【完結】投獄中の売国奴が出会ったのは、敵国の泣き虫王子だった。 ~期待された神器が"柄"ってだけで迫害を受けた~

三ツ三

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信じたい王子と裏切られた売国奴

8.お出かけルビヤにお留守番フォーズ

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「ふ~む、ふ~~ん」

 ルビヤと出会い話すようになってから数日が経った。相変わらず俺は牢獄の中にいる。

 が、牢獄内での生活は一変している。
 マグカップに暖かい飲み物を片手に俺は新聞を見ている。


―アインドルゼ軍!再びオリオセージ軍を撃退!―


 新聞に大きく取り上げられている内容一つで色々察していた。
 まず一番に確認したのは、俺が正気を持っていた時期、あの先行部隊での戦闘から数年の月日が経過している事だ。
 俺が今居るアインドルゼ王国にいつから投獄しているのかは全くわからない為そこから何があったのか逆算する事は期待できない。
 それと無くルビヤに聞いてみるか?
 いや、あまりあの子に負担は掛けるのは得策では無いな。こうして毎日ここへ来ることが可能という事は恐らく本当に周到に隠された牢獄なのだろう。

「真相の解明・・・あまり興味は無いかな」

 こんな事を言ったらルビヤに怒られるかもしれない。まだ子供という事理由では無くあの子は誰がどう見ても正義感の強い子だ。
 仮に俺が何かの陰謀の被害にあったなんて思ったら真相を付き止めようとするだろう。

 あまり喜ばしい事では無いな。
 知らないなら知らないままでもいいような気もするし、変にややこしくするくらいならこのままが良い。

「よし、今後はこの状況を維持する為に動く事を念頭に置くとして・・・その上でやりたい事」

 思い付く事が何一つ無いのは相変わらずだ。
 けれど、そんな俺にも変化があった事に一番自分自身驚いている。

 何かルビヤの力になれることはないだろうか。という事だ。

「本人に聞いても、何も無いって言うだろうな」
「何がです?」

 ん? あぁ、もう昼食か。

 鉄格子越しに首を傾げるルビヤが姿を見せる。

「なぁ、ルビヤ。何かして欲しい事はあるか?」
「え? いいですよいいですよ。フォーズさんに悪いですよ、こうやってお喋り出来てるだけで僕楽しいですから」

 まるで婚約者を口説く優男のような発言。あと10年も経てばルビヤが無自覚天然たらしモトモテハーレム男になるのは決められた運命だろう。

 とは、言っても実際ここから出ることの出来ない俺なんか何か出来るとも思えないし難しい物だ。

「あ、朝の朝刊見てたんですね。よかった持ってきて」
「凄い助かったよ、暇潰しにもなるしかなり為になった」
「明日からも持ってきますね。はい、これ昼食です」

 何かしてあげたい、せめて恩を返してあげたいというのにこれじゃあ恩が積み重なる一方だな。

「あっ!ごめんなさい、明日から駄目なんだった!」
「お出かけか、何処に行くんだ?」
「はい、でも心配しないでください! 今日の夜にはいっぱい食糧お持ちしますので!」
「まぁ・・うんありがとう」

 そんな気にしなくても1カ月程度なら飲まず食わずでも大丈夫なのだが、下手に食い下がると気を使わせるので有り難く貰っておこう。

 それにしてもお出かけか。
 基本的にルビヤの事はあまり聞かないようにしていたから何をしているのかはわからない。
 まぁ城の中に簡単に出入りする事が出来て執事を傍に付けているらしいからかなり良い生まれの人間だってのはわかるが。

「何処に行くんだ?」
「カイエン地方にある小さな町です、"シアマ"っていう村です」
「あぁー、あの鉱石採掘で生計を立ててる村か」

 確か偵察任務で何回か民間人に装って出向いた事を思い出す。
 でも確か、俺が行った時はあまり治安がよろしく無かった気がするんだが。

「大丈夫なのか? 盗賊とか・・・って古い情報か?」
「いえ、フォーズさんの言う通りです。今も変わらず治安はよろしく無いですね」

 そんな所に行かないといけない理由か。
 それこそ護衛として行ってやりたい気持ちが抑えられないが、元敵兵と一緒にいるなんて思われたらそれこそルビヤに厄介事を増やす羽目になりかねないな。

「盗賊・・・気を付けて行けよな、お前が居ないと俺が餓え死ぬから」
「はい、大丈夫です! フォーズさん程では無いですが、頑張って鍛えてるつもりですので!」

 細い細い腕をグッと見せられても凄く説得力皆無で心配が3割増しになる。
 でもまあ、こればっかしはどうにもならんから祈るばかりか。

「それでは、色々準備などもあるのでこの辺で、また夜にいっぱい持ってきますね」

 そう言いルビヤは牢獄を後にした。出る寸前なんか頑張るぞってガッツポーズしていたように見えた。気合いが入っているようで何よりだ。

 再び牢獄に一人残った俺は、ここ数日で多く持ってきたランタンの明かりを浴びながらトレーニングに勤しむ事にした。

 特別何かに備える訳では無い。
 ただ単にまだまだ本調子じゃない身体を少しでも回復させる為。

 本当に・・・本当に、もしもの時の為に・・・。
 


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