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第四章 新天地
第357話 想定外
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鍛冶場内に、金属同士がぶつかり合う甲高い音が響く。
振り下ろした槌は一瞬、接触面から火の花を咲かせた……しかし──。
「──っ、まだまだ!!」
俺は繰り返し、右手を振り上げ、振り下ろす。
叩きつける度に手に衝撃が走るが、ミスリルが冷めるまでは休むことは許されなかった。
「ハァハァ……」
息も白くなるこの時期に、額に汗が滲む……。
どうだ、やれることはやったぞ……。なっ──!?
赤白い色味は薄れ、徐々に本来の色へと戻る。
しかしあれだけ熱し、叩いても、ミスリルは形を変えることは無かったのだ……。
つまりそれは、実験が──失敗したと言うこと。
「参った。流石にこれ以上、炉の温度を上げる手段はないぞ……」
肌を焼くようなあの感覚、炉の温度は間違いなく限界近くまで上がっていた。
それでも温度が足りないのでは、聖剣は打てない。
その事は同時に、シンシを蘇らせる事が出来ない事を意味している──。
「落ち着け……考えろ。素材が本当にミスリルだったのなら、聖剣が存在している以上必ず加工できるはず」
俺は、じっと素材を見つめる。
そうだ、こんな時の為に便利なスキルがあるだろ。
「分からない時には、これに限る──鑑定!」
素材のミスリルに、文字が浮かび上がって見える……。
まったく、便利なスキルだぜ。
「何々? 名称ミスリル。種別金属。ミスリルスライムの外皮で、温度差に強い──って……全部知ってる事ばかりじゃないか!?」
そうだよな。今まで多くのものを鑑定眼で見てきたが、どうやって加工出来るか……なんて都合のいい情報は無かった。
まいったな、八方塞がりか……。
心配そうな様子で、ミコとミスリンが俺を覗き込む。
そう言えば……。
「なぁ、ミスリン。おまえ、普段どうやってその体を動かしてるんだ?」
「どうって言われてもスラ……」
ミスリンはミスリルの外皮を身に纏っている。
その上で自らの形状を変えているってことは、それが加工のヒントになると思ったのだ。
「むむむむぅ! って感じスラかね?」
「…………はっ?」
え~っと……今何かしたか?
「聞こえなかったスラか? こうやってむむむむぅ! ってスラけど……」
「いや、なんだそれ。それじゃ分からないから……。もっと何か上手な説明があるだろ?」
俺から見たミスリンはただプルプルと震えながら形を変えていただけ。
まったく参考にならないんだが……。
「じゃぁ主は、自分の手足をどう動かしてるスラ?」
「ん? こうやってススッって持ち上げたり伸ばしたり……」
あっ。なるほど……。
「その顔は気づいたみたいスラね。自分が難しい事を言ったってスラ」
「……はい」
普段、当たり前の様にやっていることの説明がこんなにも難しいとは。
こんな事じゃ、いつまでたってもシンシの復活なんて……。
「あ~ぁ。こんな時、御約束の展開だと製法を知っている人が現れたり、書物が残ってたりするんだけど……」
そんな都合の良い話はないよな。
こんな時じいちゃんが居てくれれば、製法を聞き出すことも出来たはずだが……。
……んっ? 俺は今何て言った? 何か引っかかって。
「馬鹿か俺は……。製法を知っている人も、書物もあるじゃないか!」
製法については、じいちゃんだけでなく、当時聖剣を共に打ったはずのドワーフ──ガイアのおっさんがいる。
それに書物も、シンシが見せてくれた夢の中に出てきてた──ラクリマの森に隠された地下室にあるじゃないか!
「こうしちゃ……居られない!」
善は急げだ。
俺は炉の火を落とし、窓を閉め。出発の準備をするべく、自宅へと駆けていった──。
振り下ろした槌は一瞬、接触面から火の花を咲かせた……しかし──。
「──っ、まだまだ!!」
俺は繰り返し、右手を振り上げ、振り下ろす。
叩きつける度に手に衝撃が走るが、ミスリルが冷めるまでは休むことは許されなかった。
「ハァハァ……」
息も白くなるこの時期に、額に汗が滲む……。
どうだ、やれることはやったぞ……。なっ──!?
赤白い色味は薄れ、徐々に本来の色へと戻る。
しかしあれだけ熱し、叩いても、ミスリルは形を変えることは無かったのだ……。
つまりそれは、実験が──失敗したと言うこと。
「参った。流石にこれ以上、炉の温度を上げる手段はないぞ……」
肌を焼くようなあの感覚、炉の温度は間違いなく限界近くまで上がっていた。
それでも温度が足りないのでは、聖剣は打てない。
その事は同時に、シンシを蘇らせる事が出来ない事を意味している──。
「落ち着け……考えろ。素材が本当にミスリルだったのなら、聖剣が存在している以上必ず加工できるはず」
俺は、じっと素材を見つめる。
そうだ、こんな時の為に便利なスキルがあるだろ。
「分からない時には、これに限る──鑑定!」
素材のミスリルに、文字が浮かび上がって見える……。
まったく、便利なスキルだぜ。
「何々? 名称ミスリル。種別金属。ミスリルスライムの外皮で、温度差に強い──って……全部知ってる事ばかりじゃないか!?」
そうだよな。今まで多くのものを鑑定眼で見てきたが、どうやって加工出来るか……なんて都合のいい情報は無かった。
まいったな、八方塞がりか……。
心配そうな様子で、ミコとミスリンが俺を覗き込む。
そう言えば……。
「なぁ、ミスリン。おまえ、普段どうやってその体を動かしてるんだ?」
「どうって言われてもスラ……」
ミスリンはミスリルの外皮を身に纏っている。
その上で自らの形状を変えているってことは、それが加工のヒントになると思ったのだ。
「むむむむぅ! って感じスラかね?」
「…………はっ?」
え~っと……今何かしたか?
「聞こえなかったスラか? こうやってむむむむぅ! ってスラけど……」
「いや、なんだそれ。それじゃ分からないから……。もっと何か上手な説明があるだろ?」
俺から見たミスリンはただプルプルと震えながら形を変えていただけ。
まったく参考にならないんだが……。
「じゃぁ主は、自分の手足をどう動かしてるスラ?」
「ん? こうやってススッって持ち上げたり伸ばしたり……」
あっ。なるほど……。
「その顔は気づいたみたいスラね。自分が難しい事を言ったってスラ」
「……はい」
普段、当たり前の様にやっていることの説明がこんなにも難しいとは。
こんな事じゃ、いつまでたってもシンシの復活なんて……。
「あ~ぁ。こんな時、御約束の展開だと製法を知っている人が現れたり、書物が残ってたりするんだけど……」
そんな都合の良い話はないよな。
こんな時じいちゃんが居てくれれば、製法を聞き出すことも出来たはずだが……。
……んっ? 俺は今何て言った? 何か引っかかって。
「馬鹿か俺は……。製法を知っている人も、書物もあるじゃないか!」
製法については、じいちゃんだけでなく、当時聖剣を共に打ったはずのドワーフ──ガイアのおっさんがいる。
それに書物も、シンシが見せてくれた夢の中に出てきてた──ラクリマの森に隠された地下室にあるじゃないか!
「こうしちゃ……居られない!」
善は急げだ。
俺は炉の火を落とし、窓を閉め。出発の準備をするべく、自宅へと駆けていった──。
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