継承スキルで下克上!

オリオン

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ジャイアントローチの群れ

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ドンドン湧いてくるジャイアントローチ達。
確かに、撃破するのはかなり簡単だった。
飛んで来るジャイアントローチの頭に剣を刺せば死ぬ。
ゴキブリと似た見た目ではあるが、あいつら特有の粘り強さはない。
いや、違うかな…あいつらに弱点を追加しただけという感じがする。
頭を潰さない限り、ほぼ死なないからな。

「もう来んな!」

怯えながらも飛んで来るジャイアントローチの頭に槍を突き刺す。
何というか、流石マリちゃんという感じだな。
戦闘センスがかなり高い。

「この!」

俺も飛んでくるゴキの頭に剣を刺す。
召喚で立ち回るしか俺の場合はないからな。
剣を使って戦っても、俺の剣術は絶望的だから
まず間違いなく扱いきれないし、頭を攻撃出来ない。
でも、召喚と同時に相手を突き刺せる
この完全なる支配空間は相当強い。
敵が来ても、その方向に剣を召喚すれば

「っと!」

背後からの襲撃にも対応することが出来る。
同時に召喚出来る剣の数に制限はないみたいだから
飛んで来た方向に対し、いくつも同時に召喚で頭は潰せる。
完全に数の暴力で相手を潰す戦術。
持ち味を生かして戦うのが戦いとも言うし、卑怯とは思わない。

「マリさん、上です、上」
「え? きゃぁああ!」
「マリちゃん!」

マリちゃんの頭上からゴキブリが降ってきた。
流石のマリちゃんでも激しい動揺の中での迎撃は出来ない。

「ふーむ」
「ひゃ!」

だが、アンヌさんがそのゴキブリを撃ち、マリちゃんを守った。

「あ…あっぶなぁ…」

マリちゃんが危ないと言ったのは、決して命の危機を感じたからではない。
アンヌさんがゴキブリを撃ち抜いたときに
ゴキブリから垂れてきた体液が、あと少しで当るところだったからだ。
何とかアンヌさんの忠告が無ければ…多分、当ってた。
アンヌさんが気を利かせてなければ確実に酷い状態だっただろう。

「頭上注意ですね、頭に這い寄られている状態だと
 流石に銃で殺すとか出来ませんからね。
 理由は分かるでしょう?」
「さっき…あと少しで身をもって体験するところだったわ…」

ただでさえこの状態で苦労しているマリちゃんに
更なる心労が追撃を掛けてこなくて良かった。

「だぁもう! 何でこんなにいるのよ! もう私やだ!
 ノク! もうあなたで全部やってよぉ!」
「無理無理! 俺1人でこの数は無理!
 アンヌさんがいても、この数はキツいって!」
「戦わないというなら、あなたの方に向ったジャイアントローチの迎撃はしませんよ?」
「うぅ…わ、分かってるって…冗談よ、戦うわよ! 戦う!
 目を瞑って戦う!」
「無理でしょ?」
「あ、足音とか臭いで…」
「まぁ、あなたがそれで良いなら構いませんが…接近されて気付かなかった場合
 身体にジャイアントローチが張り付くわけですけど…大丈夫ですか?」
「目はちゃんと開けて戦うわ!」

意見を変えるのクソはえー…いやまぁ、俺でもこのデカいのに張り付かれるのは嫌だしな。
こんなのに組み付かれるとか、鳥肌ってレベルじゃねーぞ。

「もうもうもう! 最悪最悪最悪! もう来るなぁ!」
「叫びながらも的確な攻撃、お見事です」
「むしろ嫌いだから的確なのでは…?」
「ったりまえよ! こんなのに近付かれるとか嫌すぎるわ!
 最大限の集中力と最高の腕力で来る前にひねり潰す!」
「突き殺しているのに潰すとは斬新ですね」
「うっさ、うわ!」

マリちゃんがアンヌさんの声に反応し背後を向くと同時に
アンヌさんがマリちゃんに向けて銃を構え引き金を引いた。
だが、狙ったのはマリちゃんではなく、マリちゃんを襲おうとしていた
ジャイアントローチだった。

「こっちを見ないでくださいよ…組み付かれちゃっても知りませんよ?」
「く…れ、礼は言わないわよ! あんたが挑発したのが悪いんだから!」
「いえ、私は正論を述べたまでですよ?」
「うるさーい! 早く戦って! あのゴキブリを近付かせないで!」
「はいはい」

マリちゃんとアンヌさんは的確にジャイアントローチ達を迎撃していく。
俺も完全なる支配空間をフル稼働し、ジャイアントローチ達を屠る。
数が多いと、やっぱり苦労する。特に俺は戦闘慣れしていないから余計に…

「はぁ、はぁ、しんどい…」
「この程度でバテてどうするんです? 冒険家ならもっと動いてください」
「そうよそうよ! 私なんて嫌いなのに戦ってるのに!」
「わ、分かってるよ、無茶してでも戦うって!」

この状況だ、泣き言を言ってても仕方ないか。
とにかくだ、こちらに向かって仕掛けてくる連中を迎撃すれば良いんだ。
俺のスキルは全方位何処でも対応出来る汎用性の高さがある。
この状況ならば、前線で戦うことが最もだと思われる。

「さぁ、このまま迎撃しながら前進しますよ。
 クイーンローチを撃破しないといくらでも増えますしね」
「なんでそんな奴が生まれるのよ!」
「まぁ、彼女も好きで生まれたわけじゃ無いでしょうしね」
「くぅ…でも、私に迷惑を掛けたんだから! 容赦しないわ!」
「排他的な考えはよろしくありませんよ? 寛容になってくださいほらほら」
「こんな異形の化け物に寛容になれるかっつーの!
 こっち来ないならまだ許すかもしれないけど!」

小さな細道ではあるが、俺達はジャイアントローチ達を殲滅しながら奥へ進んだ。
この奥にいるというクイーンローチ…強くなければ良いけどな。
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