【書籍化決定】悪役貴族に転生した僕、家族を救うために水魔法を極めて破滅回避する!

空月そらら

文字の大きさ
124 / 151
日常編

第124話 春の支度、母と選ぶ刺繍とボタン

しおりを挟む
 僕が目を丸くして聞き返す。

 たしか以前、母が市場で素敵な糸を見つけたという話をしていたが、それがここで登場するのか。

 母は「そうよ。光を受けるときらりと反射して、ときには魔力にも反応するの。あなたは魔法を使うでしょうから、少し面白い効果が出るかもしれないわね」と微笑む。

 フェルが「わんわん!」と聞いているかのように吠えているが、僕はどこか魔法が絡む服に胸が高鳴った。

「すごい……それ、おしゃれ!」
 
 思わず声を弾ませると、母はさらに嬉しそうに笑みを深める。

 「気に入ったならよかったわ。サイズはちゃんとあなたに合わせるし、デザインもある程度自由度があるからね。さあ、そこに座ってちょうだい。肩幅や袖の長さを測りたいから」と裁縫道具を手に取り、手早く準備を始める。

「うん」
 
 僕は言われるがままに椅子にちょこんと座ると、フェルがすかさず足元で寝転び、僕の視線を感じてか「わんわん?」と首をかしげる。

 母は測り紐を僕の背中や腕に回しながら数値を確認し、「なるほど、リウス、少し背が伸びたわね。学園に入る頃にはもう少し背が伸びるかもしれないけど、とりあえず今合わせて作っておきましょう」と呟く。

「そっか……もうちょっとしたら丈が合わなくなるかな?」
 
「うん。だから少し余裕を持たせておくけど、あなた、元が小柄だったのに……あまりタイトに作りすぎるとすぐ着れなくなるものね」
 
 母が苦笑しながら布をめくっては当て、腰回りや裾の長さをイメージしている。

 フェルがその横で布に鼻を押しあててクンクンしているのを見て、僕は少し申し訳なく「フェル、邪魔しちゃだめだよ」と注意する。

 フェルは「わん……」と後ろ足で下がるが、やがて布の山に興味を持ったのか、その上に乗ろうとモフモフの体を持ち上げる。

「もう……こらフェル! それは新しい布でしょう?」
 
 母が軽く声を上げると、フェルは「わんわん……」としょんぼりした顔で芝居しながら離れる。

 僕は苦笑しつつ、フェルの背中をぽんぽん叩いて「ごめん、後で遊ぼうね」と宥める。

 母は「ふふ、フェルもこの布が柔らかいってわかってるのね。ここでは寝ちゃダメよ?」と優しく注意する。

「かわいいやつちゅ」
 
 僕はフェルのもふもふにさりげなく頬ずりして、また母のほうを振り返る。

 母は真剣な表情で刺繍糸やボタンを選び始めていた。

「この青いボタンと白のレース……それと精霊の糸で袖口を少し刺繍してみようかしら。リウスにどんな柄がいいかな? 何か希望はある?」と話を振ってくるので、僕は一瞬考え込む。
 
 「うーん……魔法っぽいワンポイントがほしいな」と言うと、母は「そしたら、この糸を使って小さな紋章を刺繍しようかしら」とアイデアを膨らませる。

「すごい……ぼく、なにか手伝いたいかも……できる?」
 
 つい申し出るが、母は「ありがとう。でも針は危ないから、せいぜいボタンの色を選んでもらうくらいかしらね。どう?」と微笑む。

 僕は「うん、じゃあ何色のボタンがいいかな」と考え込み、フェルが後ろから覗き込んで「わんわん!」と吠える。

 まるで意見があるようだが、言葉はわからない。

 笑いながら母は「フェルも入りたいの?」と楽しそうに相づちを打つ。

 そうやって母と一緒にボタンの色を選んだり、刺繍糸の組み合わせを考えたりしていると、あっという間に時間が過ぎていった。
 
 フェルはまた布の一角に乗ろうとして母に「もうフェル!」と軽く叱られるシーンもあったけれど、それすら微笑ましい騒ぎだ。

 僕も「ごめんね、フェルは柔らかいところ好きなんだ」とフォローするが、母は「あとで私が仕立てる、から穴が開かないようにしないとね」と苦笑する。
しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました! (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です) 壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

元公爵令嬢は年下騎士たちに「用済みのおばさん」と捨てられる 〜今更戻ってこいと泣きつかれても献身的な美少年に溺愛されているのでもう遅いです〜

日々埋没。
ファンタジー
​「新しい従者を雇うことにした。おばさんはもう用済みだ。今すぐ消えてくれ」  ​かつて婚約破棄され、実家を追放された元公爵令嬢のレアーヌ。  その身分を隠し、年下の冒険者たちの身の回りを世話する『メイド』として献身的に尽くしてきた彼女に突きつけられたのは、あまりに非情な追放宣告だった。  ​レアーヌがこれまで教育し、支えてきた若い男たちは、新しく現れた他人の物を欲しがり子悪魔メイドに骨抜きにされ、彼女を「加齢臭のする汚いおばさん」と蔑み、笑いながら追い出したのだ。 ​ 地位も、居場所も、信じていた絆も……すべてを失い、絶望する彼女の前に現れたのは、一人の美少年だった。 ​「僕とパーティーを組んでくれませんか? 貴方が必要なんです」  ​新米ながら将来の可能性を感じさせる彼は、レアーヌを「おばさん」ではなく「一人の女性」として、甘く狂おしく溺愛し始める。  一方でレアーヌという『真の支柱』を失った元パーティーは、自分たちがどれほど愚かな選択をしたかを知る由もなかった。  ​やがて彼らが地獄の淵で「戻ってきてくれ」と泣きついてきても、もう遅い。  レアーヌの隣には、彼女を離さないと誓った執着愛の化身が微笑んでいるのだから。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

腹違いの妹にすべてを奪われた薄幸の令嬢が、義理の母に殴られた瞬間、前世のインテリヤクザなおっさんがぶちギレた場合。

灯乃
ファンタジー
十二歳のときに母が病で亡くなった途端、父は後妻と一歳年下の妹を新たな『家族』として迎え入れた。 彼らの築く『家族』の輪から弾き出されたアニエスは、ある日義母の私室に呼び出され――。 タイトル通りのおっさんコメディーです。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

国外追放だ!と言われたので従ってみた

れぷ
ファンタジー
 良いの?君達死ぬよ?

異世界で目覚めたら、もふもふ騎士団に保護されてました ~ちびっ子だけど、獣人たちの平穏のためお世話係がんばります!!~

ありぽん
ファンタジー
神のミスで命を落とした芽依は、お詫びとして大好きな異世界へ転生させてもらえることに。だが転生の際、またしても神のミスで、森の奥地に幼女の姿で送られてしまい。転生の反動で眠っていた瞳は、気づかないうちに魔獣たちに囲まれてしまう。 しかしそんな危機的状況の中、森を巡回していた、獣人だけで構成された獣騎士団が駆け付けてくれ、芽依はどうにかこの窮地を切り抜けることができたのだった。 やがて目を覚ました芽依は、初めは混乱したものの、すぐに現状を受け入れ。またその後、同じ種族の人間側で保護する案も出たが、ある事情により、芽依はそのまま獣騎士団の宿舎で暮らすことに。 そこで芽依は、助けてくれた獣騎士たちに恩を返すため、そして日々厳しい任務に向かう獣人たちが少しでも平穏に過ごせるようにと、お世話係を買って出る。 そんな芽依に、当初は不安だった獣人たちだったが、元気で明るい瞳の存在は、次第に獣人たちの力となっていくのだった。 これはちびっ子転生者の芽依が、獣人や魔獣たちのために奮闘し、癒しとなっていく。そんな、ほっこりまったり? な物語。

悪役令嬢は処刑されないように家出しました。

克全
恋愛
「アルファポリス」と「小説家になろう」にも投稿しています。 サンディランズ公爵家令嬢ルシアは毎夜悪夢にうなされた。婚約者のダニエル王太子に裏切られて処刑される夢。実の兄ディビッドが聖女マルティナを愛するあまり、歓心を買うために自分を処刑する夢。兄の友人である次期左将軍マルティンや次期右将軍ディエゴまでが、聖女マルティナを巡って私を陥れて処刑する。どれほど努力し、どれほど正直に生き、どれほど関係を断とうとしても処刑されるのだ。

処理中です...