忘れない。

小雨深子

文字の大きさ
1 / 1

忘れない。

しおりを挟む
 『忘れない』
 あの日が永遠に戻らないように、僕もまたあの日から戻れないでいる。
 僕は都内の大学に通う平凡な大学二年生。特にこれといった取り柄も無く、パッとせず地味な毎日を送っている。最寄りの牛丼屋とコンビニでバイトをして、仕送りとバイト代で生活をしている。趣味も別に無いし、友達もさほどいない。強いて言うなら、飼っている猫の世話くらいなもんだ。休みの日も猫といるくらいしかやる事はないが、僕にとっては生き甲斐だ。大学とバイトの往復をする毎日。将来何をしたいかもわからず、只々日々を浪費している。
 『彼女いないのー?』
 等とバイト先の同僚によく聞かれるが、僕は此の手の話が大の苦手だ。女っ気はなく、今までに彼女ができた事も一度もない。そもそも、僕に彼女ができそうに見えるだろうか?できるわけがない。根暗で趣味もなく、日がな一日猫と戯れてるだけ。そんな僕に。そもそも女の子は嫌いだ。同性愛者とかそういうわけではなく、単純な嫌悪だ。僕はかつてクラスの女子に虐められていた事がある。それがきっかけでちょっとしたトラウマだった。
 僕がまだ高校一年生だった頃、クラスの女子が一人僕に話しかけてきた。人見知りの僕は声が小さかった為、その子に返事が聞こえてなかったらしい。僕が無視したと勘違いしたその女子は。その日からあーでもないこーでもないと、有る事無い事僕の噂をするようになった。それからという物、僕はその女のせいで高校三年間虐めの標的にされ続けたのである。きっかけを作ったその女子は、すぐに、そんな事は忘れて周りに同調するように、僕の事を卑下したり無視するようになった。そんな日々を過ごした僕に、当然彼女なんかもでさるはずなく、根暗で卑屈的な自分だけが残った、
 そんな僕は今、その女と同じ大学に入学した。君に復讐する為だけに。さて『何をしてやろうか』そればかりを考えようやく一年が経った。準備は整った。資金も溜まった。
 『先輩やっと僕趣味が見つかりそうです。』
 そう言い、バイト先を後にした。一人暮らしをしてから家に誰かを招くのは初めてだよ。家を綺麗に着飾って、おめかしをしてお迎えしなきゃ。僕は少しも、まだ忘れてないよ。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします

二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位! ※この物語はフィクションです 流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。 当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。

【bl】砕かれた誇り

perari
BL
アルファの幼馴染と淫らに絡んだあと、彼は医者を呼んで、私の印を消させた。 「来月結婚するんだ。君に誤解はさせたくない。」 「あいつは嫉妬深い。泣かせるわけにはいかない。」 「君ももう年頃の残り物のオメガだろ? 俺の印をつけたまま、他のアルファとお見合いするなんてありえない。」 彼は冷たく、けれどどこか薄情な笑みを浮かべながら、一枚の小切手を私に投げ渡す。 「長い間、俺に従ってきたんだから、君を傷つけたりはしない。」 「結婚の日には招待状を送る。必ず来て、席につけよ。」 --- いくつかのコメントを拝見し、大変申し訳なく思っております。 私は現在日本語を勉強しており、この文章はAI作品ではありませんが、 一部に翻訳ソフトを使用しています。 もし読んでくださる中で日本語のおかしな点をご指摘いただけましたら、 本当にありがたく思います。

双子の姉がなりすまして婚約者の寝てる部屋に忍び込んだ

海林檎
恋愛
昔から人のものを欲しがる癖のある双子姉が私の婚約者が寝泊まりしている部屋に忍びこんだらしい。 あぁ、大丈夫よ。 だって彼私の部屋にいるもん。 部屋からしばらくすると妹の叫び声が聞こえてきた。

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

笑う令嬢は毒の杯を傾ける

無色
恋愛
 その笑顔は、甘い毒の味がした。  父親に虐げられ、義妹によって婚約者を奪われた令嬢は復讐のために毒を喰む。

盗み聞き

凛子
恋愛
あ、そういうこと。

いまさら謝罪など

あかね
ファンタジー
殿下。謝罪したところでもう遅いのです。

幼馴染、幼馴染、そんなに彼女のことが大切ですか。――いいでしょう、ならば、婚約破棄をしましょう。~病弱な幼馴染の彼女は、実は……~

銀灰
恋愛
テリシアの婚約者セシルは、病弱だという幼馴染にばかりかまけていた。 自身で稼ぐこともせず、幼馴染を庇護するため、テシリアに金を無心する毎日を送るセシル。 そんな関係に限界を感じ、テリシアはセシルに婚約破棄を突き付けた。 テリシアに見捨てられたセシルは、てっきりその幼馴染と添い遂げると思われたが――。 その幼馴染は、道化のようなとんでもない秘密を抱えていた!? はたして、物語の結末は――?

処理中です...