26 / 38
第三章 変化、成長?
第24話 登校
しおりを挟む
「じゃぁ、行ってきます」
月曜日の早朝。時刻は六時三十分。
俺は相澤対策をかね、いつもより三十分早く家を出た。
久しぶりの、人の姿での登校。
ただそれだけの事なのに、とても新鮮な気分だ。
「さて、行くか!」っと、玄関先で伸びをしていると──。
「──ノアにぃ待って、私も行くから」
小夜が、肩から竹刀の袋を下げて慌てて玄関から飛び出してきた。
「ふぁぁ……」っと欠伸を噛み殺し俺に笑顔を向ける。
朝が得意じゃないのに、無理して俺に合わせる事無いのに……。
でもまぁ、一人で登校も味気無いしな。
「じゃぁ、一緒に行くか」
「うん!」
俺達は、二人並ぶように学校に向かい歩き出す。
外は早朝にも関わらず、肌寒くも無く既に明るい。
いつしか春を置き去りに、徐々に夏への移ろい見せているようだ。
「久しぶりに一緒に登校だね、ノアにぃ」
「あぁ、そうだな。小夜は父さんの所に行ってたから、学校も久しぶりだろ?」
「うん、ゴールデンウィーク前が最後の登校だったから。でもつまんないな、明日からは一人で学校に行かないといけないなんて」
「ごめんな。住み込みのバイト、どうしても外せなくて……」
住み込みのバイトの事は、家族にはぼかして伝えてある。
しかし思ったより、簡単に受け入れてくれた。
どうやらシロルが、事前に根回ししてくれたみたいなんだけどな……。
本当にどうなっているのやら。
ってことで、明日からしばらくの間また相澤の家から猫の姿で学校に通うことになる。
だから今、この当たり前の時間を堪能しないとな。
「──おはよう、ノア」
後ろから突然、肩を叩かれ声をかけられる。
この近所のおばさんのような親しみやすい声の主は、
「あぁ、おはよう茜」
やっぱり茜だ。
リボンが特徴のブレザーの制服に見を包み、格好に不釣り合いなデジカメを首から下げている。
それにしても、彼女と通学時間が被るとは珍しい。
「いつもこんなに早いのか?」
「いやいや、今日はバスを使わないと行けないからねぇ。普段乗ってる電車の運転見合わせが無ければもっと遅いわよ」
「運転見合わせ?」
「なんか電気関係のトラブルだとか。あんた知らないのに、なんでこんなに早いのよ?」
なるほど、ニュースなんて天気予報ぐらいしか見ないから、全然知らなかった。
茜になら素直に話してもいいが、すぐ近くには小夜もいる。
ここは、誤魔化して……。
「まぁほら、毎回同じ時間じゃなくてもいいかなーって……」
「あぁ、なるほど。避けてる訳ね」
おい、察しが良すぎるだろ!
気遣ってくれたのか、具体的に誰が、誰を避けてると言わない茜。
それにしても、流石新聞部と言った所か……。
「小夜ちゃんもおはよう、久しぶりだねぇ?」
茜は、いつの間にか俺の後ろで隠れている小夜にも挨拶をする。
しかし小夜は返事をせず、何故か「うぅぅー!!」っと威嚇で返した。
「あはは、やっぱ嫌われちゃってるか」
「こら、小夜。ちゃんと挨拶しろよ」
俺が叱ると、渋々と「…………おはようございます」っと挨拶をした。
何故か小夜は、昔から茜だけには懐かないんだよな……。
でもまぁ。
「はい、良くできました」
出来たら褒める、これ常識!
俺は茜の目を憚らず、小夜の頭をポンポンと撫でた。
小夜も面識があるせいか、何故か茜の前ではこんな事をしても恥ずかしがったりしないんだよな。
「あんたはアイツと違って常識人だと思ってたのに。相変わらず距離感狂ってるわね」
茜は何が不満なのか、俺達の仲睦まじい兄妹愛を見て、腰に手を当て呆れた顔をしている。
距離感が狂ってる? 聞き捨てならないな。
「兄が妹を甘やかすのは、普通なんじゃないか?」
「妹が兄に甘やかされるのは、普通だと思いますが?」
流石兄妹、息がぴったりだ。
茜も俺達の正論に、言い返す術を持たないのか、返事がため息で帰ってきた。
そして俺達に向けてカメラを構え、パシャリとシャッターを切る。
「ほらノア、客観的に見てみなさい」
「これはまぁ……。よく撮れてちゃってるな」
茜の口にした、距離感が狂ってるの意味を、彼女が手にするデジタルカメラの画面越しに見て理解した。
こりゃ知らない人から見たら、良くて恋仲、悪くて犯罪者だな。
「小夜、さっきはあんな風に言ったけど、やっぱり外では…………。小夜?」
振り返り、すぐ裏に居た小夜に声をかける。
しかし先程まで、居たはずの彼女の姿はそこにはなかった。
「──茜先…、恥………で…願い……す。これ売……くれ……んか?」
「ふふっ、一……五百……ッキリ…………ね」
何処に行ったかと辺りを見渡すと、先程まであんなに警戒心剥き出しだった小夜が、自分から茜に話しかけてるではないか。
「いつの間に……」
何がきっかけで距離感が縮まったのかはさっぱり分からない、だがまぁ。
「仲良きことは素晴らしいかな?」
完全に蚊帳の外ではあるが、熱く話しながら歩く彼女達の跡を、俺は水を差さないよに静かについて行くのであった。
月曜日の早朝。時刻は六時三十分。
俺は相澤対策をかね、いつもより三十分早く家を出た。
久しぶりの、人の姿での登校。
ただそれだけの事なのに、とても新鮮な気分だ。
「さて、行くか!」っと、玄関先で伸びをしていると──。
「──ノアにぃ待って、私も行くから」
小夜が、肩から竹刀の袋を下げて慌てて玄関から飛び出してきた。
「ふぁぁ……」っと欠伸を噛み殺し俺に笑顔を向ける。
朝が得意じゃないのに、無理して俺に合わせる事無いのに……。
でもまぁ、一人で登校も味気無いしな。
「じゃぁ、一緒に行くか」
「うん!」
俺達は、二人並ぶように学校に向かい歩き出す。
外は早朝にも関わらず、肌寒くも無く既に明るい。
いつしか春を置き去りに、徐々に夏への移ろい見せているようだ。
「久しぶりに一緒に登校だね、ノアにぃ」
「あぁ、そうだな。小夜は父さんの所に行ってたから、学校も久しぶりだろ?」
「うん、ゴールデンウィーク前が最後の登校だったから。でもつまんないな、明日からは一人で学校に行かないといけないなんて」
「ごめんな。住み込みのバイト、どうしても外せなくて……」
住み込みのバイトの事は、家族にはぼかして伝えてある。
しかし思ったより、簡単に受け入れてくれた。
どうやらシロルが、事前に根回ししてくれたみたいなんだけどな……。
本当にどうなっているのやら。
ってことで、明日からしばらくの間また相澤の家から猫の姿で学校に通うことになる。
だから今、この当たり前の時間を堪能しないとな。
「──おはよう、ノア」
後ろから突然、肩を叩かれ声をかけられる。
この近所のおばさんのような親しみやすい声の主は、
「あぁ、おはよう茜」
やっぱり茜だ。
リボンが特徴のブレザーの制服に見を包み、格好に不釣り合いなデジカメを首から下げている。
それにしても、彼女と通学時間が被るとは珍しい。
「いつもこんなに早いのか?」
「いやいや、今日はバスを使わないと行けないからねぇ。普段乗ってる電車の運転見合わせが無ければもっと遅いわよ」
「運転見合わせ?」
「なんか電気関係のトラブルだとか。あんた知らないのに、なんでこんなに早いのよ?」
なるほど、ニュースなんて天気予報ぐらいしか見ないから、全然知らなかった。
茜になら素直に話してもいいが、すぐ近くには小夜もいる。
ここは、誤魔化して……。
「まぁほら、毎回同じ時間じゃなくてもいいかなーって……」
「あぁ、なるほど。避けてる訳ね」
おい、察しが良すぎるだろ!
気遣ってくれたのか、具体的に誰が、誰を避けてると言わない茜。
それにしても、流石新聞部と言った所か……。
「小夜ちゃんもおはよう、久しぶりだねぇ?」
茜は、いつの間にか俺の後ろで隠れている小夜にも挨拶をする。
しかし小夜は返事をせず、何故か「うぅぅー!!」っと威嚇で返した。
「あはは、やっぱ嫌われちゃってるか」
「こら、小夜。ちゃんと挨拶しろよ」
俺が叱ると、渋々と「…………おはようございます」っと挨拶をした。
何故か小夜は、昔から茜だけには懐かないんだよな……。
でもまぁ。
「はい、良くできました」
出来たら褒める、これ常識!
俺は茜の目を憚らず、小夜の頭をポンポンと撫でた。
小夜も面識があるせいか、何故か茜の前ではこんな事をしても恥ずかしがったりしないんだよな。
「あんたはアイツと違って常識人だと思ってたのに。相変わらず距離感狂ってるわね」
茜は何が不満なのか、俺達の仲睦まじい兄妹愛を見て、腰に手を当て呆れた顔をしている。
距離感が狂ってる? 聞き捨てならないな。
「兄が妹を甘やかすのは、普通なんじゃないか?」
「妹が兄に甘やかされるのは、普通だと思いますが?」
流石兄妹、息がぴったりだ。
茜も俺達の正論に、言い返す術を持たないのか、返事がため息で帰ってきた。
そして俺達に向けてカメラを構え、パシャリとシャッターを切る。
「ほらノア、客観的に見てみなさい」
「これはまぁ……。よく撮れてちゃってるな」
茜の口にした、距離感が狂ってるの意味を、彼女が手にするデジタルカメラの画面越しに見て理解した。
こりゃ知らない人から見たら、良くて恋仲、悪くて犯罪者だな。
「小夜、さっきはあんな風に言ったけど、やっぱり外では…………。小夜?」
振り返り、すぐ裏に居た小夜に声をかける。
しかし先程まで、居たはずの彼女の姿はそこにはなかった。
「──茜先…、恥………で…願い……す。これ売……くれ……んか?」
「ふふっ、一……五百……ッキリ…………ね」
何処に行ったかと辺りを見渡すと、先程まであんなに警戒心剥き出しだった小夜が、自分から茜に話しかけてるではないか。
「いつの間に……」
何がきっかけで距離感が縮まったのかはさっぱり分からない、だがまぁ。
「仲良きことは素晴らしいかな?」
完全に蚊帳の外ではあるが、熱く話しながら歩く彼女達の跡を、俺は水を差さないよに静かについて行くのであった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
春に狂(くる)う
転生新語
恋愛
先輩と後輩、というだけの関係。後輩の少女の体を、私はホテルで時間を掛けて味わう。
小説家になろう、カクヨムに投稿しています。
小説家になろう→https://ncode.syosetu.com/n5251id/
カクヨム→https://kakuyomu.jp/works/16817330654752443761
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる