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話を切り上げようとするオリビアに、ロバートは大慌てだ。
「ま、待ってくれ! ハニーとの婚約は嘘だ! オリビアを嫉妬させようとしただけだ!」
懸命に取り繕うロバートに、
「それって、わたくしとハニー様への侮辱ですよね?」
オリビアは嫌悪に眉を顰める。
「大体、愛情を試すって、どういう主旨ですか? 勝手にわたくしの人生に合否をつけないでください。不愉快です。わたくしは貴方に奴隷扱いされるために生まれたのではありませんわ」
彼女は愛しげに真の婚約者を見上げる。
「ミハエルはロバート様に傷つけられたわたくしを労り、いつの時でも味方でいてくれました。わたくしはミハエルを愛しています。ミハエル以外の伴侶はありえません」
「そんな、オリビア……!」
ロバートは尚も手を伸ばすが、オリビアは憐れな虫ケラを見下ろし、
「わたくし、貴方のことが大嫌いでしたの。 もう姿を見せないでくださまし」
冷たく言い放つと、ダンスホールに歩き出した。
「気分を変えたいわ。ミハエル、踊りましょう」
「うん、そうだね」
ミハエルは笑顔で頷いてから、そっと兄に耳打ちした。
「オリビアは僕が幸せにするから心配しないで。兄さんは兄さんで相応の幸せを掴んでよ」
それだけ言い捨てると、婚約者を追って会場奥へと消えていく。
残された男に、出席者達が遠巻きに冷ややかな視線を送っている。
ロバートはハッと思い出したように振り返った。
「ハ……ハニー!」
この場に居る唯一の味方に助けを求めるが……、
「キモッ」
……ドレス姿の男爵令嬢も、嫌悪感剥き出しで、顔を歪めていた。
「女を傷つけることでしか自尊心を満たせないなんて、小さい男。あんたなんか実家の資産しか魅力がないのに、それも失くしたら何も残らないじゃない。一緒に来て恥掻いたわ」
ドレスを翻し、ハニーは去っていく。
それをきっかけに、興味を失くした出席者達も三々五々に散って、各々にパーティーを楽しみ出す。
「う……うぅ……」
石のように蹲り、嗚咽を漏らし続けるロバートに、もう誰も見向きもしなかった。
「ま、待ってくれ! ハニーとの婚約は嘘だ! オリビアを嫉妬させようとしただけだ!」
懸命に取り繕うロバートに、
「それって、わたくしとハニー様への侮辱ですよね?」
オリビアは嫌悪に眉を顰める。
「大体、愛情を試すって、どういう主旨ですか? 勝手にわたくしの人生に合否をつけないでください。不愉快です。わたくしは貴方に奴隷扱いされるために生まれたのではありませんわ」
彼女は愛しげに真の婚約者を見上げる。
「ミハエルはロバート様に傷つけられたわたくしを労り、いつの時でも味方でいてくれました。わたくしはミハエルを愛しています。ミハエル以外の伴侶はありえません」
「そんな、オリビア……!」
ロバートは尚も手を伸ばすが、オリビアは憐れな虫ケラを見下ろし、
「わたくし、貴方のことが大嫌いでしたの。 もう姿を見せないでくださまし」
冷たく言い放つと、ダンスホールに歩き出した。
「気分を変えたいわ。ミハエル、踊りましょう」
「うん、そうだね」
ミハエルは笑顔で頷いてから、そっと兄に耳打ちした。
「オリビアは僕が幸せにするから心配しないで。兄さんは兄さんで相応の幸せを掴んでよ」
それだけ言い捨てると、婚約者を追って会場奥へと消えていく。
残された男に、出席者達が遠巻きに冷ややかな視線を送っている。
ロバートはハッと思い出したように振り返った。
「ハ……ハニー!」
この場に居る唯一の味方に助けを求めるが……、
「キモッ」
……ドレス姿の男爵令嬢も、嫌悪感剥き出しで、顔を歪めていた。
「女を傷つけることでしか自尊心を満たせないなんて、小さい男。あんたなんか実家の資産しか魅力がないのに、それも失くしたら何も残らないじゃない。一緒に来て恥掻いたわ」
ドレスを翻し、ハニーは去っていく。
それをきっかけに、興味を失くした出席者達も三々五々に散って、各々にパーティーを楽しみ出す。
「う……うぅ……」
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