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第六章 孫を追いかけ王都に到着で御座います。
6-8 じぃじにはお灸で御座います。
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「探偵さんよぅ。ばぁばの事を頼んだぜよ」
大好きな任侠映画の真似で御座いましょうか? じぃじがコートの襟を立てて、背中を向けております。
「あ、はい。光江さんの事はお任せください。それより康夫さん。森までの道は大丈夫でしょうか? 覚えていらっしゃいますか?」
「何じゃ? 森とは何の事じゃ?」
「この世界に最初に来た時の、……あの森です。パノスの町の郊外の。そうですね、この王都からなら、10日くらいですね」
「ん? どう言う意味じゃ? わしはちょっくら元の世界に戻るだけで、森に用事はないんじゃが」
「ええ。元の世界と繋がっているのは、あの森ですよ。なので、あの森まで行かないと、元の世界には戻れません。……康夫さんも承知の上だったのでは?」
探偵さんが不思議そうな顔で、じぃじを見ておいでです。私達の元の世界と繋がっているのは、あの森だけだと言う事は、考えれば分かる事でした。もし他の場所……例えばこの王都などと繋がっているのであれば、わざわざあんな辺鄙な場所に初めの一歩を下ろすはずは御座いませんでした。
「……ぬぬっ。そうなのか? 探偵さんが元の世界に、ぴゅーんと移動させてくれるんじゃないのかぃ?」
「いえ。私にそんな能力はありません」
じぃじが膝を落とし、しゃがみ込んでしまいました。……1人で最初の森まで戻る気力も勇気もない事は分かっておりますが、ここで少し反省していただこうと思います。大切な孫より、ゴルフコンペに重きを置いたんですから、お灸据えないといけません。
「……じぃじ。10日はかかるようですので、急いでお戻りください。急がないと練習が出来なくなりますよ」
「いや、でも……」
「でも? 何でしょう? ……優勝を約束していただいたじゃありませんか。急いで戻って、練習を沢山して、どうぞ優勝して戻ってきてください」
「いた、でも……それじゃぁ、ご飯が……」
「お食事は探偵さんにフードデリバリーの注文の仕方を教えていただいたんですよね? それにお風呂の沸かし方が分からなくても、ゴルフ場で入るから大丈夫だと、おっしゃってましたし。洗濯もクリーニング屋に電話が出来るから大丈夫だと、おっしゃっていたじゃありませんか?」
「いや、そうじゃが。でも……」
「じぃじなら大丈夫で御座いますよ。さあ、急いで出発してくださいませ」
「いや、でも。わしが行ったら、ばぁばも寂しいじゃろ?」
「ええ。もちろん寂しいですが、しばしの間は我慢致します。ですので、どうぞ安心して、出発してくださいませ」
「いや、でも……」
「じぃじ。さっきからでも、でも。何で御座いましょうか? ゴルフコンペのために元の世界へ戻ると言い出したのは、じぃじで御座いますよ」
「そうじゃが、でも……」
「また、でもで御座いますか? どうされるのですか? やはり元の世界へ戻るのはやめられますか?」
「そうじゃのぅ。ばぁばも寂しがっておるんさざゃろ? それなら、ばぁばのためにも、やめておかんとのぅ」
「私を出汁にするのは、おやめください。……元の世界に戻るには、森まで10日かけて帰るのを知らなかった。10日も1人で歩いて戻るのは不安だ。だから元の世界に戻るのは諦める。……素直にそうおっしゃってください」
「そうじゃ、そうじゃ。ばぁばの言う通りじゃ」
「……分かりました。じぃじの意志で御座います。戻らなくて良いのなら、私は何も申しません。ですが雷人が見つかるまでは、元の世界へ戻るなど言い出さないでください」
「分かっておる」
しゃがんだままのじぃじは、肩まで落としておりますが、少しは反省していただかないとなりません。私達が優先すべきは、孫の雷人で御座います。ゴルフコンペなど、二の次、三の次。それ以下で御座います。
「……あのぅ。結論は出ましたか?」
「ええ。ご心配をかけまして申し訳御座いません」
傍目から……探偵さんからは、夫婦喧嘩に見えていたかもしれませんね。少し恥ずかしい御座いますが、これで何も心配する事なく、雷人の情報集めに没頭できます。
大好きな任侠映画の真似で御座いましょうか? じぃじがコートの襟を立てて、背中を向けております。
「あ、はい。光江さんの事はお任せください。それより康夫さん。森までの道は大丈夫でしょうか? 覚えていらっしゃいますか?」
「何じゃ? 森とは何の事じゃ?」
「この世界に最初に来た時の、……あの森です。パノスの町の郊外の。そうですね、この王都からなら、10日くらいですね」
「ん? どう言う意味じゃ? わしはちょっくら元の世界に戻るだけで、森に用事はないんじゃが」
「ええ。元の世界と繋がっているのは、あの森ですよ。なので、あの森まで行かないと、元の世界には戻れません。……康夫さんも承知の上だったのでは?」
探偵さんが不思議そうな顔で、じぃじを見ておいでです。私達の元の世界と繋がっているのは、あの森だけだと言う事は、考えれば分かる事でした。もし他の場所……例えばこの王都などと繋がっているのであれば、わざわざあんな辺鄙な場所に初めの一歩を下ろすはずは御座いませんでした。
「……ぬぬっ。そうなのか? 探偵さんが元の世界に、ぴゅーんと移動させてくれるんじゃないのかぃ?」
「いえ。私にそんな能力はありません」
じぃじが膝を落とし、しゃがみ込んでしまいました。……1人で最初の森まで戻る気力も勇気もない事は分かっておりますが、ここで少し反省していただこうと思います。大切な孫より、ゴルフコンペに重きを置いたんですから、お灸据えないといけません。
「……じぃじ。10日はかかるようですので、急いでお戻りください。急がないと練習が出来なくなりますよ」
「いや、でも……」
「でも? 何でしょう? ……優勝を約束していただいたじゃありませんか。急いで戻って、練習を沢山して、どうぞ優勝して戻ってきてください」
「いた、でも……それじゃぁ、ご飯が……」
「お食事は探偵さんにフードデリバリーの注文の仕方を教えていただいたんですよね? それにお風呂の沸かし方が分からなくても、ゴルフ場で入るから大丈夫だと、おっしゃってましたし。洗濯もクリーニング屋に電話が出来るから大丈夫だと、おっしゃっていたじゃありませんか?」
「いや、そうじゃが。でも……」
「じぃじなら大丈夫で御座いますよ。さあ、急いで出発してくださいませ」
「いや、でも。わしが行ったら、ばぁばも寂しいじゃろ?」
「ええ。もちろん寂しいですが、しばしの間は我慢致します。ですので、どうぞ安心して、出発してくださいませ」
「いや、でも……」
「じぃじ。さっきからでも、でも。何で御座いましょうか? ゴルフコンペのために元の世界へ戻ると言い出したのは、じぃじで御座いますよ」
「そうじゃが、でも……」
「また、でもで御座いますか? どうされるのですか? やはり元の世界へ戻るのはやめられますか?」
「そうじゃのぅ。ばぁばも寂しがっておるんさざゃろ? それなら、ばぁばのためにも、やめておかんとのぅ」
「私を出汁にするのは、おやめください。……元の世界に戻るには、森まで10日かけて帰るのを知らなかった。10日も1人で歩いて戻るのは不安だ。だから元の世界に戻るのは諦める。……素直にそうおっしゃってください」
「そうじゃ、そうじゃ。ばぁばの言う通りじゃ」
「……分かりました。じぃじの意志で御座います。戻らなくて良いのなら、私は何も申しません。ですが雷人が見つかるまでは、元の世界へ戻るなど言い出さないでください」
「分かっておる」
しゃがんだままのじぃじは、肩まで落としておりますが、少しは反省していただかないとなりません。私達が優先すべきは、孫の雷人で御座います。ゴルフコンペなど、二の次、三の次。それ以下で御座います。
「……あのぅ。結論は出ましたか?」
「ええ。ご心配をかけまして申し訳御座いません」
傍目から……探偵さんからは、夫婦喧嘩に見えていたかもしれませんね。少し恥ずかしい御座いますが、これで何も心配する事なく、雷人の情報集めに没頭できます。
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