最弱王子なのに辺境領地の再建任されました!?無気力領主と貧困村を救ったら、いつの間にか国政の中心になってた件について~

空月そらら

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1章

第53話 エナが領地に訪問

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エナという名の女性商人が、ついにエルウァイ領地を訪れる日がやってきた。

 彼女は王都でも名高い大商会のリーダーであり、商才に長けた人物として知られている。

 その噂に違わず、彼女が馬車から降り立つ姿は洗練されたオーラに満ちていた。

 エナは上質な服に身を包み、その一挙手一投足が威厳と品格を漂わせている。

 一緒に同行している護衛の兵士たちも精悍な顔つきをしており、さすが大商会の規模と影響力を感じさせる光景だった。

「ようこそ、エナ殿。我が領地へお越しいただき光栄です」

 俺トルドルフは最上級の礼儀を尽くし、彼女を出迎えた。エナは柔らかな微笑みを浮かべ、俺に向かって一礼する。

「こちらこそ、リエル殿下、ルドルフ殿。噂に聞くこの領地、ぜひ自分の目で確かめたいと思い訪問させていただきました。どうぞよろしくお願いいたします」

 彼女の言葉は丁寧でありながらも、どこか芯の強さを感じさせるものだった。

 その後ろに控える護衛たちは、周囲を警戒するように目を光らせているが、エナ自身は落ち着いていて威圧感がまるでない。

 この人物と取引を進めるのは間違いなく得難い経験になるだろう――そんな確信が、心の中に芽生えていた。

「では早速、私が領地の特徴をご案内させていただきます。エナ殿には特に見ていただきたい場所がいくつかございますので、どうぞお楽しみに」

 俺はそう言うと、エナは興味深そうに頷き、視線をこちらに向けた。

「楽しみにしています、リエル殿下。では、よろしくお願い申し上げます」



 まず案内したのはスライム畑だ。

「これは……驚きました。スライムの分泌液を利用するなんて、これまで聞いたこともありません。しかも、こんなに整然と管理されているとは……」

 エナはスライム畑を歩きながら感心したように呟く。

 俺はその言葉に小さく笑みを浮かべ、説明を続けた。

「ですが、即効性のあるスライム畑にはデメリットがありまして。分泌液は継続して畑に利用するのは難しいので、通常の畑もしっかりと作物を育てています」

「なるほど、では延長線としてスライム畑を使用していたのですね。その間に通常の畑……安定した供給が見込めそうです」

 エナの評価に、俺は少しほっとした。

 彼女が持つ商売の目は確かだと聞いていたが、実際に目の前で感心されるとやはり嬉しいものだ。



 次に案内したのは動物カフェだ。

 ここは村の人々や旅人たちにとって癒しの場となっており、今ではこの領地の観光の目玉でもある。

 カフェの中では、ウルフの子犬たちが愛らしい仕草で遊び回り、訪れる人々に笑顔を届けていた。

「ここが動物カフェです。ウルフの子犬をはじめとする様々な動物と触れ合いながら、ゆっくりとした時間を過ごせる場所になっています」

 俺が説明すると、エナはウルフの子犬たちに近づき、少し腰を屈めた。

 子犬たちは彼女に興味を持ったのか、しっぽを振りながら近づいていく。

「まぁ、なんて可愛らしいの。このような場所があるなんて、村の方々もさぞ喜ばれているでしょう」

「はい、村の人々も頻繁に訪れてくださいますし、観光客も増えて賑わっています」

 エナはウルフの子犬を優しく撫でながら、柔らかな微笑みを浮かべた。

 その姿を見ていると、彼女がこの領地の良さをしっかりと受け止めてくれていることが伝わってくる。



 最後に案内したのは高級布の製造現場だ。

 ここでは大蜘蛛の糸を使った布を織り上げており、その品質は商人たちからも高い評価を得ている。

 織機が並ぶ工房では、職人たちが真剣な表情で作業に取り組んでいた。

「これが、例の高級布を織り上げている現場です。大蜘蛛の糸は非常に丈夫でありながら、美しい光沢を持っています。この布は王都でも既に話題になっていますよ」

 俺の言葉を聞いたエナは、実際に織り上がった布を手に取り、その質感を確かめるように指先で触れた。

「素晴らしい……。これほどの品質の布、確かに市場で大きな価値を持つことでしょう」

 彼女の目が輝いているのを見て、俺は小さく頷いた。

 この視察が成功すれば、エナを通じて我が領地の特産品がさらに広がることだろう。

「エナ殿、これでご案内は以上です。我が領地の魅力をお伝えできたなら幸いです」

 エナは満足げに微笑み、俺に向かって一礼した。

「ええ、とても感銘を受けました。この領地には確かに大きな可能性がありますね」

 そうしてエナとの視察が一通り終わり、俺たちはエルドフの館へと行く。

 エナと護衛たちは応接室に通され、すぐに温かい茶と軽い菓子が用意された。

 この領地自慢のハーブティーは、独特の香りとリラックス効果で訪問者に好評だ。

 エナもティーカップを手に取り、ゆっくりと一口含んだ。

 その表情が柔らかくなるのを見て、俺は少し安心する。

「素晴らしい香りですね。これもこの土地ならではの特産品なのでしょうか?」

 彼女の問いに俺は頷いた。

「ええ、ここで採れるハーブを独自に調合したものです。エナ殿の口に合って良かったです」

 エナは微笑みながらカップを置き、こちらを真剣な眼差しで見つめてきた。

 彼女の瞳には確かな商人の目が宿っており、その視線には少しの揺るぎもない。

 俺も表情を引き締め、この場で提案するべき内容を整理する。

「エナ殿、今日の視察を経て、いくつかお話ししたいことがあります。少々お時間をいただけますか?」
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