入れ替わり!?100回いかないと元に戻れない身体

猫丸

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入れ替わり!?100回いかないと元に戻れない身体

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 日がまだ高いところにあり、ジリジリと油を炒めるかのようにセミの鳴き声がけたたましくこだましている時間帯。
 夏休みに入ったばかりの俺たちは、部屋を締め切ってエアコンをガンガンに効かせた部屋で裸で抱き合っていた。

 そして今、俺のケツの穴にちんこぶっ刺して、腰を振っているこいつ。
 俺、友永朝陽ともながあさひの恋人で、大学の同級生の竹中遥人たけなかはると
 今まで付き合った相手の中で、郡を抜いてハイスペックなこの男。
 顔良し、性格良し、頭よし。
 身体だってがっしりしてて俺好みだし、ちんこだってデカくて良いモノを持っている。

 大学に入ってからずっと好きだった。でもノンケだって思っていたから、友達でいられれば良いと思っていた。まさか付き合えるなんて思ってもいなかった。
 二回生になってしばらくして、俺は遥人に告白された。もちろん、天に舞い上がるような気持ちで即OKした。
「男を好きになるのははじめて」という遥人に、大切にしようと心に誓ったのだが…。


なのに…


なのに…



「オマエっ!!セックス下手くそすぎなんだよっ!!!!」

 ふぅ、と満足げに後処理をしている遥人に、俺は枕を投げつけてる。

「えっ!?朝陽!?」

 なんていうか…自慰を覚えたばかりの中学生の様だ。アホみたいに回数だけは多い。
 まぁ俺も性欲は強いほうだから、それはいい。
 でも…

「ただサルみたいに腰ふりゃいいってもんじゃねぇんだよっっっ!!!!」

 我慢できずに怒鳴ってしまった後、我に返った俺は「やっちまった」と、顔面蒼白になった。
 遥人の前では極力抑えていたが、俺は本来気が短い。

「ご、ごめん!俺帰るっ!!」

 驚く遥人を無視して、脱ぎ散らかした服をさっさと着ると、俺は部屋を飛び出した。
 俺はすぐ怒るが、反省も早い。
 今のは完全に俺が悪い。理想の相手だったし、女子からモテてているのも知っていたから、勝手にセックスも上手いと思いこんでいた俺のミス。それを一方的に怒りをぶちまけるとか人として間違っている。
 だが、ただ突っ込まれて吐き出される行為に俺はもう限界だった。いや、正確には穴が。
 あぁ、性の不一致ってこういうことを言うんだ、と泣きたい気持ちになった。

「ちょっ、まって!!朝陽!!」

「ついてくんなっ!!」

 酷いことをいってしまった罪悪感としも事情を感情に任せて怒鳴ってしまった恥ずかしさとでいたたまれない。少し一人になりたくて更に突き放すような言葉がでてしまう。目頭が熱くなってきた。
 そこにあった服をあわてて着て追いかけてくる遥人を、俺は振り切って走り出した。
 「なんであんな事言っちゃったんだ」と後悔で頭がいっぱいだった。だが口に出してしまった言葉は戻らない。
 遥人は男と付き合うのはじめてだったのだから、あんな事言う前に俺が教えてやればよかったのかもしれない。でも女の子とのエッチだってあんなんじゃ嫌われると思う。
 ましてや、男の俺は排泄器官に突っ込まれてるんだ。もう少し配慮があっても良いと思う。

 女子からもモテモテの遥人に告白してもらえて、更に好みのタイプになりたくて、慣れてないふりをしたのがまずかったのか。感じているふりをしていたのがまずかったのか。
 いや、俺だってそんなに経験が多いわけでもないから、カマトトぶったわけでもないんだが。
 「そのうち上手になるはず」という期待にだんだん疑問符が湧いていて、でも回数だけ多い遥人とのセックスがだんだん苦行のようになってきた。
 自己嫌悪と身体のしんどさとでどうしようもない感情ががぐるぐる渦巻いていた。

「ちょっ、朝陽、まって!!話を聞かせて!!!!」

 追いついた遥人に「掴まる!」と腕を振りほどこうとした瞬間。
 俺達の身体は転げ落ちた。

 何故その道路の先がなかったのか。なぜ道路に大きな穴があったのか。そんなこと俺が知るはずもない。少なくとも俺が遥人のアパートに行くときにはなんの問題もなかったはず。
 一瞬何が起きたか理解できず、ただ落下していく俺の身体を遥人が抱きしめ、一緒に転げ落ちてくれた。
 そして、転落が止まった衝撃とともに俺の意識は暗転した。

 ◇

 気がつくと病院のベッドの上だった。
 遥人と一緒に道路の穴に落ちた記憶はある。
 どうやら気絶している間に病院に運ばれたようだ。

 ところどころ破れて泥だらけの服。頭にはコブができているのか、右上あたりがズキズキ痛いが、とりあえず正気だ。
 足は熱を持っていた。見ると包帯がまかれていた。あちらこちら擦り傷も多いが致命傷は負ってなさそうでよかった。

 だが…なんか色々とおかしくないか?俺の身体。すごく違和感。
 意識の戻った俺に看護師さんが矢継ぎ早に話しかけてきた。

「気づかれましたか?足、痛いですよね。足首捻挫してるんで、1週間は動かさないでくださいね。あと、頭打ってるみたいなのでこの後MRI撮りますが吐き気とかは大丈夫ですか?
あ、ちなみにお友達の方は擦り傷程度なので、今、警察の人と話ししてますが、先程すごく心配していて。意識が戻ったこと、お伝えしてもいいですか?」

「…はい」

 事故のショックのせいか、なにかに違和感を感じつつ、それがなにか正体を確認する前に、決定的な違和感の正体がやってきた。

「朝陽、気づいた?」

「えっ?お、????ど、どういうこと????」

 看護師さんが連れてきたのは、心配そうな表情を浮かべているだった。

 MRIの結果、外傷のみで脳の方は大丈夫だろうとのことだったが、「大丈夫なわけねぇよ!」と、パニックになっている俺。
 警察や道路管理をしている役所の人の説明によると、急にあそこだけなぜか地盤沈下したらしい。原因は調査中。本当に運悪く、まさに陥没するちょうどそのタイミングでそこを通りかかった俺達が落ちていったとのこと。
 
 「あと数分時間が前後していれば、巻き込まれなかったんですけれども…」

 役所の人間は恐縮しながらそんなことも言った。道路の陥没は確かに大変な事故なのだが、こちらとしてはそれに加えて、『俺が遥人で、遥人が俺で』という状況にますますパニック状態だった。
 この状況を俺よりも早くに気づいて、俺よりかは少し冷静な遥人(外見は俺)にこの場をまとめてもらい帰宅となった。

 病院からは「頭打ってるので念のため入院しますか?」と聞かれた。だが、俺達は二人共実家から離れて、大学近くで一人暮らしをしている身。怪我はたいしたことがないから断った。
 それよりも早く2人になって状況の確認をしたかった。
 そしてタクシーに乗って、半日前にセックスをして、俺が怒って飛び出した遥人のアパートへと二人で戻った。





「完全に入れ替わってる…」

 互いを触って確認する。叩いても、つねっても、正常な感覚がある。ただ心が入れ替わっただけ。
 遥人の中に入った俺は、遥人の怪我の痛みを感じているし、やはり現実だと認めざるを得ない。

 そして怪我の状態は、遥人が俺をかばったせいで足を捻挫。腕や足、背中やらあちらこちらに擦り傷と打撲痕。あと、頭部にはたんこぶ。かばわれた俺の身体は、足に軽い擦り傷程度。
 あの状況でとっさに俺を守ってくれるとか、本当にいいやつだ。

 だが…。

「いてぇ…」

 かばってもらっておいてなんだが、中身が入れ替わった今、痛いのは俺の方。なんだこれ。

「俺は転落していく時は意識あったんだけど。とにかく朝陽を守らなきゃって、怪我させちゃだめだって。で、落ちるのが止まった時に衝撃でちょっと頭打って、一瞬意識飛んだんだよ。
でもすぐ目覚めて、そしたら自分の顔が見えたから『あぁ俺死んだ』って思って。
でも朝陽の姿が見えなくて。…なぜかがっちり自分に抱きしめられてて身動き取れないし。俺の身体、意識ないし。
で、しばらくして穴の上から近所の人とか消防の人が声かけてきてくれて。救急車来て一緒に乗させられたときに、気づいたんだ。だからやっぱその頭打った時、入れ替わったってことなのかな?」

 あんなこと言った直後なのに、命がけで守ってくれるなんて。遥人、ホントごめん。
 なんかすごく申し訳ない気持ちになって、自分に腹が立って、こんな訳の分からない状況に追い込んだやつに対しても腹が立って。
 謝ろうにも、遥人の姿で謝るのもなんか違うような気がしてきて、苛立ちが込み上げてきた。

「う゛~~!!俺、漫画で読んだことある!このあと神様だかなんかわけのわかんねー生き物が出てきて『お前らの身体は入れ替えた!戻してほしくば…』ってヤツ!おい、犯人!そろそろでてこいっ!」

 俺は何もない空に向かって怒鳴った。
 だが誰も現れない。
 沈黙が訪れた。

「朝陽…漫画じゃないから…」

 俺達の身体を入れ替えた超現象のかわりに、なぜか遥人が申し訳なさそうに俺をなだめた。
 そりゃそうだけど、こんなこと起こるなんて現実にはありえない。
 大体ピンポイントにあのタイミングで崩れ始めた穴に落ちるとか、そんなことあるはずがない。

「わかった!!きっと夢だっ!!じゃなきゃ、こんなことになってる説明がつかねぇっ!!きっと寝て起きたらもとに戻ってるはずだ!!そうだっ!!そうに違いねぇっ!!」

 パニックと疲労で考えるのを放棄した俺は、ぼろぼろになった服を脱ぎ捨て、ざっとシャワーを浴びて着替えた。傷口は染みるし、足は痛い。だがもう何もかも忘れて眠りたかった。
 一瞬、事故直前の喧嘩の事を思い出したが、今はそれどころではない。その記憶を振り払って、これが夢であってほしいと願いながら俺たちは寝た。


 そして、寝て起きて、寝て起きて…それを数日繰り返したけど、俺たちは入れ替わったままだった。


 ◇


 入れ替わったまま1週間が過ぎた。
 捻挫の調子もだいぶいい。もうそろそろ病院へ行かなくても平気そうだ。

 事故のショックは少し和らいだし、同じ部屋に俺の姿が俺の意思とは関係なく動いているのは妙な気分だが、気持ちは少し落ち着いた。
 だがやはり身体は入れ替わったまま、戻る術がわからない。
 もう一度、一緒に穴に落ちないといけないのか。

 医者には「中身が入れ替わったりって話、聞いたことあります?」と、恐る恐る聞いてみた。
 もちろん、望んだ回答が返ってくるはずもない。
 「よく物語ではそんなお話もありますけどね、現実にはありえないですよね。臓器移植とかしたら、前の人の記憶が一部残ってる、なんて話は聞いたことありますけど、本当に何万分の1とかの稀なことだし、どこまで本当の話かわかんないですよね。なんか違和感感じているなら、もう一回頭、調べてみます?」と心配されてしまった。

 俺達は諦めて、このまま過ごすしかなくなった。
 検査上、頭にはなんの損傷もないのに、俺達の状態を元に戻すために、脳の交換なんてハイリスクなことをできるはずもない。
 説明したって『事故のショック』ってことで片付けられて、カウンセラーでも紹介されて終わるんじゃないか、という結論に至った。

 ちょうど時期は夏休みに入ったところだった。
 俺たちは事故を口実に、バイトや友達との遊びの予定をすべてキャンセルした。
 全国ニュースにもなった事故だったので、みんな「大変だったな」といいつつ、興味津々、受入れてくれた。
 親や家族には「帰ってこい」と言われたが、「軽症だし、バイトがある」と嘘をついて断った。
 大体、電話しているのは、俺の姿をした遥人なのだ。
 
 俺は遥人の身体に入ったまま、遥人は俺の身体に入ったまま、なんの解決策もなく日々は過ぎていく。
 あんな酷いことを言ったのに、遥人は甲斐甲斐しく俺の世話をしてくれる。
 怪我人相手だからか、風呂やトイレまでお世話しようとするのにはちょっと困ったけど。
 やっぱりセックス以外は本当に理想的な相手なんだよな、遥人は。


 ◇


 毎日二人でゲームをしたり、映画を見たりしながら日々が過ぎていった。
 買い物はもっぱら、ほとんど怪我のなかった遥人の役目だった。

「今なら大丈夫、かな?」

 俺は時計を確認した。
 まだ3時半。
 遥人は買い物に行ったばかり。きっとあと30分は帰ってこないだろう。
 ティッシュとゴミ箱の位置を確認して、そっと股間に手を伸ばす。

「んっ…」
 
 ずっと二人だったから、我慢していたけどそろそろ限界。
 だってお年頃だし、理想の相手の身体に入ったのだ。そりゃ誰だってやってみたいこと、あるだろ?
 自慢じゃないが、俺はもともと性欲が強いほうなのだ。
 限られた時間を有効に使うべく、鼻息荒く服を脱ぎ捨てる。すでにたちあがったペニスの先端から漏れ出ている液体でボクサーパンツに染みができていた。
 それも脱ぎ捨てて、全身鏡の前に立つ。

 それにしても、やべぇな。コイツ。

 セックスは下手くそだけど、顔とか身体はめっちゃ好みなんだよな。あと性格も優しい。
 筋肉の付きづらい俺の身体とは違って、鍛えられた肩や腕、割れた腹筋を撫でる。脇腹や脇毛、臍下あたりから生えている下の毛に、陰囊に至るまで全身くまなく観察する。
  そして、一番興味があったけど、なかなか凝視することはできなかったここ。

 鏡の前で寝そべりながら股を開く。
 期待でぎんぎんに勃ち上がっているちんこ。尻を少し上げ、鏡を見るとしっかりと閉じた肛門が写っていた。
 (こいつ、こんなところにほくろある…)
 尻たぶを開かないと見えないところにあるほくろを見つけて、ごくりとつばを飲む。穴がきゅんっと更に締まった。
 いきり立つペニスを握りしめる。主人不在の身体を自由にしているという罪悪感を感じながら。同時に背徳感を感じながら。

 改めて握ってみると、やっぱり遥人のちんこは太いし長い。手を上下に動かしながら、反対の手で陰嚢を揉みしだく。やっぱいい。これをケツに入れたい。経験のない身体なのに、ケツの中を太いので満たしてほしくて穴がキュンキュン疼いた。
 
 俺はゲイだがリバだ。入れるのも入れられるのもどっちもいける。
 ただ、遥人が男は初めてだったから流れで入れられる側になっただけで。
 ならば身体が入れ替わっているうちに、遥人の穴を慣らしておけば戻った時やれんじゃね?
 そんな期待が湧いてきた。

 遥人の穴を鏡に写す。
 穴の周りにローションを垂らし、滑りを良くして、くるくると撫で回す。軽く指を1本差し込んでみる。固く閉じた穴は始めこそ拒んだものの、優しくこじ開けてみればつぷっと指の先端を飲み込んだ。

 身体が入れ替わっている間に開発しておけば、欲しがるようになるだろうか?
 まだ誰にも開かれていない遥人の穴に、自分のものを突っ込むのを想像して興奮した。

 だが、とりあえず今日は手始め。人の身体だし1本くらいでやめておこう。 
 ちんこを扱きつつ、後ろに指を1本だけ入れオナニーを楽しむ。遥人のオナニーを覗いているみたいだ。がっしりした男らしい遥人が、こんな蕩けた顔で、ちんこでも肛門でも感じてる。
 やばい興奮する。

 遥人のオナニーは思っていた以上に良かった。
 遥人が感じやすいのか、後ろでも感じる才能があるのか。
 すぐにイッてしまった。

 正気に戻った俺は、ヤツが帰ってくる前に部屋を換気をした。
 窓を開けると、外からムワッとした暑い熱風が入ってきた。
 精を吐き出したせいか、少し冷静になる。そういえば、事故でうやむやになっているけど、一方的に別れ話したんだったな、と思い出した。
 やっぱり、どう考えてもあれは俺が悪かった。
 あの日はローションが乾いてたのに、いつもにも増してガンガン突いてくるから怒りが先に立ってしまった。でも遥人は本当にいいやつだし、話せば絶対にわかってくれたはず。俺の嫌がることなんてしなかったはず。
 いつ戻れるかわからない状態だし、気まずいままなのは嫌だ。
 遥人の姿であやまるのはなんか違うと思っていたけど、見た目の問題じゃない。
 うん、遥人が帰ってきたらやっぱり謝ろう。そして俺も気持ちよくなれるように、してほしいことを素直に言おう。
 
 ◇

「遥人…あのさ…あの、事故の前のことなんだけど…」

 俺は遥人の姿で、買ってきた物を冷蔵庫に片付けている俺に話しかける。

「あの時はひどいこと言ってごめん。その…遥人はオトコ初めてだから、俺がもっとしてほしいこととか、気持ちいいところとか伝えるべきだったと思って…」

「ん、大丈夫。俺も入れ替わってみて、朝陽に無理させてたんだな、って気づいたから。俺の方こそごめんね」

「それって…」

「うん、入れ替わった直後から、お尻の穴、痛かった」

(ですよねー)なんて、ちょっと俺はスンっとなった。
 まぁでも、仲直りは仲直り。
 冷蔵庫の前に座っている遥人の前に膝立ちになり、軽くちゅっと唇を重ねた。

「俺、すぐかっとなってごめん。こんな状況っていうのもあるけど、それだけでなくて、身体がもとに戻っても、ちゃんとしてほしいこととか、やめてほしいこととか話し合おう?」

 俺がそういうと遥人も「ん」とうなずいて、キスを返してきた。
 互いにキスを返し合い、徐々に口元が緩んでくる。俺は遥人の口の中に舌を差し込んだら、遥人が絡めて返してきた。
 
 Tシャツの中に手を入れ、軽く軽く乳首をコスコスと刺激をすれば、遥人は「あん…」と軽く喘いだ。

 そうなると、どちらも性欲旺盛なお年頃。やることは一つだけ。
 恥ずかしがる遥人に準備の仕方を教える。
 風呂場で尻を突き出させると、遥人は俺の身体で全身を真っ赤にて耐えた。
 普段アナニーでしか触れることのない自らの穴をしっかりと洗い、軽く入口をほぐす。
 シャワーヘッドを取り外して、体内にぬるま湯を入れ、吐き出させること数回。
 体内から出てくるものが透明な水だけになった時、すでに遥人は息も絶え絶えだった。

「まだこれからが本番なんだけど」

 人の身体であっても排泄を見られるのは恥ずかしいのだろう。俺とあまり目を合わせようとしない。
 だが、それでもしっかり勃ち上がっているペニス。
 それをさせている俺もギンギンに勃ち上がり、先っちょから透明な液体がこぼれ落ちてきていた。

 俺達は互いのちんこを舐めながらベッドで重なり合った。
 俺が上で、遥人が下。
 
「竿だけじゃなくて、全体をしっかり舐めて、俺と同じようにすればいいから」

 陰茎を舐めつつ、裏筋や陰嚢までも口に含み刺激をしてあげると、遥人は喘ぎながらも俺にも同じようにしてきた。うん、前よりはずっといい。

「で、ここ」

 蟻の戸渡りを優しくなぞりながら穴へと到達する。

「あっ…あっ…」

 遥人は股を開いたまま、腰をヘコヘコ浮かしながら、気持ち良さそげに喘いでいる。
 同じようにしろといったのに、気持ちが良いのか、手も口も止まっている。

「で、穴の中の、この浅いところ。ここにぷっくりしたところがあって、ここをトントンって…」

「はっ、あんっ♡」

「時折カリカリ引っ掻いてみたり…」

「ひっ♡」

「ぐりっと押しつぶしてみるとか」

「んんんんっっっ♡」

 俺の身体だから感じるポイントはよくわかってる。遥人は身体を仰け反らせて喘いだ。
 俺はそのまま指三本を動かして、前立腺を刺激しつづけた。
 遥人の素直なリアクションに俺も楽しくなってきた。

「ほら、お口がお留守だぞ?」

 そう言って、初めての穴の中の快楽を楽しんでいる遥人の頬を、びんびんのちんこで叩いた。遥人は、はっと気づいて口に含むが、やはり強い刺激が与えられると、ちんこを吐き出して喘いでいた。

「朝陽…なんかヤバい…なんかクルっ!!下腹からなんかくるってぇっ!!!!」 

「いいよ、イケっ!!そのままイケって!!」

 少しストロークを早め、奥までズンズン突くと、遥人は指が入っている穴の肉輪をぎゅっと引き絞って、俺の顔めがけて派手に精液を撒き散らした。

「おー、初中イキおめでとう!!俺の身体だからイキやすかっただろ?」
 
 遥人は息も絶え絶えだった。俺はとてつもなく興奮していた。
 俺はちょっとだるくなった腕を振って、顔にかかった精液を拭く。
 そして、力の抜けた遥人の足を肩に担ぐと、後孔に再びローションを追加した。
 まだ痙攣が治まっておらず、くぱくぱと開閉を繰り返す穴に切っ先を当てる。

「ま…まって、まだっ……ああんっっ…!!!!」

 挿入した瞬間、甘い嬌声が漏れた。
 初めての中イキをキメた直後だっていうのに、遥人のちんこはびんびんに勃ち上がっていたし、初めての挿入体験もまんざらでもなさそうだ。
 俺は遥人の呼吸に合わせて、ゆっくり出し入れを繰り返す。
 そのうち挿入の衝撃も収まってきたのか、ストロークに合わせて甘い吐息が出てくるようになった。

 俺はぞくぞくした。
 視覚的には、遥人のものを挿入されて、気持ちよさそうに喘ぐ俺。
 そうだ。遥人はもともと良いちんこものを持っている。やり方だけなんだ。

 遥人は、挿入されながら無意識に自分のちんこを扱き始めた。
 なんかエロい。

「はぁ…やばい…朝陽、俺またイキそう…」

「遠慮なくイケよ」

 俺は遥人がイキやすいように、ストロークを強めて、奥をごりごり刺激する。

「あっ…それ、やばい!!やばいっ!!あさひっ…あっ…ああんっっっ!!!!」

 遥人がいくタイミングで、俺も俺の体内に精液をぶちまけた。
 生で出してしまったが、まぁ問題ないだろう。散々俺だって出されたんだから、後処理についても教えなきゃいけないしな。
 初体験が衝撃だったのか、そのままぐったりと横たわっている。まだ余韻が収まらないのか、萎えたペニスが体内の痙攣に合わせてピクピクと反応していた。
 
「遥人、良かった?」

「ん…すごかった…」

 身体を折り曲げて口づける。遥人はとろんとした瞳でキスに応えた。


 ◇


「はぁ…やっぱりもう一回穴に落ちるしかないのかなぁ」

 俺達が落ちた陥没した道路は全面通行止めになり、立ち入り禁止。周辺の地盤調査が進められている。
 陥没の原因は、老朽化した地下埋設管による土砂の流出。それが原因でできた地下空洞が、俺達があそこにいたちょうどのタイミングで陥没したのだろうとのこと。
 同じ時期に埋められた地下埋設管は、周辺にたくさんあって、地道な調査が行われている。

 遥人のアパートも現場に近いから、遥人の親には「別のアパートに引っ越せ」と言われた。俺が。
 
「そんなタイミングよく何度も落ちれるかなぁ?」
「だけどよぉ、夏休みも終わるし、いつまでもこのままってわけにいかねぇだろ?」

 そんなに困っていない雰囲気の遥人が恨めしい。穏やかなのは遥人の良いところだけど、少し位焦ってもいいんじゃないだろうか?

「万が一、落ちれたとして、それでもとに戻んなかったら?この間みたいに軽症ではすまないケースだってあるかもよ?」

「あ゛ー!!じゃぁ、どうすりゃいいんだよ!?なんか戻る方法考えねぇとっ!!」

 俺はだんだんイライラしてきた。
 遥人のせいじゃないのはわかってるけど、身体の怪我が治っても、なんの手立ても見つからずただ日々が過ぎて行く状況に焦りを感じていた。
 このまま遥人として生きていくのか。それとも入れ替わっていることをみんなに話して理解してもらうべきなのか。ため息をついてごろりとベッドに横になった。

「まぁ、怪我も治ったし。もとに戻る方法もわかんねぇし。明日辺り、俺もアパート帰るかな」

「えっ?朝陽帰っちゃうの?」

 のんびりしていた遥人が急に慌て始めた。慌てるとこ違うだろ、お前。

「いつまでもお前の世話になってるわけにいかねぇし、今後のことも考えなきゃいけねぇしさ」

 遥人は少し黙って考え始めた。
 俺は目を瞑った。考えても良い案が浮かばない時は、諦めて寝るに限る。
 うとうとしていると、意を決したように遥人が尋ねてきた。

「…ねぇ、朝陽?このアプリ見たことある?」

 少しけだるげに顔を横に方向け、遥人のスマホを見ると、白い丸の中に絵文字の汗のような、雫が3つ飛んでいるシンプルなアイコンがあった。その下には『IKU』と表示されている。

「なにこれ、初めて見たけど…アイ、ケー、ユー?」
 
「ちょっと気になることがあるんだけど、朝陽のスマホに入ってるか見ていい?」

「ほらよ」とスマホのロックを解除して遥人に渡す。

「あぁ、やっぱり入ってる」

「なにそれ、デフォルトで入ってるアプリかなんか?」
 
 少し眠気が収まってきて、遥人の手元を覗き込む。
 俺のスマホのホーム画面じゃないところに隠れていたらしい。
 遥人がクリックすると、『89』という数字が現れた。
 他になんの説明もない。設定画面もない。ただ白い画面に濃いグレーのゴシック体の数字が現れただけ。

「なにそれ、なんかこわっ。これなんの数字?遥人のは?」
 
「いや、俺のは…」

 少し抵抗する遥人から、強引にスマホを奪ってクリックする。

「32…?俺より少ないけど、これがなんなの?」

「いや…俺もわかんないんだけど、入れ替わって少し後にそのアプリ入ってるの気づいて。それ削除もできなくて。ただ、数字が減っていってるから、ゼロになったら、もしかしたら…って」

「そうなん?この数字どうやったら減るの?だって、俺と遥人の57も違うけど、なんで?」

「っ…えっと…減る理由は…わかんないんだけど…」

 歯切れが悪い。何か都合悪いことでもあるのだろうか。
 わからないんだったら、調べりゃいいじゃん、とググってみたがアプリ情報はまったく出てこない。
 そもそもそのアプリの詳細を開いてもなんの情報も出てこないのだ。通常ならアプリ情報の一番下に表示される入手先ストアの記載もなかった。

「んー、わっかんねぇなぁ。俺もお前とおんなじ行動取ったら数字減るのかな?」

「そ、それは…」

 遥人は真っ赤になっていた。なんでだ?
 とはいえ、目的の分からないアプリなんて怖い。ウィルスだったらいけないから「ショップに相談しよう」と遥人に伝える。だが、相変わらず歯切れが悪い反応だ。
 それでも、付き添ってもらわなきゃ俺のスマホの契約変更はできない。
 とりあえず「しばらく様子見て数字が変わらなければ」ということで無理やり同意させた。


 ◇


 結局アパートに戻るという話は遥人に説得され、一度必要な荷物を取りに帰るということに落ち着いた。
 怪我している時に、必要な荷物を取りに遥人と帰ったりしていたから、それほど久しぶりではないのだけれど、何が嬉しいって、一人の時間サイコー!!
 今回もついてくると言った遥人を断固拒否して正解。

「お前だって、俺と二人じゃできないことあるだろ?やらなきゃいけない用事とか。俺にもあんだよ」

 そう言い捨てて、遥人を置いて出てきた。
 いや、なにがしたかっていうとさ…。

「ふふ、これこれ♡」

 クローゼットの奥から小さなダンボールの箱を取り出す。
 箱を開けると、黒いバイブが出てきた。
 彼氏がいない時、遥人とのセックスが不満な時慰めてくれた、俺の相棒。
 ゆるゆるマンコになると困るから、一般的な男性のペニスサイズだが、中でグラインドするとちょうどよいところに当たる優れもの。

 遥人のいない隙に開発した、遥人の肛門には指が3本入るようになった。
 そろそろ入るだろう。

 俺達は仲直りの後もそれなりにセックスをしてたけど、今の俺、つまり遥人の身体に入れることはしてこなかった。
 一緒にいる時間が長いのに、相手が買い物に行っている隙を見てオナニーして、なんだったらアナニーして開発しているから入れて大丈夫、なんてさすがに恥ずかしくて言えなかった。

 俺が突っ込んであげたり、遥人がちんこでイキたがった時は素股とか舐めてヌイてあげていた。
 この身体が遥人の身体だったとしても関係ない。俺だってたまには後ろに入れたい。身体の中の空洞を埋めてもらいたい。

 部屋のカーテンを締めた。
 身体の中の準備をして、ベッドに上体を預け、お尻だけ高く上げた後背位の体勢になる。
 穴が見えるように尻の正面に全身鏡を置いた。
 遥人の穴の横にはほくろがあってなんかエロい。
 バイブを入れるところが見えるようにと、振り返り穴の位置を確認すると、期待にとろけた顔の遥人が見えた。遥人のでかいちんこは今日もびんびんに勃っていて、先端から雫が滴っている。
 ローションで濡れ濡れの穴に、先端だけゆっくりと、あとは思い切り挿入した。

「あぁっ…!!!!」

 貫いてきた存在に体内が満たされるのを感じ、膝から崩れ落ちそうになった。
 スイッチを入れて、バイブが動き始めると、体勢を維持しているのが難しくなって、床にへたり込む。
 バイブが抜けないように、床と尻の位置で調整し、乳首をコリコリと刺激する。

「はぁ…あぁん…んっ…んっ…」

 絶頂の波の気配を感じて、乳首をいじっていた手でちんこを扱く。

「んっ…んっ…あっ、イクっ!!イクっ!!」

 
 ◇


「朝陽、おかえり。遅かったから迎えに行こうかとおもってた」

 合鍵で部屋に入る。遥人からは「いつ帰ってくる?何時頃?」と何度もラインが来ていた。
 俺が帰ると、ホッとしたように笑顔で出迎える。

「朝陽の好きなオムライス作ったよ。今温めるから食べよ?」

 その誘いには応えず、俺は遥人に問いかける。

「遥人、ちょっとスマホ見せてくれねぇ?」

「えっ!?な、な、なんで!?なんかあった?」

 明らかに狼狽する遥人。やっぱりこいつ気づいてたんだ。
 取り上げてアプリを開く。

「おまっ!!ご、5回ってっ!!!!」

 遥人のスマホの数字は『27』に減っていた。


 俺は昼間、自分のアパートでバイブを使って自慰をした後、シャワーを浴びている時に風呂場でももう一回した。
 満足してベッドにゴロリ。例の気持ち悪いアプリを開いたところ数字が2つ減っていたのだ。
 昨夜数字を見てからしたことと言えば、寝て起きて朝食食べて、自分のアパートへ戻ってきて自慰を2回。
「まさかね…」と、信じられない気持ちで試してみたところ、射精直後、数字は一つ減った。
(誰か見てるのか!?気持ち悪い!!)と、思わずスマホを投げ捨て、部屋の隅で縮こまった。

 スマホからはメッセージが届いたら着信音が時折聞こえてきた。
 恐る恐る手にとって見ると、遥人からのメッセージだった。
 時間が経って少し冷静になる。
 昨夜の遥人の反応。遥人のスマホに表示された『32』という数字。
 それの意味するものは…。


「てか、お前、人の身体で何回オナニーしてんだよっ!!!!」

 事故の後、俺達はそれなりにセックスをしていたし、遥人は前でも後ろでもイキまくっていたから、俺より減りが早いのはわかる。だが、この減り方は異常だ。

(ほとんど一緒にいたのにいつ?)

「気づいちゃった?まぁ、すぐ気づくかなーとは思ってたけど。朝陽の身体見てたらムラムラしちゃってさー。でも気づいたってことは朝陽も今日、俺の身体でしたってことだよね?」

 遥人は開き直り始めた。

「セックスの快楽っていうのは脳が覚えてるもんなのかな。朝陽後ろ入れられたくてたまんなかったんでしょ?俺の身体なのに、後ろの穴開発しようとして…」

「そ、それは…」

「物欲しそうな顔してた」

 不穏な空気を感じて後退りする。
 玄関ドアと遥人に挟まれた逃げ道がなくなると、遥人は玄関の鍵とチェーンをしっかり締めニヤリと笑った。え、こいつこんな悪い表情するやつだったか?俺の身体の中にいるからそう見えるのか?

「朝陽に教えてもらったし、今なら満足させられると思うんだよ。まぁ、それになんでも練習あるのみ。だよね?…する?」

 キュッとお尻を捕まれた。
 それからはもうなし崩し的に。
 バイブで穴はほぐれていたし、なんだったらオナニーで3回もイッた後だからちょっと前立腺が敏感になっていた。
 俺が尻を高く上げると、遥人は、後孔に指を一本つぷりと差し込んできた。

「んんっ…」

 先程までバイブを突っ込んでいてほぐれた蕾は、簡単に指を飲み込む。

「朝陽ってば、俺の身体、だいぶ開発したねぇ。簡単に指が入っちゃう」

 それに気づいた遥人は呆れたように体内に入れる指を3本に増やすと、ぷっくりと腫れているしこりをぐりぐり刺激してきた。

「んっ…ご、ごめん…」

「大丈夫。お互い様だから」

 遥人はにっこり笑った。そうだった!こいつのほうが全然オナニーの数多かった!!

「そ、そうだった!!お前!!お前のほうが、俺の身体でっ!!…ひぃっ!!!!」

 遥人が空いている方の手で、股の間にぶら下がっているペニスの先をぺちんと爪の先で弾いた。

「身体元に戻っても、ちゃんと責任取ってね?」

 不穏な笑みを浮かべた遥人は穴にローションを垂らすとすぐに入れてきた。そして俺の身体を起こして座り、その上に俺が座るという、背面座位の体勢になった。

「う、ひぃ…」

 この体勢だと奥までちんこが入ってくる。バイブとは違う、生身のペニスの感触に酔う。
 遥人は腰を突き上げながら、後ろから手を回して俺の乳首をコリコリと弄り倒した。

「あっ…あっ…あっ…あっ…あん、気持ちいい…」

 なんだこれ、すげぇ気持ちいい。
 自分が入れられて、気持ちいところがわかったせいか、俺のちんこのサイズを把握しているせいか、恐ろしくピンポイントで気持ちいところを攻めてくる。
 遥人、お前やればできるじゃないか。

「あっ…やばい…イキそう…」

「気持ちいいなら良かった。朝陽、俺の身体でもう中イキもできる?」
 
 うなずきながら、ちんこを扱く。
 腰がぞわぞわする感じが止まらない。何かが込み上げてくる。

「あー、俺もイキそう」

 遥人が呟いた。

「いって!いって!もう、俺もやばいからぁ…あっ…あぁぁぁっ!!!!」

 遥人が限界を伝えた時、体内から湧き上がる快楽に溺れた。
 体内に吐き出された精液を肉輪を締め、吸い込むかのように体内で搾り取る。
 久しぶりにお腹の中が満たされた感じがした。


 ◇
 

「そう言えば、お前、俺の身体で、すげーオナニーしてたけど、そんなに俺の身体感じやすかった?」

 二人でシャワーを浴びて、オムライスを食べる。
 レンジで温め直したら、少し卵が固くなってしまったけれど、十分美味しい。

「え…!?ゴホッ…あぁ、そ、そうだね。っていうか、ゴホッ…俺、朝陽の身体を自由にできるっていうだけで、興奮しちゃって、我慢できなくて…ゴホッ…」

 そんなに焦ってむせるほど何してたんだお前…。
 遥人に水を飲ませようとグラスを渡すと、受け取りながら自分のスマホを後ろに隠した。

「お前、ちょっとスマホ出して?」

「え?な、なんで?」

「いいから!」

「ちょっ、あ、朝陽っ!!」

 素早く取り上げると、急いで画像フォルダを開く。
 見るとここ最近の写真は、俺の裸でいっぱいだった。
 キス顔ならまだまし。下半身のアップだったり、紐のような下着を着ていたりとやりたい放題だ。
 しかも動画まである。

「あ、朝陽…これは…その…」

「お前はそこから動くなっ!!」

 しどろもどろになる遥人を怒鳴りつけ、正座させる。
 恐る恐る動画をクリックしてみていく。

「遥人、大好き♡」と投げキッスする気持ち悪い動画から、前も後ろも使ったオナニー動画。
 くぱぁとカメラに向けて穴を拡げてたり、ちん振りダンスしてる動画まである。
 ほとんど一緒にいたはずなのにいつの間に…。

「お、おま…俺の身体で何撮ってんだよっ!?い、今すぐ消すからなっ!!!!」

 俺は慌てて削除していく。
 遥人は大人しくうなだれて座っていた。
 だが、俺はピンときた。
 
「お前っ、バックアップ取ってないよな!?正直に言えっ!!!!」

「…取ってる。けど、それは朝陽は消せない」

「お前っ!!お前自分が何やってんのかわかってんのか!?」

「だって、今じゃなきゃこんな朝陽、撮れないじゃん」

 はじめはあわてていた遥人だったが、だんだん開き直り始めた。
 なんだこのふてぶてしい態度は。本当に俺の知っている遥人か?

「け、消せって!!」

 なんだこの生き恥晒している動画は。中身は俺じゃないのに、外見のせいで俺の変態動画になっている。

「ムリムリ。消してももっとすごいの撮るよ?それに、身体もとに戻っても、この動画あれば俺から離れられないね」

 遥人はにっこり笑った。

「お前っ!!それリベンジポルノっ!!犯罪だぞっ!!」

「んー、でもこの動画の朝陽はノリノリでやってるから、周りの人はどう思うかな?朝陽のことすっげー淫乱だと思うだろうね。流出させたくなかったら、俺と一緒にいて?そうすれば、俺の楽しみだけにしとくから」

 まったく消す気はなさそうだ。
 確かにこの動画は、全て自撮り。遥人好き好きアピールをして、自分から誘っているようにしか見えない。
 俺が慌てれば慌てるほど、遥人は落ち着きを取り戻していく。

「お、俺がお前の身体で同じことやるって言っても…?お前だって困るだろ?」

 苦し紛れに言う。バックアップを消してくれれば、許してやるという意味を込めて。
 だが…。

「かまわないよ。それで朝陽が俺から離れられないなら、どうぞ?てかさ、俺が朝陽になれるなんてサイコーすぎる。朝陽の身体でまだ撮りたい写真とか動画あるしさ」

「こ、これ以上…?」

「うん。俺、多分朝陽が思っている以上に朝陽の見た目が、どストライクなわけ。今なら好きな子のエロいシーン何でも撮り放題だもんね。それに、かわいい外見して、ちょっと口悪くて生意気なところも大好きだよ?あ~、本当にこのアプリの数字がゼロになったらもとに戻っちゃうのかな?俺あと26回しかないんだけど…あ、でも俺が0になっても、朝陽がまだなら継続かな?どっちかが0になったら?それとも全然数字は関係ないのかな?」

 俺はどうやらとんでもないヤツと身体が入れ替わってしまったらしい。遥人がのんびり構えている理由がわかった。

「ふふ、俺から逃げられるとか思わないでね?とりあえず、二人でこの回数までイってみようか?そしたらわかるんじゃない?俺が先に100回イッたら戻るのか、両方100回イかなきゃいけないのか。それとも全く関係ないのか。それに俺、朝陽の身体になって、どこが感じやすいかわかったから、元に戻ったら期待してて?」

 ルンルンで先にシャワーを浴びに行った遥人を俺は絶句しながら見送った。
 普通ならソッコー逃げ出してる案件。
 写真で脅されてさえいなければ…。

 
 ◇


 遥人の変態性に怯えながらも、身体が元に戻るまでは、どうすることもできない。
 いつも撮られているんじゃないかという恐怖に怯えながら、それでも唯一の希望であるアプリの数字を減らすためにひたすら身体を重ねる。
 俺達が身体を重ね、吐き出した数以上に遥人のアプリの数字が減っていることには目を背ける。
 洗濯物の中にほぼ紐状の赤いレースの下着が入っていたことにも目をつむった。身体を奪われている以上、心穏やかに過ごすためには、見て見ぬふりをするしかない。

 そうこう過ごす間に大学生の貴重な夏休みももうすうぐ終わる。
 俺が見ていない間に、俺の身体で勝手なことをしないように、できる限り一緒に過ごす。まるでみえないロープで縛られているかのようにいつも一緒だった。

 今日も近所のスーパーに一緒にいつものように二人で買物に来ている。以前は遥人が買い物に行っている間にオナニーとかしてたけど、もはやそんな気分にはならない。こいつがこれ以上変な動画を撮らないように監視あるのみだ。

「あれ、やっぱり朝陽だ?ひっさしぶりー!!」

 呼ばれて振り返って俺はぎょっとした。

「小林先輩…」

 かつて一回生のときに付き合っていた相手。
 いや、果たして付き合っていたと言っていいのかもわからない。デートらしきデートをするわけでもなく、ただ相手の家に行ってするだけの関係。
 度重なる浮気に我慢できなくなって別れを切り出した時、小林はあっさりと承諾した。
 多分、小林にとっては自分とのことのほうが浮気だったのかもしれない。いや、浮気どころかセフレ位に思っていたのかもしれない。だが、俺の身体は遊び慣れている小林先輩に開発されたといっても過言ではない。
 怯える俺を無視して、小林先輩は俺の姿をした遥人に話しかける。

「この間も見かけて、声かけたんだけど、朝陽気づかなかったみたいだったからさー」

 遥人は馴れ馴れしい目の前の男に、当然ながら胡乱な目をしてだまって見つめていた。
 そんな遥人を気にするでもなく、ちらりと俺の方を見るとニヤリと笑って、遥人の耳元でなにかを囁いた。
 途端に遥人の表情が険しくなって、眉間にしわが寄った。

「あ、あの、先輩っ!!俺たち付き合ってるんでっ!!ごめんなさいっ!!」

 慌てて会話を遮り、その場から立ち去る。
 家に帰るまで怒気を伝えてくる遥人に、俺は視線を合わすことができなかった。

「ねぇ、朝陽、さっきの人、元カレ?」

 今度は朝陽のほうが思わず食べていたご飯を吐き出した。
 怒っているのはわかっていたが、ご飯を作っていてもなにも言わなかったからもうその話は流すのかと思っていたのに。

「な、なんで?」

「さっき耳元で、『またしよう』って」

「は、はは…」

 なんと答えていいのかわからず、乾いた笑いが出た。

「お風呂上がったらお仕置きね?」


 ◇


 その後俺は縛られてイキ地獄を味わった。
 残っていた数字もみるみる減っていく。
 俺が泣いても、身体がもとに戻ったときに、困るのは自分だと説得しても、容赦なく俺を攻め立てる。
 
「いやぁ…もう、いやぁ…許して…許してぇ…もう、イキたくない…イキたくないぃぃ…」

「俺、下手くそだからさ。いっぱい練習しないと朝陽に捨てられちゃうし」

 こいつ根に持ってやがる…。

 遥人の数字はとっくに0になっていた。
 それで元に戻れると期待した俺は落ち込んだ。落ち込んで、だけど遥人に毎日嫌がっても逃げようとしても縛られてイカされ続けた。

 そうして、俺のアプリの数字が1を表示した時、焦らしに焦らした甘ったるいセックスをした。
 決定的な刺激を与えられず、ただやさしく愛撫し続ける。
 遥人は「イカせてくれ」と泣き叫ぶ俺に、甘ったるい言葉をささやきまくって、これでもとに戻ってしまうかもしれない俺の身体をいじりまくっていた。

「身体、元に戻ってもずっと一緒にいるから!!」

 イキたくてもイケない苦しさから、おぼろげな意識中でそう言うと、遥人は満面の笑みを浮かべ強く抱きしめた。拘束が解かれ、求めていた刺激が体内に与えられる。
 ぐずぐずに溶けた身体で、やっと射精が許されたとき、遥人は「朝陽、愛してる。心の底から…」と泣きながら呟いて唇を重ねてきた。
 そのとき、ふたりにどれだけ意識があったのか記憶は定かではない。

 その後、俺達は気絶したように眠っていて、目が覚めたら、互いの身体がもとに戻っていた。精液まみれの状態で、二人抱き合ったまま顔を見合わせる。

「戻った?」
「戻ったなぁ」
「なんだったんだろう?」
「なんだったんだろうなぁ」


 あのアプリは目覚めたら跡形もなく消えていて、まるで夢を見ていたかのようだった。
 ただ、あの日々が夢じゃなかったと間違いなく言えるのは、あれ以来遥人はどちらの良さも覚えてしまったこと。

「朝陽、今日は朝陽のちんこ、俺の穴に入れて?」

 結局、身体がもとに戻っても俺は遥人と付き合っている。
 もともと理想の相手だったし、セックスが気持ち良くなればとくに別れる理由もない。まぁ、少々の変態性には目をつむろう。

 いや、むしろあの最後の追い込みのセックス三昧・快楽漬けの日々を過ごしたことによって、俺の感覚も麻痺してしまった。
 遥人が買ってくる変な下着、玩具も大抵は受け入れる。
 もはや、あの時遥人が撮った動画も、中身が遥人なのか俺なのかわからないくらい。

 そして、ちょっと甘えたい日は今日みたいにねだってくる。
 大体は、その後俺に突っ込むんだけれども。

 お互いに素直に言いたいこと、したいプレイも言えるようになって、先日俺は見たAVの影響もあって、ついポロッと「小林先輩を誘って3Pをしてみても楽しそう」と遥人の前で言ってしまった。

 そしたら翌日、オナホとディルドを買ってこられ、両方使ってオナニーするところを動画で撮られた。
 それはもちろん、遥人に入れているときも入れられているときも使われて、『小林1号・2号』と俺達から呼ばれている。

「あん♡やっぱ、ケツに小林2号入れてるときは、朝陽のちんこ、いつもよりおっきいな♡」

 俺の下で遥人が喘ぎながら言った。
「入れてくれ」と言ったのに、先に俺にディルドオナニーさせてそのまま自分に突っ込ませるのはどんな性癖だ? 

「うっせぇ、小さくて悪かったな!」

 そういいながらも、俺は笑う。
 こんな変態プレイ、こいつとじゃなきゃできねーな。



(おしまい)






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