【完結】投獄中の売国奴が出会ったのは、敵国の泣き虫王子だった。 ~期待された神器が"柄"ってだけで迫害を受けた~

三ツ三

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眼鏡と売国奴と王子

32.情報と異空間と連行

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 人気の無い暗闇の夜。
 見渡せば街の明かりすら届かない路地。

 手渡された地図を頼りに歩き続ける。
 するとそこには目当ての人間が座って居た。

「おい、兄ちゃん。恵んでくれよ、銅貨だけでいいからさ」

 あまりにも綺麗とは到底言う事の出来ない男。見るからに難民か、はたまた全てを失い絶望に耽っていますと言いたげの存在。

 俺は、渡された硬貨を一枚手渡した。
 銀貨の表側、アインドルゼのシンボルが彫られているマークにバツマークを付けた銀貨だ。

 それを受け取った男が、不敵な笑みを浮かべながら黙って付いて来いと言わんばかりに歩き出した。

「お客さん初めてかい?」
「他の所は何回か、最近こっちに来たもんでな」
「そうかいそうかい。他はどうか知らないが、ここは少し用心しておいた方がいいですぜ」

 用心ねぇ。

 そう、俺はエルターからお使いを頼まれて今牢獄の外、アインドルゼの城下街に来ていた。

『こちらに行って頂ければと思います。お手続きは全て済ませておりますので』

 なんでも、ルビヤがキナ臭い事に巻き込まれそうだからと。キナ臭い事はキナ臭い所で調べるのが一番。という事でお使いを頼まれたのだった。

 暴食に疲れたルビヤはそのまま就寝して、何があったかエルターから聞いた。
 何でも凄く頑張った、そうだ。それ以上は説明しなかったが大よそ察し、シアマ村とは違い、圧倒的に手数がこちらには足りない為、こうして外出を許可された。というか別に俺は牢獄のままでいいんだけど、なんて言ったら飯抜きにされそうだったから言わなかった。


ピーーンッ!


 俺は硬貨を一枚、前を歩く男の前に弾いて飛ばした。
 男はすぐにそれを拾い、何食わぬ顔で懐に収めた。

「最近、物騒だよな。奴隷売買だっけか」
「ははははっ、そうなんですか? 怖い世の中ですね」

ピーーンッ!

「あっしも詳しくは無いんですがね。どうやら、奴隷違法が可決されたのにも関わらず、奴隷の売買が右肩上がりになったとかなんとか」
「ほぉー・・・他国からの商売か」
「そこまでは」

ピーーンッ!

「本当に詳しくないんですがね」

 3枚目の硬貨を、面倒臭そうに拾う男。
 変に警戒されたか? とは、言え俺はそんな奴隷がどうこうなんて思っても無ければ、この国が抱える問題なんてぶっちゃけどうでもいい。

「お前さん、脱獄してきたのかい?」
「臭うか?」
「ははははっ、面白いなあんた。保安の奴とは思ってなかったが、まさか脱獄者なんてね」

 かまをかけられたようだった。
 まあ別にこの男に自分の素性なんて隠したところでという気持ちがあるから何とも思わなかった。

 だが、おかげで男の警戒心が少しだけ解けたようにも思えた。

「本当にここだけの話なんですがね。お得意さん、つまりは奴隷を買ってる奴等は何かを探してるみたいですぜ」
「探してる? 人をか?」
「いえ・・・」

 突然男は止まり振り向き俺を指差した。

 正確には、俺の腰・・・まるで腰にぶら下げている物が見えるかのように。

「面白い情報だ、また使わせてもらうぞ」
「御贔屓にどうも、では。この辺で・・・」

 最後とばかりに俺は硬貨を道端に投げ捨てた。
 男はそれを拾ったと同時に来た道を帰って行ったのだった。

 目の前には、何も無い空間。
 ここが、目的地で間違い無い、何故なら俺が一人佇んでいると強面の男達がこちらに歩み寄ってきたのだから。

「はい、これ」
「・・・入れ」

 特別な事は無い。用意されたチケットを男に渡した。
 すると、何も無い空間の床が動き出した。

 男達は、周囲を警戒しながら俺に早く入るように言う。
 逆らう理由は当然無いので、黙って地下へ続く階段を歩き進めたのだった。


 まるで、牢獄に似た気持ちだ。
 回りは石ばかり、進めば進むほど闇が深くなるような印象を与えられる。手元のセルマギアの明かりのおかげで進む事が出来る。

 そしてそれも終わりだ。

 巨大な扉が姿を現す。ここが終着点であり、ここからが俺のお使いが始まる。
 扉の中央に立ちその時を待ち続けると大きな音を立てながら扉自動で開かれていった・・・。



「ようこそ! 欲望と私欲の空間へ!!」



 扉を抜けた先には、先ほどまで歩かされていた空間が嘘のような光景が広がっていた。
 昔から噂には聞いていたがここまでとは。

「ドリンクどうぞ」
「はいどうも」

 ウサギ耳を付けたほぼ全裸に近い女性から飲み物を貰う。手に持っているトレーの上に一応銀貨を一枚投げ込んでおいた。

 見渡す限り金色に輝いている装飾品、本当にここが地下なのかと疑いたくなる程に賑やかだった。地上の下手な娯楽施設よりも豪勢な気がする。
 けれど、地上と圧倒的に違う物。それは人間だ。
 誰しもが俺のように深くフードを被っていたり、気持ちの悪い仮面を付けていたりと自らの顔を出していない。それがここのルールだ。

 客も従業員も、お互いの素性を模索しない、関わらない。それがある意味で平和的な運営に繋がっているということなのだろう。

「さて、ここからどうするか」

 改めて周囲に目を配る。
 目的は当然、奴隷関係の物だ。エルター曰く、ここの奴隷売買は当然違法の物であるが、この空間においてはその逆であり、メインイベントの一つだと言う。

 適当に歩いてれば見つかるはず・・・。


ガシッ・・・!!!


 ん?
 あれ・・・なんで俺、腕掴まれてるんだ?

「ようやく来たか!! 急げ馬鹿物! もう始まるってのに!!」
「は? え、ちょっ・・・!?」


 あまりにも突然の事で状況が飲み込めないまま俺は、2メートル以上ある男二人に俺は、掴まれ連行されていったのだった・・・。
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