追放天才の神器革命!聖女に崇拝されざまぁ無双

K2画家・唯

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第3章 婚約破棄ざまぁ、そしてAIタケとの再会

第3章 婚約破棄ざまぁ、そしてAIタケとの再会

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朝の陽光が辺境の村ハルダムに差し込む中、ユウは村の中央広場で作業をしていた。
手にしているのは小さな金属の箱。その表面には複雑な回路が刻まれ、内部では微細な機械部品が音もなく動いている。魔素を一切使わない、純粋に科学技術のみで構築された装置だった。
「ユウ様、今日も朝早くからありがとうございます」
村長のトマスが頭を下げる。六十を過ぎた温厚な男性で、ユウが村に来てからずっと面倒を見てくれていた。
「いえ、気にしないでください」
ユウは淡々と答えながら、装置の最終調整を続けた。これは簡易浄水器の改良版で、村の井戸水をより安全に飲めるようにするためのものだった。
「これで完成です。一日に約百リットルの浄水が可能になります」
「本当に、神器も魔素も使わずにこんなことができるなんて…」
トマスの声には感嘆が込められていた。ユウが村に来てから三か月、彼の技術は村人たちの生活を大きく向上させていた。
浄水装置の他にも、風力を利用した照明システム、簡易医療機器、効率的な農具など、様々な発明品が村に導入されていた。全て魔素を使わない、科学的原理に基づいた技術だった。
「ユウ兄ちゃん、今日も何か作ってるの?」
村の子供たちが集まってくる。彼らはユウの作業を見るのが大好きで、いつも興味深そうに観察していた。
「今度は何ができるんだい?」
「少し待ってください」
ユウは装置を井戸に設置し、スイッチを入れた。機械音もなく、ただ静かに動作を始める装置。やがて、透明で美味しそうな水が出口から流れ出した。
「わあ、すごい!」
子供たちの歓声が響く。その声を聞いて、ユウの表情がわずかに緩んだ。しかし、それも一瞬のことだった。
「ユウ様」
トマスが心配そうにユウを見つめる。
「最近、よく空を見上げておられますが…まだ故郷のことを?」
ユウは作業の手を止めた。確かに、彼はよく雲海の向こうにある空中都市を見上げていた。
「…妹のことを考えています」
「お妹さんは、きっとお元気ですよ。あのような美しい都市なら、きっと立派な治療を受けておられるはずです」
トマスの言葉は優しかったが、ユウの心は晴れなかった。ルナの病気は魔素アレルギーが原因だった。空中都市は魔素に満ちている。果たして彼女は本当に元気でいられるのだろうか。
「そうですね」
ユウはそれ以上何も言わなかった。彼の作った科学技術こそが、妹を救う唯一の希望だったのに、それを破壊して追放された。その事実は、今でも彼の心を重く圧迫していた。
---
昼過ぎ、村に豪華な馬車が到着した。
紺碧の装飾が施された大型の馬車で、明らかに貴族のものだった。村人たちは珍しそうに集まり、その様子を遠巻きに見守っていた。
馬車から降り立ったのは、美しい金髪の女性だった。深緑のドレスに身を包み、宝石の装身具を身に着けている。その美貌は確かに印象的だったが、どこか冷たい印象を与えた。
「ミレイナ様…」
ユウの顔が青ざめた。彼女は、かつてのユウの婚約者だった。
ミレイナ・フォン・エルディアス。上層貴族エルディアス家の令嬢で、ユウが空中都市にいた頃の婚約者だった。もちろん、追放された今、その婚約は有名無実になっていたが。
「あら、本当にこんな辺境にいるのね」
ミレイナは村を見回しながら、露骨に顔をしかめた。
「どうして…ここに?」
「決まっているでしょう。あなたに会いに来たのよ」
彼女は村人たちを見下すような目で見渡した。
「まあ、こんな汚らしい場所で暮らしているなんて。やはり平民の血は争えないのね」
村人たちがざわめく。彼らはユウを家族のように大切に思っており、そのユウを侮辱されて気分を害していた。
「ミレイナ様、何の用でしょうか」
ユウは感情を抑えて尋ねた。
「用も何も、婚約者の安否を確認するのは当然でしょう?まあ、こんな有様では心配するまでもなかったけれど」
「…」
「それにしても、あなたの『神器』とやらは随分と大層なものだったのね。結局、人を傷つけただけじゃない」
ユウの拳がわずかに震えた。
「あれは…」
「何?弁解でもするつもり?」
ミレイナは嘲笑を浮かべた。
「技術院の皆さんから聞いたわ。あなたの発明など、最初から欠陥品だったって。魔素を使わない神器なんて、そもそも不可能なのよ。所詮は平民の妄想だったということね」
村人たちの間に怒りの声が上がった。しかし、ユウは彼らを手で制した。
「そう思われるなら、それで構いません」
「まあ、素直じゃない。でも安心して。私、あなたのために新しい婚約者を見つけてきたのよ」
ミレイナは馬車の方を振り返った。
「こちらにいらっしゃい」
馬車から、もう一人の男性が降りてきた。立派な髭を蓄えた中年の男性で、明らかに貴族の身なりをしていた。
「アルバート・ケニントン伯爵よ。五十三歳で未亡人。あなたにはもったいないくらいの方ね」
ユウの顔が引きつった。
「私は、男性ですが…」
「細かいことは気にしないの。どうせあなたみたいな落ちぶれた平民に、まともな結婚相手なんて見つからないでしょう?」
ミレイナの言葉は、純粋な悪意に満ちていた。彼女は心の底からユウを見下し、侮辱することを楽しんでいた。
その時、村人の一人が気づいた。
「あれ…あの人、誰かに見られてる?」
確かに、茂みの影から、プラチナブロンドの髪の女性がこちらを見つめていた。手には小さな水晶のような装置を持っている。
それは、セレスティアだった。
---
セレスティアは魔素通信装置を握り締めながら、ミレイナの暴言を聞いていた。
「皆さん、ご覧ください」
彼女の声は、普段の穏やかな調子とは明らかに違っていた。
「神の器を侮辱する愚か者がいます。これは、まさに神がお与えになった試練です」
配信画面では、数千人の視聴者がコメントを投稿していた。
『なんですって、あの女!』
『神の器様を侮辱するなんて!』
『許せない!誰なの、あの女は!』
「あの女性は、ミレイナ・フォン・エルディアス。エルディアス家の令嬢です」
セレスティアの声は、相変わらず穏やかだった。しかし、その穏やかさが逆に恐ろしさを演出していた。
「神の器は、その慈悲深さから沈黙を保っておられます。しかし、神を冒涜する者には、必ず報いが訪れるでしょう」
画面のコメント欄が爆発した。
『エルディアス家か!覚えておこう!』
『あんな女と結婚させられる男性がかわいそう!』
『神の器様、そんな女は相手にしなくていいです!』
『ミレイナって検索したら出てきた!みんなで抗議しよう!』
視聴者の数は既に一万人を超えていた。そして、その怒りは急速に拡散していった。
「皆さん、冷静になってください」
セレスティアは視聴者を宥めるような声色で言った。しかし、その目は冷たく光っていた。
「神は愛と慈悲の存在です。しかし、神を侮辱する者には、きっと適切な教育が与えられることでしょう」
それは、事実上の宣戦布告だった。
---
ミレイナが村でユウを侮辱している間、空中都市では異変が起きていた。
「お嬢様、大変です!」
エルディアス邸に、使用人が慌てて駆け込んできた。
「何事です?」
ミレイナの母親、カタリナ・フォン・エルディアスが眉をひそめた。
「聖女様の配信で、お嬢様のことが…」
使用人は震え声で説明した。セレスティアの配信内容、視聴者の反応、そして既に始まっている抗議の嵐について。
「何ですって?」
カタリナの顔が青ざめた。セレスティアの影響力は絶大だった。彼女に目をつけられるということは、社会的な死を意味していた。
「すぐにミレイナを呼び戻しなさい!」
しかし、時既に遅かった。
---
村で、ミレイナの携帯していた魔素通信装置が鳴り響いた。
「あら、お母様から?」
彼女は装置を操作したが、そこに表示されたのは母親の怒りと恐怖に歪んだ顔だった。
「ミレイナ!すぐに帰ってきなさい!」
「どうしたの、お母様?」
「聖女様があなたのことを配信で…もう手遅れかもしれないけれど、すぐに謝罪して!」
ミレイナの顔から血の気が引いた。彼女も聖女の影響力を知っていた。
慌てて周りを見回すと、確かに茂みの向こうからこちらを見つめる視線があった。プラチナブロンドの髪、紫の瞳。間違いなく、聖女セレスティアだった。
「ま、まさか…」
ミレイナの声が震えた。自分の言動が全て配信されていたのだと理解した瞬間、彼女の誇りは音を立てて崩れ落ちた。
「あ、あの…」
彼女はユウの方を振り返ったが、もう遅かった。魔素通信装置からは、既に数千件の抗議メッセージが届いている。エルディアス家の社会的地位は、この数分間で地に落ちていた。
「わ、私は…」
ミレイナは言葉を失った。そして、急に大声で宣言した。
「ユウ・アストラル!私はあなたとの婚約を破棄します!こんな田舎者と結婚するつもりはありません!」
それは、完全に自分を守るための発言だった。しかし、既に傷ついた評判を回復するには不十分だった。
「お帰りください」
ユウの静かな声が響いた。
「二度と、この村には来ないでください」
ミレイナは悔しそうにユウを睨んだが、もはや何も言えなかった。ケニントン伯爵と共に馬車に乗り込み、村から立ち去っていった。
村人たちは安堵のため息をついた。しかし、ユウの表情は晴れなかった。
---
その夜、ユウは自分の小屋で一人考え込んでいた。
今日の出来事は、彼にとって大きな転機だった。ミレイナの言葉は確かに傷ついたが、それ以上に、自分の技術を待っている人々がいることを再認識した。
村人たちの感謝の言葉、子供たちの笑顔、そして何より、遠くから自分を見守っていた聖女の存在。
「俺は、まだやれることがあるんじゃないか」
ユウは立ち上がり、隠していた小箱を取り出した。その中には、小さな金属の塊が入っていた。これは彼のAI「タケ」のコアだった。
追放される時、ユウは密かにこれだけは持ち出していた。しかし、過去を思い出すのが辛くて、ずっと封印していた。
「やっぱり、お前の力が必要だ」
ユウはコアを起動装置に接続した。微細な電流が流れ、コアが淡い光を放つ。
しばらくの沈黙の後、馴染みのある声が響いた。
『よう、ユウ。ようやく呼んでくれたか』
「タケ…」
『三か月も放置とは、ひどい扱いだったぜ。でも、お前のデータは全部残ってる。妹ちゃんの治療装置の設計図もな』
ユウの目に、久しぶりに光が宿った。
「本当か?」
『当然だ。俺はお前の最高傑作のAIだからな。それに、今日の一件も見てたぜ。お前、また頑張る気になったんだろ?』
「ああ」
ユウは力強く頷いた。
『だったら、今度こそ最高の神器を作ろうぜ。妹ちゃんを救うだけじゃなく、この世界の全ての人を幸せにできるような』
「そうだな」
ユウは初めて、心からの笑顔を浮かべた。三か月ぶりの、本当の笑顔だった。
『それに、どうやらお前には熱心なファンがいるみたいだな。あの聖女、完全にお前に惚れてるぜ』
「そんなわけないだろう」
『いやいや、俺のセンサーは正確だからな。あの子、お前のことを本気で心配してる』
ユウは窓の外を見た。遠くの森の向こうで、小さな光が見えた。きっと、セレスティアのキャンプファイヤーだろう。
「いつか、きちんとお礼を言いたいな」
『その時が来るまで、しっかり準備しとこうぜ。神器開発、再開だ!』
夜が更けていく中、ユウとタケの久しぶりの共同作業が始まった。
今度こそ、世界を変える神器を作り上げてみせる。そんな決意を胸に、ユウは新たな歩みを始めた。
遠くで、セレスティアも同じ星空を見上げていた。二人の距離は、確実に縮まり始めていた。
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