壁穴奴隷No.18 銀の髪の亡霊

猫丸

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1.壁穴(シルヴァ視点)

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繁華街からひとつ奥に入ると街の風景は一変する。
暗い路地を進んだ場所に、ひっそり位置する一軒の建物の前で男は足を止めた。
中からは荒い息遣いが漏れてきて、ここが目的の店だとわかる。
男は端正な顔立ちを少し歪ませたて、ドアをノックした。

薄暗い店内は、甘い匂いが漂っていた。
受付で金を支払い、扉の奥へと消えた。
扉の向こうには、壁から下半身が生えているような部屋にたどり着く。
3つの下半身があったが、目的の壁は、すでに先客が腰を振っていた。
男は少し顔をしかめると、使われていない下半身を眺めた。

上向きに足を開かされている壁が一つ。
尻を突き出すようにしている壁が二つ。
どの下半身も顔は見えないが、ペニスがぶら下がっていて男だとわかる。
ふくらはぎには、その奴隷の管理番号が大きく書かれていた。

後から来た客が、空いている二つの尻穴に指を出し入れし、くぱくぱ開閉を試したあとに、はじめの穴に戻って腰を振り始めた。
男はそんな様子を、目当ての穴があくまでぼーっと眺めていた。

ここは、性風俗でも最下層の壁穴屋。
そんなところに探し人がいるとは信じていないが、探し始めて5年。
どんな僅かな情報でもすがるしかなかった。
それに、銀の髪を持つ男なら、アイツを想って抱けばいい。

◇◇◇

もう何日こんな日が続いているのだろう。
そして、いつまでこんな日が続くのだろう。

シルヴァの身体は半分に折りたたんだ体勢で、布団くらいのサイズの「箱」と呼ばれる個室に上半身を、下半身は壁の向こうにあった。
身体を隠すものは何もなかった。
犬のように首輪をされ、両手は手錠で繋がれ、腰は丸い穴に通されていて逃げ出すこともできない。

上半身を預けている布団は薄くてカビ臭かった。
シルヴァは、顔の前にたれてきた銀色に輝くの髪を首の動きでどかし、瞳を閉じ、ため息をついた。
日を浴びることのない生活はますます肌を白くし、腰まで伸びた髪は、かつての艶を失っていた。

今日も最初の客がやってきた。
背筋に緊張が走る。
露わになっているシルヴァの後孔を軽く指でほぐすと、一気にペニスを突っ込まれた。

「ぐっ……!!!!」

痛みからくる叫びを漏らさないように、薄い布団を握りしめて、顔を伏せて声を殺す。
何度体験しても、見えない状況で犯されるのは恐怖だ。

この壁穴屋に売られたのは数ヶ月前。
見目のよいシルヴァは性奴隷として金持ちに飼われていたが、主人の怒りをかい、ここへ売られた。

下腹に淫紋を刻まれ、穴としての役割を全うする。
ただ出すためだけに来る場所だから、穴に対する配慮なんてものはない。
玩具のように乱暴に扱われるが、それでも快楽を得られるのは、この忌まわしい紋のせいだろうか。
突っ込まれれば、勝手に濡れてくるこの身体。

シルヴァはいつまで続くかわからない、この環境に絶望しつつも、生きていくために、ただひたすら心を無にして、後孔で男たちのペニスを受け入れる。

死んでしまえたら楽だと何度思っただろう。
だが、シルヴァにかけられた呪いがそうはさせない。

身体を後穴から揺さぶられ、朦朧とした意識の中で思い出す。
もともとシルヴァは、5年前に滅ぼされたドゥーン国の貴族の三男だった。
ドゥーン国の貴族には、小さな頃から世話をするための側付きの奴隷がつく。
ある程度の年令になると、何人かの奴隷の中から、一人を選び、奴隷契約をする。
その契約は魔法契約で、主の不利益となる情報は一切話せないし、あるじが死ぬと隷属紋を持った奴隷の命も一緒に潰えてしまうものだった。
逆に、奴隷が死んだ場合は、あるじ側の体内にある魔法陣が消えるので、主側にも死んだことがわかる。

シルヴァが貴族だった頃に、あるじとしてそんな奴隷契約を結んだ相手がいた。
5歳年上の黒髪、赤い瞳のアレクという奴隷だ。
身体は大きく、腕っぷしも強かったが、反抗的な態度と、片言のドゥーン語のために、厄介払いでシルヴァに押し付けられた。
だが、シルヴァはアレクが大好きだった。

シルヴァは愛情に飢えた子だった。
三男ではあったが、当主が外で作った子で、母親はシルヴァを産むと同時に、父親に引き渡し、金銭だけもらって姿を消した。
シルヴァは体裁を気にした父親によって認知こそされたものの、屋敷の隅の小屋で、正妻はもちろん、兄達からも放置されて育った。
愛されなかったが、虐待されたわけでもなかったので、それほど悪い生活ではなったと思う。

最低限の服装。
最低限の食事。
最低限の従者。
アレクは、シルヴァに付きそう唯一の従者だった。
貴族としてなんの価値もないシルヴァが奴隷契約を交わしたのは、当主の気まぐれだったのかもしれない。

だが、ずっとひとりぼっちだったシルヴァは、唯一自分を見捨てない存在ができたことが嬉しくて、初めて貴族に生まれたことを感謝した。
アレクはシルヴァに媚びることもなく、どちらがあるじかわからないような話し方だったが、だれも二人を咎める者はいない。
ぶっきらぼうだけど、本当の兄のようで、唯一の家族とも言える存在で、常に一緒だった。

敗戦国となり、ルーメン王国が誕生した混乱のさなか、シルヴァとアレクは一緒に逃げたのだが、ふとアレクが食料を調達しにでかけた隙に、シルヴァは人拐いにさらわれ、奴隷として売られた。
12歳の時だった。

自分だけが不幸なわけじゃない。
当時、そんな子供はたくさんいた。

シルヴァは、そう自分に言い聞かせ、体内にある魔法陣の存在を確認すると、心が少し暖かくなるのを感じた。

離れ離れになってもアレクはどこかで生きている。
幸せになってるといいな…

奴隷契約があったから、自分の面倒を見てくれた。
自分にできることは昔も今も何もない。
ずっとアレクのお荷物だった。

でも、どんなひどい状況でも、自分が生きていることが、アレクの命を支えている。
それが、自分の命の価値。生きる為の希望だった。
それとともに、どんな辛い環境でも『死ぬことができない』という、自分に課した枷でもあった。

◇◇◇

背後で、男が何かを言いながらシルヴァの尻を叩いた。
無意識に後穴が締まる。
何度も叩かれ、シルヴァの白い尻たぶが熱を帯びてきた。
そして、身体が快楽を拾い始める。

「くぅ…ふぅん…んっ…んっ…」

体内の気持ちのよいところにこすりつけるように腰の位置を調整していると、男の抽挿が早くなってきた。
絶頂が近いのだろう。
赤くなった尻を掴みながらガツガツと腰を打ち付ける。
シルヴァの方も、下腹が収縮し始める。
部屋中に充満している、甘い催淫効果のある香りのせいもあって、痛みも快感にすり替えられてゆく。
人生の厳しさすら、今だけはどうでも良くなる。

「はぁっ…はぁっ…んくっ…あぁ……あっああっっ!!」

性奴隷となって数年。
この壁穴屋につれてこられてから、数ヶ月。
シルヴァはペニスに触らずとも後孔でイクことができるようになっていた。
シルヴァがイクのと同時に、男も達したのが、ゴム越しに伝わってきた。
しばらくすると体内から陰茎が引き抜かれた。
内臓が出されるような感覚。

あぁ、気持ちがいい…。

膝から力が抜けそうになるのをこらえる。
男が離れると、すぐに次の客の気配がした。

先程の客がぶったところが赤く跡になっているのだろう。
火照った尻たぶをなんどもなでられた。
くすぐったさと、じれったさでゾワゾワする。

そして、手はシルヴァの下腹にある淫紋と、薄く生えた下生えに到達する。
指をハート型になぞり、蔦が絡まったような紋の模様に触れ、陰毛をなでたり指で挟んで軽く引っ張ったりしている。
身体を折り曲げているため、通常の角度から見えることのないそれをなぞるということは、下から見られているのだろう。
だれにも使ったことのない、こぶりなペニスを見られているという羞恥に、全身が赤くなるのを感じた。

そのまま指は陰茎に移動した。
いじられることが殆どない敏感なペニスが反応する。
そして後ろの穴にも指が侵入し抽挿を繰り返しながら、何かを探している。
自然と腰が揺れる。

「あぁっ…あっ…あっ…あっ…そこっ…」

男の指がシルヴァの体内の一番感じる部分に触れた。
男にもわかったのだろう。
トントンとリズミカルにその一点を攻めてきた。

「あぁっ…だ、だめっ…いっちゃう!!いっちゃう!!」

前と後ろの強い刺激に、シルヴァは手錠をつけたままの手をガチャガチャ言わせて突っ伏した。
下腹部に力が入り、シルヴァは達した。

シルヴァから吐き出された精液を、男は指ですくい取り、すでにほぐれている孔に塗り込めた。

「名前は?」
壁の向こうから男が問う。
記憶の中のアレクの声と似ている気がして、ドキンと胸が痛んだ。

「…じゅ…18番…」

店で呼ばれている番号を伝える。

「本当の名前は?」

「………」

喉がカラカラに乾いて声が出てこなかった。

こんなところにアレクが来るはずがない。
この香りが見せている幻聴だ…

「俺のは大きいが、平気か?」

男はすぐに質問を変えた。
雰囲気を出すための、気まぐれだったのだろう。
ホッとするのもつかの間。男の先が後穴に触れた。

「大丈夫…です…いれ…て…ください」

もとより拒否権などない。
一瞬間があって、直ぐにシルヴァの後穴に剛直が侵入してきた。

「かはっっっ……!!!!」

口から内臓が飛び出しそうなほどの衝撃。
シルヴァは、手錠で繋がれた両手を口元に持っていき、悲鳴が出ないよう口を抑えた。
それは今までに経験したことのない太さ。
腹の中に収まる圧倒的存在感。

「スマン、ちょっと切れたな」

男はシルヴァの体内にペニスを納めたまま、穴の縁を指でなぞった。
ギチギチに広がった穴の周りがしみた。

「ひん…」
「大丈夫か?」
男の手が下腹部に伸びた。

男は淫紋のあたりをぐりっと押して、シルヴァの体内に入っている自身の剛直の位置を直した。

「ひいっ!!」

穴を限界まで広げられ、体内は男のペニスでいっぱいになる。
身体をよじってこの快楽を逃がしたいのに、逃げ場がない。

「はっ…はっ…はっ…はっ…」

満たされる体内に呼吸が浅くなる。

「もうちょっとほぐしたほうが良さそうだな」

男はそう言って、シルヴァのペニスに手をのばすと、前後にしごき始めた。

「ああっ…だめっ!!…イクっ…イクっ…イクっっっ!!!」

どぴゅっと再び前から白濁液が放出され、身体が弛緩する。
身体を固定されていなったら、崩れ落ちていたに違いない。
腰の穴の幅まで身体がずり落ちると、更に奥まで男のものが収まった。

「そろそろ動くぞ」
力の抜けた下半身を持ち上げ、体勢を整え直すと、男の抽挿が始まった。

「んっ…んっ…くぅん」

ゴリゴリとしたそれが、良いところを何度も何度もえぐってきた。
大きすぎるそれは、体内の隙間をすべて埋めるかのように腹の奥まで満たしてくる。
自然と甘い声が漏れ、後穴で男のものを堪能する。

「ああぁ、またっ!!だめ!!イクっ!!イクっ!!」

感度の高まっている身体は、直ぐに絶頂を迎える。
シルヴァが3度目の絶頂を迎えたとき、男の物が体内で吐き出される感触がした。
普段、次の客のために中出しは禁止されていたが、追加料金を払えば可能だ。
男はシルヴァの体内に何度も精液を吐き出し、それは何時間も続いた。

男もだが、シルヴァ自身も何度もイッていて、足がガクガクしていた。
収まりきらなかった液が後穴から溢れ、シルヴァの吐き出したものと混ざり、まるでおもらしをしたかのように下半身が汚れていた。

「もうっ、もう、ムリっ!!お願いです!やめっ!やめてっ!!あぁ、死ぬっ!!死ぬっ!!」

手錠をガチャガチャ鳴らし、頭を抱えながら必死に壁の向こうの男に懇願する。
意識が朦朧としてきた。
イキすぎて腰も脚も限界だった。

やがて、満足したのかつながっていた熱が去っていく。
男の形にぽっかり空いた穴から、注がれた液が垂れ流れ、内股を伝わった。

店の管理者が戻ってきたらしい。
鍵の音をさせ、シルヴァの腰の板が外される。
「18番、起きな」

命令は聞こえていたが、もう身体が動かない。
首輪につながった紐を引っ張られ、上半身を預けていた箱から、引きずりだされたが、シルヴァの身体はそのまま崩れ落ちた。

◇◇◇

明るい日差しで目が覚めると、知らない場所にいた。
身体はだるかったが、天蓋付きの広い、ふかふかのベッドに、肌触りのよい毛布。
今までのことがすべて悪夢で、子供の頃に戻ったのかと一瞬思った。

だが、下腹で疼く紋の存在を感じて、現実だと気づく。
汚れていた身体はきれいにされていたが、身につけているのは首輪だけ。
手錠のついていた手首は、包帯が巻かれていた。

起きあがると、鏡に自分の全身が写った。
青白い肌に肉付きの悪い身体。
明るい日差しの中で自分の体を見ると、なんともみすぼらしい。
赤い首輪をつけ、下腹に刻まれた淫紋と、ふくらはぎの18という数字。
これが自分という商品だ。

あぁ、きっと顔も知らないあの男に買われたのだ。

染み付いた奴隷生活で、すんなり状況を理解する。
いくらで買われたのか、そんなことどうでもいい。

鏡の中の亡霊のような自分に言い聞かせる。

どんな男かは分からないが、きっと今までよりかはマシになるはず。
大丈夫、あの男はぼくを殺さなかったじゃないか。

笑え。
かわいがってもらうのだ。
生きてさえいられればそれでいい。

胸に手をあて、その奥にある愛おしい人の存在を探した。
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