異世界に降り立った刀匠の孫─真打─

リゥル

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第三章 リベラティオへの旅路

第152話 ユニコーンの食事

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 夜も深まり、時折聞こえてた鳥の声は聞こえなくなる。
 ジャングルも大分静かになった気がするな……。

 俺はその後もワニ肉の解体がある為、夜の番を一人で受け、女性達に先に寝るように言った。──それにしても大きすぎて、全然終わらないじゃないか……。

 剥ぎ終わった皮をマジックバックにしまい、ワニの体にナイフを入れる、そして肉を部位事に切り分けていく。
 切り分けては筋を取り、切り分けては筋をとる。
 その後、事前にティアに準備をしてもらった異世界の香草にくるみ、マジックバックにしまっていく。──あごのしたの肉……プルンプルンでちょっと美味しそうだな。

 それにしても……本当にデカイ。

 こりゃ今日中に調理してってのも難しそうだぞ? まぁすぐ食べさせるって約束でもないし、まぁいいか。

 ──んっ? そう言えば。

「なぁミコ、ユニコーンって何を食べるんだ? 今後の食事の件もあるし聞いてくれよ。やっぱり藁とかの草でいいのか?」

 俺の呼び掛けに、明らかに不機嫌な顔でマジックバックから顔を覗かた。──寝ていたのだろうか?

「もう~さっきから、ちょくちょくバックに何か入れて五月蝿いカナ! そんなの知らないシ、ボク眠いカナ! 自分で話せばいいシ!」

 プリプリと怒りながらミコは無銘に入っていった……。今時プリプリ怒るとは言わないと思うだろ?
「プリプリだシ!」って本人が言いながら無銘に戻ったから、間違いないだろう……。

 確か念話で話が出来るって言ってたよな……触れれば良いのか?
 二頭ともまだ起きてるし本人、本馬達に聞くか。……乗り気はしないけど!

 肉を捌く手を止め、二頭に恐る恐る触れる……。
 心の何処かで、ミコの通訳はキャラ作りの為の嘘であってほしい……そんな風に願っていた。

『うんまぁ! カナデちゃんがさわってくれたわん!』

『俺のハニーに触るんじゃねぇ! この面ヤロウ!』

 誰が馬面だよ……嘘であって欲しかった……。

『うんまぁ、なんの事かしら?』

 あ、あぁ~何でもない。そうか……念話だから考えたことが相手にわかるんだな?

 目の前の美しいユニコーンと話してるって、変な気分だな?
 外見は本当に綺麗だ……汚れを知らなそうな純白の体に、風になびく薄い黄色のたてがみ。全てを見通すかのような青い瞳……。
 ねじれ空に伸びる角を持ちたたずむ姿は、王者の貫禄の様なものも感じる……。

『うんまぁ! カナデちゃんお上手だわ、惚れ直しちゃう!』

 俺はメスコーンの言葉を聞き、手を離した……。──声を聞くのは用件があるときだけにしよう……。心の平穏の為に。

 メスコーンは「ブルゥルゥ……」と、落ち込むように下を向いた。
 オスコーンはその姿を見てか、角を俺に向け威嚇をする。──不味い雰囲気だ……用件だけ早く聞いた方が良さそうだな。

「分かった! 俺が悪かったから……君達が食べるもんを聞いたら、おとなしく向こうに行くから……藁でいいのか?」

 それを聞いたオスコーンが首を左右に降りながら、俺に角を向けた。──どうやら違うようだ……。
 
 確認のために彼等に触れると『俺様達をその辺のと同じ扱いするのは止めな、突き殺すぞ!』と、偉く攻撃的な回答が帰ってきた。

『うんまぁ! ユニコーンが清き乙女が好きなのは知ってるわよね? 私達は生き物が無意識に出す、透明度の高い魔力が好きなのよ!』

 魔力って無意識に出るものなのか? それにしても、変わった食生活だな……。

『俺様達からしたら、貴様たちの方が変わってると思うけどな? 当然、その魔力にも個体差でい、不味いがあるわけだけど』

 なるほど……好みがあるのか? 一般的に清き乙女の魔力が美味しいって事なのか?

『んまぁ! 私はカナデちゃんの魔力大好物よ? あの娘達より、是非カナデちゃんの魔力をスーハー、スーハーさせてもらいたいわ!』

 その発言を聞き、危機感を感じた。
 今後の冒険に、平穏が訪れない予感と共に……。

『確かに清さだけなら、貴様もあの娘達には負けないな。あれだろ? 異性とい事手を繋げたら、心臓が飛び出るほどドキドキするんだろ? この童貞が!』

 ──ほっとけ! ってそれは言ったらダメなやつだろ!

『んまぁ! そこがいい所じゃないの~……』

 ダメだ、このままだ平常心を保てなくなる……。
 俺は彼らから手を離し、ワニの解体の続きをすることにした。
 ワニを捌きながらも、俺の後ろで何やら臭いを嗅ぐ仕草をするユニコーンが一頭。
 遠くでは一頭がこちらの様子を伺っているようだ……。

 少し離れたテントを見ながら、一つ心に決めた。
 明日からの夜の番は、必ず二人以上での二交代制にしよう……っと。
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