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10.見た目も剣技も負けません
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衛兵団長は、剣を構え、始まりの合図を待っている。今までの対戦成績は私の12勝5敗で、圧倒している。まぁ、これは公式の場での話で、今回のような練習試合を入れれば、私の勝率は8割を超えている。
チャーフィーは、私より二つ上の、42歳。40歳で、女性初の団長になる快挙を起こした英雄だ。私は、チャーフィーに続く、2人目の女性団長だ。
初めてチャーフィーに挑んだのは、私が大隊長に就任した後、頭を下げて憧れの女性に手ほどきを願った。女性は快く引き受けてくれて、胸を借りた。結果は私の圧勝だった。私は、先輩がお祝いに勝ちを譲ってくれたと思っていたが、その後の対戦も負けることなく勝ち続けた。これ以上勝ち続けるのはまずいのではと、空気を読んで負けたのが5敗で正直、本気を出せば負ける相手ではない。
その格下が、完全アウェイの場所で私に挑んでくる。いや、場所はアウェイなのだが、空気はホームなのはなぜ?
「始め」
開始の合図が出た。チャーフィーはすさまじい速さで、私に斬りかかってくる。だが、速さでは私の方が上で、チャーフィーにとって、もっとも相性が悪いのが私だ。
チャーフィーはその身の軽さと柔軟さから、予測不能な剣の軌道を生み、すさまじい速さで、意表を突くのが得意。
対する私の得意とするのが、前回の衛士長同様、踏み込んでくる相手に居合のカウンターを当てる。
つまり、チャーフィーは防御を捨てた先制攻撃で仕留めるが、私は居合による先制攻撃ができるうえ、攻撃をかわしたカウンター攻撃もできる。私の方が早いからすべてにおいて有利なのだ。楽に勝てる相手のはずだが。
──カチン。
これだ。このあり得ない方向から出てくる剣。これのせいで軌道が読めず、かわす事ができないので、受けるしかない。そのため、私の居合が封じ込まれる。
どうして、真下から真上に剣を振る事ができる。一体、どんな身体のつくりをしているのだ。
その後も、ありえない方向から剣が襲いかかってきて、私はひたすら受け続けた。普通ならこの連続攻撃に耐え兼ね、少しずつ後退し追い詰められる。私の負けた5敗は、すべてそのパターンでやられている。なので、下がらない。ひたすら攻撃を受け続ける。チャーフィーも人なので、永遠に攻撃することはできない。必ず息が切れる、私はそれを待つ。
「くっ」
──今だ。
チャーフィーは、息を整えるため一歩下がった。私はそこに一撃を入れる。
「がはっ」
私の一撃がチャーフィーをとらえ、勝負あり。毎回このパターンで、私が勝っている。
『おおおお』
──そなた、狙っているのか。
チャーフィーは、私の一撃で座り込んでいた。その座りが横座りで、妙に色っぽく我が部下達の視線を釘付けにしていた。まさか、これがやりたくて、負けたのではないだろうな。
「今回も、防ぎ切られたか。持続時間が伸びているはずなのに、よく防ぐな。」
「剣速も早めたらどうだ?多少、不意を突かれても間に合ってしまうので、時間だけ伸ばしても効果はないぞ」
「早くなっているはずなのだけどなぁぁ」
私はチャーフィーの手を取り、引っ張って起こし上げた。そして、一緒に訓練場を出ようと歩み始める。
「コメット団長、ドンマイです」「今回は、運がなかっただけです」「俺達、ずぅっとコメット団長を応援していますから」『そうだ、そうだ』
「あっそれ」『コメット』「あっそれ」『コメット』「あっそれ」『コメット』「あっそれ」『コメット』
「ふふ、みんなありがとう。次は、勝つわ」
ここ、騎士団の訓練場だよな。そして、私は騎士団長。なのに、このアウェイ感は、なんなのだ。まるで勝ってはいけなかった雰囲気ではないか。…まぁ、いい。全員でチャーフィーを睨みつけるよりは、マシか。
「約束は果たしたぞ」
「分かっている。次の支援小隊は、私が指揮する」
その後、団長室に戻った私は、待っていた副団長に捕まり、団員の訓練の邪魔をするなとこっぴどく怒られた。
──あのぉ私、団長なのですけど。
今回の勝負は、来るオーガ討伐で、衛兵団長自身の支援を受けるための根回しだと主張したら、副団長は何も言えなくなっていた。ていうか、オーガ出現に驚き、私自らの出撃に驚き、反対し、口論になり、説教どころではなくなっていた。結局、団長の意見を尊重しなければならないので、折れてくれた。
翌朝、急にお館様に呼び出された。
「騎士団に、オーガ討伐の特別命令を発令する」
「承りました。すぐに第5小隊、第1特別小隊を出撃いたします。つきましては、衛兵団の支援を承りたく存じます」
「うむ。コメット団長、頼めるか?」
「承知いたしました。すぐに支援小隊を編成して、私自ら指揮いたします」
「よし。ならば行くがよい。良い報告を期待しておるぞ」
『ははぁぁ』
用件は予想通り、オーガ討伐だ。前日より根回し、準備をしていたので、速やかな行動がとれる。私の号令で、すぐにでも部隊が北門に集結するはずだ。
──…はずなのだが。何でぇぇぇぇ。
第5小隊が来ない。私はすぐに、副団長に再手配するよう使いを出した。あぁぁぁ、騎士団長の呆れた視線が、私に刺さる。
──あー、なんて憂鬱なのだ。
チャーフィーは、私より二つ上の、42歳。40歳で、女性初の団長になる快挙を起こした英雄だ。私は、チャーフィーに続く、2人目の女性団長だ。
初めてチャーフィーに挑んだのは、私が大隊長に就任した後、頭を下げて憧れの女性に手ほどきを願った。女性は快く引き受けてくれて、胸を借りた。結果は私の圧勝だった。私は、先輩がお祝いに勝ちを譲ってくれたと思っていたが、その後の対戦も負けることなく勝ち続けた。これ以上勝ち続けるのはまずいのではと、空気を読んで負けたのが5敗で正直、本気を出せば負ける相手ではない。
その格下が、完全アウェイの場所で私に挑んでくる。いや、場所はアウェイなのだが、空気はホームなのはなぜ?
「始め」
開始の合図が出た。チャーフィーはすさまじい速さで、私に斬りかかってくる。だが、速さでは私の方が上で、チャーフィーにとって、もっとも相性が悪いのが私だ。
チャーフィーはその身の軽さと柔軟さから、予測不能な剣の軌道を生み、すさまじい速さで、意表を突くのが得意。
対する私の得意とするのが、前回の衛士長同様、踏み込んでくる相手に居合のカウンターを当てる。
つまり、チャーフィーは防御を捨てた先制攻撃で仕留めるが、私は居合による先制攻撃ができるうえ、攻撃をかわしたカウンター攻撃もできる。私の方が早いからすべてにおいて有利なのだ。楽に勝てる相手のはずだが。
──カチン。
これだ。このあり得ない方向から出てくる剣。これのせいで軌道が読めず、かわす事ができないので、受けるしかない。そのため、私の居合が封じ込まれる。
どうして、真下から真上に剣を振る事ができる。一体、どんな身体のつくりをしているのだ。
その後も、ありえない方向から剣が襲いかかってきて、私はひたすら受け続けた。普通ならこの連続攻撃に耐え兼ね、少しずつ後退し追い詰められる。私の負けた5敗は、すべてそのパターンでやられている。なので、下がらない。ひたすら攻撃を受け続ける。チャーフィーも人なので、永遠に攻撃することはできない。必ず息が切れる、私はそれを待つ。
「くっ」
──今だ。
チャーフィーは、息を整えるため一歩下がった。私はそこに一撃を入れる。
「がはっ」
私の一撃がチャーフィーをとらえ、勝負あり。毎回このパターンで、私が勝っている。
『おおおお』
──そなた、狙っているのか。
チャーフィーは、私の一撃で座り込んでいた。その座りが横座りで、妙に色っぽく我が部下達の視線を釘付けにしていた。まさか、これがやりたくて、負けたのではないだろうな。
「今回も、防ぎ切られたか。持続時間が伸びているはずなのに、よく防ぐな。」
「剣速も早めたらどうだ?多少、不意を突かれても間に合ってしまうので、時間だけ伸ばしても効果はないぞ」
「早くなっているはずなのだけどなぁぁ」
私はチャーフィーの手を取り、引っ張って起こし上げた。そして、一緒に訓練場を出ようと歩み始める。
「コメット団長、ドンマイです」「今回は、運がなかっただけです」「俺達、ずぅっとコメット団長を応援していますから」『そうだ、そうだ』
「あっそれ」『コメット』「あっそれ」『コメット』「あっそれ」『コメット』「あっそれ」『コメット』
「ふふ、みんなありがとう。次は、勝つわ」
ここ、騎士団の訓練場だよな。そして、私は騎士団長。なのに、このアウェイ感は、なんなのだ。まるで勝ってはいけなかった雰囲気ではないか。…まぁ、いい。全員でチャーフィーを睨みつけるよりは、マシか。
「約束は果たしたぞ」
「分かっている。次の支援小隊は、私が指揮する」
その後、団長室に戻った私は、待っていた副団長に捕まり、団員の訓練の邪魔をするなとこっぴどく怒られた。
──あのぉ私、団長なのですけど。
今回の勝負は、来るオーガ討伐で、衛兵団長自身の支援を受けるための根回しだと主張したら、副団長は何も言えなくなっていた。ていうか、オーガ出現に驚き、私自らの出撃に驚き、反対し、口論になり、説教どころではなくなっていた。結局、団長の意見を尊重しなければならないので、折れてくれた。
翌朝、急にお館様に呼び出された。
「騎士団に、オーガ討伐の特別命令を発令する」
「承りました。すぐに第5小隊、第1特別小隊を出撃いたします。つきましては、衛兵団の支援を承りたく存じます」
「うむ。コメット団長、頼めるか?」
「承知いたしました。すぐに支援小隊を編成して、私自ら指揮いたします」
「よし。ならば行くがよい。良い報告を期待しておるぞ」
『ははぁぁ』
用件は予想通り、オーガ討伐だ。前日より根回し、準備をしていたので、速やかな行動がとれる。私の号令で、すぐにでも部隊が北門に集結するはずだ。
──…はずなのだが。何でぇぇぇぇ。
第5小隊が来ない。私はすぐに、副団長に再手配するよう使いを出した。あぁぁぁ、騎士団長の呆れた視線が、私に刺さる。
──あー、なんて憂鬱なのだ。
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