろうか。
「その同級生の……」
「何ですか?」
「その同級生、三芳貴久にコンタクト取れるか?」
「勤め先が分かっているんですから、俺がコンタクト取る必要もないでしょう」
嫌味な言い方になっている事は分かっていた。だが安原は何も気にしない様子で再びパソコンに目を落としている。安原から疑われる一人であるなら、協力する必要はない。課長や係長に指示をされた訳でもない。小林の事件に首を突っ込む理由は何一つない。
処理しなければならない雑務は山積みだ。使い勝手のいい下っ端を大きな山に当ててしまえば、誰が山積みの下らない事件を片付けるのだろう。そんな当たり前の理由がある以上、簡単に身を引く事が出来る。
何か大きな力が作用して、小林の事件に引き寄せられている事は分かる。だが別の力がそれを拒んでいる。今、別の力を発しているのは安原だが、対抗できる術は持っていない。
その日の夜、二丁目界隈のバーを検索できるホームページを漁ってみた。突然の再会だった事もあり、由之の連絡先は聞いていなかった。ましてや泥酔しずっと突っ伏していた貴久に至っては、連絡先を聞くどころかまともに顔すら見ていない。
不衛生な廊下に目を奪われ、看板すら見ていなかった自分に今更ながら呆れてしまう。
幾つかのサイトにアクセスしてはみたが、それらしい店に辿り着く事はなかった。検索を試みた自分にさえ嫌になりスマホを放り投げる。
——俺には関係のない事だ。
もし貴久が小林の事件に関係があったとしても、はっきり安原に言われたのだから、首を突っ込む訳にはいかない。それに同級生を懐かしんで連絡を取りたいなんて気持ちは微塵も湧いて来ない。
それでも何故か足は二丁目へと向かっていた。署から自宅までは五分とかからない。何かコンビニで腹に落ちる物を買い漁ったとしても十分とかからない。それなのに何故か足は、コンビニを過ぎ、自宅のあるマンションを過ぎ、靖国通りを渡り、二丁目へと向かっていた。
夏樹に連れられて行ったビルは覚えている。店の名前など分からなくても、あの不衛生な廊下を見れば思い出せるかもしれない。ビルを探し出し二階へと上がる。雑多なビルの雰囲気は記憶にあるものだが、何か違うような気がする。今にも崩れそうな酒瓶が突っ込まれたダンボールを避けながら三階へと足を進める。確信がある訳ではないが、この階でないどこかを想像する事は出来ない。
灯りの点いている看板がまだ一つもない薄闇にふと安原の顔が浮かんだ。もし捜査に加われたならこの行動も意味を持つだろうが、弾かれた身とあっては刑事と名乗るのも憚れるような気になる。
「あれ、晴人?」
薄暗い階段の下、見上げる顔は由之だった。返す言葉を探しきれない間に、一歩、また一歩と由之が階段を上がってくる。
「あ、ども」
何とも気の抜けた返事に、由之の顔が困惑する。
「ごめんね。まだ開店前なの。これから準備してだから、あと三十分くらいかな」
「ああ、ごめん。また出直すよ」
「あ、ちょっと待って」
由之に呼び止められ廊下に立ちすくむ。由之は鍵を取り出しドアを開けている。
「はい、これ。名刺。この間来てくれた時、渡し忘れていたよね。次から早い時間に来るときは電話して」
手渡された名刺に目を落とす。
——小林を殺したのは、俺ら四人の中の誰かなんじゃないのか?
夏樹の言葉を思い出していた。由之なのか、貴久なのか、それとも夏樹なのか。受け取った名刺にシャツのポケットに滑らせ、二丁目を後にする。
そんな安原の姿をちらちらと目で追う。誰も寄せ付けない空気を纏っているのに、三十度ほど傾げた首は注目に値するもので、もう小一時間は安原の首を観察していた。
子供じゃあるまいし、寝違えてあんな姿になるものだろうか? それか何か他に別の理由が? 気になって山ほど積み上げられた雑務にも手が付けられない。
「安原さん、首大丈夫ですか?」
「ああ、何がだ?」
不自然に傾いたままの首を心配したが、返事をした安原の首は真っ直ぐと伸びていた。その姿を見せられれば、自己完結するしかない。
「ずっと首が傾いていたんで、何でもないなら良かったです」
「ああ、だから何が良かったんだ?」
さっきまで不自然に傾いていた、首への興味など安原にはないようだった。開いたパソコンから目を上げない安原。何のデータを見ているのか覗き見ようとしたが、それはそれで面倒な事になる事が分かっている。
「小林が勤めていた三鷹の塾の顧客データだよ」
「そうなんですね」
関心はあるが面倒な事になりそうな気がして、軽く受け流してみる。だが安原の耳にはそんな声は届いていない。
「……さすがに三鷹の進学塾だからな、小林が殺された新宿に住んでいるとか、新宿の学校に通っているって言う子供はいなかったんだが、親の中で一人、新宿の小学校で教師をしているって奴がいるんだ。偶然かもしれないけど、小林も小学校で教師していた訳だし、何かあるかもしれない」
「えっ? それって」
咄嗟の言葉が口を突く。
「おいおい、何だ? 何か知っているのか?」
頭の中で数日前の由之の言葉を探る。
「いや、あの……」
「なんだよ、何か知っているなら言えよ」
「気にしないでください。ただ知り合いに小学校の先生がいて、どこの小学校かも知らないです。最近その話を聞いたばかりで」
パソコンから目を上げた安原がギロリとした目で睨みつけてくる。一歩後退りしそうなったが、ぐっと堪え意味のない笑みを作ってみせる。だが鮟鱇の目からは逃げる事が出来ないらしい。
「何て奴だ? そのお前の知り合い」
逃げきれない諦めに、弱腰な体勢で小さく息を吐いた。
もしここで何か繋がってしまえば、もうどこにも逃げる事が出来ないような。何か大きなものに何故か追われているような気になり、思わず腰を引いた。だが安原の目は獲物を捕らえたままだ。
「三芳貴久って言う同級生です。この間久々に会ったんですけど、関係のない話です」
大きく息を吐いて、パソコンにもう一度目を落とす安原。画面に羅列したデータを指差し、二度目、大きく息を吐いている。
「ビンゴだ! その三芳だよ。三芳貴久。新宿東小学校の教員だ。航太って言う息子が小林の勤める塾に通っている。……何か繋がりがありそうだな」
安原の推測に体がピクンと跳ねた。一つ一つ填められていくパーツは何を象っているのだろう。まだ何も全容は見えていないのに、自分がパーツとして填められていく過程が容易く想像できる。
安原の目から鋭さが消える。
——もし逃げ出すなら今だ。
そんな考えがふと掠めたが、足が動きだす事はない。誰が小林を殺したのだろうか。真相を知りたいと思うのは、やはり自分が刑事だからだろうか。それとも他に何か理由があるのだろうか。
「安原さん。俺にも何か手伝わせて下さいよ。」
刑事としての当たり前の言動のはずだった。だが安原の答えは意外なものだった。
「お前に手伝ってもらう事はないな」
安原の態度に呆気を取られる。どうしてですか? そう口にしてもよかったが、投げそうになった言葉を飲み込む。貴久同様に、自分も安原に疑われている一人である事を思い出す。
「そんな役には立たないかもですけど、何かあったらいつでも言って下さい」
何かを悟られる訳にはいかない。何故かそんな考えに囚われ小さな笑みを作ってみせた。
「……それよりお前、この間、二丁目で飲んだんだって?」
「えっ? ああ。何でそれを知っているんですか?」
安原の口から二丁目と言う固有名詞が出た事に少し不安になった。新宿東署の管轄ではあるが、歌舞伎町や三丁目で飲むのとは意味が違ってくる。軽蔑に似たニュアンスを含む者もいる。もし自分に向けられる軽蔑があるのであれば、早めに拭い去るのが得策だ。
「……同級生がやっている店です」
「同級生ねえ。さっきから同級生ばっかりだな」
言い訳ではなく事実だ。嘘を付いている事も、隠している事も何もない。聞かれた事に対し素直に答えているだけだ。だが安原の態度には何か隠されている。真っすぐでない視線が、値踏みをするようにこちらを向いている。幾ら疑われようと疚しい所などないが、そんな自信さえ揺らいでいきそうになる。何か大事な事を忘れているのだろうか。
「その同級生の……」
「何ですか?」
「その同級生、三芳貴久にコンタクト取れるか?」
「勤め先が分かっているんですから、俺がコンタクト取る必要もないでしょう」
嫌味な言い方になっている事は分かっていた。だが安原は何も気にしない様子で再びパソコンに目を落としている。安原から疑われる一人であるなら、協力する必要はない。課長や係長に指示をされた訳でもない。小林の事件に首を突っ込む理由は何一つない。
処理しなければならない雑務は山積みだ。使い勝手のいい下っ端を大きな山に当ててしまえば、誰が山積みの下らない事件を片付けるのだろう。そんな当たり前の理由がある以上、簡単に身を引く事が出来る。
何か大きな力が作用して、小林の事件に引き寄せられている事は分かる。だが別の力がそれを拒んでいる。今、別の力を発しているのは安原だが、対抗できる術は持っていない。
その日の夜、二丁目界隈のバーを検索できるホームページを漁ってみた。突然の再会だった事もあり、由之の連絡先は聞いていなかった。ましてや泥酔しずっと突っ伏していた貴久に至っては、連絡先を聞くどころかまともに顔すら見ていない。
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——俺には関係のない事だ。
もし貴久が小林の事件に関係があったとしても、はっきり安原に言われたのだから、首を突っ込む訳にはいかない。それに同級生を懐かしんで連絡を取りたいなんて気持ちは微塵も湧いて来ない。
それでも何故か足は二丁目へと向かっていた。署から自宅までは五分とかからない。何かコンビニで腹に落ちる物を買い漁ったとしても十分とかからない。それなのに何故か足は、コンビニを過ぎ、自宅のあるマンションを過ぎ、靖国通りを渡り、二丁目へと向かっていた。
夏樹に連れられて行ったビルは覚えている。店の名前など分からなくても、あの不衛生な廊下を見れば思い出せるかもしれない。ビルを探し出し二階へと上がる。雑多なビルの雰囲気は記憶にあるものだが、何か違うような気がする。今にも崩れそうな酒瓶が突っ込まれたダンボールを避けながら三階へと足を進める。確信がある訳ではないが、この階でないどこかを想像する事は出来ない。
灯りの点いている看板がまだ一つもない薄闇にふと安原の顔が浮かんだ。もし捜査に加われたならこの行動も意味を持つだろうが、弾かれた身とあっては刑事と名乗るのも憚れるような気になる。
「あれ、晴人?」
薄暗い階段の下、見上げる顔は由之だった。返す言葉を探しきれない間に、一歩、また一歩と由之が階段を上がってくる。
「あ、ども」
何とも気の抜けた返事に、由之の顔が困惑する。
「ごめんね。まだ開店前なの。これから準備してだから、あと三十分くらいかな」
「ああ、ごめん。また出直すよ」
「あ、ちょっと待って」
由之に呼び止められ廊下に立ちすくむ。由之は鍵を取り出しドアを開けている。
「はい、これ。名刺。この間来てくれた時、渡し忘れていたよね。次から早い時間に来るときは電話して」
手渡された名刺に目を落とす。
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