異世界に降り立った刀匠の孫─真打─

リゥル

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第四章 新天地

第292話 大したもんですよ

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 二頭引きを一頭引きに改造してたため、出発するまでにずいぶん手間は掛かったものの、資材を使いつつも何一つ欠けること無く、何とか無事に再出発することができた。

 ──そして半日程。
 
「やっと開けた場所に出た……それにしてもずいぶん歩いたのに、道中ほとんど崖崩れもしてなかったな?」

 ここに来るまでも何度か魔物に襲われはしたものの、相手の数が少なかったのと、何よりソインさんの指揮のお陰もあり、山道を無事に抜けることが出来た。 

「ここいらも、元は戦時中に使われてたルートだったらしいで? 今では商人が使ってるらしいわ」

「なるほど、通りで整備されてる訳だ。それにしても、見るような景色も無くて退屈だったよ」

 目の前には、広大な開けた大地が広がっている。
 いつしか寒さも和らぎ、視界に映る木々はどれも紅葉に染まっていた。

 ──ん? 前の馬車が止まったぞ、何かあったんだろうか?

 しばらく様子を見ていると、ソインさんが前の方から歩いてきた。

「カナデ君、少し早いが今日はここいらで野宿としよう。山を背にできた方が警戒しやすいからね。それでも明日の昼頃には到着する予定だけど……それでいいかい?」

「はい、分かりました。それでは馬車を移動しますね」

 馬車を一ヶ所に並べて停車をした。
 各自作業の担当は決まっており、交代で仕事にあたる。
 それ以外は焚き火を囲むよう、食事や休憩を取り始めたのだ。

 俺もミコ、ルーム、ソインさんと今後の打ち合わせを予て食事を取っていた。
 すると、何やら女性が二人ほど、こちらに向かって走って来てるような……。

「──カナデさん初めまして! 私はマダと言います。これ私が作ったの、貴方に食べて貰いたくて……」

「あ、はい。えっと、ありがとうござ……」 

「──ちょっと、抜け駆けはズルいわ! カナデさん、ナナが作った方を先に食べて!」

 何だ!? 急に女の子がやって来たと思ったら、目の前で揉め始めたぞ?

 喧嘩が勃発するかと思った、その時──。

「──君達! カナデさんは心に決めた方が居るんです! さぁ、貴女方は仕事に戻って下さい!」

 突然現れたシバ君が間に割って入ると、二人の女性はブツブツ呟き、恨めしそうにその場を去っていった。

「これは……二度目のモテ期到来か?」

 悪い気はしないが、流石にたぢろいでしまうな……シバ君に助けられたよ。

「この前の情報漏洩のせいやないか? 兄さん肩書きだけはすごいからな。あと、顔が緩んでるで?」

「おほん! きっと、親しみやすく感じてくれた……って解釈でいいんだよな?」

「……」

「ってちょっと、ルーム黙らない! ──いいんだよな!?」

「……いや~兄さん。ウチを黙らせるなんて、大したもんやわ」

 それ、全然誉めてないだろ……。
 どちらにしても、周りが気を使わなくて済むなら都合はいいか。

「それにしても助かったよ、シバ君ありがとう」

「気にしないで下さい。何たって僕は、カナデさんの親友ですからね!」

 あれ、いつの間にか親友に格上げされてるぞ……まぁいいけど。

「ところでソインさん。さっきの続きですが、目的地の事をあまり詳しく聞かされて無いんですよ。知ってたら教えてくれませんか?」
 
「あぁ、そうだったね」

 ソインさんは何処からともなく地図を取り出し、皆が見えるよう広げて見せた。
 そしてリベラティオ北部を指差し、説明を始める。

「中立国リベラティオ、エルフの国エルフィリア、獣人の国ライオネル。その国境線の交わる土地──それがカナデ君、君に託された土地だよ。未来の混血の村になる場所だね」

 地図上には、真新しい線が書き足されている。
 ……なるほど、思いの外広いな。

 地図で見る限り、山も森も川もある。
 海は少しばかり遠いが、リベラティオからここまでの距離で換算すると、片道二日、三日ほどだろう。
 これなら、自然の恵みは当てに出来そうだな。

「そしてここは──【聖剣】の誕生した地だと、言い伝えられているんだ」

「……えっ!?」
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