ときめき部~無気力な日々が変るまで~

オリオン

文字の大きさ
22 / 23
第3章、夏休み

川釣り

しおりを挟む
「ふっふっふ…川だぁあああ!」

…朝っぱらからまさか川に来ることになろうとは。
昨日無理矢理泳がされたから、俺は結構しんどいんだけど…
しかし、香苗先輩もかなり疲れてたようなのに
1日寝て起きただけで完全回復って…体力ヤバすぎる。
テンションだけで全てを回しているような人だ。

「で、何故川に来たんだ?」
「瑠衣ちゃん! よくぞ聞いてくれました! 
 今日はこの川で釣りをします!」
「あ、釣りなら楽かも」
「俺も釣りなら大丈夫です」
「陽志先輩、釣り、好きなんですか?」
「まぁな、静かな時間は好きだし」

今回は昨日と比べると楽になりそうだな。

「で、釣り竿は何処にあるの?」
「……」

小菜先輩の言葉を聞いた香苗先輩が沈黙する。
何か…嫌な予感しかしない。

「忘れた!」
「馬鹿か…お前は」
「瑠衣ちゃん…ハッキリ言ったら可哀想だって」
「小菜ちゃん、その言葉の方がダメージでかいよ…」
「えぇ!? これも駄目!?」
「馬鹿だな…」
「二度も言わなくて良いじゃん!」

2回目のひと言は香苗先輩にでは無く小菜先輩にでは?
と、思ったが…まぁ、言わないで良いだろう。
これで話題に火が付いても消火するのが面倒だ。

「ま、川に行くと言った地点で大体予想は出来ていたからな。
 私が釣り竿は持ってきた」
「おぉ! 流石瑠衣ちゃん!」
「えっと…あ」
「どうしたの?」
「1本足りなかった」
「えぇ!?」

瑠衣先輩が見せてくれた入れ物の中には4本の釣り竿があった。
だが、俺達の人数は5人。1本足りない。

「こ、これは…」
「むむ……」

先輩達が全員、決闘のような雰囲気に変った。
何だ? 何かしようって感じ?
何か雰囲気としては、西部劇のガンマンが決闘しようとしてる前みたいな感じ。
そう考えてみると、何故か風の音が西部劇の時に聞える風の音って感じがした。
なる程、これが捉え方の重要性か。

「分かってるね、2人とも」
「うん」
「言うに及ばず…」
「な、何が始まるんでしょうか…」
「……茶番だろ」
「じゃん!」
「けん!」
「ぽん!」

3人が仲良くリズムを取り、ジャンケンを始めた。

「く!」

香苗先輩はパー、小菜先輩はチョキ、瑠衣先輩はグーだった。
これはこれですごいと思うんだけど…

「ぽん!」

今度は全員パーだった…仲が良いなぁ。

「ぽん!」

今度はグーチョキパー。

「ぽん!」

前回と同じでグーチョキパー…仲が良いのは分かるんだけど
考え方は結構違うのかもしれない。

「ふ、ふふ…やるね2人とも」
「お前もな…だが、次で決める!」
「うん!」
「トドメだー! ぽん!」

最後の一撃と言わんばかりに力強く出されたパー。
だが、その香苗先輩を待っていたのは。

「ば…馬鹿な…私が…」

自分以外の2人がチョキを出しているという、絶望的な状況だった。

「うわぁあああ!」

そのまま、その場にしゃがみ込み、自らの敗北を受入れた。

「私達の勝ちだな」
「あはは…」
「くぅ…この私が…」
「あ、あの…今更なんですけど、私達2人は参加しなくても良かったんですか?」
「あ、勿論だよ。2人には是非とも体験して欲しいからね!」

さっきまでショックを受けていたはずなのに
この一言を聞いて、香苗先輩のテンションが回復した。
と言うか、あんな茶番をしてたくらいだし
意外とジャンケンで負けたことは応えてないのでは?

「さぁ! レッツ川釣り! 私は川で魚の鷲掴みしてくるから!」
「無理だな」
「うん、無理」
「なんで言い切れるの!?」
「だって…香苗は落ち着きがないからな。魚に逃げられるに決ってる」
「と言うか、釣りをしても釣れない気がする…」
「ハッキリ言わないでよ! でも、私は負けない!
 本当に魚の鷲掴みをしてみせるから見ててね!」
「…期待しないで待っていよう」
「ははは! 期待してね!」

さっき、期待しないで待っていようって言ってたのに…聞えてないのか?
とりあえず、この場所で釣りをしても香苗先輩が暴れて釣れそうに無いな。
ひとまず、こっから少し離れた場所にある、あの大きな岩の上で釣るか。

「っと」

少し大きな岩、岩を登るのは何年ぶりだろうか。
小さいときはちょっとでかい岩を見れば登っていた気がする。
だが、久し振りに登ってみて…何だか少し楽しくなった。
ま、本命は釣りだ。っと、あぁ、意外と高いな。

「ほい」

まぁ、そんな事はそこまで気にすることは無く、俺は釣り糸を垂らす。

「待てぇ!」
「香苗! こっちに来るな!」
「魚が逃げちゃうよ!」
「逃げたら追えば良いだけなんだよ!」
「釣りというのは、落ち着いて迎撃する必要があるんだ!」
「私の辞書に落ち着くという言葉は無ーい!」
「ならば刻め!」

…向こうは本当に騒がしいな…あの場所にいたら大変そうだけど
会話を聞いておくだけなら、結構…悪くないかもしれないな。

「うーん…うーん!」
「ん?」

俺が向こうの先輩達の会話に耳を傾けていたら
近くから声が聞えてきた。
声が聞えるのは足下…ちょっと覗いてみるか。

「…あ」
「あ、先輩…」

岩の下には必死にこの岩を登ろうとしている後輩の女の子の姿があった。
必死に手を伸ばしているが、身長が低いからなのか届いていない。

「どうしたんだ?」
「い、いえ…釣りってあまり詳しくないので…
 1番、色々と教えてくれそうな先輩と一緒に釣ろうかと思って…」
「釣りは基本1人でする物だが…まぁ良いか。
 こんな騒がしい中で1人ってのも、何か寂しいからな」
「そ、そうですね」

俺は必死に登ろうとしている彼女に手を伸ばす。

「…い、良いんですか?」
「何が?」
「あ、いえ…その…あ、ありがとうございます」

彼女は躊躇いながらも、俺が伸ばした手を掴んだ。
俺は彼女に岩を登るときのコツを教えながら、彼女を引っ張り上げる。

「あ、ありがとうございます」
「いや、気にしないでくれ。それじゃ、一緒に釣るか」
「は、はい」

俺は彼女に川釣りのコツなどを教え、一緒に釣りを始めた。

「水を私に掛けるな! この馬鹿!」
「ぎゃー! ごめんなさーい!」
「あはは…楽しそうだね」
「何処が楽しそうに見えるのぉ!」

…静かとはほど遠いけど、何故か落ち着くな。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

処理中です...