継承スキルで下克上!

オリオン

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危険な魔物

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「では、座学を始めましょう」

あの流れで本当に座学が始まった…確かに大事なのは分かるけど
もう少し集中できる環境で色々と教えてほしいものだ。

「まず第1にゾンビですね、これは既に遭遇しましたね」
「はい」
「実は死亡率の上位にこのゾンビが来ます。
 死亡した人物よりも弱体化しているとは言え
 やはり死亡した人物によっては能力が違いますからね。
 
 死亡者の力を一部引き継ぐと言う特性は非常に強力です。
 上位の冒険家が死亡してしまったとなれば
 新人の冒険家に勝算などないでしょう」

それはそうだろうな、どんな風に引き継ぐかは分からないけど
一部を引き継ぐと言うことは、自暴した人物の実力次第で
実力が全然違うと言う事を指しているのだから。

前に戦ったゾンビが弱くて、次も弱いと思って突っ込んだら敗北
なんて事も、十分にあり得ると言えるだろう。

「対処としては逃げるのが最も確実です。
 ゾンビは走れませんからね、とは言え戦闘になれば
 セーフティーが壊れるので、機敏に動けると予想されます。

 前も言いましたが、ゾンビの生体などについては全くの未知ですからね。
 走れなくても攻撃を仕掛ければ機敏に動いて回避からの攻撃
 なんて事も可能かも知れませんからね」
「でも、前は戦ったじゃ無いですか」
「えぇ、対処が可能であれば、出来るだけ戦う事を推奨します。
 理由はあの時に言いましたよね? あの場合は私が居ましたから
 私は対処する方を選んだという形ですかね」

確かにアンヌさんのお陰であの場面は何とかなったと言えるからな。
アンヌさんが居ない場合だったら、間違いなく逃げる方が正解だった。
マリちゃんも動けないあの状態じゃ、勝ち目は無かったから。

「とは言え、新人だけでの遭遇なら、ノクさんの判断通り逃げるのが正しいのですよ。
 まぁ、殆どの冒険家は挑みますがね、新人であろうと力試しとして」
「なんで力試しとか、そんな軽い動機で挑めるのよ」
「ゾンビになった地点でアンデッド、相手への敬意の念など抱かない人が大半だからですよ」
「アンヌさんの場合は?」
「私の場合は、あれ以上腐食を進めるのが可愛そうと思ったからですね。
 害虫被害など、私にとっては別にどうでも良い事ですので」

アンヌさんはゾンビになった人物のために戦う事を選んだ。
普段の態度とは全く違うけど、やはりそれがアンヌさんなのだろう。

「とにかく、ゾンビと遭遇した場合は逃げる事が正しい対処です。
 それ以外の事は言えませんね、理由はやはり未知数な点が多いからです。
 弱点が何処かも不明、こうなると逃げる意外の対処は分かりませんからね。
 研究が進めば分かるかも知れませんが、研究が進む可能性は絶望的かと」

これもアンヌさんが言ってたな、ゾンビの研究をしたがる奴は少ないからと。

「では次です、次の相手は遭遇したら死を覚悟してくださいね」
「え!?」
「何それ対処も何も無いじゃん!」
「えぇ、一応名前は教えておこうかなと。
 えっとですね、この相手はリーパードラゴンと言われています。
 このドラゴンに目を付けられた者は逃げる事すら叶いません」
「な、何でよ」
「逃げても執着に追いかけ回してくるからです。
 移動の速度も速く、見付かればほぼ確実に死にます。
 しかも出現ポイントは非常にランダム性が高いのですよ。
 何処でも姿を見せる可能性がある死神です」
「……」
「1度狙った相手を殺し、その周りの人物を屠れば
 リーパードラゴンは姿を消すと言われています。
 1度見付かってしまえばその先にあるのは死です」

そ、そんな恐ろしい化け物がいるって言うのかよ、恐いって。

「ど、どうすれば…」
「見付かってしまえば死を覚悟するしかありませんね。
 とは言え、対処が無いとは言えません。
 対処方は倒す事が最も確実ですね」
「何だ、簡単じゃ無いの! 死神だか何だか知らないけど私の敵じゃないわ!」
「最高ランクの冒険家でも場合によっては苦戦する相手ですよ?
 新人であるあなたに何が出来ると思いますか?」
「ふ、ふん、私なら余裕よ余裕!」
「…はぁ、で、もう一つの対処方ですが、逃げる事ですね。
 これも非常に困難ですが、攻撃を避けながらの逃走です。
 街へ逃げれば高ランクの冒険家が加勢してくれるかも知れません。
 そうなれば、生き残れる可能性はあります」

でも、その選択は最悪、助けようとしてくれた冒険者を殺してしまう。
完全に諸刃の剣になる方法だと思う。
相手がそんなに強いのであれば、被害が拡大するだけでは無いのか?

「察しているかも知れませんが、逃走という手段は被害を拡大してしまう可能性があります。
 なので、最も推奨される行動は、死を受入れることですね」
「そ、そんな事出来る訳が!」
「ないですよね、当たり前ですよ。死ぬと分かっていて抵抗しない人は居ません。
 あくまで推奨されて居るだけですし、逃げたとしても責められたりはしません。
 生き残りたいと思った行動なのですから」

戦って勝てる相手じゃ無いのに戦えるはずが無い。
なら、逃げて助けて貰うしか無い。新人は。

「とは言え、見付かってしまえばほぼ死亡なのは間違いありません。
 こいつに発見されて生き残れるとされる新人は1%にも満たないのですから」
「なん!」
「1人だけ、生き残れた冒険家は居ましたが、その冒険者は
 精神的に疲弊してしまい、結果冒険家を止めていきました。
 結果、将来有望だった冒険家5人が位無くなってしまうと言う事態に陥りました」
「将来有望だったって」
「あなた達レベルですね、5人だけでクイーンローチを撃破してます。
 あなた達の場合は私と3人での撃破だったわけですし
 もしかしたら、あなた達よりも実力は上だったかも知れません」
「私達は3人で向こうが5人なら、私達の方が人数少ないじゃん」
「情報がない状態で撃破したのですよ? あなた達は私から情報と攻略方法などを教えられて
 知識のある状態での撃破だったのに対して、彼らは情報も無い状態での撃破。
 まぁ、どっちが上位かは、今となっては分からない話ですがね」

そう、どっちが上だったかは分からない、その冒険者達はもう居ないのだから。

「では次です、次はビースルガー
 遠距離特化型の魔物で、近付くことすら困難な相手です」
「何それ…」
「長距離から正確に針を飛ばしてくる厄介な相手でしてね
 攻撃を避けながら接近するしか方法が無いのです。
 しかし、弾速も早く、距離もかなりあるので厄介極まりありません。

 1度狙撃ポイントを決めると中々動かないのですが
 狙撃ポイントで一定数撃てば移動して、別の場所から攻撃をしてきます。
 弾数は現在分かってる中で100発、それだけ撃ち終えたら移動して
 別の場所から100発の弾丸を撃ってくると言う長期戦必至レベルですね
 
 更に移動はワープなので、見失い狙撃されるという形になります。
 つまり、対象を見付ける際に1人死亡する可能性があり
 人数が減れば、狙いが集中してしまうため回避が困難になっていきます。
 そして、最終的には全滅、と言う厄介な相手ですね」
「こいつも不意に出てくるんですか?」
「えぇ、出現するタイミングも不明で、不意に出て来ては狙撃を繰り返して移動します」

別の魔物と戦ってる間に不意に出て来て狙撃される可能性があるのか。

「まぁ、新人レベルだと出現位置が分かったとしても
 その高速弾を回避することが出来ず、1人また1人と倒されていく感じですね。
 接近することすら出来ない、中級者レベルでやっと接近が可能になるレベルです
 障害物に身を隠しながら進んでも障害物を破壊されてしまうので驚異的すぎますね」

不意に出てくる上にあまり場数を踏んでいなければ回避が出来ないほどの狙撃…
更に身を隠すことも不可能とか…恐ろしすぎるだろ!

「ま、私なら余裕よ!」
「確かにマリさんなら余裕でしょうけど、ノクさんには厳しいかと」
「た、確かに…」
「以上が例え新人でも不意に遭遇してしまうかも知れない
 非常に厄介な魔物達です、出会わないことを願うしかありませんね」
「はい」
「まぁ、面倒事は極力避けたいしね」

多少の対処は教えて貰ったが…対処を知っていても生き残れそうなのが
ゾンビくらいだな…遭遇しないことを願うしか出来ないか。
その後、俺達は残りの時間を利用して色々な訓練を行なった。
アンヌさんから色々な武器の扱い方も教わり、そのスキルも習得できた。
同時に、コンボスキルが増えた。
やはり俺のユニークスキルは色々なスキルとコンボする様だ。
槍の支配、銃の支配、弓の支配が発生した。
しかしアンヌさん、自分の技術を相手に教えられるとは驚いた。
お陰で、かなり成長出来た気がするよ。

「では、これで訓練は終了です。あなた達が初めてですよ技術を教えたのは」
「そうなんですか?」
「えぇ、気に入った相手にしか教えないつもりだったので」
「何よ、私達の事気に入ってるの?」
「えぇ、きっとこの先、長い付き合いになると思いますよ」

何にせよ、アンヌさんに気に入って貰っているというのは嬉しいな。
これからもドンドン強くなっていかないと駄目だな!
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