異世界での異生活

なにがし

文字の大きさ
66 / 117

66.拉致

しおりを挟む
 奇跡が起こった。目の前に、希少種のラン茸が自生していた。

 それを採るとマリナに渡し、同じ物を採取するよう頼んだ。

「うん。分かった。」

 マリナはラン茸を探し始める。その間に、ヤスオはアリアドネに話しかける。

「アリ姉様、お待たせしました。お声をお聞かせくださいませ。」

──カァァァァァァァァァ。

「ひょっとして、まだ寝ています?」

──クゥゥゥゥゥゥゥゥゥ。

「アリ姉様、起きて、起きて。起きて、起きてくださぁぁぁぁい。」
(あれ?ヤスオ?寝ているわたしを、起こすなんていい度胸ね。)
「そんな事より、帰り道が分からないのです。助けてください。」
(それより朝ごはんは、何食べたの?)
「ナシです。」
(何も食べてないの?)
「お約束ですね。」
(ナシならいいわ。もしオクレツだったら、許さなかったけど。いいわ、案内してあげる。)

 すぐに出発するのも、おかしいので、四半刻ほど、採取してマリナに声をかけた。

「マリナ、そろそろ行こうか。」
「うん。お兄ちゃん、これでいい?」

 マリナは自身のスカートをめくり上げ、ヤスオに歩み寄る。スカートの上には、大量のラン茸が置いてあった。

(すごいわね。)
「マリナ、君は採取の天才か?」

 こうして2人はアリアドネの案内で、森を抜けることができた。森を抜ければ、草原を歩き、街に続く街道に出る。ヤスオはマリナと一緒に歩いたり、背負ったり、肩に乗せたりと道のりを楽しんだ。はしゃぎ過ぎたか、街道に入る手前で2人とも疲れてしまう。

「マリナはどうして奴らに捕まったのかい?」

 ブドウをつつきながら、休憩することにした。その場所は街道のすぐ横で時々、馬車が通っていた。二人は馬車が通過するたびに、手を振り挨拶をした。

「乗っていた馬車が魔物に襲われたの。森の中に逃げ込んだら、つかまっちゃった。」

 その言葉に、ヤスオの疑問が一気に増えた。

 馬車でどこに行こうとしたのか。誰と馬車に乗っていたのか。その人達はどこに行ったのか。馬車を襲った魔物とは。それらの疑問を解くため、この休憩を利用して、色々聞いてみた。

 マリナはサンセット通りに住む商人の娘。ある日、家の近くで遊んでいると知らない男に連れ去られた。その夜、樽に詰められ、樽ごと馬車に乗せられて町の外へ。
その馬車が、角の生えた牛のような魔物に襲われた。馬車は魔物にひっくり返され、その衝撃で樽の蓋が開いたので逃げだした。魔物から身を隠すため近くの森に逃げ込み潜んでいたら、ゴブリンに見つかり連れ去られた。

 そういう話を、まるで英雄譚のように淡々と話す。
さぞ怖かったであろう。それを微塵と見せないマリナに感服した。

「それで、馬車に乗っていた大人は、どうした?」
「2人いたけど、馬と一緒に魔物に食べられていたよ。」
「助かったのはマリナだけかい?」
「わかんない。他にも4人子供がいたけど、バラバラに逃げたから。」
「そうか。門を通る時、門番さんはマリナに気がつかなかったのかい?」
「うん。大声出したけど気づかなかった。わたしね、ぶどう酒、なんだって。」

(まぁ、よりによってぶどう酒に偽装するなんて、わたしに喧嘩売っているわね。)

 アリアドネの怒りの理由は分からない。ぶどう酒だからディオ様に関係していることかもしれない。それはさておき、この件は門番も一枚、かんでいるかも。

「さて、どうしたものか。」

 マリナを連れて門を通るのは危険かもしれない。どうしようかと考えた。とは言え強硬突破しかないのだが。

(門番が人さらいに関与することは、絶対にないから安心して。ただ、お小遣いを貰って、荷物の確認を省略することはあるかも。)

 だったら堂々と門を通ろうと決めた。

 ヤスオとマリナは北門に到着した。小さい女の子を連れていたので、例によって疑われた。ゴブリンから助け出したことを伝えても信じてくれない。何か証拠はないのかと言ってきたので、マリナの体臭を嗅がせた。

「うわ。くっさぁぁぁ。」

 門番は、腰を抜かし、尻もちをついた。面白いので、ヤスオはマリナを抱きかかえ、門番に近づく。

「ま、待て。悪かった。疑って悪かったから、近づかないでくれぇ。」

 門番は、鼻をつまみ涙目になりながら、正座して疑ったことを詫びた。

「お兄ちゃん。わたし最強だね。」
「そうだね。今のマリナに勝てる奴は、いないかも。」

 念のため、マリナの外出記録がないか調べてもらったが、やはりなかった。
 街に入り、すぐに家に送りたかったが、人さらいの件があるので、目の前の冒険者組合に寄ることにした。人さらいの件をメンガンダルに話し、領主と冒険者組合を巻き込もうと考えていた。
 ヤスオはマリナを連れ冒険者組合に入る。お昼には、まだ早い時間なので人は、まばらだった。受付には、初めて見る女性が座っていた。アガサにシンシア、イーシアにユキナにチェンチェン。一体この組合に女性職員は何人いるのだろうと疑問に思った。

──ゲッ。

 そして、横の魔石換金にはフランツが、座っていた。今度は魔石換金の職員は、フランツしかいないのかと疑問に思う。
 食堂には、シンシアとイーシアがかなり早い昼食を摂っていた。その2人にヘーカー達3人が、チョッカイを出していた。

「あっ。ヤスオさん。」

 シンシアがヤスオに気づき、手を振り、声をかけてきた。ヤスオも手を振り返し、シンシアの傍に足を進めた。

「おい、G級。俺たちの邪魔するんじゃぁねぇ。」

 ヘーカーは鬼のような形相で、ヤスオをにらみつける。

「おいおい、ヘーカー。見ての通り俺はこの子とデート中だ。野暮な事するなよ。」
「てめえこそ、俺達の語り合いの場を乱すんじゃねぇ。」
「語り合いねぇ?お前が一方的に語ってるだけだろう。2人は、お前を視界にも、入れてないじゃないか。」
「てめえぇ。随分、言ってくれるじゃぁねぇか。」
「おいおい。もてないからって、俺に当たるなよ。それとも、俺が、かわいい子を連れているのが、羨ましいのかい?」
「てめえ、本当に殺すぞ。」

 ヘーカーは、顔を真っ赤にして、怒りに任せ、腰の剣に手をかけ構えた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

最強剣士が転生した世界は魔法しかない異世界でした! ~基礎魔法しか使えませんが魔法剣で成り上がります~

渡琉兎
ファンタジー
政権争いに巻き込まれた騎士団長で天才剣士のアルベルト・マリノワーナ。 彼はどこにも属していなかったが、敵に回ると厄介だという理由だけで毒を盛られて殺されてしまった。 剣の道を極める──志半ばで死んでしまったアルベルトを不憫に思った女神は、アルベルトの望む能力をそのままに転生する権利を与えた。 アルベルトが望んだ能力はもちろん、剣術の能力。 転生した先で剣の道を極めることを心に誓ったアルベルトだったが──転生先は魔法が発展した、魔法師だらけの異世界だった! 剣術が廃れた世界で、剣術で最強を目指すアルベルト──改め、アル・ノワールの成り上がり物語。 ※アルファポリス、カクヨム、小説家になろうにて同時掲載しています。

妖精族を統べる者

暇野無学
ファンタジー
目覚めた時は死の寸前であり、二人の意識が混ざり合う。母親の死後村を捨てて森に入るが、そこで出会ったのが小さな友人達。

最強の異世界やりすぎ旅行記

萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。 そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。 「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」 バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!? 最強が無双する異世界ファンタジー開幕!

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

異世界で家をつくります~異世界転移したサラリーマン、念動力で街をつくってスローライフ~

ヘッドホン侍
ファンタジー
◆異世界転移したサラリーマンがサンドボックスゲームのような魔法を使って、家をつくったり街をつくったりしながら、マイペースなスローライフを送っていたらいつの間にか世界を救います◆ ーーブラック企業戦士のマコトは気が付くと異世界の森にいた。しかし、使える魔法といえば念動力のような魔法だけ。戦うことにはめっぽう向いてない。なんとか森でサバイバルしているうちに第一異世界人と出会う。それもちょうどモンスターに襲われているときに、女の子に助けられて。普通逆じゃないのー!と凹むマコトであったが、彼は知らない。守るにはめっぽう強い能力であったことを。 ※「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています。

英雄召喚〜帝国貴族の異世界統一戦記〜

駄作ハル
ファンタジー
異世界の大貴族レオ=ウィルフリードとして転生した平凡サラリーマン。 しかし、待っていたのは平和な日常などではなかった。急速な領土拡大を目論む帝国の貴族としての日々は、戦いの連続であった─── そんなレオに与えられたスキル『英雄召喚』。それは現世で英雄と呼ばれる人々を呼び出す能力。『鬼の副長』土方歳三、『臥龍』所轄孔明、『空の魔王』ハンス=ウルリッヒ・ルーデル、『革命の申し子』ナポレオン・ボナパルト、『万能人』レオナルド・ダ・ヴィンチ。 前世からの知識と英雄たちの逸話にまつわる能力を使い、大切な人を守るべく争いにまみれた異世界に平和をもたらす為の戦いが幕を開ける! 完結まで毎日投稿!

ガチャと異世界転生  システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!

よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。 獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。 俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。 単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。 ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。 大抵ガチャがあるんだよな。 幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。 だが俺は運がなかった。 ゲームの話ではないぞ? 現実で、だ。 疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。 そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。 そのまま帰らぬ人となったようだ。 で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。 どうやら異世界だ。 魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。 しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。 10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。 そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。 5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。 残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。 そんなある日、変化がやってきた。 疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。 その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。

42歳メジャーリーガー、異世界に転生。チートは無いけど、魔法と元日本最高級の豪速球で無双したいと思います。

町島航太
ファンタジー
 かつて日本最強投手と持て囃され、MLBでも大活躍した佐久間隼人。  しかし、老化による衰えと3度の靭帯損傷により、引退を余儀なくされてしまう。  失意の中、歩いていると球団の熱狂的ファンからポストシーズンに行けなかった理由と決めつけられ、刺し殺されてしまう。  だが、目を再び開くと、魔法が存在する世界『異世界』に転生していた。

処理中です...