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日常編
第124話 春の支度、母と選ぶ刺繍とボタン
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僕が目を丸くして聞き返す。
たしか以前、母が市場で素敵な糸を見つけたという話をしていたが、それがここで登場するのか。
母は「そうよ。光を受けるときらりと反射して、ときには魔力にも反応するの。あなたは魔法を使うでしょうから、少し面白い効果が出るかもしれないわね」と微笑む。
フェルが「わんわん!」と聞いているかのように吠えているが、僕はどこか魔法が絡む服に胸が高鳴った。
「すごい……それ、おしゃれ!」
思わず声を弾ませると、母はさらに嬉しそうに笑みを深める。
「気に入ったならよかったわ。サイズはちゃんとあなたに合わせるし、デザインもある程度自由度があるからね。さあ、そこに座ってちょうだい。肩幅や袖の長さを測りたいから」と裁縫道具を手に取り、手早く準備を始める。
「うん」
僕は言われるがままに椅子にちょこんと座ると、フェルがすかさず足元で寝転び、僕の視線を感じてか「わんわん?」と首をかしげる。
母は測り紐を僕の背中や腕に回しながら数値を確認し、「なるほど、リウス、少し背が伸びたわね。学園に入る頃にはもう少し背が伸びるかもしれないけど、とりあえず今合わせて作っておきましょう」と呟く。
「そっか……もうちょっとしたら丈が合わなくなるかな?」
「うん。だから少し余裕を持たせておくけど、あなた、元が小柄だったのに……あまりタイトに作りすぎるとすぐ着れなくなるものね」
母が苦笑しながら布をめくっては当て、腰回りや裾の長さをイメージしている。
フェルがその横で布に鼻を押しあててクンクンしているのを見て、僕は少し申し訳なく「フェル、邪魔しちゃだめだよ」と注意する。
フェルは「わん……」と後ろ足で下がるが、やがて布の山に興味を持ったのか、その上に乗ろうとモフモフの体を持ち上げる。
「もう……こらフェル! それは新しい布でしょう?」
母が軽く声を上げると、フェルは「わんわん……」としょんぼりした顔で芝居しながら離れる。
僕は苦笑しつつ、フェルの背中をぽんぽん叩いて「ごめん、後で遊ぼうね」と宥める。
母は「ふふ、フェルもこの布が柔らかいってわかってるのね。ここでは寝ちゃダメよ?」と優しく注意する。
「かわいいやつちゅ」
僕はフェルのもふもふにさりげなく頬ずりして、また母のほうを振り返る。
母は真剣な表情で刺繍糸やボタンを選び始めていた。
「この青いボタンと白のレース……それと精霊の糸で袖口を少し刺繍してみようかしら。リウスにどんな柄がいいかな? 何か希望はある?」と話を振ってくるので、僕は一瞬考え込む。
「うーん……魔法っぽいワンポイントがほしいな」と言うと、母は「そしたら、この糸を使って小さな紋章を刺繍しようかしら」とアイデアを膨らませる。
「すごい……ぼく、なにか手伝いたいかも……できる?」
つい申し出るが、母は「ありがとう。でも針は危ないから、せいぜいボタンの色を選んでもらうくらいかしらね。どう?」と微笑む。
僕は「うん、じゃあ何色のボタンがいいかな」と考え込み、フェルが後ろから覗き込んで「わんわん!」と吠える。
まるで意見があるようだが、言葉はわからない。
笑いながら母は「フェルも入りたいの?」と楽しそうに相づちを打つ。
そうやって母と一緒にボタンの色を選んだり、刺繍糸の組み合わせを考えたりしていると、あっという間に時間が過ぎていった。
フェルはまた布の一角に乗ろうとして母に「もうフェル!」と軽く叱られるシーンもあったけれど、それすら微笑ましい騒ぎだ。
僕も「ごめんね、フェルは柔らかいところ好きなんだ」とフォローするが、母は「あとで私が仕立てる、から穴が開かないようにしないとね」と苦笑する。
たしか以前、母が市場で素敵な糸を見つけたという話をしていたが、それがここで登場するのか。
母は「そうよ。光を受けるときらりと反射して、ときには魔力にも反応するの。あなたは魔法を使うでしょうから、少し面白い効果が出るかもしれないわね」と微笑む。
フェルが「わんわん!」と聞いているかのように吠えているが、僕はどこか魔法が絡む服に胸が高鳴った。
「すごい……それ、おしゃれ!」
思わず声を弾ませると、母はさらに嬉しそうに笑みを深める。
「気に入ったならよかったわ。サイズはちゃんとあなたに合わせるし、デザインもある程度自由度があるからね。さあ、そこに座ってちょうだい。肩幅や袖の長さを測りたいから」と裁縫道具を手に取り、手早く準備を始める。
「うん」
僕は言われるがままに椅子にちょこんと座ると、フェルがすかさず足元で寝転び、僕の視線を感じてか「わんわん?」と首をかしげる。
母は測り紐を僕の背中や腕に回しながら数値を確認し、「なるほど、リウス、少し背が伸びたわね。学園に入る頃にはもう少し背が伸びるかもしれないけど、とりあえず今合わせて作っておきましょう」と呟く。
「そっか……もうちょっとしたら丈が合わなくなるかな?」
「うん。だから少し余裕を持たせておくけど、あなた、元が小柄だったのに……あまりタイトに作りすぎるとすぐ着れなくなるものね」
母が苦笑しながら布をめくっては当て、腰回りや裾の長さをイメージしている。
フェルがその横で布に鼻を押しあててクンクンしているのを見て、僕は少し申し訳なく「フェル、邪魔しちゃだめだよ」と注意する。
フェルは「わん……」と後ろ足で下がるが、やがて布の山に興味を持ったのか、その上に乗ろうとモフモフの体を持ち上げる。
「もう……こらフェル! それは新しい布でしょう?」
母が軽く声を上げると、フェルは「わんわん……」としょんぼりした顔で芝居しながら離れる。
僕は苦笑しつつ、フェルの背中をぽんぽん叩いて「ごめん、後で遊ぼうね」と宥める。
母は「ふふ、フェルもこの布が柔らかいってわかってるのね。ここでは寝ちゃダメよ?」と優しく注意する。
「かわいいやつちゅ」
僕はフェルのもふもふにさりげなく頬ずりして、また母のほうを振り返る。
母は真剣な表情で刺繍糸やボタンを選び始めていた。
「この青いボタンと白のレース……それと精霊の糸で袖口を少し刺繍してみようかしら。リウスにどんな柄がいいかな? 何か希望はある?」と話を振ってくるので、僕は一瞬考え込む。
「うーん……魔法っぽいワンポイントがほしいな」と言うと、母は「そしたら、この糸を使って小さな紋章を刺繍しようかしら」とアイデアを膨らませる。
「すごい……ぼく、なにか手伝いたいかも……できる?」
つい申し出るが、母は「ありがとう。でも針は危ないから、せいぜいボタンの色を選んでもらうくらいかしらね。どう?」と微笑む。
僕は「うん、じゃあ何色のボタンがいいかな」と考え込み、フェルが後ろから覗き込んで「わんわん!」と吠える。
まるで意見があるようだが、言葉はわからない。
笑いながら母は「フェルも入りたいの?」と楽しそうに相づちを打つ。
そうやって母と一緒にボタンの色を選んだり、刺繍糸の組み合わせを考えたりしていると、あっという間に時間が過ぎていった。
フェルはまた布の一角に乗ろうとして母に「もうフェル!」と軽く叱られるシーンもあったけれど、それすら微笑ましい騒ぎだ。
僕も「ごめんね、フェルは柔らかいところ好きなんだ」とフォローするが、母は「あとで私が仕立てる、から穴が開かないようにしないとね」と苦笑する。
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