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2章 本を出る
2章 本を出るー11
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ふと主人公の方を見ると、彼もおはぎを食べていた。
「もしかすると、作者はここの、現実の実際の店に来たことがあって、おはぎを食べたんじゃないかな」
「ああ、そしてこの店のおはぎがとてもおいしかったんですね」
「もしかしたら他のメニューも実際は美味しかったのかもしれないけど、彼の世界だから彼が味わったものしか味が反映されて無いんだ」
「なるほど」
店が混んでいて、二人とは離れた席に通されてしまったので全く二人の話は聞こえなかった。彼らが出て行こうとする。私達も出て行こう。結果的に、ただ単に食べただけになってしまった。
現実の世界のお金を使ったが、なぜか問題なく支払える。
「あのお金って、どうなるんでしょうか」
「さぁ、現実に戻ったら財布に戻ってるんじゃない」
二人を追いかけながら話す。店を出てしばらく行ったところで。美少女はどこかに行ってしまって、彼が茫然としていた。
私は主人公に話しかけてみた。
「こんにちは」
「えっあっこんにちは」
作中の人物としてはよく分からない出来事が起きて動揺しているのだろう。私は構わず話しかけ続けた。今までの経験で、小説の世界では、その世界に応じた質問をしないと跳ねのけられる。例えば、少し前の時代の作品でテレビの話なんかをしても、意味が分からない奴だと追い払われてしまう。
「私、地元の大学生で、この辺りの観光客のことを調べているんですけど」
しかし、それらしいことを言うと答えてくれる。彼らはゲームの中の、ただシミュレートされて動いている村人ではない。この世界の住民だ。だから、自然な質問をしたらきちんと返してくれる。
「ああ、そうなんですか」
「この観光地の、来た理由や年齢層を調べておりまして。よろしければお名前と年齢などお教えいただけないでしょうか」
戸成さんは驚いた顔をして私を見た。私は目で合図した。乗っかれ、と。
「いいですよ」
彼は気楽に答えた。私はメモを取る。
「お名前は?」
「他田渉です」
名前はこう、と説明してくれる。全然違う名前だ。しかし、小説でそういった名前だと書いていただろうか?
「年齢は」
「22です」
別所さんもあの部誌を書いた時、それくらいの年齢だったはずだ。私が高校二年の時、何年生だったのか聞かなかったが、今院生ということはそれくらいの年だろう。やはり別所さんの作品なのかもしれない。しかし、あまりにヒントが無さ過ぎる。インタビューをそれらしく終わらせるためだけに次の質問をした。
「なんでここを旅行先として選んだんですか?」
「あーここは」
主人公が遠い目をした。
「友達が来たいって言ったんだ。だけどえっと、予定が合わなくなっちゃって」
「それで一人で来たんですか?」
「まぁそんなとこ」
「予定を合わせてこなかったんですね」
何気なく聞いた。すると、彼は暗い顔をする。
「ああ、うん。なんていうか、変な空気になっちゃってね。予定が合わなくなったって言ったけど、多分もうずっと合わないんだろうな」
「どういうことですか」
「喧嘩になっちゃって」
「はぁ、なるほど」
まぁ大学生でも喧嘩はするだろう。
「どうしたらいいと思います?」
彼は唐突に聞いてきた。私は今までのなにか、少し距離を置いた他人に対してとる態度ではなく、親し気な感じがするその態度に、戸惑った。
「何がですか」
「同じ学部、同じサークルだから誰にも相談できなくて。彼、僕のことが好きらしいんですよ」
唐突な悩み相談にびっくりした。
「同じサークルっていうと、文芸部ですか」
もしかしたらあの時先輩と話していた人と、別所さんがそういう問題を抱えていたのだろうか。興味がわいて質問すると、彼は驚いた顔をして、
「なんで僕が文芸部だって知ってるの?」
と聞く。
「なんとなく、勘です」
私はにこやかに答えた。すると、彼はすぐに納得したようだった。呑気な人だ。先ほど言い争った別所さんとは思えない。やはり人間、年を取ると疑い深くなってしまうのか。
「まぁいいや。そう、僕は文芸部なんだけど、友達が、なんか恋愛相談を別の友人にしてるみたいでさ、僕は彼ととても仲が良かったから、自分には話してくれないのかってショック受けてたんだよ。そしたらその後、僕が好きで、その友達、あ、仲がいい方ね、もそれを知ってる女の子がいたんだけど、その子とその友達が仲がよさそうで、俺はもしかして、と思って友達……」
話していたら、誰が誰だか分からなくなってきていることに気付いたらしい。彼は、ああもう、と一言漏らし、
「ごめん、喧嘩したやつが別所で、別所が相談してた相手が相馬っていうんだけど、俺は相馬に聞いたんだよね」
私と戸成さんは顔を見合わせた。戸成さんが慌てて、ちょっと待ってください、と言う。
「その、別所さんが、あなた……他田さんを好きだったっていうことですか」
「まぁ、まとめるとそうだね。俺がその、女の子の件で騒いだせいでなんかほかのやつにも漏れてしまってさぁ」
他田さんはため息をついた。
私はなんだか、勝手に別所さんのことを嗅ぎまわって悪かったなぁと思っていた。もしこれがほんとうに、現実で起きたことだとしたら、一番傷ついているのは別所さんなのだ。
「もしかすると、作者はここの、現実の実際の店に来たことがあって、おはぎを食べたんじゃないかな」
「ああ、そしてこの店のおはぎがとてもおいしかったんですね」
「もしかしたら他のメニューも実際は美味しかったのかもしれないけど、彼の世界だから彼が味わったものしか味が反映されて無いんだ」
「なるほど」
店が混んでいて、二人とは離れた席に通されてしまったので全く二人の話は聞こえなかった。彼らが出て行こうとする。私達も出て行こう。結果的に、ただ単に食べただけになってしまった。
現実の世界のお金を使ったが、なぜか問題なく支払える。
「あのお金って、どうなるんでしょうか」
「さぁ、現実に戻ったら財布に戻ってるんじゃない」
二人を追いかけながら話す。店を出てしばらく行ったところで。美少女はどこかに行ってしまって、彼が茫然としていた。
私は主人公に話しかけてみた。
「こんにちは」
「えっあっこんにちは」
作中の人物としてはよく分からない出来事が起きて動揺しているのだろう。私は構わず話しかけ続けた。今までの経験で、小説の世界では、その世界に応じた質問をしないと跳ねのけられる。例えば、少し前の時代の作品でテレビの話なんかをしても、意味が分からない奴だと追い払われてしまう。
「私、地元の大学生で、この辺りの観光客のことを調べているんですけど」
しかし、それらしいことを言うと答えてくれる。彼らはゲームの中の、ただシミュレートされて動いている村人ではない。この世界の住民だ。だから、自然な質問をしたらきちんと返してくれる。
「ああ、そうなんですか」
「この観光地の、来た理由や年齢層を調べておりまして。よろしければお名前と年齢などお教えいただけないでしょうか」
戸成さんは驚いた顔をして私を見た。私は目で合図した。乗っかれ、と。
「いいですよ」
彼は気楽に答えた。私はメモを取る。
「お名前は?」
「他田渉です」
名前はこう、と説明してくれる。全然違う名前だ。しかし、小説でそういった名前だと書いていただろうか?
「年齢は」
「22です」
別所さんもあの部誌を書いた時、それくらいの年齢だったはずだ。私が高校二年の時、何年生だったのか聞かなかったが、今院生ということはそれくらいの年だろう。やはり別所さんの作品なのかもしれない。しかし、あまりにヒントが無さ過ぎる。インタビューをそれらしく終わらせるためだけに次の質問をした。
「なんでここを旅行先として選んだんですか?」
「あーここは」
主人公が遠い目をした。
「友達が来たいって言ったんだ。だけどえっと、予定が合わなくなっちゃって」
「それで一人で来たんですか?」
「まぁそんなとこ」
「予定を合わせてこなかったんですね」
何気なく聞いた。すると、彼は暗い顔をする。
「ああ、うん。なんていうか、変な空気になっちゃってね。予定が合わなくなったって言ったけど、多分もうずっと合わないんだろうな」
「どういうことですか」
「喧嘩になっちゃって」
「はぁ、なるほど」
まぁ大学生でも喧嘩はするだろう。
「どうしたらいいと思います?」
彼は唐突に聞いてきた。私は今までのなにか、少し距離を置いた他人に対してとる態度ではなく、親し気な感じがするその態度に、戸惑った。
「何がですか」
「同じ学部、同じサークルだから誰にも相談できなくて。彼、僕のことが好きらしいんですよ」
唐突な悩み相談にびっくりした。
「同じサークルっていうと、文芸部ですか」
もしかしたらあの時先輩と話していた人と、別所さんがそういう問題を抱えていたのだろうか。興味がわいて質問すると、彼は驚いた顔をして、
「なんで僕が文芸部だって知ってるの?」
と聞く。
「なんとなく、勘です」
私はにこやかに答えた。すると、彼はすぐに納得したようだった。呑気な人だ。先ほど言い争った別所さんとは思えない。やはり人間、年を取ると疑い深くなってしまうのか。
「まぁいいや。そう、僕は文芸部なんだけど、友達が、なんか恋愛相談を別の友人にしてるみたいでさ、僕は彼ととても仲が良かったから、自分には話してくれないのかってショック受けてたんだよ。そしたらその後、僕が好きで、その友達、あ、仲がいい方ね、もそれを知ってる女の子がいたんだけど、その子とその友達が仲がよさそうで、俺はもしかして、と思って友達……」
話していたら、誰が誰だか分からなくなってきていることに気付いたらしい。彼は、ああもう、と一言漏らし、
「ごめん、喧嘩したやつが別所で、別所が相談してた相手が相馬っていうんだけど、俺は相馬に聞いたんだよね」
私と戸成さんは顔を見合わせた。戸成さんが慌てて、ちょっと待ってください、と言う。
「その、別所さんが、あなた……他田さんを好きだったっていうことですか」
「まぁ、まとめるとそうだね。俺がその、女の子の件で騒いだせいでなんかほかのやつにも漏れてしまってさぁ」
他田さんはため息をついた。
私はなんだか、勝手に別所さんのことを嗅ぎまわって悪かったなぁと思っていた。もしこれがほんとうに、現実で起きたことだとしたら、一番傷ついているのは別所さんなのだ。
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