私と運命の番との物語

星屑

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4章 対の魂

第33話 目覚め

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何か温かいものに包まれながら微睡み続けていると、じわりじわりと胸がポカポカしてきた。

その熱が体中に巡って行き、体全体が温まると、次第に胸が焦がれるように熱くなってきた。

それと共に、喪失感が襲ってくる。


……何かが足りない。

何かを忘れてしまっている……?

思い出せない…思い出せないッ……!

なんで……どうして……?

声を聞けば胸がポカポカして、抱き合えばドキドキしながらもホッと落ち着く。

その人の匂いは、爽やかでスッキリしていて私を包み込むようなのに、どこか私を溺れさせようとしてくるような……甘い香り。

いつも私に甘い笑みを向けて、どこまでも溺愛してくれる彼。

その人は……誰?

その人がいなければ私が生きている意味はない。

私の生きる理由にもなってくれて、支え、愛し、私を何からも守ってくれる人。


その人は…その人の名前は……。




ルド




……ルインドレッド・リード・カイルラント。


私の運命のつがいにして、最愛のひと




そのことを思い出した瞬間、パッと霞がかっていた頭の中が晴れ、はっきりと意識を取り戻していく。

それと同時に、ルドの匂いを強烈に感じる。

コレはもはや、包み込まれている程度ではない。


細胞一つ一つがルドで染まっているかのように、ルドの匂いが私に染み込んでいる。

ルドの匂いで溺れるとはこういうことなのかと、何故か理解してしまった。


ずっとこのままでも良いと思うが、ルドの顔が見たいし、今の状況が知りたくなった。

目覚めたい、目覚めよう。

体はピクリとも動かないし、声も出ないが、意識を目蓋だけに集中し、重い…普段の何倍も重く感じる目蓋をやっとの思いで開ける。



すると、そこに写ったのは……




視界一面、肌色だった。




頭が混乱する。


今の状況が知りたくて目を開けようと頑張ったはずなのに、目を開けても全く状況が分からない。

余計混乱している。


だがよくみると、コレはルドの体ではないだろうか?

見覚えのある体から腕が伸びている。
どうやら今はルドの体で雁字搦めにされているらしい。

どうりで体が動かないわけだ。

体は全く動かせないが、ルドの匂いに安心し、ふぅ。と、息を吐き出す。

ルドの胸にほんの僅かだが、額をグリグリと押し付けた。



「フィア……?」

「……ぅ……」



ルドの名前を呼んだつもりだったが、全然声が出ていない。



「……あぁ、声が出ないか。待ってね……」



そう言うとルドは魔法で水を指先に集め、フィアの口に運んでくれる。



「……ん……あり…が…とう、ル…ド」

「ううん、目覚めてくれてありがとう。
ずっと待ってたよ……」

「ずっ…と……?」



それほど長い時間眠っていたのだろうか?

最後の記憶は……ルドがリーフェと一緒にいた場面だ。

今思い返してもあの時ほど傷つかない。

あの時は何故あんな思考回路になり、絶望していたのだろうか?



「ここは精霊界にある湖だよ。今は…250年が経ったところかな。
ふふっ。おかえり、眠り姫」

「に…ひゃく、ご…じゅうねん……?」

「そう、250年」

「そんなに……経ってしまっているの?私、ルドがリーフェと一緒にいたところを見て、その後の記憶が無いわ」

「あの時、フィアの魂にヒビが入る音がして、急いでフィアのところに行ったんだよ。そうしたら、フィアの魂が少し欠けていたんだ」

「え?」

「フィア、君の魂はこの世界に転生した時点で、多くの傷を負っていた。それは魂に傷を負った状態でリセットされず、何回も転生したことが影響したんだと思うよ。普通はこんなに傷を負った状態で転生しない。
俺達が出会った時にその事には気づいていて、徐々に治していっていたんだ。でもあの日、フィアの魂は深く傷つき、欠けてしまった……」

「ええ、でも何故あの時に深く傷ついたのか分からないわ。今考えても不思議なの。あんなに思考がおかしくなることはないもの」

「多分、何かの力が働いていたのかもしれない。

そもそも全ての始まりは、フィアの魂が生まれた世界の神が、未熟だったのが原因かな。未熟なのに己の力を過信し過ぎた。
魂の輝きを強めるために、その魂に試練を課すことはある。それは普通に行われていることだよ。ただ一つ条件があって、試練を課した神は、その試練によって傷を負った魂の修復をすることができなくてはいけない。でないと、その魂は永遠と傷を負い続け、消滅してしまうからね。

その神は1つの魂に試練を課した。その魂は試練を乗り越え、生を終え、転生することになった。もちろん、試練の影響で傷を負っているため、転生する時に治さなければならない。しかし、この魂は強く、試練の影響による魂の傷が他の魂に比べて小さかった。
当時その神は様々な魂に試練を課しており、傷の修復に追われていて忙しかった。そこで神は、この魂は強く、傷も浅くて小さいから、一回くらいだったら大丈夫だろうと考え、傷を修復せずにそのまま転生させた」

「その魂は私?」

「そうだよ」



自覚がないままに、ルドの話をまるで物語を聞くような感覚で聞いていた。



「だが、その神は忘れてしまっていた。何故試練を課した魂を転生するときに修復しなければならないのかを。

傷を負った魂は、修復しない状態で転生してしまうと、その試練が課されたままになってしまう。
試練は通常、一度だけしか課されない。修復されて、幸せな生を過ごし、また試練を課され、という繰り返しで輝きを増していく。まぁ、簡単に言うと、飴と鞭みたいな感じかな。それで徐々に輝きが増していくんだ。

鞭を与えたから、飴を与えないといけない。鞭をリセットする為に、鞭で得た傷を修復してまっさらにしなければならなかった。
だが、その神はそのことも忘れ、傷を修復しなかった。それによってその魂に課された試練は永遠と課されることになってしまった。
試練が一度リセットされなかったことによって、その魂は生を終えると自動的に転生されるようになってしまった。

試練が課され、転生し、また試練が課され……永遠と続くそれに、いくら強い魂でも、傷はどんどん増えていく。
その神が気付いた時には、その魂は何十回と転生したあとで、魂はボロボロになってしまっていた。試練が課され続け、その試練を何十と乗り越えたその魂は、輝きはすさまじいものだった。
だが、そのままでは消滅してしまう。

しかし、ここまでの傷を修復するにはその神はまだ若く、修復する能力がなかった。他の神に聞き回っても、修復できるだけの能力を持った神が近くにいなかった。

そんなことをしている間にも、その魂の傷は酷くなり続け、とうとうどんな神でも修復できないほどの傷になってしまった。
どうしようと悩んでいる時、その魂の対の魂が、傷ついた魂を見つけた。対となる魂は、神だった。かなり高位の神だった」

「それがルドなの?」

「そうだよ」



ルドに見つけてもらえてよかったと、安堵する。

ルドは愛おしいと言わんばかりにフィアの頭を撫で、また話し始める。



「その神は対の魂を見つけた時、まず怒りを感じた。何故己の対の魂がこれほどまでに傷ついているのか、と。
だが、怒りのままに行動しても対の魂を助けることはできない。まずはその神と話し、何故こうなったかの経緯を聞いた。

その神の話を聞いた対の神は、その神を消滅してやろうと思ったが、まずは己の対の魂を助けなければならないと思い、自身の父にあたる神、全ての始まりの神に相談した。

正直、父でも治すことは出来なかったんだよ。対の魂である俺自身が少しずつ修復していくしかなかったんだ。対の魂は全てにおいて相性が良いからね。徐々に俺の神力を渡して魂を修復して行こうとしてたんだよ。

ある程度魂が修復されたとき、君をコチラ側、神側にするために、もう一度転生する必要があったんだ。それで今回転生したんだけど、君は前世の記憶を持って転生した。
これは予想外だったけど、君が一つ前の前世の記憶を持ったまま転生したのは、君自身が無意識にした自己防衛だったのかもしれないね」

「ルドも転生が必要だったの?」

「ううん。俺はもうすでに神だからする必要はなかったんだけど、心配で付いてきちゃった」



あはは、とカラリとした笑顔を見せながら言う。



「じゃあ、出会った時には私のことがわかっていたの?」

「それは違うよ。転生したてはいくら神でも記憶がないんだ。本当は10歳の時には思い出してるはずだったんだけど、思い出す前に村で魔力を封印されちゃったからね。
フィアが封印を解いてくれたから思い出すことができたんだよ。じゃなきゃいつ思い出したか分からなかったよ」

「ルドの役に立ったならよかったわ」



私のためにルドがしてくれたことが沢山あり過ぎて、これから今まで大変だった分、ルドに少しでも幸せを感じてもらえるように過ごしていこうと思った。

ルドに見つけてもらえて本当によかった。

ルドに見つけてもらえてなかったらこの幸せは存在しなかっただろう。











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