追放されたJR職員ですが、異世界で救援列車を無双運行して英雄になりました

K2画家・唯

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第3章 リリア来訪と迂回線の奇跡

第3章 リリア来訪と迂回線の奇跡

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夜が明けかけた頃、勇樹は村外れで機関車の整備を行っていた。

魔獣の襲撃から生還した屋敷の人々を三度に渡って搬送し、ようやく全員の避難が完了したのは深夜のことだった。現在、機関車は村から少し離れた場所に停車している。村人たちが車輪の音に慣れるまで、あまり近くに留めておかない方がいいと勇樹が判断したからだ。

ボイラーの圧力を確認し、水位計をチェックしながら、勇樹は昨夜の出来事を振り返った。【鉄道召喚】という謎の力で機関車を呼び出し、実際に人命救助を成し遂げた。JR九州での経験が、この異世界でも活かせることが証明された。

だが、まだ分からないことが多すぎる。この力はどこから来るのか? 他にも使える技術があるのか? そして——

「すごい」

背後から聞こえた声に、勇樹は振り返った。

機関車から十メートルほど離れた場所に、一人の少女が立っている。年の頃は十六、七歳だろうか。長い銀髪を三つ編みにして後ろで束ね、質素だが上品な青い衣服を纏っている。特徴的なのはその耳で、人間よりもやや尖っており——

「エルフ?」勇樹は思わず呟いた。

「ええ、そうです」少女は微笑んだ。「リリア・スチームハートと申します。あなたが、昨夜の救援列車を動かした方ですね?」

スチームハート——蒸気心臓とでも訳すべき名前だろうか。偶然にしては、あまりにも機関車に関連した姓だった。

「野中勇樹です」勇樹は慌てて頭を下げた。「どうして俺のことを?」

「噂は早いんです」リリアは機関車に近づきながら答えた。「魔法を使わない落ちこぼれが、謎の機械で人を救ったって。最初は作り話だと思ったんですけど——」

彼女は機関車の車体に手を置いた。鉄の感触を確かめるように、丁寧に撫でている。

「本物ね。これが、蒸気機関車」

「ご存知なんですか?」勇樹は驚いた。

「文献で読んだことがあります。古代の遺跡調査で、似たような構造の機械の残骸を見つけたことがあって」リリアの瞳が輝いた。「でも、実際に動くものを見るのは初めて」

リリアは機関車の周囲を歩き回り、あらゆる角度から観察している。運転席、ボイラー、車輪、連結器——まるで学者のような熱心さだった。

「どうやって動かすんですか? 魔法陣は見当たらないし、魔力の気配も全くない」

「石炭を燃やして水を沸騰させ、その蒸気で車輪を回転させるんです」勇樹は説明しながら、炭水車を指差した。「燃料は石炭、水は給水塔から補給します」

「蒸気だけで? 魔法は一切使わずに?」

「はい。物理法則だけで動きます」

リリアは感嘆の声を上げた。

「素晴らしい——こんなにシンプルで、こんなに確実な動力源があったなんて」

勇樹は意外に思った。昨日の貴族たちとは全く違う反応だ。機械を軽視するどころか、むしろ魅力を感じているようだった。

「エルフの方も、機械に興味を?」

「私は特別なんです」リリアは苦笑いを浮かべた。「同族からは変わり者扱いされています。魔法万能の世界で、機械に夢中になる愚か者だって」

その表情に、勇樹は親近感を覚えた。自分も「落ちこぼれ」として軽視されている。境遇は似たようなものかもしれない。

「でも、昨夜のことを聞いて確信しました」リリアは続けた。「機械にも、魔法に劣らない力がある。いえ、もしかしたら魔法以上の可能性があるかもしれない」

「魔法以上?」

「ええ」リリアは機関車の煙突を見上げた。「魔法は使える人が限られています。才能のない人は、一生魔法を使えません。でも機械は——誰でも使えるでしょう?」

勇樹は頷いた。JR九州でも、運転士になるのに魔法的な才能は必要なかった。適切な訓練と知識があれば、誰でも機関車を運転できた。

「それに」リリアは車輪に手を触れた。「魔法は魔力を消耗します。高位魔法ほど体力を奪われる。でも機械は、燃料さえあれば何時間でも動き続ける」

「よく気づかれましたね」

「私、機械の研究をしているんです」リリアは恥ずかしそうに言った。「古代遺跡から発掘した機械部品を分析したり、独自に改良を加えたり——でも、実際に動く機械を見たのは初めてで」

リリアは胸元から小さな金属製の装置を取り出した。手のひらほどの大きさで、複雑な歯車とバネが組み合わさった精密機械のようだった。

「これ、私の作品なんです。時計の一種で——」

装置の蓋を開けると、中から微かな蒸気が立ち上った。

「蒸気を使って歯車を回し、時間を刻むんです。魔法は一切使っていません」

勇樹は感心した。この異世界で、魔法に頼らず機械技術を発達させようとしている人がいたとは。

「すごいですね。精密機械の技術もお持ちとは」

「まだまだです」リリアは装置をしまった。「でも、いつか本格的な機械を作ってみたいんです。あなたのような——」

その時、遠くから地鳴りのような音が聞こえてきた。

最初は雷鳴かと思ったが、音は持続している。しかも、次第に大きくなってきた。

「何でしょう?」リリアが不安そうに呟いた。

勇樹は音の方向を見つめた。村の向こう、東の山際から音が聞こえてくる。そして——

「あっ!」リリアが指差した。

山の斜面で、巨大な岩塊が崩れ落ちるのが見えた。まるでスローモーション映像のように、岩石と土砂が雪崩を打って麓へと落下していく。

「崖崩れだ!」勇樹が叫んだ。

崩落は山の中腹で発生しており、規模は相当なものだった。大量の土砂と岩石が麓の街道を完全に塞いでしまうだろう。

「大変です!」リリアが慌てて言った。「あの街道は、隣村への避難路なんです! 昨夜の魔獣襲撃で、多くの人があちら方面に避難していたはず——」

勇樹の表情が青ざめた。崖崩れで街道が塞がれれば、避難民は立ち往生してしまう。しかも、崩落はまだ完全に止まっていない。二次災害の危険もある。

「急いで現場に向かいましょう」勇樹は機関車の運転席に駆け寄った。「機関車なら、すぐに現場に着けます」

「でも、あちらには線路がないのでは?」

「大丈夫です」勇樹は操縦桿を握った。「何とかします」

実際には、勇樹にも確信があるわけではなかった。だが、【鉄道召喚】ができたということは、他にも何かできる可能性がある。困っている人がいる以上、試してみる価値はあった。

「乗ってください」勇樹はリリアに手を差し伸べた。

「え? 私も?」

「あなたの機械知識が必要です。お願いします」

リリアは少し迷ったが、勇樹の手を取って運転席に上がった。初めて間近で見る機関車の操縦盤に、彼女の目は釘付けになった。

「これが操縦装置——計器がたくさん——」

「出発します」勇樹は汽笛を鳴らした。「つかまっていてください」

機関車は村の外れから東に向かって走り出した。既存の線路は村の周辺にしかないが、勇樹は迷わず直進した。そして——

線路が現れた。

機関車の進行方向に、真新しい線路が自動的に敷設されていく。枕木、レール、砂利——全てが勇樹の意思に従って地面に現れる。

「これは——」リリアが息を呑んだ。

「【路線建設】」勇樹は自分でも驚きながら答えた。「さっき初めて知ったスキルです」

スキル名が頭の中に浮かんだのは、実際に発動した瞬間だった。【鉄道召喚】に続く、新たな能力。勇樹の意志によって、必要な場所に必要な線路を敷設できる力。

機関車は新設された線路の上を快調に走った。田園地帯を抜け、小さな川を鉄橋で渡り、丘陵地帯を進んでいく。リリアは窓から外を見ながら、興奮を隠しきれないでいた。

「線路が、勝手に現れていく——こんなことが可能なんて——」

「俺にもよく分からないんです」勇樹は正直に答えた。「ただ、人を救いたいと思ったら、力が湧いてきて」

「人を救いたいという意志が、能力の源泉なんですね」リリアは感心したように頷いた。「素晴らしい動機です」

崩落現場が近づいてきた。煙と土埃が舞い上がり、視界が悪くなっている。地鳴りはさらに激しくなり、機関車も微かに震動を感じるほどだった。

「あそこです!」リリアが指差した。

崩落現場の手前で、十数人の人影が立ち往生しているのが見えた。街道は完全に土砂で塞がれ、迂回路もない。人々は途方に暮れている様子だった。

「助けなければ」勇樹は機関車を減速させた。

だが、問題があった。崩落現場は線路から百メートルほど離れており、しかも間には深い谷がある。普通に線路を延長しても、避難民の元にはたどり着けない。

「どうしましょう?」リリアが尋ねた。

勇樹は地形を見つめた。谷を迂回して線路を敷設するには、大幅に遠回りする必要がある。時間がかかりすぎる。

「あの谷を越えるしかありません」勇樹は決意した。「【路線建設】で、橋を架けます」

「橋? でも、そんな大規模な工事を一瞬で?」

「やってみます」

勇樹は【路線建設】のスキルを最大まで集中した。頭の中で橋の設計図を描き、必要な材料と構造を思い浮かべる。JR九州で見た数々の鉄橋の記憶が蘇り、それらが設計の参考になった。

光が勇樹の手から放たれ、谷に向かって延びていく。そして——

巨大な鉄橋が出現した。

鋼鉄のトラス構造で組み上げられた頑丈な橋梁が、瞬く間に谷を跨いで建設された。長さは二百メートル以上あり、高さも十分だった。

「信じられない——」リリアが呟いた。「一瞬で、こんな巨大な橋を——」

機関車は新設された鉄橋を渡り始めた。風が強く、高所からの眺めは圧巻だったが、橋の構造は完璧で、全く揺れることがない。

そして、避難民の元にたどり着いた。

「あの機械は何だ?」

「線路が——線路がいつの間に——」

避難民たちは困惑していた。突然現れた機関車と線路に、恐れを抱いている者もいる。

勇樹は汽笛を短く鳴らして存在を知らせ、運転席から身を乗り出した。

「皆さん、大丈夫ですか! 救援に来ました!」

一人の中年男性が代表して近づいてきた。避難民の班長らしい。

「あなたは——昨夜、屋敷の人々を救った——」

「そうです。この列車で、安全な場所まで運びます」

男性の顔に安堵の表情が浮かんだ。

「本当ですか? 助かります! 崖崩れで道が塞がれて、どうしたものかと——」

その時、山の上部で新たな崩落音が響いた。先ほどよりも大きな音で、地面も激しく震動している。

「二次崩落です!」リリアが叫んだ。「急いで避難を——」

しかし、崩れ落ちてくる土砂と岩石の量は膨大だった。このままでは、せっかく建設した鉄橋も破壊されてしまう可能性がある。

「リリアさん!」勇樹が振り返った。「何か、崩落を止める方法はありませんか?」

「方法は——」リリアは胸元の装置に手をかけた。「魔導蒸気を使えば——」

「魔導蒸気?」

「私の蒸気機械に、魔力を注ぎ込んで威力を高める技術です。でも、この規模の崩落を止めるには——」

リリアの顔に決意の表情が浮かんだ。

「やってみます」

彼女は胸の装置を取り出し、両手で包み込んだ。装置が青白い光を放ち始め、蒸気の放出量が急激に増加する。

「魔導蒸気、最大出力!」

装置から放たれた高圧蒸気が、崩落してくる土砂に向かって噴射された。魔力で強化された蒸気の威力は凄まじく、岩石を吹き飛ばし、土砂の流れを逸らしていく。

「すごい——」勇樹は感嘆した。

魔法と機械の融合技術。リリアが言っていた「魔導蒸気」の実力を目の当たりにして、勇樹は新たな可能性を感じた。

鉄道と魔法が協力すれば、より多くの人を救えるかもしれない。

崩落は徐々に収まりを見せ、リリアの魔導蒸気による土砂の制御も功を奏した。最大規模の岩塊は迂回路から逸れ、鉄橋への直撃は回避された。

「成功しました!」リリアが振り返った。顔は魔力消耗で青白いが、瞳には達成感が宿っている。

「ありがとうございます」勇樹は心から感謝を込めて言った。「あなたがいなければ、橋が破壊されていました」

避難民たちは呆然と二人の連携作業を見つめていたが、やがて現実を理解し始めた。

「助かった——本当に助かった——」

「あの機械と、エルフの娘さんが——」

代表の中年男性が勇樹の前に歩み寄った。

「あなた方のおかげで、命拾いをしました。どうお礼を申し上げたら——」

「お礼は必要ありません」勇樹は首を振った。「一刻も早く、安全な場所へ避難しましょう」

機関車の客車は八人乗りだったが、詰め込めば十二人は収容できた。避難民は十五人いたため、二回に分けて輸送する必要がある。

「まず、女性と子供、高齢者を優先してください」勇樹は指示した。

これは、JR九州時代の緊急輸送でも守られていた基本原則だった。体力の弱い者から順に救出し、危険地域に留まる時間を最短にする。

最初の便には、妊婦の女性、幼い子供を連れた母親、足の不自由な老人など八人が乗り込んだ。彼らは恐る恐る客車に足を踏み入れたが、座席に座ると僅かに安堵の表情を見せた。

「本当に動くんですね、この機械」妊婦の女性が不安そうに呟いた。

「ええ、安全です」リリアが優しく答えた。「魔法ではありませんが、確実に目的地まで運んでくれます」

「魔法じゃないって——でも、どうやって——」

「蒸気の力です」勇樹は運転席から説明した。「石炭を燃やして水を沸騰させ、その蒸気で車輪を回転させています」

子供の一人が興味深そうに窓から外を見た。

「お兄ちゃん、この音は何?」

「車輪がレールの上を転がる音です」勇樹は微笑んだ。「カタンカタンって、規則正しいでしょう?」

「うん! 面白い音!」

子供の純粋な反応に、勇樹の心が温かくなった。恐怖や偏見なしに、鉄道を受け入れてくれる人がいる。

機関車は新設された仮設線路を慎重に進んだ。【路線建設】で敷設した軌道は、既存の線路と同じ品質を保っている。枕木の間隔、レールの幅、勾配の計算——全てが完璧だった。

「この線路」リリアが感心したように呟いた。「一瞬で建設されたとは思えないほど精密です」

「【路線建設】のスキルが、自動的に最適な設計を選んでくれるようです」勇樹は答えた。「JR九州で学んだ知識も活かされている気がします」

「前世の記憶が、スキルの精度を高めているんですね」

前世。リリアはその言葉を自然に口にした。勇樹は驚いて振り返る。

「前世って、どうして——」

「分かりますよ」リリアは微笑んだ。「あなたの鉄道に関する知識は、この世界のものではありません。きっと、別の世界で鉄道に関わる仕事をされていたんでしょう?」

勇樹は少し迷ったが、正直に答えることにした。

「JR九州の運転士をしていました。毎日、大勢の乗客を安全に運ぶのが仕事でした」

「運転士——」リリアの瞳が輝いた。「本物の機関車を運転する職業があったんですね」

「ええ。でも、過労で倒れて——気がついたら、この世界にいました」

「そして、再び鉄道で人を救っている」リリアは感動したように言った。「運命的ですね」

機関車は村の近くまで来ていた。避難所として指定された建物が見え、既に救援組織の人々が待機している。

「到着です」勇樹は汽笛を短く鳴らした。

乗客たちは安堵の溜息をついた。長い避難の旅がようやく終わったのだ。

「ありがとうございました」妊婦の女性が深く頭を下げた。「あなた方がいなければ——」

「いえ、これが鉄道の使命です」勇樹は答えた。「人の命を運ぶこと。それが、鉄道の存在意義なんです」

乗客を降ろした後、勇樹とリリアは残りの避難民を迎えに戻った。二回目の輸送も順調に進み、夕方までに全員の避難が完了した。

最後の便を送り届えた後、二人は仮設線路の終端近くで休息を取った。機関車は小さな森の中の空き地に停車し、静寂が辺りを包んでいる。

「今日は、本当にお疲れ様でした」リリアが労いの言葉をかけた。

「リリアさんがいてくれたおかげです」勇樹は感謝を込めて答えた。「魔導蒸気がなければ、崩落を防げませんでした」

「私一人では何もできませんでしたよ」リリアは首を振った。「あなたの【路線建設】があってこそです」

二人は機関車の車体に寄りかかり、夕暮れの空を見上げた。今日一日で、多くの命を救うことができた。それが何よりの成果だった。

「野中さん」リリアが口を開いた。「私、あなたと一緒に鉄道を発展させたいんです」

「え?」

「魔法と機械を融合させて、より多くの人を救える技術を作りたい」リリアの瞳に強い決意が宿っていた。「今日見せてくださった【路線建設】と私の魔導蒸気を組み合わせれば、もっと大規模な救援活動ができるはずです」

勇樹は考えた。確かに、二人の技術を合わせれば可能性は無限に広がる。より長距離の輸送、より困難な地形への対応、より多くの乗客の救助——

「でも、僕は落ちこぼれですよ」勇樹は苦笑いを浮かべた。「魔法も使えない、社会的地位もない——」

「関係ありません」リリアは断言した。「あなたには、人を救いたいという純粋な意志がある。それが一番大切なことです」

勇樹の胸に、温かいものが広がった。JR九州時代から大切にしてきた信念を、この異世界でも理解してくれる人がいる。

「分かりました」勇樹は頷いた。「一緒に、鉄道で人を救いましょう」

リリアは嬉しそうに微笑んだ。

「ありがとうございます。きっと素晴らしい——」

その時、森の奥から矢が飛来した。

勇樹の頬を掠めて機関車の車体に突き刺さったその矢は、明らかに殺傷を目的としたものだった。

「危ない!」勇樹はリリアを庇うように抱きかかえ、機関車の陰に身を隠した。

「何者!」リリアが叫んだ。

森の中から、三人の黒装束の男たちが現れた。顔は布で覆われ、手には弓や短剣を持っている。明らかに暗殺者の出で立ちだった。

「お前が、機械使いの落ちこぼれか」先頭の男が低い声で言った。

「機械などという下等な技術で人心を惑わす不届き者め」二番目の男が続けた。「貴族様の命により、排除させていただく」

反魔法派の刺客だった。勇樹の鉄道技術を危険視し、抹殺を図ってきたのだ。

「逃げましょう」リリアが囁いた。「機関車で——」

しかし、刺客たちは既に機関車を囲むような位置に展開していた。運転席に乗り込む前に、矢で射抜かれてしまうだろう。

「やはり魔法こそが至上。機械など、所詮は劣等技術よ」三番目の男が嘲笑した。

勇樹は歯噛みした。せっかく人を救う力を得たのに、それを脅威と見なす者たちがいる。

「リリアさん、魔導蒸気は使えますか?」

「少しなら——でも、今日崩落対策で相当消耗していて——」

リリアの魔力は限界に近かった。長時間の魔導蒸気使用で、体力も著しく消耗している。

刺客たちが一斉に動き出した。弓を構え、短剣を握りしめ、二人を狙っている。

絶体絶命の状況だった。

「魔導蒸気——最後の力を——」リリアが胸の装置に手をかけた。

しかし、その手は震えている。魔力不足で、装置を正常に作動させることも難しい状態だった。

「だめです、無理をしないで——」勇樹がリリアを制止しようとした瞬間——

森の向こうから、新たな足音が聞こえてきた。
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