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第14話 隠し事は色々大変
しおりを挟む「ふえぇ~・・・」
東寮にてリッター・ミレスがへとへとになりながら彷徨っていた。
今日一日部隊の異動手続きと新たに編成される特殊班の事でたらい回しにされていた。
最後に特殊班の仮責任者とされるここの寮長であるレプティへと会い、軽い打ち合わせを済ませてようやく一段落したようだった。
「あぁ~・・・"妹"チャージが必要、絶対必要。もう無理」
ガチャリと部屋の中へと入っていった。
ミレスはすぐさま近くのソファーへとダイブした。
「プリエちゃ~~ん、お姉ちゃんを癒してぇ~~プリエちゃ~~ん」
バタバタと足をバタつかせる。
だがプリエという妹は出てこない。それでもお風呂に入ってるのかと考えミレスはバタつかせるのを止めソファーでぐうたらと、外では見せないようにしている性格を出していた。
ここには自分の妹、溺愛するプリエしか居ない。
そう、彼女は・・・思っていた。
ガタンッ・・・。
キッチンの方で物音がした。
ミレスはプリエが今キッチンにいるのだと思い早足でキッチンに向かい、そのまま最愛の妹に抱き付いた。
「妹チャージ! あぁ~~妹よぉ~、見ない間にこんなにもたくましく身長も伸び―――て?」
その時ようやく気付いた。
自分が抱き付いた相手を、自分が邪魔だと思う二つの山を存分に押し付けた相手が、妹のプリエじゃない事に。
すぐその場から離れ距離を取った。
「あ、あなたは・・・!?」
この時のミレスは正気ではいられなかった。
雑務の一日で疲労も蓄積しているからではない、ましてや知らない人間、しかも明らかに同性ではない人間に抱き付いてしまったことなど微塵にも感じないほどに。
正気でいられるはずなんてなかった。
(まさか私のプリエちゃんに・・・かかかかか彼氏が!!!?)
姉として正気で居られなかった。
いられるはずもなかった、最愛の妹に何処の馬の骨か知らない輩が!
いや、大事な可愛くて賢い美しい自らの妹が選んだ男なら・・・いや駄目だ。
そんな事、祖国の両親になんて説明をすれば。いや、まだそれは早計だ。
ここは姉である自分が、この彼氏を・・・選定しなくては!!!!
「お姉ちゃん」
「プリエちゃぁあ~~~~ん!!!」
風呂場からゴム手袋を付けたプリエに抱きつく。
妹チャージが出来なかった分と、プリエの綺麗な銀髪、触っても触っても飽きないスタイルとラインを堪能していた。
スリスリと顔を自らの顔に擦りつけられているプリエは恒例行事だからなのか一切表情も変える事無く動じていなかった。
「そんな事より、プリエちゃん! あれは!! あのキッチンに立ってた輩は―――」
プリエに抱き付いた状態でキッチンを指差し、振り向いた瞬間だった。
ミレスの表情は一気に青ざめた。
キッチンに居た男が顔を見せプリエに抱き付いている自分を眺めていた、いや見下していた。
それどころか、不敵な笑みを浮かべながら自分の事を笑っていた。
ミレスは、その男を知っている。
そして浮かべる笑みは、決して素敵な物を見て微笑んだ物ではないとわかった。
「お疲れ様でーす、おー!姉ーー!ちゃーん!ー様ぁー!」
「リュ、リュールジス・・・!」
俺は、最高に素晴らしい物を見せて貰いました。
それから俺が用意した飯をみんなで囲って食べる事になった。
「いただきまぁーす」
「頂きます」
「いた、だきます」
俺は終始にやけ面が止まらなかった。
へぇーそーうですかー。
「シスコン」
「ぐぅっ・・・!!」
いいねぇー、なんだろうかこの気持ち。とても晴れやかな気持ちになれる。
相変わらずゴースト、もといプリエは無表情でパクパクとマイペースで飯食ってるが。
この二人が姉妹ねぇー、似ても似つかないな。
何がとは言わないが。姉が全て持っていったのか、それともプリエに必要な物以外を残し後全てを在庫処分の如く姉に放り投げたのか・・・後者だな。
「プリエちゃん、今日は何してたのー?」
あ、こいつ。もう俺にバレた事から立ち直りやがった。
いや、違う。これはきっと俺は居ない物だと扱うことで、バレたなんていう事実を消そうとしている。リッターにもなるとやるな。
「リュールジスのブレイカー見てた」
それだけ、言い再びパクパクと飯を食べ始めた。
たしかに、俺がブレイカーで工場内に突撃してなんやかんやの実験にずっと立ち会っていた。
本当にただ興味があっただけだったのか、ずっと黙って見学を続けていた。
「そそそ、そっかーじゃあ明日の予定はー??」
「明日も同じ、リュールジスがいいならだけど」
バンッッ!!!!!
「ちょっとあんたぁあああ!!! ほんの少し料理が美味いからって調子に乗るんじゃないわよ!!!」
「何でだよ!! 俺関係ないだろうがぁあああー!!」
テーブルを叩き出したと思ったら急に俺に因縁付けて来てなんだこいつ!
もう妹が大好きなのを隠す気が一切ないじゃねぇーかよ。
「ねぇなんで、こんな野蛮人がプリエちゃんと一緒にいるの? 何か脅されてるの!?」
「もぐもぐ・・・ルームメイト」
「あぁああああああああああぁーっ!!!!」
頭を抱えながら崩れ落ちてる。
すげぇーヌルヌルっと床に膝着いた。
そんなにショックなら。
「そんなに嫌なら変わってやろうか?」
「てんめぇええー調子乗るのもいい加減にしろよなぁああー!!! てめぇー如きにアーシャ様の隣を譲るわけねぇええだろうがぁああボケぇえええー!!!」
へたり込んだと思ったら、今度は俺の胸倉を掴み出したよ。何この人怖い。
というか、あの人と同じ部屋かよ。ごめんなさい。それは本当に嫌なのでこのままがいいです。絶対に嫌です。
「貴様なんだその面ぁあああ!!! アーシャ様との同室が不服なのかああぁあんっっ!!!!?」
もう嫌だこの輩怖い。
出会って数日しか経ってないのにキャラが濃すぎるよ、最初はただのドジっ娘キャラかと思ったのに、どうしてこんな事になったんだ・・・。
「ゴクンッ・・・。お姉ちゃんうるさい」
「っっっっっっっっっっっ!!!!」
プリエから渾身の一撃が入った。
とてつもない落ち込みを見せながらゆらゆらと、残った飯を一気に平らげそのまま部屋の出入り口へと放心状態のまま姿を消していった・・・。
静かになってこちらとしてはありがたい限りだ。少し気の毒ではあるが、まあ自業自得だ。
俺達も飯を食い終わり食器の片付けをしているとプリエはそのまま風呂場へと向かった。ゆっくりと食器を洗っているとすぐに風呂場から出てきてそのままベッドへと向かって布団を被った。
「もう寝るのか?」
「夜間任務」
その一言だけを声に出し、そのまま目を閉じ眠りについたのがわかった。
あの時もそうだったのかと、不意に初めてプリエと出会った時を思い出していた。丁度同じくらいの時間だ。
夜間任務か。
俺もプリエに倣うようにして二段ベッドの上へと向かいそのまま眠りについた。
――― ――― ―――
「ふぅわぁ~」
眠い。
時刻で言うと0時を過ぎたくらい。俺とプリエはブレイカーを取りにチシィの作業場へと向かっていた。
なんだかんだでプリエの夜間任務とやらが気になったので勝手に付いていくことにした。
起床当初はそんな俺を凝視して、何だ?って反応をしていたプリエだったが、いつものように何も言わずに一人任務への準備を進めていた。
「へぇー・・・そのままになってるんだ」
チシィの作業場にはプリエのブレイカーがしっかりと整備されて用意されていた。当然チシィにも夜間任務の事は伝わってるということか。
キョロキョロと俺のブレイカーを探すと、何か訳のわからん所に立てかけていた。なんかメモがいっぱい貼り付けられてるけど、大丈夫だろうと全部剥がし取りそのまま持っていくことに。幸いか、プリエと同じように整備はされてるみたいで助かった。
「こっちは準備万端」
「・・・そう」
それだけ言ってプリエと一緒にブレイカーを機動させた。ほぼ昨日をこのブレイカーの慣れに費やしただけあって、ある程度普通に飛べるようになった。
ここだけの話ということで、チシィからは出来るだけ上空への上昇はやめておくように言われている。
単純にただでさえよくわからんブレイカーなんだから、その上でわけわからん軌道なんて取ったら本当にどうなるのか想像も付かないらしいからだ。
「・・・・・・」
まぁ、今無言のプリエの後ろを付いていけば良いだけなんだからある意味無理はする必要もないな。
下手な事してお姉ちゃんに何されるかわかったもんじゃないしな。
そうしてプリエの後を付いていくと、見なれた場所へと到着した。というよりももう俺的には寮よりも安心するような場所。
「おや、リュールジスさん」
「グラテム艦長・・・また世話になります」
また親しみのある陸艦だった。
今日はこの艦で夜間巡回任務を行うようだった。ブリッジに案内へと向かう間に簡単に説明を受けた。
基本的にはアンダーズは夜間での行動が比較的に少ないが、無いとは言い切れない。それに最近のアンダーズの兆候から夜間任務の強化も視野に入っているようだ。
プリエが喋らない分、グラテム艦長が色々と教えてくれてありがたい。
「リュールジスさんがいらっしゃるのであれば、非常に心強いですよ」
知らない艦なんか乗ったら乗ったで色々面倒だからな、事情を察してくれる艦長や乗組員に頭が上がりませんよ本当に。
「こちらこそ、親しみのある所でありがたい限りですよ」
「それは、つまり。私だけでは、心細かったというわけか。グラテム艦長」
「いえいえ、これであなた様の負担も減って肩の荷が下りたということですよ。ユース・オウギフ」
げぇ・・・。なんでいるんだよお前。
「なんだその顔は」
「お前、何暇なの?」
「なんだと貴様!!」
「それでは、本艦は予定時刻通り、夜間巡回任務へと就く。発進!」
俺とオウギフのやり取りを微笑ましい笑みを浮かべて無視して艦長は発信指示を出した。
乗組員も特に気にする空気を一切出さずにいた。これ完全に恥ずかしい奴だ。
「はぁー、だっさ。艦長、俺とプリエは何したらいいです?」
「ユース・プリエにはいつものように索敵術式をお願いしたいのですが、構いませんか?」
索敵・・・術式?
俺が一人首を傾げていると、プリエは逆に頷きそのままブリッジを出て行った。当然俺はその後を追ったが。
「お前は?」
「何故私も仲良く付いていかねばならない。状況の見極めの為、護衛のリベリィはブリッジで待機。基本だろうが」
「・・・・・・。仲良くしたいの???」
「貴様ぁあああーー!!!」
退散退散と、あのままブリッジに居座ったら艦長達の迷惑になりかねない。
だったら煽るなって話なんだがな、ははははは。
それからはプリエについていくと、メインデッキに到着した。
陸艦の正面の甲板でプリエは手慣れた手付きで準備を進める。自分のブレイカーに簡易供給ケーブルを取り付け常に魔力が供給されるようにしている。
そしてそのまま、その場にペタンと座り込み。いつもの表情のまま空を見上げた。
その姿は、ただぼーっと空を見上げているだけの子に見える。
「これが索敵?」
「そう」
「夜間任務?」
「そう」
「今までずっとやってきたの?」
「そう」
「これ食う?」
「・・・うん」
懐から取り出した昨日の夕飯の残りのサラダを簡単に挟んだサンドイッチをプリエに渡す。
どれくらいの時間の任務か知らないから、夜食感覚で持ってきておいてよかった。
プリエを見ると腹が減っていたのか、持ってきたサンドイッチをもう平らげていた。
「もう一個いる?」
「いや・・・うん」
一瞬、俺に気を使ったのだろうが、あんなにバクバク食う姿を見たら無表情でも腹が減ってるんだとわかるわ流石に。
俺はプリエの隣で仰向けになって寛ぐ。
これもなんだかいいな。最前線でアンダーズとドンパチやるだけが戦いじゃないんだなってふと思ってしまった。
これも大事な任務。見つからないのが一番。
アンダーズなんて・・・いないのが一番・・・のはずだ。
そうに・・・違いない。
「・・・敵」
プリエの言葉に俺はすぐに立ち上がった。
気持ちを切り替え周囲を警戒する。プリエに何処か尋ねると三時の方向を指差した。
俺が気配を感じ取る事が出来なかったのにプリエがわかったとなると、プリエの能力は相当な物だな。
プリエがインカムで艦長へ通信を入れている間に俺は甲板から身を乗り出す勢いでプリエの指した方向に向かうが。
「何も・・・いない」
いや。プリエが感知してからという物、変な空気が漂っているのがわかった。
アンダーズは・・・いる!
「っ!!?」
なんだこの感覚・・・!
「そっちか!!」
俺は正面、十二時の方角へ飛び出しバリアを張る。その瞬間突如として赤黒い見なれたビームが飛んできた。
威力は通常と同じ、弾けない事はない。
俺はそのまま反撃の為、艦から借りたストックを構えるが・・・。
「・・・嘘だろ」
俺は攻撃をやめた。
何故なら、敵がそこにはもう居ないとわかったからだ・・・。
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