継承スキルで下克上!

オリオン

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平和すぎる毎日

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初めての仕事は家の手伝い、その手伝いのお陰でいくらかお金も貰えた。
俺達はとりあえずそのお金でいくつか武器を買うために街に出た。
流石に200マーズだけじゃ、大した物は変えないかも知れないけど
武器がないとろくな仕事は出来ないと言うアンヌさんのアドバイスもあったしな。

「ねぇ、ノク、この槍とかどう? ちょっと高いけど」
「えっと・・・・ひゃ、100マーズ・・・・」

俺達の所持金は200マーズだ、この武器で100マーズも取られるのは不味い。
一応生活費も兼ねてあるし、ここでこの武器を買えば俺の分の武器を買わないとしても
100マーズで次の依頼が来るまで凌がないと行けないと言う事になる。
いやさ、確かに5マーズもあれば過ごせるだろうが、2人なら10マーズだ。
となると10日間しか過ごせなくなってしまう。

「だ、駄目だって、これは高すぎるよ」
「そう? でも、これ位だよ、1番安い槍って」

他の槍を見てみると、確かにこの100マーズが凄く安いのが分かった。
平均すれば槍の値段は300マーズで、普通は買えない。
高い槍は1000マーズの価値もあったりとかなりヤバい。
これが武器か、今まで買ったことがないから分からなかったが、高い物なんだな。

「う、うーん、じゃあ、仕方ないか・・・・この100マーズの武器を買おう」
「うん」

結局俺達はこの100マーズもする槍を購入することになった。
これで俺達は10日間しか過ごせなくなるな。
それまでに依頼が来れば良いんだが・・・・
だけど、俺達はまだまだルーキーの冒険者だ、そう簡単に依頼など来るわけもなく。

「・・・・依頼、来ないね」
「そうだな」

俺達の所持金は、あと1日分の10マーズだけになってしまった。
まぁ、節約すればあと1週間はこれ位で耐えられるんだけど。
しかし、まさかここまで依頼が来ないなんて、このままじゃ、冒険家になってすぐに
餓死してしまう、あぁ、せめて依頼があれば・・・・でも、無いんだよな。

「うぅ、私が槍なんか買ったばっかりに」
「いや、一番安い奴だし、戦いやすくなるのは大事だから」

俺達がこれからどうするか悩んでいると、俺達の部屋の扉が開いた。

「はい、いますか?」
「アンヌさん、前も言いましたけど、部屋に入るときはノックくらいお願いしますよ」
「面倒です、さて、それじゃあ、本題に入りますね」

うん、たった一言で流されてしまった、いや、まぁ、別にやましいこと何てしてないから良いが。
だって、ねぇ、マリちゃんと同じ部屋にいるわけだし、何か隠し事が出来るわけ無いし。

「今回私が来たのは、あなた達に朗報があったからです」
「そうなんですか!?」
「あなた達に依頼があります」
「「やった!」」

待ちに待ったその言葉! これでようやく新しい仕事が出来る!
今までは、ずっとダラダラすごしてただけだからとにかく退屈だったし
お金もそろそろ底を尽きそうになってたから焦ってたんだよな!
でも、そんな心配ともおさらばだ!

「まぁ、嬉しいのは分かりますが、ですが言いますけど
 この依頼、実は結構前からあった依頼なんですよ」
「そうなんですか? じゃあ、一体何で今まで?」
「それはですね、単純にあなた達には速いと思ったからです」

アンヌさんの真剣な表情でこの依頼がかなりヤバいというのは分かった。
だから俺達の身を案じて今までこの依頼を出さなかったって事か。

「じゃあ、なんでその依頼を今?」
「・・・・無いんですよ、これ以外依頼が」

やっぱり俺達には大した依頼なんて来ないのか、理由は分かるけど
流石にちょっと悔しい気分になる。

「ですから、流石にこれ以上依頼が無いとあなた達のお金も底を尽きるでしょう?
 私の予想では、そろそろお金はもう無いのでは?」
「そ、その通り」
「あぁ、やっぱり」

予想できていたのだろう、マリちゃんの言葉を聞いても動揺せずに冷静に答えた。
しかし、俺達の懐事情も分かっているとは、流石はアンヌさんだ。

「ですから、今回は多少無茶でもこの依頼を渡すことにしたのです
 なんせ、お金がなければ何も出来ませんからね、食事も取れないし」
「は、はい」
「ギルドもギルドです、専属のマネージャーを付けるくらいなら
 食事も用意すれば良いのに、全くこれが原因でこのギルドは新人が育たないんですよ」

アンヌさんは両手を広げ、やれやれと首を振りながら独り言を呟いた。
そして、すぐに小さく咳払いをして、話を戻した。

「とりあえず、こちらが依頼です、ちょっと内容を見てくださいな」

俺達はアンヌさんに渡された依頼を見てみた。
依頼の内容は最近近くに出現した洞窟の調査という実に冒険家らしい依頼だ。

「こ、これは!」
「冒険家らしい依頼! 何で今まで隠してたの!?」
「あの洞窟は正体も分からない突如現われた洞窟です。
 調査に入った人間は何人かいますが、未だに不明の洞窟
 帰ってきた者は僅かでその戻ってきた者達全て奥まで入っておらず
 中から聞えた鳴き声に怯えて逃げだしてきた者ばかりで構造も不明
 魔物が住み着いてる可能性が大いにありますが、どんな魔物かは不明。
 こんな正体不明の洞窟に冒険家になり始めのあなた達を送るわけにはいかないと思いましてね
 完全に捨て駒扱いでしょうし。」

確かにそんな危険地帯に俺達みたいな新人が行くのは危ないかも知れない。
かといって、この依頼を受けないと俺達は何も食えず餓死することだろう。
仮に餓死せずに運良く仕事が来たとしても空腹だと戦えない。
それに、そもそもだ、こんなワクワクするような依頼受けないわけにはいかない!
だって未知の洞窟で、誰も最奥までいったことが無い様な場所だ!
こんな場所の調査依頼が来て、ワクワクしないはずがない!

「どんな危険地帯だろうが、俺は行くぞ! そんな面白そうな場所いかないわけが無い!」
「ノクがいくなら当然私もいく、このままここでダラダラしても暇だしお金がなくなるしね
 それに新しく買ったこの槍の強さ、確認したいし!」
「そうですか、因みに依頼の報酬は僅か100マーズです
 ただ、洞窟内で手に入った物は自由に持ち帰れるとのこと、どうします?」
「否定する理由はありません! 楽しみです!」
「そうですか、では出発日を教えてください、それに合わせますから
 あ、言っておきますが、最低2日は時間を置いてください、私の準備がありますから」
「じゃあ、2日後で!」
「予想できてましたよ」

俺の返事を聞いたアンヌさんは少しだけ笑い、部屋から出ていった。
そして最後、出て行く直前に小さく危険を感じたら逃げてくださいね? と言って扉を閉めた。
きっとアンヌさんはその洞窟に不安を持っているんだろう・・・・でも、どんな時であれ
新しい事を始めるときに不安があるのは当然だし、臆病になるのは馬鹿らしいからな!
折角のチャンスだ! このチャンスを物にして、俺達は名を上げるぞ!
下克上だ! 冒険家達への下克上! 待ってやがれ! 俺を馬鹿にした事を後悔させてやるからな!
戦えない家庭に生まれても、強くなることは出来るんだ! それを証明してみせる!
俺は決意を乗せた拳を強く握りしめ、今一度下克上の覚悟を決めた。
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