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66話 街に人さらいがいる
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ラン茸を採ってマリナに渡し、同じものを探すよう頼んだ。
「うん、分かった」
マリナはラン茸を探し始める。その間に、ヤスオはアリアドネに話しかける。
「アリ姉様、お待たせしました。お声をお聞かせくださいませ」
──カァァァァァァァァァ。
「あれ、ひょっとして、まだ寝ています?」
──クゥゥゥゥゥゥゥゥゥ。
「アリ姉様、起きて、起きて、起きて、起きてくださぁぁぁぁい」
(あれ?ヤスオ?寝ている私を、起こすなんていい度胸ね)
「そんな事より、帰り道が分からないのです。助けてください」
(それより朝ごはんは、何食べたの?)
「ナシです」
(何も食べてないの?)
「お約束ですね」
(ナシならいいわ。もしオクカツだったら、許さなかったけど。いいわ、案内してあげる)
すぐに出発するのも、おかしいので、四半刻ほど採取してマリナに声をかけた。
「マリナ、そろそろ行こうか」
「うん。お兄ちゃん、これでいい?」
マリナは自分のスカートをめくり上げ、ヤスオに歩み寄る。スカートの上には、大量のラン茸が置いてあった。
(すごいわね)
「マリナ、君は採取の天才か?」
こうして二人はアリアドネの案内で、森を抜けることができた。森を抜ければ、草原を歩き、街に続く街道に出る。ヤスオはマリナと一緒に歩いたり、背負ったり、肩に乗せたりと道のりを楽しんだ。はしゃぎ過ぎたか、街道に入る手前で二人共疲れてしまった。
「マリナはどうして奴らに捕まったのかい?」
ブドウをつまみながら、休憩することにした。その場所は街道のすぐ横で、時折馬車が通過していく。二人は馬車が通過するたびに、手を振り挨拶をした。
「乗っていた馬車が魔物に襲われたの。森の中に逃げ込んだら、つかまっちゃった」
その言葉に、ヤスオの疑問は一気に増えた。
馬車でどこに行こうとしたのか。誰と馬車に乗っていたのか。その人達はどこに行ったのか。馬車を襲った魔物とは。それらの疑問を解くため、この休憩を利用して色々聞いてみた。
マリナはサンセット通りに住む商人の娘。ある日、家の近くで遊んでいると知らない男に連れ去られた。その夜、樽に詰められ樽ごと馬車に乗せられて町の外へ連れ出される。
その馬車が、角の生えた牛のような魔物に襲われた。馬車は魔物にひっくり返され、その衝撃で樽の蓋が開いたので逃げだした。魔物から身を隠すため近くの森に逃げ込み潜んでいたら、ゴブリンに見つかり連れ去られた。
そういう話を、まるで英雄譚のように淡々と話す。さぞ怖かったであろう。それを微塵も見せないマリナに感服した。
「それで、馬車に乗っていた大人は、どうした?」
「二人は、馬と一緒に魔物に食べられていたよ」
「助かったのはマリナだけかい?」
「わかんない。他にも誰かいたけど、逃げるのに必死でそれどころじゃなかった」
「そうか。門を通る時、門番さんはマリナに気がつかなかったのかい?」
「うん。大声出したけど気づかなかった。私ね、ぶどう酒なんだって」
(まぁ、よりによってぶどう酒に偽装するなんて、わたしに喧嘩を売っているわね)
アリアドネの怒りの理由は分からない。ぶどう酒だからディオ様に関係していることかもしれない。それはさておき、この件は門番も共犯者かも知れない。
「さて、どうしたものか」
マリナを連れて門を通るのは危険なのかも知れない。どうしようかと考えた。とはいえ強硬突破しかないのだが。
(門番が人さらいに関与することは、絶対にないから安心して。ただ、お小遣いをもらって、荷物の確認を省略するのはよくある事よ)
門番を信用していいのなら安心だ。だったら堂々と門を通ろうと決めた。
ヤスオとマリナは北門に到着した。小さい女の子を連れていたので、当たり前のように疑われた。ゴブリンから助け出したことを伝えても信じてくれない。何か証拠はないのかと言ってきたので、マリナの体臭を嗅がせた。
「うわ。くっさぁぁぁ」
門番は、腰を抜かし、尻もちをついた。面白いので、ヤスオはマリナを抱きかかえ、門番に歩み寄る。
「ま、待て。悪かった。疑って悪かったから、近づかないでくれぇ」
門番は、鼻をつまみ涙目になりながら、正座して疑ったことを詫びた。
「お兄ちゃん。私、最強だね」
「そうだね。今のマリナに勝てる奴は、いないかも」
念のため、マリナの外出記録がないか調べてもらったが、やはりなかった。
街に入り、すぐに家に送りたかったが、人さらいの件があるので、目の前の冒険者組合に寄ることにした。人さらいの件をメンガンダルに話し、領主と冒険者組合を巻き込もうと考えていた。
ヤスオはマリナを連れ冒険者組合に入る。お昼には、まだ早い時間なので人は、まばらだった。受付には、初めて見る女性が座っていた。アガサにシンシア、イーシアにユキナにチェンチェン。一体この組合に女性職員は何人いるのだろうと疑問に思った。
──ゲッ。
そして、横の魔石換金にはフランツが、座っていた。今度は魔石換金の職員は、フランツしかいないのかと疑問に思う。
食堂には、シンシアとイーシアがかなり早い昼食を取っていた。その二人にヘーカー達三人が、ちょっかいを出していた。
「あっ、ヤスオさん」
シンシアがヤスオに気づき手を振り、声をかけてきた。ヤスオも手を振り返し、シンシアの元に足を進めた。
「おい、G級。俺たちの邪魔するんじゃぁねぇ」
ヘーカーは鬼のような形相で、ヤスオを睨みつける。
「おいおい、ヘーカー。見ての通り俺はこの子とデート中だ。野暮な事するなよ」
「てめえこそ、俺達の語り合いの場を乱すんじゃねぇ」
「語り合いねぇ?お前が一方的に語っているだけだろう。二人は、お前を視界にも入れてないじゃないか」
「てめえぇ。随分、言ってくれるじゃぁねぇか」
「おいおい。もてないからって、俺に当たるなよ。それとも俺が、かわいい子を連れているのが、羨ましいのかい?」
「てめえ、本当に殺すぞ」
ヘーカーは、顔を真っ赤にして、怒りに任せ、腰の剣に手をかけて構えた。
「うん、分かった」
マリナはラン茸を探し始める。その間に、ヤスオはアリアドネに話しかける。
「アリ姉様、お待たせしました。お声をお聞かせくださいませ」
──カァァァァァァァァァ。
「あれ、ひょっとして、まだ寝ています?」
──クゥゥゥゥゥゥゥゥゥ。
「アリ姉様、起きて、起きて、起きて、起きてくださぁぁぁぁい」
(あれ?ヤスオ?寝ている私を、起こすなんていい度胸ね)
「そんな事より、帰り道が分からないのです。助けてください」
(それより朝ごはんは、何食べたの?)
「ナシです」
(何も食べてないの?)
「お約束ですね」
(ナシならいいわ。もしオクカツだったら、許さなかったけど。いいわ、案内してあげる)
すぐに出発するのも、おかしいので、四半刻ほど採取してマリナに声をかけた。
「マリナ、そろそろ行こうか」
「うん。お兄ちゃん、これでいい?」
マリナは自分のスカートをめくり上げ、ヤスオに歩み寄る。スカートの上には、大量のラン茸が置いてあった。
(すごいわね)
「マリナ、君は採取の天才か?」
こうして二人はアリアドネの案内で、森を抜けることができた。森を抜ければ、草原を歩き、街に続く街道に出る。ヤスオはマリナと一緒に歩いたり、背負ったり、肩に乗せたりと道のりを楽しんだ。はしゃぎ過ぎたか、街道に入る手前で二人共疲れてしまった。
「マリナはどうして奴らに捕まったのかい?」
ブドウをつまみながら、休憩することにした。その場所は街道のすぐ横で、時折馬車が通過していく。二人は馬車が通過するたびに、手を振り挨拶をした。
「乗っていた馬車が魔物に襲われたの。森の中に逃げ込んだら、つかまっちゃった」
その言葉に、ヤスオの疑問は一気に増えた。
馬車でどこに行こうとしたのか。誰と馬車に乗っていたのか。その人達はどこに行ったのか。馬車を襲った魔物とは。それらの疑問を解くため、この休憩を利用して色々聞いてみた。
マリナはサンセット通りに住む商人の娘。ある日、家の近くで遊んでいると知らない男に連れ去られた。その夜、樽に詰められ樽ごと馬車に乗せられて町の外へ連れ出される。
その馬車が、角の生えた牛のような魔物に襲われた。馬車は魔物にひっくり返され、その衝撃で樽の蓋が開いたので逃げだした。魔物から身を隠すため近くの森に逃げ込み潜んでいたら、ゴブリンに見つかり連れ去られた。
そういう話を、まるで英雄譚のように淡々と話す。さぞ怖かったであろう。それを微塵も見せないマリナに感服した。
「それで、馬車に乗っていた大人は、どうした?」
「二人は、馬と一緒に魔物に食べられていたよ」
「助かったのはマリナだけかい?」
「わかんない。他にも誰かいたけど、逃げるのに必死でそれどころじゃなかった」
「そうか。門を通る時、門番さんはマリナに気がつかなかったのかい?」
「うん。大声出したけど気づかなかった。私ね、ぶどう酒なんだって」
(まぁ、よりによってぶどう酒に偽装するなんて、わたしに喧嘩を売っているわね)
アリアドネの怒りの理由は分からない。ぶどう酒だからディオ様に関係していることかもしれない。それはさておき、この件は門番も共犯者かも知れない。
「さて、どうしたものか」
マリナを連れて門を通るのは危険なのかも知れない。どうしようかと考えた。とはいえ強硬突破しかないのだが。
(門番が人さらいに関与することは、絶対にないから安心して。ただ、お小遣いをもらって、荷物の確認を省略するのはよくある事よ)
門番を信用していいのなら安心だ。だったら堂々と門を通ろうと決めた。
ヤスオとマリナは北門に到着した。小さい女の子を連れていたので、当たり前のように疑われた。ゴブリンから助け出したことを伝えても信じてくれない。何か証拠はないのかと言ってきたので、マリナの体臭を嗅がせた。
「うわ。くっさぁぁぁ」
門番は、腰を抜かし、尻もちをついた。面白いので、ヤスオはマリナを抱きかかえ、門番に歩み寄る。
「ま、待て。悪かった。疑って悪かったから、近づかないでくれぇ」
門番は、鼻をつまみ涙目になりながら、正座して疑ったことを詫びた。
「お兄ちゃん。私、最強だね」
「そうだね。今のマリナに勝てる奴は、いないかも」
念のため、マリナの外出記録がないか調べてもらったが、やはりなかった。
街に入り、すぐに家に送りたかったが、人さらいの件があるので、目の前の冒険者組合に寄ることにした。人さらいの件をメンガンダルに話し、領主と冒険者組合を巻き込もうと考えていた。
ヤスオはマリナを連れ冒険者組合に入る。お昼には、まだ早い時間なので人は、まばらだった。受付には、初めて見る女性が座っていた。アガサにシンシア、イーシアにユキナにチェンチェン。一体この組合に女性職員は何人いるのだろうと疑問に思った。
──ゲッ。
そして、横の魔石換金にはフランツが、座っていた。今度は魔石換金の職員は、フランツしかいないのかと疑問に思う。
食堂には、シンシアとイーシアがかなり早い昼食を取っていた。その二人にヘーカー達三人が、ちょっかいを出していた。
「あっ、ヤスオさん」
シンシアがヤスオに気づき手を振り、声をかけてきた。ヤスオも手を振り返し、シンシアの元に足を進めた。
「おい、G級。俺たちの邪魔するんじゃぁねぇ」
ヘーカーは鬼のような形相で、ヤスオを睨みつける。
「おいおい、ヘーカー。見ての通り俺はこの子とデート中だ。野暮な事するなよ」
「てめえこそ、俺達の語り合いの場を乱すんじゃねぇ」
「語り合いねぇ?お前が一方的に語っているだけだろう。二人は、お前を視界にも入れてないじゃないか」
「てめえぇ。随分、言ってくれるじゃぁねぇか」
「おいおい。もてないからって、俺に当たるなよ。それとも俺が、かわいい子を連れているのが、羨ましいのかい?」
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ヘーカーは、顔を真っ赤にして、怒りに任せ、腰の剣に手をかけて構えた。
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