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16.闘技祭が始まります
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午前中の業務を終え昼休憩が終わる頃、文官・衛兵・侍女・召使・下男・下女などの者達が、闘技場の観客席に集まり順次腰を下ろす。闘技祭当日を迎えていた。私は貴賓室に赴き、お館様がお越しになるのを待った。競技場には、騎士団の面々が入場して整列し始める。
先頭に副団長、その後ろに2人の大隊長、さらに後ろに4人の中隊長、最後に1列10人の小隊が10列に並んでいる。
よし、みんな綺麗に並んでいる。何とか間に合ったな。本来なら、私と副団長の立ち位置が逆でなければならない。ただ団員達は、新米団長に戸惑っているのか私が先頭に立つと、列が乱れ表情もたるむ。どれほど訓練しても改善されず、試しに副団長を先頭にするとまとまった。なので、今回の先頭の栄誉は、副団長に譲る事にした。
「あら、騎士団長。闘技祭には参加しないの?」
貴賓室にもう一人の団長が入ってきた。闘技祭での貴賓室の護衛は、衛兵団長と騎士副団長、そして衛士長3人で担当する。今回は来賓がいないので、お館様一人を護衛することになる。
「まだ私を中心にまとまっていない。お館様には無様を見せられんからな、今回は副団長に譲った」
「ならば、せめてお化粧の一つでもしたらどう?観客席を見て。みんな気合が入っているわよ」
「それは、衛兵団長も同じであろう」
「私に、そんなもの必要ないわ。これで十分魅了できるわよ」
「私も、だ」
貴賓室に、衛士隊員が入って来てチャーフィーに耳打ちしている。どうやら、お館様が、お越しになられたようだ。
「皆の者、聞けぇ。お館様のお越しである」
チャーフィーの掛け声に全員が立ち上がり、胸に手を当て、頭を下げる。闘技場内が静まり返ると貴賓室の扉が開き、お館様と衛士長が入ってくる。扉が閉まると衛士長は入口で立ち止まり、お館様お一人、自分の席まで移動する。
「皆、本日もご苦労である。これより、闘技祭の開催を宣言する」
──わぁぁぁ。
観客席が湧き上がる。いよいよ、闘技祭が始まる。まずは、騎士団による演武。上中下の3種類の構えから8種類の攻撃を全員で合わせ、一つずつ24の型を丁寧に見せて行く。
「やぁ。」『やぁ。』
副団長の掛け声に合わせて、全員が剣を振る。よく合っている。とても綺麗だ。観客席からも感嘆の声が上がってきている。
「見事だ。よく訓練されておる。ところでクロムウェル団長」
──来たぁぁぁ。
「貴殿は参加しないのか?」
「はい。団長になったばかりなので、まだ私の統率では、ここまではできません。恥ずかしながら今回は、見送らせてもらいました。」
「そうか、致し方ないの。ならば、せめて着飾ったらどうじゃ。観客席を見ろ。皆、それなりに頑張っておるではないか。」
──はぁ?このおっさん、なんで、チャーフィーと同じ事言っているの。
チャーフィーが、笑いを堪えている。
「コメット団長。貴殿も、他人事ではない。せっかくこの場に、うら若き乙女が2人もいるのに、花がなさすぎる。団長だからといって、なにも女を捨てる必要はない。こういう時くらい、着飾ってもよいのだぞ。」
「お言葉ですが、ただでさえ貴賓室は目立ち、注目を浴びます。そのような場所で着飾れば団長としての特権を利用した事になり、反感を買いかねません。ご指摘、もっともでございますが、なにとぞ私達の立場をご理解いただきたく存じます。それに少なくとも私は、このままの方が周囲とのバランスが取れていると認識しております。」
「そうか、そういうものなのか。致し方ないの。」
チャーフィーの一喝に、お館様が落ち込んだ。お館様なりの気遣いなのであろうが、余計なお世話である。チャーフィーが反論するのも無理はない。でも“少なくとも私は”とはなんだ。“私達は”でいいだろう。
──なんで、そんな言い方をするのかな?
ムカついたが、いつもの事なので流す事にするが、覚えておけよ。それはさておき、さすがは衛兵団長だ。お館様に物怖じせず、はっきりと意見を言い納得させたのだからすごい。私もいつかは、こうありたいものだ。
騎士団による演武が終わり、次は競技場を4分割して、各小隊の代表戦が行われた。今回は、第1~第4までの小隊で行われる。代表に選ばれれば、年末の闘技祭で行われる騎士団最強決定戦の参加が決まる。まずは団員8人が、1回戦、2回戦を行い、準決勝から隊長・副隊長が参加する。そして、決勝戦だ。このやり方では、隊長と副隊長が圧倒的有利で大抵、どちらかが代表になる。だが、隊長だからと言って必ずしも剣技が凄いとは限らない。ボブ・センプルがいい例だ。それがあるから、盛り上がる。しかし今回は、すべて隊長が代表になった。大番狂わせもなく、少し盛り上がりに欠けたか。
代表戦が終わり、いよいよ特別イベントが始まる。今回の演武は、団長・副団長チーム対大隊長チームの対抗戦だ。このイベントは歴代初のイベントで、これを聞いたお館様のテンションは最高値に至り、このイベントに限り金銭をかけた予想を認めた。
というか、おっさんがそれをやりたかったのだと思う。実際、おっさんはどれに賭けるか、ここ数日仕事も手につかず、必死に考えていたからな。
そりゃ普通、そんな事をすれば、あとあと遺恨が残り、組織がチグハグするのでやらないよなぁ。でも今回はチグハグした組織を、改善するためなので実現した。
まずは、カヴェナンター副団長対テトラーク第1大隊長。実は、次の私の試合よりこの試合の方が、盛り上がっている。なぜなら、2人の名字が同じホイペットだからだ。公式の場での親子対決も珍しく、お館様をはじめ観客たちも新旧交代があるのかと注目していた。
──いや、例え副団長が負けても、役職の交代はないから。
そんな私の言葉も届かず、対決が始まった。本日最高潮の盛り上がりを見せ、息詰まる戦いが繰り広げていた。壮絶な戦いの末、何とかカヴェナンター殿が勝利した。親子は、肩を抱き合い観客の声援にこたえ、会場は大歓声に包まれていた。
──えぇぇぇ。この後、試合をするのか?憂鬱しかないよねぇ。
先頭に副団長、その後ろに2人の大隊長、さらに後ろに4人の中隊長、最後に1列10人の小隊が10列に並んでいる。
よし、みんな綺麗に並んでいる。何とか間に合ったな。本来なら、私と副団長の立ち位置が逆でなければならない。ただ団員達は、新米団長に戸惑っているのか私が先頭に立つと、列が乱れ表情もたるむ。どれほど訓練しても改善されず、試しに副団長を先頭にするとまとまった。なので、今回の先頭の栄誉は、副団長に譲る事にした。
「あら、騎士団長。闘技祭には参加しないの?」
貴賓室にもう一人の団長が入ってきた。闘技祭での貴賓室の護衛は、衛兵団長と騎士副団長、そして衛士長3人で担当する。今回は来賓がいないので、お館様一人を護衛することになる。
「まだ私を中心にまとまっていない。お館様には無様を見せられんからな、今回は副団長に譲った」
「ならば、せめてお化粧の一つでもしたらどう?観客席を見て。みんな気合が入っているわよ」
「それは、衛兵団長も同じであろう」
「私に、そんなもの必要ないわ。これで十分魅了できるわよ」
「私も、だ」
貴賓室に、衛士隊員が入って来てチャーフィーに耳打ちしている。どうやら、お館様が、お越しになられたようだ。
「皆の者、聞けぇ。お館様のお越しである」
チャーフィーの掛け声に全員が立ち上がり、胸に手を当て、頭を下げる。闘技場内が静まり返ると貴賓室の扉が開き、お館様と衛士長が入ってくる。扉が閉まると衛士長は入口で立ち止まり、お館様お一人、自分の席まで移動する。
「皆、本日もご苦労である。これより、闘技祭の開催を宣言する」
──わぁぁぁ。
観客席が湧き上がる。いよいよ、闘技祭が始まる。まずは、騎士団による演武。上中下の3種類の構えから8種類の攻撃を全員で合わせ、一つずつ24の型を丁寧に見せて行く。
「やぁ。」『やぁ。』
副団長の掛け声に合わせて、全員が剣を振る。よく合っている。とても綺麗だ。観客席からも感嘆の声が上がってきている。
「見事だ。よく訓練されておる。ところでクロムウェル団長」
──来たぁぁぁ。
「貴殿は参加しないのか?」
「はい。団長になったばかりなので、まだ私の統率では、ここまではできません。恥ずかしながら今回は、見送らせてもらいました。」
「そうか、致し方ないの。ならば、せめて着飾ったらどうじゃ。観客席を見ろ。皆、それなりに頑張っておるではないか。」
──はぁ?このおっさん、なんで、チャーフィーと同じ事言っているの。
チャーフィーが、笑いを堪えている。
「コメット団長。貴殿も、他人事ではない。せっかくこの場に、うら若き乙女が2人もいるのに、花がなさすぎる。団長だからといって、なにも女を捨てる必要はない。こういう時くらい、着飾ってもよいのだぞ。」
「お言葉ですが、ただでさえ貴賓室は目立ち、注目を浴びます。そのような場所で着飾れば団長としての特権を利用した事になり、反感を買いかねません。ご指摘、もっともでございますが、なにとぞ私達の立場をご理解いただきたく存じます。それに少なくとも私は、このままの方が周囲とのバランスが取れていると認識しております。」
「そうか、そういうものなのか。致し方ないの。」
チャーフィーの一喝に、お館様が落ち込んだ。お館様なりの気遣いなのであろうが、余計なお世話である。チャーフィーが反論するのも無理はない。でも“少なくとも私は”とはなんだ。“私達は”でいいだろう。
──なんで、そんな言い方をするのかな?
ムカついたが、いつもの事なので流す事にするが、覚えておけよ。それはさておき、さすがは衛兵団長だ。お館様に物怖じせず、はっきりと意見を言い納得させたのだからすごい。私もいつかは、こうありたいものだ。
騎士団による演武が終わり、次は競技場を4分割して、各小隊の代表戦が行われた。今回は、第1~第4までの小隊で行われる。代表に選ばれれば、年末の闘技祭で行われる騎士団最強決定戦の参加が決まる。まずは団員8人が、1回戦、2回戦を行い、準決勝から隊長・副隊長が参加する。そして、決勝戦だ。このやり方では、隊長と副隊長が圧倒的有利で大抵、どちらかが代表になる。だが、隊長だからと言って必ずしも剣技が凄いとは限らない。ボブ・センプルがいい例だ。それがあるから、盛り上がる。しかし今回は、すべて隊長が代表になった。大番狂わせもなく、少し盛り上がりに欠けたか。
代表戦が終わり、いよいよ特別イベントが始まる。今回の演武は、団長・副団長チーム対大隊長チームの対抗戦だ。このイベントは歴代初のイベントで、これを聞いたお館様のテンションは最高値に至り、このイベントに限り金銭をかけた予想を認めた。
というか、おっさんがそれをやりたかったのだと思う。実際、おっさんはどれに賭けるか、ここ数日仕事も手につかず、必死に考えていたからな。
そりゃ普通、そんな事をすれば、あとあと遺恨が残り、組織がチグハグするのでやらないよなぁ。でも今回はチグハグした組織を、改善するためなので実現した。
まずは、カヴェナンター副団長対テトラーク第1大隊長。実は、次の私の試合よりこの試合の方が、盛り上がっている。なぜなら、2人の名字が同じホイペットだからだ。公式の場での親子対決も珍しく、お館様をはじめ観客たちも新旧交代があるのかと注目していた。
──いや、例え副団長が負けても、役職の交代はないから。
そんな私の言葉も届かず、対決が始まった。本日最高潮の盛り上がりを見せ、息詰まる戦いが繰り広げていた。壮絶な戦いの末、何とかカヴェナンター殿が勝利した。親子は、肩を抱き合い観客の声援にこたえ、会場は大歓声に包まれていた。
──えぇぇぇ。この後、試合をするのか?憂鬱しかないよねぇ。
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