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第三章 変化、成長?
第22話 歩み寄り
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「相澤大丈夫か!?」
俺に抱きしめられる形で、転ぶのを助けられた相澤。
流石にこの状況に、頭の整理が出来ていないのだろう。
しばらくの間、彼女は動かない。
「………………は、はい!! あ、あ、あ、ありがとうございます」
気まずそうに俺から離れ、アタフタと慌てた様子を見せる。
そして、毛づくろいをするように手ぐしをし、指で髪の毛をクルクルと弄り始めた。
まるで、冷静さを保とうとする猫みたいだ。
「あぁ、怪我がないなら良かった」
実のところ、俺も彼女程じゃないにしろ、大概動揺していた。
助けたタイミングが不自然だったとか、自分が無意識に動いてしまったこととか。
何より、抱きしめた時に一瞬“いい匂いだ”っと思ってしまったことに。
「あ、あの……。ごめんにゃさい……」
言葉を噛みはしているものの、少し経ち相澤も少し冷静になれたのだろう。
彼女もやましい事をしていたのもあってか、今の状況どうしたらいいのか分からないといった様子だ。
これは、それとなく釘を刺すチャンスなのでは?
「なぁ相澤、どうして俺の跡を……」
相澤の体がビクッと跳ねた。
小刻みに体が震えている。
鼻先まである髪で顔の様子は見にくいが、心なしか青ざめているようにも見えなくはない。
「あー……おほん! 相澤、そんな長い前髪でちゃんと前が見えてるのか?」
「…………えっ?」
本来なら、ここはストーキングについて注意を促すのが正解だと思う。
だが俺は、怯えている彼女を見て話題を変えた。
そのことに、相澤は驚いているようだ。
「俺はな、相澤がよく転ぶのも、それが原因の一つじゃないか? って思ってるんだよ。どうなんだ」
「え、えっ? あの……その……」
俺の跡を付け回す、彼女の行動を肯定しているわけじゃない。
少なからず気味が悪いと思うが、最近では少し慣れてきたし、正直この選択は自分でも甘いと思う。
でも、後輩を、年下の女の子を傷つけたり、泣かせのは、俺のポリシーに反した……。
「余計なお節介だと思うけど、なんとかしてくれ。あの、その……見てて心配になる」
「ご、ごめんなさい……」
相澤の声は震えていた。
俺に怒られるのは、どんな内容であれ堪えるようだ。
拒絶ではなく、少し歩み寄ることにしたつもりだが、これはなかなか難しい。
「す、すまない。相澤の自由だし、強く言い過ぎたかな? そうだ!」
俺はショルダーバッグから、先程購入したヘアピンを取り出した。
そしておもむろに右手で彼女の前髪を寄せ、左手にもったヘアピンを彼女の髪へと付ける。
「日輪……先輩?」
「あっ、つい妹にしてるみたいに」
慌てて彼女から離れた。
「ごめん。って、お互い謝ってばかりだな?」
相澤は状況を飲み込めず、キョトンとしているものの。
心持ち濡れたような瞳は、反らすことなく、ジッと俺を見つめていた。
今までは髪で気付かなかったが、相沢澪 は日輪希空を、ずっとこんな感じで見続けていたのか──。
「見すぎだ見すぎ。まぁ、似合ってるんじゃないか、それ。顔が見えてた方が、俺は好きだなーなんて……」
俺は、先程彼女に付けたヘアピンを指差しながらそう言うと、相澤は左手でヘアピンに触れる。
視線が隠れていないのを思い出したのか、それとも褒め言葉が嬉しかったのかは分からない。
ただ相澤は、熟れた林檎のように耳まで赤くし、表情を隠すように手で顔を覆った。
「おっと、この後用事があるんだった。行かないと!!」
助けるものも助けたし、この状況で追ってはこないだろう。
俺は照れくささもあり、踵を返すようにその場を後にする。
「ひ、日輪先輩、これ!!」
「お前にやるよ、もう転ぶなよ~」
それだけ伝え、彼女から逃げるように走った。
そして人通りの多い道へと出て、人混みに紛れる。
「小夜へのプレゼントあげちゃったな……。母さんと一緒に外食に連れてくのがプレゼントでいいか?」
慣れない事をして、どっと疲れたしな。
まったく、変な汗をかいちまったよ……。
そんな事を考えながら、何とも言い表せない感情に、俺はひとまず蓋をするのであった。
俺に抱きしめられる形で、転ぶのを助けられた相澤。
流石にこの状況に、頭の整理が出来ていないのだろう。
しばらくの間、彼女は動かない。
「………………は、はい!! あ、あ、あ、ありがとうございます」
気まずそうに俺から離れ、アタフタと慌てた様子を見せる。
そして、毛づくろいをするように手ぐしをし、指で髪の毛をクルクルと弄り始めた。
まるで、冷静さを保とうとする猫みたいだ。
「あぁ、怪我がないなら良かった」
実のところ、俺も彼女程じゃないにしろ、大概動揺していた。
助けたタイミングが不自然だったとか、自分が無意識に動いてしまったこととか。
何より、抱きしめた時に一瞬“いい匂いだ”っと思ってしまったことに。
「あ、あの……。ごめんにゃさい……」
言葉を噛みはしているものの、少し経ち相澤も少し冷静になれたのだろう。
彼女もやましい事をしていたのもあってか、今の状況どうしたらいいのか分からないといった様子だ。
これは、それとなく釘を刺すチャンスなのでは?
「なぁ相澤、どうして俺の跡を……」
相澤の体がビクッと跳ねた。
小刻みに体が震えている。
鼻先まである髪で顔の様子は見にくいが、心なしか青ざめているようにも見えなくはない。
「あー……おほん! 相澤、そんな長い前髪でちゃんと前が見えてるのか?」
「…………えっ?」
本来なら、ここはストーキングについて注意を促すのが正解だと思う。
だが俺は、怯えている彼女を見て話題を変えた。
そのことに、相澤は驚いているようだ。
「俺はな、相澤がよく転ぶのも、それが原因の一つじゃないか? って思ってるんだよ。どうなんだ」
「え、えっ? あの……その……」
俺の跡を付け回す、彼女の行動を肯定しているわけじゃない。
少なからず気味が悪いと思うが、最近では少し慣れてきたし、正直この選択は自分でも甘いと思う。
でも、後輩を、年下の女の子を傷つけたり、泣かせのは、俺のポリシーに反した……。
「余計なお節介だと思うけど、なんとかしてくれ。あの、その……見てて心配になる」
「ご、ごめんなさい……」
相澤の声は震えていた。
俺に怒られるのは、どんな内容であれ堪えるようだ。
拒絶ではなく、少し歩み寄ることにしたつもりだが、これはなかなか難しい。
「す、すまない。相澤の自由だし、強く言い過ぎたかな? そうだ!」
俺はショルダーバッグから、先程購入したヘアピンを取り出した。
そしておもむろに右手で彼女の前髪を寄せ、左手にもったヘアピンを彼女の髪へと付ける。
「日輪……先輩?」
「あっ、つい妹にしてるみたいに」
慌てて彼女から離れた。
「ごめん。って、お互い謝ってばかりだな?」
相澤は状況を飲み込めず、キョトンとしているものの。
心持ち濡れたような瞳は、反らすことなく、ジッと俺を見つめていた。
今までは髪で気付かなかったが、相沢澪 は日輪希空を、ずっとこんな感じで見続けていたのか──。
「見すぎだ見すぎ。まぁ、似合ってるんじゃないか、それ。顔が見えてた方が、俺は好きだなーなんて……」
俺は、先程彼女に付けたヘアピンを指差しながらそう言うと、相澤は左手でヘアピンに触れる。
視線が隠れていないのを思い出したのか、それとも褒め言葉が嬉しかったのかは分からない。
ただ相澤は、熟れた林檎のように耳まで赤くし、表情を隠すように手で顔を覆った。
「おっと、この後用事があるんだった。行かないと!!」
助けるものも助けたし、この状況で追ってはこないだろう。
俺は照れくささもあり、踵を返すようにその場を後にする。
「ひ、日輪先輩、これ!!」
「お前にやるよ、もう転ぶなよ~」
それだけ伝え、彼女から逃げるように走った。
そして人通りの多い道へと出て、人混みに紛れる。
「小夜へのプレゼントあげちゃったな……。母さんと一緒に外食に連れてくのがプレゼントでいいか?」
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