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第28章 魔王との対話
第28章 魔王との対話
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戦場に重い静寂が降りていた。
魔王軍の兵士たちは武器を放棄し、避難民たちは安全な場所に避難を完了している。激しい戦闘音に満ちていた広場が、まるで時が止まったかのように静まり返っていた。
しかしその静寂は、嵐の前の静けさだった。
天空の黒雲が渦を巻き始めた。雲の中心部から、濃密な闇のオーラが漏れ出している。そして雲が左右に裂けるように分かれると、その奥から巨大な影が姿を現した。
「あれが」アルテミスが震え声で呟いた。「魔王本体です」
黒い翼を広げた巨大な人影が、ゆっくりと地上に降下してきた。身長は普通の人間の倍以上あり、全身が漆黒のオーラに包まれている。その存在感は圧倒的で、近くにいるだけで息が詰まりそうになる。
兵士たちは恐怖に震え、避難民たちは身を隠した。これまで勇敢に戦ってきた各種族の代表者たちでさえ、その威容の前に言葉を失っていた。
魔王が地面に足をつけた瞬間、大地が震動した。その足音は雷鳴のように響き、周囲の建物の窓ガラスが割れ落ちる。
「これが」魔王の声が戦場全体に響いた。低く重い声は、まるで地の底から響いてくるようだった。「救援列車とやらか」
その視線が聖鉄連節車両に向けられる。古代の聖輪の光でさえ、魔王の闇のオーラの前では薄れて見えた。
車両内の避難民たちが恐怖に震えた。子供たちは母親にしがみつき、老人たちは祈りを捧げている。これまで勇樹の【乗客保護】によって完全に守られていた彼らでさえ、魔王の威圧感には抗えなかった。
「勇樹さん」リリアが心配そうに声をかけた。「あの存在感は異常です。近づくだけでも危険かもしれません」
ミナも狼族の本能で警戒していた。
「今まで感じたことのない恐怖です。全身の毛が逆立っています」
ガンドルフは150年の人生で培った経験を総動員していたが、それでも震えを隠せなかった。
「これが真の魔王か。噂には聞いていたが、実際に見ると」
アルテミスは古代のアーティファクトで魔王の魔力レベルを計測しようとしたが、数値が振り切れてしまった。
「測定不能です。古代の記録にある最強の魔導師をはるかに上回っています」
しかし勇樹だけは、恐れを見せなかった。彼は車両から静かに降り、魔王の方向に向かって一歩を踏み出した。
「勇樹さん、だめです」リリアが制止しようとしたが、勇樹は手を上げて止めた。
「大丈夫だ」勇樹の声は穏やかだった。「俺は話をしに行く」
「話って」ミナが驚いた。「まさか、あの魔王と」
「そうだ」勇樹は振り返って仲間たちを見つめた。「戦うためじゃない。話をするためだ」
ガンドルフが前に出ようとした。
「一人で行かせるわけにはいかん。わしも」
「だめだ」勇樹は首を振った。「これは俺が解決しなければならない問題だ」
アルテミスも立ち上がった。
「しかし危険すぎます。古代の記録によれば、魔王は」
「分かってる」勇樹は微笑んだ。「でも、誰かがやらなければならない。そして今、それができるのは俺だけだ」
彼は仲間たちに背を向け、魔王に向かって歩き始めた。一歩一歩が重く、周囲の魔力が濃くなっていく。しかし勇樹の足取りに迷いはなかった。
魔王は勇樹の接近を黙って見守っていた。その巨大な瞳が、小さな人間の動向を興味深そうに観察している。
「面白い」魔王の声が響いた。「恐怖を知らぬのか、それとも愚かなだけか」
勇樹は魔王の前で立ち止まった。見上げるような巨体との対比で、勇樹がいかに小さな存在かが際立っていた。
「どちらでもない」勇樹は静かに答えた。「ただ、話がしたいだけだ」
魔王が低く笑った。その笑い声は地響きのように戦場に響き、人々の心胆を寒からしめる。
「話だと? 貴様は何を勘違いしている」魔王の瞳が赤く光った。「我は征服者だ。対話など必要ない」
「それでも、俺は話がしたい」勇樹は一歩も引かなかった。「あなたが何を求めているのか、なぜこの大陸を攻撃するのか、知りたい」
魔王の表情が変わった。これまで数多くの敵と対峙してきたが、恐怖も敵意も示さず、純粋に対話を求める者は初めてだった。
「何を求めているか、だと?」魔王は腕を組んだ。「簡単なことだ。この大陸の全ての生物に、二つの選択肢を与えよう」
勇樹は魔王の言葉を待った。
「滅びか、服従か」魔王の声が重く響いた。「我に従い、永遠の奴隷となって生きるか。さもなくば、塵と化して消え去るか。それだけだ」
周囲の人々が息を呑んだ。予想していた通り、魔王の要求は過酷極まりないものだった。
しかし勇樹は首を振った。
「第三の選択肢がある」
魔王の瞳が細くなった。
「第三の選択肢だと? 何のことだ」
「共に救う未来だ」勇樹の声に力が込められた。「滅ぼすのでも支配するのでもなく、共に人々を救う未来がある」
魔王が再び笑った。今度はより冷酷な笑いだった。
「愚かな。貴様は我が何者か理解していない」魔王は胸を張った。「我は破壊の化身。絶望の王。数千年の間、無数の世界を征服してきた存在だ」
「それでも」勇樹は言葉を続けた。「あなたも最初は、誰かを守りたかったんじゃないか」
魔王の表情が一瞬、僅かに揺れた。
「何?」
「俺は見たんだ」勇樹は静かに言った。「今日の戦場で。あなたの兵士たちが、救援列車の活動を見て武器を置いた瞬間を」
魔王の眉がひそめられた。
「彼らも最初は、きっと誰かを守るために戦い始めたんだ」勇樹は続けた。「家族を、故郷を、大切な人を。そのために力を求め、戦いに身を投じた」
「黙れ」魔王の声に苛立ちが混じった。
「あなたも同じじゃないか」勇樹は魔王を見上げた。「最初は誰かを守りたくて、力を求めたんじゃないか」
魔王の全身から、激しい怒りのオーラが放射された。周囲の地面が亀裂を起こし、空気が震動する。
「我の過去を詮索するな」魔王の声が雷鳴のように響いた。「我は征服者だ。それ以外の何物でもない」
しかし勇樹は動じなかった。
「なら、なぜあなたの兵士たちは武器を置いたんだ?」勇樹は問いかけた。「なぜ救援列車を見て、戦いを止めたんだ?」
魔王が言葉に詰まった。確かに、今日の戦場で起きたことは予想外だった。完全に統制されていたはずの兵士たちが、救援活動を目の当たりにして次々と戦意を失った。
「それは」魔王は言いかけて、口を閉じた。
「彼らの心の奥に、まだ『救いたい』という気持ちが残っていたからだ」勇樹は確信を持って言った。「あなたにも、きっと同じ気持ちがあるはずだ」
魔王の瞳が揺れた。数千年の間、封じ込めてきた記憶の断片が蘇ろうとしている。
「黙れ」魔王は拳を握りしめた。「我に情などない。ただ征服あるのみだ」
「それなら」勇樹は一歩前に出た。「俺を殺せばいい」
周囲がざわめいた。リリアが立ち上がり、ミナが駆け出そうとしたが、勇樹の強い意志を感じて足を止めた。
「俺一人を殺すだけで、この戦争を終わらせることができる」勇樹は腕を広げた。「簡単なことじゃないか」
魔王の手が勇樹に向けて伸ばされた。その手から漆黒のオーラが立ち上り、勇樹を包み込もうとする。
しかし、魔王の手が止まった。
「なぜ」魔王は困惑した。「なぜ殺せない」
「あなたの心が止めているからだ」勇樹は静かに言った。「あなたの中にも、まだ『救いたい』という気持ちが残っている」
魔王は手を下ろした。その表情には、混乱と苦悩が浮かんでいた。
「我は」魔王の声が震えた。「我は何のために」
勇樹はその隙を逃さなかった。
「一緒に救おう」勇樹は手を差し出した。「破壊するのではなく、救う未来を作ろう」
魔王の瞳が勇樹の手を見つめた。その小さな手が、巨大な魔王の心を揺さぶっていた。
戦場に静寂が戻った。しかしそれは、恐怖の静寂ではなく、希望の静寂だった。
歴史を変える対話が、いま始まろうとしていた。
魔王は勇樹の差し出された手を見つめながら、長い沈黙を保っていた。
その巨大な瞳の奥で、何かが揺れ動いているのが見て取れた。数千年の間封じ込めてきた記憶、忘れ去ろうとしてきた感情が、小さな人間の言葉によって呼び起こされようとしている。
しかし魔王は首を振った。
「甘い幻想だ」魔王の声が再び冷酷さを取り戻した。「貴様は我が何をしてきたか知らない。どれほど多くの世界を滅ぼし、どれほど多くの命を奪ってきたか」
勇樹は手を下ろさなかった。
「知らない」勇樹は正直に答えた。「でも、それでも俺は信じている」
「何を信じているというのだ」魔王が嘲笑した。「我のような存在に、救済などあり得ない」
「誰にでも、やり直すチャンスはある」勇樹の声に迷いはなかった。「どんなに深い闇に堕ちても、光に向かって歩くことはできる」
魔王の表情が歪んだ。それは怒りなのか、苦悩なのか、判別がつかない複雑な感情だった。
「愚かな」魔王は拳を握りしめた。「貴様のような甘い理想主義者が、この世界を破滅に導くのだ」
その時、聖鉄連節車両の方からリリアの声が響いた。
「勇樹さんは間違っていません」
リリアが車両から降り、勇樹の傍らに立った。魔王の威圧的な存在感に震えながらも、彼女の瞳には強い決意が宿っていた。
「私は見ました。勇樹さんが数え切れないほどの人々を救うのを。エルフも、人間も、ドワーフも、獣人も関係なく」
魔王はリリアを一瞥した。
「小娘が何を知っている」
「知っています」リリアは震え声ながらも言い切った。「救うことの素晴らしさを。希望を運ぶことの尊さを。勇樹さんが教えてくれました」
続いてミナも車両から飛び出してきた。
「私も同じです」ミナの声に狼族らしい力強さが込められていた。「家族を魔獣に奪われた私に、勇樹さんは新しい家族をくれました」
魔王の眉がひそめられた。
「家族だと?」
「はい」ミナは胸を張った。「血の繋がりはなくても、心で繋がった本当の家族です。一緒に人を救い、一緒に困難を乗り越え、一緒に未来を築く家族です」
ガンドルフも重い足音を響かせながら現れた。
「150年生きてきたが」ガンドルフは魔王を見上げた。「このような素晴らしい体験は初めてだった。種族を超えて手を取り合い、共に困難に立ち向かう。これこそが真の力だ」
アルテミスも古代のアーティファクトを手に立っていた。
「古代の記録には、こうあります」アルテミスの声が響いた。「真の王とは、民を支配する者ではなく、民を救う者である、と」
魔王は仲間たちが次々と現れることに苛立ちを見せた。
「群れて何になる。我の力の前では、蟻のようなものだ」
「確かに力では敵いません」勇樹は認めた。「でも、俺たちには別の力がある」
「別の力だと?」
「絆だ」勇樹は仲間たちを見回した。「一人ひとりは小さくても、絆で結ばれれば無限の可能性を持つ」
魔王が鼻で笑った。
「絆だと? そのような脆いものが、我の力に勝てるとでも」
「勝つ必要なんてない」勇樹は静かに言った。「俺たちの目的は勝利じゃない。救済だ」
その言葉に、魔王の表情が再び揺れた。
「救済」魔王は呟いた。「貴様は我をも救おうというのか」
「そうだ」勇樹は迷わず答えた。「あなたも、きっと最初は誰かを守りたくて力を求めたんだろう。それなら、一緒に救おう。破壊するんじゃなく、守ろう」
魔王の全身から、激しいオーラが放射された。しかしそれは怒りのオーラではなく、混乱のオーラだった。
「我に」魔王の声が震えた。「我に救済などあり得ない」
「なぜ?」勇樹は問いかけた。「なぜあり得ないと思うんだ?」
魔王は答えに詰まった。数千年の間、自分自身にそう言い聞かせてきた。破壊以外に道はない、征服以外に未来はないと。
しかし今、小さな人間がその前提を覆そうとしている。
「我は」魔王は苦しそうに呟いた。「我は多くの罪を犯した。数え切れないほどの命を奪い、世界を滅ぼしてきた」
「だからこそ」勇樹は一歩前に出た。「今度は救う番じゃないか」
魔王の瞳が大きく見開かれた。
「救う、だと?」
「奪った分だけ、今度は与える。壊した分だけ、今度は作る。そうすれば」勇樹の声が強くなった。「あなたの罪も、きっと償える」
魔王の巨体が震えた。その心の奥で、封印してきた記憶が蘇り始めている。
遠い昔、まだ小さな存在だった頃の記憶。誰かを守りたくて、力を求めた日々。しかし力を得るにつれて、守るべきものを失い、いつしか破壊することだけが残った。
「選択の時が来る」魔王は突然、低く重い声で言った。
戦場に緊張が走った。魔王の周囲の空気が歪み、強大な魔力が渦巻き始めている。
「貴様に選択肢を与えよう」魔王の瞳が赤く光った。「我と戦うか、それとも」
魔王は手を差し出した。その巨大な手のひらには、深い闇のオーラが宿っている。
「共に歩むか」
勇樹の心臓が高鳴った。これが最終的な選択だった。戦うか、共に救うか。この決断が、大陸全体の運命を左右する。
周囲の人々が固唾を飲んで見守っている。リリア、ミナ、ガンドルフ、アルテミス、そして各種族の代表者たち、避難民たち、さらには武器を置いた魔王軍の兵士たちまでもが、この歴史的瞬間を見つめていた。
勇樹は魔王の巨大な手を見上げた。その手に触れれば、未知の世界への扉が開かれる。しかし同時に、これまでにない危険も伴う。
「でも」魔王は続けた。「もし貴様が我を裏切れば」
魔王の声が一段と低くなった。
「この大陸の全てを灰燼に帰す」
脅しの言葉だった。しかし勇樹は、その奥に隠された真意を感じ取っていた。魔王もまた、恐れているのだ。裏切られることを、再び失望することを。
「俺は」勇樹は深く息を吸い込んだ。「俺は約束する」
魔王の瞳が勇樹を見つめた。
「何を約束するというのだ」
「絶対に諦めない」勇樹の声に力が込められた。「どんなに困難でも、どんなに時間がかかっても、必ずあなたと共に歩く道を見つける」
魔王の表情が変わった。数千年の間、誰もこのような約束をしてくれた者はいなかった。
「そして」勇樹は続けた。「もしあなたが道に迷った時は、俺が必ず迎えに行く。救援列車に乗せて、正しい道まで送り届ける」
魔王の巨大な手が微かに震えた。
「貴様は」魔王の声が震えていた。「貴様は本当に、我を救おうというのか」
「そうだ」勇樹は迷いなく答えた。「それが俺の使命だから」
戦場に長い沈黙が流れた。魔王と勇樹が見つめ合い、周囲の全ての人々が息を殺して見守っている。
やがて魔王は、ゆっくりと口を開いた。
「分かった」魔王の声は、これまでとは違っていた。「貴様の覚悟、確かに受け取った」
魔王は手を引っ込めた。しかしその表情には、もはや敵意はなかった。
「だが」魔王は付け加えた。「これで終わりではない。真の試練は、これからだ」
勇樹は頷いた。
「分かってる。でも、一緒に乗り越えよう」
魔王は長い間、勇樹を見つめていた。そしてついに、僅かに頷いた。
「では」魔王は空を見上げた。「新しい時代の始まりだ」
その瞬間、戦場に変化が起きた。魔王の闇のオーラが薄れ、代わりに柔らかな光が広がり始めた。それは聖鉄連節車両から放たれる希望の光と共鳴し、戦場全体を包み込んでいく。
人々の間に、安堵と希望の声が広がった。長い戦いが、ついに終わりを迎えようとしていた。
しかし勇樹は知っていた。これは終わりではなく、新たな始まりなのだと。魔王と共に歩む、困難な道のりの始まりなのだと。
救援列車の真の試練は、これからだった。
魔王軍の兵士たちは武器を放棄し、避難民たちは安全な場所に避難を完了している。激しい戦闘音に満ちていた広場が、まるで時が止まったかのように静まり返っていた。
しかしその静寂は、嵐の前の静けさだった。
天空の黒雲が渦を巻き始めた。雲の中心部から、濃密な闇のオーラが漏れ出している。そして雲が左右に裂けるように分かれると、その奥から巨大な影が姿を現した。
「あれが」アルテミスが震え声で呟いた。「魔王本体です」
黒い翼を広げた巨大な人影が、ゆっくりと地上に降下してきた。身長は普通の人間の倍以上あり、全身が漆黒のオーラに包まれている。その存在感は圧倒的で、近くにいるだけで息が詰まりそうになる。
兵士たちは恐怖に震え、避難民たちは身を隠した。これまで勇敢に戦ってきた各種族の代表者たちでさえ、その威容の前に言葉を失っていた。
魔王が地面に足をつけた瞬間、大地が震動した。その足音は雷鳴のように響き、周囲の建物の窓ガラスが割れ落ちる。
「これが」魔王の声が戦場全体に響いた。低く重い声は、まるで地の底から響いてくるようだった。「救援列車とやらか」
その視線が聖鉄連節車両に向けられる。古代の聖輪の光でさえ、魔王の闇のオーラの前では薄れて見えた。
車両内の避難民たちが恐怖に震えた。子供たちは母親にしがみつき、老人たちは祈りを捧げている。これまで勇樹の【乗客保護】によって完全に守られていた彼らでさえ、魔王の威圧感には抗えなかった。
「勇樹さん」リリアが心配そうに声をかけた。「あの存在感は異常です。近づくだけでも危険かもしれません」
ミナも狼族の本能で警戒していた。
「今まで感じたことのない恐怖です。全身の毛が逆立っています」
ガンドルフは150年の人生で培った経験を総動員していたが、それでも震えを隠せなかった。
「これが真の魔王か。噂には聞いていたが、実際に見ると」
アルテミスは古代のアーティファクトで魔王の魔力レベルを計測しようとしたが、数値が振り切れてしまった。
「測定不能です。古代の記録にある最強の魔導師をはるかに上回っています」
しかし勇樹だけは、恐れを見せなかった。彼は車両から静かに降り、魔王の方向に向かって一歩を踏み出した。
「勇樹さん、だめです」リリアが制止しようとしたが、勇樹は手を上げて止めた。
「大丈夫だ」勇樹の声は穏やかだった。「俺は話をしに行く」
「話って」ミナが驚いた。「まさか、あの魔王と」
「そうだ」勇樹は振り返って仲間たちを見つめた。「戦うためじゃない。話をするためだ」
ガンドルフが前に出ようとした。
「一人で行かせるわけにはいかん。わしも」
「だめだ」勇樹は首を振った。「これは俺が解決しなければならない問題だ」
アルテミスも立ち上がった。
「しかし危険すぎます。古代の記録によれば、魔王は」
「分かってる」勇樹は微笑んだ。「でも、誰かがやらなければならない。そして今、それができるのは俺だけだ」
彼は仲間たちに背を向け、魔王に向かって歩き始めた。一歩一歩が重く、周囲の魔力が濃くなっていく。しかし勇樹の足取りに迷いはなかった。
魔王は勇樹の接近を黙って見守っていた。その巨大な瞳が、小さな人間の動向を興味深そうに観察している。
「面白い」魔王の声が響いた。「恐怖を知らぬのか、それとも愚かなだけか」
勇樹は魔王の前で立ち止まった。見上げるような巨体との対比で、勇樹がいかに小さな存在かが際立っていた。
「どちらでもない」勇樹は静かに答えた。「ただ、話がしたいだけだ」
魔王が低く笑った。その笑い声は地響きのように戦場に響き、人々の心胆を寒からしめる。
「話だと? 貴様は何を勘違いしている」魔王の瞳が赤く光った。「我は征服者だ。対話など必要ない」
「それでも、俺は話がしたい」勇樹は一歩も引かなかった。「あなたが何を求めているのか、なぜこの大陸を攻撃するのか、知りたい」
魔王の表情が変わった。これまで数多くの敵と対峙してきたが、恐怖も敵意も示さず、純粋に対話を求める者は初めてだった。
「何を求めているか、だと?」魔王は腕を組んだ。「簡単なことだ。この大陸の全ての生物に、二つの選択肢を与えよう」
勇樹は魔王の言葉を待った。
「滅びか、服従か」魔王の声が重く響いた。「我に従い、永遠の奴隷となって生きるか。さもなくば、塵と化して消え去るか。それだけだ」
周囲の人々が息を呑んだ。予想していた通り、魔王の要求は過酷極まりないものだった。
しかし勇樹は首を振った。
「第三の選択肢がある」
魔王の瞳が細くなった。
「第三の選択肢だと? 何のことだ」
「共に救う未来だ」勇樹の声に力が込められた。「滅ぼすのでも支配するのでもなく、共に人々を救う未来がある」
魔王が再び笑った。今度はより冷酷な笑いだった。
「愚かな。貴様は我が何者か理解していない」魔王は胸を張った。「我は破壊の化身。絶望の王。数千年の間、無数の世界を征服してきた存在だ」
「それでも」勇樹は言葉を続けた。「あなたも最初は、誰かを守りたかったんじゃないか」
魔王の表情が一瞬、僅かに揺れた。
「何?」
「俺は見たんだ」勇樹は静かに言った。「今日の戦場で。あなたの兵士たちが、救援列車の活動を見て武器を置いた瞬間を」
魔王の眉がひそめられた。
「彼らも最初は、きっと誰かを守るために戦い始めたんだ」勇樹は続けた。「家族を、故郷を、大切な人を。そのために力を求め、戦いに身を投じた」
「黙れ」魔王の声に苛立ちが混じった。
「あなたも同じじゃないか」勇樹は魔王を見上げた。「最初は誰かを守りたくて、力を求めたんじゃないか」
魔王の全身から、激しい怒りのオーラが放射された。周囲の地面が亀裂を起こし、空気が震動する。
「我の過去を詮索するな」魔王の声が雷鳴のように響いた。「我は征服者だ。それ以外の何物でもない」
しかし勇樹は動じなかった。
「なら、なぜあなたの兵士たちは武器を置いたんだ?」勇樹は問いかけた。「なぜ救援列車を見て、戦いを止めたんだ?」
魔王が言葉に詰まった。確かに、今日の戦場で起きたことは予想外だった。完全に統制されていたはずの兵士たちが、救援活動を目の当たりにして次々と戦意を失った。
「それは」魔王は言いかけて、口を閉じた。
「彼らの心の奥に、まだ『救いたい』という気持ちが残っていたからだ」勇樹は確信を持って言った。「あなたにも、きっと同じ気持ちがあるはずだ」
魔王の瞳が揺れた。数千年の間、封じ込めてきた記憶の断片が蘇ろうとしている。
「黙れ」魔王は拳を握りしめた。「我に情などない。ただ征服あるのみだ」
「それなら」勇樹は一歩前に出た。「俺を殺せばいい」
周囲がざわめいた。リリアが立ち上がり、ミナが駆け出そうとしたが、勇樹の強い意志を感じて足を止めた。
「俺一人を殺すだけで、この戦争を終わらせることができる」勇樹は腕を広げた。「簡単なことじゃないか」
魔王の手が勇樹に向けて伸ばされた。その手から漆黒のオーラが立ち上り、勇樹を包み込もうとする。
しかし、魔王の手が止まった。
「なぜ」魔王は困惑した。「なぜ殺せない」
「あなたの心が止めているからだ」勇樹は静かに言った。「あなたの中にも、まだ『救いたい』という気持ちが残っている」
魔王は手を下ろした。その表情には、混乱と苦悩が浮かんでいた。
「我は」魔王の声が震えた。「我は何のために」
勇樹はその隙を逃さなかった。
「一緒に救おう」勇樹は手を差し出した。「破壊するのではなく、救う未来を作ろう」
魔王の瞳が勇樹の手を見つめた。その小さな手が、巨大な魔王の心を揺さぶっていた。
戦場に静寂が戻った。しかしそれは、恐怖の静寂ではなく、希望の静寂だった。
歴史を変える対話が、いま始まろうとしていた。
魔王は勇樹の差し出された手を見つめながら、長い沈黙を保っていた。
その巨大な瞳の奥で、何かが揺れ動いているのが見て取れた。数千年の間封じ込めてきた記憶、忘れ去ろうとしてきた感情が、小さな人間の言葉によって呼び起こされようとしている。
しかし魔王は首を振った。
「甘い幻想だ」魔王の声が再び冷酷さを取り戻した。「貴様は我が何をしてきたか知らない。どれほど多くの世界を滅ぼし、どれほど多くの命を奪ってきたか」
勇樹は手を下ろさなかった。
「知らない」勇樹は正直に答えた。「でも、それでも俺は信じている」
「何を信じているというのだ」魔王が嘲笑した。「我のような存在に、救済などあり得ない」
「誰にでも、やり直すチャンスはある」勇樹の声に迷いはなかった。「どんなに深い闇に堕ちても、光に向かって歩くことはできる」
魔王の表情が歪んだ。それは怒りなのか、苦悩なのか、判別がつかない複雑な感情だった。
「愚かな」魔王は拳を握りしめた。「貴様のような甘い理想主義者が、この世界を破滅に導くのだ」
その時、聖鉄連節車両の方からリリアの声が響いた。
「勇樹さんは間違っていません」
リリアが車両から降り、勇樹の傍らに立った。魔王の威圧的な存在感に震えながらも、彼女の瞳には強い決意が宿っていた。
「私は見ました。勇樹さんが数え切れないほどの人々を救うのを。エルフも、人間も、ドワーフも、獣人も関係なく」
魔王はリリアを一瞥した。
「小娘が何を知っている」
「知っています」リリアは震え声ながらも言い切った。「救うことの素晴らしさを。希望を運ぶことの尊さを。勇樹さんが教えてくれました」
続いてミナも車両から飛び出してきた。
「私も同じです」ミナの声に狼族らしい力強さが込められていた。「家族を魔獣に奪われた私に、勇樹さんは新しい家族をくれました」
魔王の眉がひそめられた。
「家族だと?」
「はい」ミナは胸を張った。「血の繋がりはなくても、心で繋がった本当の家族です。一緒に人を救い、一緒に困難を乗り越え、一緒に未来を築く家族です」
ガンドルフも重い足音を響かせながら現れた。
「150年生きてきたが」ガンドルフは魔王を見上げた。「このような素晴らしい体験は初めてだった。種族を超えて手を取り合い、共に困難に立ち向かう。これこそが真の力だ」
アルテミスも古代のアーティファクトを手に立っていた。
「古代の記録には、こうあります」アルテミスの声が響いた。「真の王とは、民を支配する者ではなく、民を救う者である、と」
魔王は仲間たちが次々と現れることに苛立ちを見せた。
「群れて何になる。我の力の前では、蟻のようなものだ」
「確かに力では敵いません」勇樹は認めた。「でも、俺たちには別の力がある」
「別の力だと?」
「絆だ」勇樹は仲間たちを見回した。「一人ひとりは小さくても、絆で結ばれれば無限の可能性を持つ」
魔王が鼻で笑った。
「絆だと? そのような脆いものが、我の力に勝てるとでも」
「勝つ必要なんてない」勇樹は静かに言った。「俺たちの目的は勝利じゃない。救済だ」
その言葉に、魔王の表情が再び揺れた。
「救済」魔王は呟いた。「貴様は我をも救おうというのか」
「そうだ」勇樹は迷わず答えた。「あなたも、きっと最初は誰かを守りたくて力を求めたんだろう。それなら、一緒に救おう。破壊するんじゃなく、守ろう」
魔王の全身から、激しいオーラが放射された。しかしそれは怒りのオーラではなく、混乱のオーラだった。
「我に」魔王の声が震えた。「我に救済などあり得ない」
「なぜ?」勇樹は問いかけた。「なぜあり得ないと思うんだ?」
魔王は答えに詰まった。数千年の間、自分自身にそう言い聞かせてきた。破壊以外に道はない、征服以外に未来はないと。
しかし今、小さな人間がその前提を覆そうとしている。
「我は」魔王は苦しそうに呟いた。「我は多くの罪を犯した。数え切れないほどの命を奪い、世界を滅ぼしてきた」
「だからこそ」勇樹は一歩前に出た。「今度は救う番じゃないか」
魔王の瞳が大きく見開かれた。
「救う、だと?」
「奪った分だけ、今度は与える。壊した分だけ、今度は作る。そうすれば」勇樹の声が強くなった。「あなたの罪も、きっと償える」
魔王の巨体が震えた。その心の奥で、封印してきた記憶が蘇り始めている。
遠い昔、まだ小さな存在だった頃の記憶。誰かを守りたくて、力を求めた日々。しかし力を得るにつれて、守るべきものを失い、いつしか破壊することだけが残った。
「選択の時が来る」魔王は突然、低く重い声で言った。
戦場に緊張が走った。魔王の周囲の空気が歪み、強大な魔力が渦巻き始めている。
「貴様に選択肢を与えよう」魔王の瞳が赤く光った。「我と戦うか、それとも」
魔王は手を差し出した。その巨大な手のひらには、深い闇のオーラが宿っている。
「共に歩むか」
勇樹の心臓が高鳴った。これが最終的な選択だった。戦うか、共に救うか。この決断が、大陸全体の運命を左右する。
周囲の人々が固唾を飲んで見守っている。リリア、ミナ、ガンドルフ、アルテミス、そして各種族の代表者たち、避難民たち、さらには武器を置いた魔王軍の兵士たちまでもが、この歴史的瞬間を見つめていた。
勇樹は魔王の巨大な手を見上げた。その手に触れれば、未知の世界への扉が開かれる。しかし同時に、これまでにない危険も伴う。
「でも」魔王は続けた。「もし貴様が我を裏切れば」
魔王の声が一段と低くなった。
「この大陸の全てを灰燼に帰す」
脅しの言葉だった。しかし勇樹は、その奥に隠された真意を感じ取っていた。魔王もまた、恐れているのだ。裏切られることを、再び失望することを。
「俺は」勇樹は深く息を吸い込んだ。「俺は約束する」
魔王の瞳が勇樹を見つめた。
「何を約束するというのだ」
「絶対に諦めない」勇樹の声に力が込められた。「どんなに困難でも、どんなに時間がかかっても、必ずあなたと共に歩く道を見つける」
魔王の表情が変わった。数千年の間、誰もこのような約束をしてくれた者はいなかった。
「そして」勇樹は続けた。「もしあなたが道に迷った時は、俺が必ず迎えに行く。救援列車に乗せて、正しい道まで送り届ける」
魔王の巨大な手が微かに震えた。
「貴様は」魔王の声が震えていた。「貴様は本当に、我を救おうというのか」
「そうだ」勇樹は迷いなく答えた。「それが俺の使命だから」
戦場に長い沈黙が流れた。魔王と勇樹が見つめ合い、周囲の全ての人々が息を殺して見守っている。
やがて魔王は、ゆっくりと口を開いた。
「分かった」魔王の声は、これまでとは違っていた。「貴様の覚悟、確かに受け取った」
魔王は手を引っ込めた。しかしその表情には、もはや敵意はなかった。
「だが」魔王は付け加えた。「これで終わりではない。真の試練は、これからだ」
勇樹は頷いた。
「分かってる。でも、一緒に乗り越えよう」
魔王は長い間、勇樹を見つめていた。そしてついに、僅かに頷いた。
「では」魔王は空を見上げた。「新しい時代の始まりだ」
その瞬間、戦場に変化が起きた。魔王の闇のオーラが薄れ、代わりに柔らかな光が広がり始めた。それは聖鉄連節車両から放たれる希望の光と共鳴し、戦場全体を包み込んでいく。
人々の間に、安堵と希望の声が広がった。長い戦いが、ついに終わりを迎えようとしていた。
しかし勇樹は知っていた。これは終わりではなく、新たな始まりなのだと。魔王と共に歩む、困難な道のりの始まりなのだと。
救援列車の真の試練は、これからだった。
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