【書籍化決定】悪役貴族に転生した僕、家族を救うために水魔法を極めて破滅回避する!

空月そらら

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序章

第14話 馬車で出発! 家族みんなと雪山温泉旅行

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 誕生日パーティーが終わってから数日後、僕たちは早速雪山の温泉郷へ向けて出発することになった。

 思った以上に計画が早い……というか、母と姉が勢いで進めてしまった感じだ。

 父のグストも領地の仕事があるはずなのに、「こんな機会でもなければしばらく行けないしな」と笑って許可してくれた。
 
 僕はまだ一歳だから、移動手段は基本的に馬車。

 エレノアが抱っこしてくれるし、フェルも一緒に乗り込む予定だというから安心だ。

 フェルは馬車に大人しく乗るのか……と思ったけど、どうやら以前も何度か旅行に同伴しているらしく、慣れたものらしい。

「リウス、ワクワクするわね。雪山よ、雪! 氷魔法で遊び放題だわ!」
 
「たのちみー」

 エレノアがはしゃいで僕を抱き寄せる。

 僕は相変わらず赤ちゃん語しか発せられないけど、頭の中では「確かに雪と魔法の相性はいいはず。フェルと雪合戦とかできたら最高だな……」なんて思いを巡らせている。
 
 父は馬車の積み荷を確認しながら「よし、みんな乗るぞ!」と号令をかけた。

 母は旅用の大きなバッグを抱えて、メイドのリリアと一緒に乗り込み、フェルは後ろ足で軽々と車内に飛び乗る。

 僕はエレノアの膝の上にちょこんと座る形だ。

「わん!」
 
「はいはい、フェルも大人しくしててね? リウスにぶつからないように……」

 尻尾をブンブン振るフェルに、エレノアが注意する。

 フェルは素直に「くぅん」と頷くような声を漏らし、僕の足元に丸くなった。

 馬車がゆったりと動き出すと、早速エレノアが窓から外の景色を覗き込む。
 
 ディナトス辺境伯領は広大で、王都から遠く離れた場所にある。

 今回の目的地は、その中でもさらに北東の山奥。

 森や湖を越えて雪山地帯に入るまで、馬車で半日以上かかるらしい。

「リウス、退屈しない? バタバタ揺れて大変でしょう?」
 
「だ、だいじゅぶ……」

 エレノアに気遣われ、僕は笑顔で首を振る。

 揺れはあるけど、前世の乗り物酔いとは比べものにならないし、赤ちゃんだから意外と平気だ。

 むしろこの独特の揺れに心地よさを感じるくらい。
 
 母のクラリスが少し離れた席で「あらあら、リウスはやっぱり物怖じしない子ね」と微笑み、父のグストは窓から景色を眺めながら「あのあたりの森には魔獣が多いが、フェルもいるし安心だな」なんて言っている。

「わん!」

 フェルが「まかせろ」と言わんばかりに尻尾を振り、僕の足元に顔をすり寄せてくる。

 そのもふもふ感が最高で、思わず「もふもふ!」と声を上げてしまう。

 エレノアが「ふふ、リウス、フェルの毛が好きなんだね」と嬉しそうに言いながら、僕の手を導いてフェルの背を撫でさせてくれる。

(ああ、これだ……これこそスローライフの極み……)

 旅の道中からすでにもふもふまみれで、僕はますますテンションが上がる。

 こんなふうに、家族とのんびり旅を楽しむのも悪くない。
 
 そんなことを考えているうちに、馬車はどんどん山道へ進み、やがて外の空気が明らかに冷たくなってきた。

 窓を少し開けると、ヒュウッと冷気が入り込み、エレノアが「わっ、寒い……!」と肩をすくめる。

「リウス、ほら見て。少しずつ地面が白くなってきてない?」
 
「そーだー」

 僕も窓の外を覗き込むと、木々の枝先に薄っすらと雪が積もっているのがわかる。

 まだそれほど深い雪ではないけど、山頂付近は真っ白な世界が広がっているに違いない。

 フェルは鼻先をくんくん動かしながら、明らかに興奮気味に尻尾をバタバタしている。
 
 こうして、僕たちの一行は雪山の温泉地を目指して、わくわくとした気持ちを抱えながら、さらに馬車を走らせていくのだった。

 ★

 馬車に揺られること数時間。

 目的地である雪山の温泉郷――ティエラの雪泉――に到着した。

 そこはディナトス辺境伯領の中でもかなり標高が高いエリアで、冬には深い雪に閉ざされるけれど、その分、絶景と豊富な湯量の温泉を誇る場所でもあるらしい。
 
 馬車を降りた瞬間、冷たい空気が肌をピリリと刺激してきて、思わず「さ、びゅい……」と声が漏れる。

 エレノアに抱かれているから転ぶ心配はないものの、足元にかなりの雪が積もっているのがわかる。
 
「リウス、寒くない? 私のコートに少し入ってなさい」

 エレノアは僕を守るようにコートの前を合わせてくれて、僕はその温かさにホッとする。

 けれど、視線を先にやると、フェルが尻尾を振り回しながら雪の上を駆け回っていた。

 まるで「雪だー!」と言わんばかりに大はしゃぎだ。

「わんわん!」

 フェルは雪の中に突進し、バフッと真っ白な粉雪を舞い上げる。

 その姿があまりに楽しそうで、僕も「しゅごい」と興奮気味に声を上げてしまう。

 エレノアが「あはは、フェルったら。リウスもやりたい?」と笑って言うから、本当は一緒に走りたいけど……今は赤ちゃんだから無理だ。
 
 その時、父のグストが「ほう、そんなに雪がいいなら一丁やるか……雪合戦!」と声を張り上げ、雪を丸めてエレノアの方にポイッと投げる。

 エレノアが「ちょ、何するのよ!」と悲鳴を上げながら避けるけど、少しだけ肩に当たって白い粉が舞う。

「お父さま、ずるいわよ! よーし、こっちも反撃よ!」
 
「こ、こうげち……?」

 エレノアは僕をしっかり抱えたまま、片手を出し、魔力を使って雪を集め始めた。

 すると小さな雪玉が浮かび上がり、そのまま父の足元にぶつかって粉々に。

 父は「ははは! 容赦ないな!」と大笑いしながら雪を払い、さらに大きな雪玉を作ろうとする。
 
 そんな父娘の雪合戦が始まると、母のクラリスは「もう、ふふふ、仕方ないわね。私も混ぜてちょうだい」と苦笑しつつ小さな雪玉を転がし始める。

 僕は完全にエレノアの腕の中だけど、姉が作る雪玉を眺めてドキドキわくわく。
 
 フェルはというと、そんな騒動を「わんわん!」と声援しながら雪の中をバフバフ駆け回る。

 まるで観客のように尻尾を振りながら、時々飛んでくる雪玉を頭で受けて粉砕していた。

「きゃはは、フェル、あなたもやる気なの?」
 
「わん!」

 どうやらフェルは自ら雪玉に突進することで、敵の攻撃を防ぐ役目を買って出ているっぽい。

 もふもふの体に雪がついてさらにもふもふ状態になっているのが可愛すぎて、僕は思わずエレノアの腕の中で手をパタパタと動かしてしまう。
 
 エレノアが僕の様子に気づいて「ああ、リウスも参加したいのね? でも危ないから……よし、ちょっとだけ私の氷魔法を見せてあげる!」と声を上げる。

 姉の氷魔法は、雪を自在に操っていろんな造形を作る技だ。

 前にもちらっと見せてくれたことはあるけど、ここでは雪が豊富だからさらに本領を発揮するらしい。

 エレノアは僕を片腕で抱えつつ、もう片方の手をひらひらと動かして詠唱を行う。
 
 すると、足元の雪が集まり、ぼこぼこと形を作り始めた。

 まずは可愛らしいイルカのような姿になり、透き通るような氷の表面が光を反射してキラキラ輝いている。

「わあ……しゅごい!」
 
「ふふ、どう? 氷のイルカよ。リウスが喜ぶかと思って……」

 エレノアは得意げに微笑み、僕は「きれいでしゅ!」と興奮を隠せない。

 父や母も「エレノア、随分腕を上げたわね」「こんな芸当までできるとは……」と感心の声を上げている。
 
 フェルは氷のイルカに鼻先を近づけて「わん?」と首を傾げるが、ひんやりした表面にびっくりしたのか、後ろへ飛び退いて雪にダイブしてしまった。

 バフッと盛大に雪煙が舞い上がり、僕は笑顔で「ばぶばぶ!」と手足をばたつかせる。

 エレノアもつられてクスクス笑っていた。

(……なんて平和で幸せなんだろう)

 赤ちゃんとはいえ、原作の知識がある僕は、この光景がどれだけ尊くて暖かいものかを知っている。

 辺境伯家の家族がこうして笑い合い、もふもふの相棒と雪ではしゃぐ。

 こんなスローライフがいつまでも続けばいいと心底思ってしまう。
 
 雪遊びで体が冷えてきたところで、母が「そろそろ温泉に入りましょうか?」と提案。

 父のグストも「そうだな、湯に浸からないともったいない」と同意し、僕たちはいったん宿の中へ入って体を温めることになった。
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