異世界の片隅で、穏やかに笑って暮らしたい

木の葉

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人質の保護 カルロ視点

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カルロ視点

 褒賞を賜った次の日、俺とミランは国王陛下に呼ばれ王宮に向かった。部屋に通されると、ミシェラン侯爵である父も部屋にいた。
 
「父さんも呼ばれたんですね。どのような話か聞いておりますか?」
 
 俺が尋ねると、父さんは「私もまだ何も知らないんだ」と首を振った。
 
 陛下が部屋に来られると、早速話をされた。
 
「実は、捕らえられていた光属性のランドの件で相談がしたくて呼んだんだ。既に知っていると思うが、彼は回復と浄化スキルを共に持つ逸材だ。将来は国に役立つ存在にもなるだろう。専門家にもランドを見てもらったが、洗脳されている様子は全くないし、本人は非常に明るく利発な子だ。私としてはミシェラン侯爵かブライトン侯爵に預かってほしいのだが、どうだろうか」
 
 父さんが少し考えて発言した。
 
「陛下、それは養子として預かるということでしょうか?」
 
 陛下は首を横に振り、説明してくれた。
 
「養子にすれば、跡継ぎ問題が発生しかねないし、詮索してくる輩もいるだろう。私はランドを教育し、国を守れる立派な青年に育ててほしいと思っている」
 
 ミランは静かに陛下の言葉を聞きながら、何かを考えているようだった。
 
「もちろん、すぐに返事はできないだろうから、10日待つとしよう」
 
 その時、ミランが口を開いた。
 
「お兄様、ランドに直接会うことは可能ですか? できれば子供たちも一緒に会わせてみたいのですが……」
 
「もちろん、問題ないよ。ミシェラン侯爵もキース夫妻や孫たちと会いに行ってもらって構わない」
 
 父は、難しい顔をした。父の心の内が読めないが、何か思うところがあるのだろう。
 
「それと、マッドの側仕えのジルの祖父母にも褒美をやらなければならない。後日私の元に連れて来るといい。奴隷契約を解除した後は、契約魔法をしてやろう」
 
 話が終わると、陛下は部屋を出て行かれた。
 

「父さん、どうされますか?」
 
 俺が尋ねると、父さんは唸った。
 
「うむ、キースは陛下からの依頼だと言えば喜んで引き受けるだろうが、ランドにとっていいことだと思えなくてな。私が断り、お前たちが引き受けたと後で知れば、またお前に当たるだろう」
 
 父さんの言葉には、複雑な感情が入り混じっているのが見て取れた。
 
「俺は何をしても兄にはよく思われませんので、今更ですけどね。とにかくミランが言うように、子供たちにまず会わせます。話はそれからになりますので、父さんも何かあれば教えてくれると助かります」
 
 父さんは憂鬱そうに部屋を出て行った。俺とミランは、子供たちを明日王都の教会へ連れて行き、ランドに会わせることに決めた。
 
 陛下からの話をマッドたちに伝えると、4人ともそうなるだろうと思っていたようで、驚いてはいなかった。彼らの落ち着いた反応に、俺は少し感心した。
 
「養子ではなく保護ということですか? 保護というのは、貴族として一人前扱いされる18歳になるまでの親代わりの認識でいいですか?」
 
 マッドの質問は的を射ていた。
 
「ああ、そうだ。ただし保護は、子が何かをした場合には責任を取る必要はない。保護は辞めたい時に辞められる。つまり、子に生活と教育の保証を与えて、自分たちの保護下にあると世間に知らしめ、世間から守るということだ」
 
 俺はそう返した。
 
「とにかく会ってみないと判断はできませんね。俺の鑑定では洗脳はされていないと思うし、悪い情報も何もなかった」
 
「光属性は絶対ではないけれど、高位貴族の血を引く者がほとんどだわ。それに回復と浄化というスキルは、聖職者からよく出るスキルとも言われているから高位貴族が保護するべきだと考えられたのね」
 
 マリアの言葉に、ミランも頷いた。
 
「私もマリアの言う通りだと思うわ」
 
 ミランはそう言い、話を続けた。
 
「ランドは12歳まで平民のご両親に大切に育てられていたようなんだけど、流行病でご両親が亡くなられてからは教会で面倒を見てもらっていたそうよ。でも、ご両親とは外見が全く違っていたようだから、もしかすると高位貴族か高位聖職者の子供を預かって育てていたのかもしれないわね」
 

 翌日になり、朝早くに教会に行くと、ランドは周りの小さな子供たちを相手に、楽しそうに本を読み聞かせていた。
 
 リオとキャロルがランドを見て呟いた。
 
「空の色だ」
 
「ええ、綺麗な水色ね」
 
 マッドが静かに言った。
 
「眠っている時は分からなかったけど、昨日の話のようにランドはご両親にとても大切に育てられたようだ。俺には色までははっきり見えないけど、礼儀正しく正義感の強い性格のようだ」
 
 マッドと同じで私にも色は見えないが、ランドの周りの光の粒子は見える。光属性も影響しているんだろうか? ミランはランドを見て優しく笑っている。おそらくミランは、彼を保護したいと思ったのだろう。
 
 ランドが俺たちに気づくと、笑顔でこちらにやってきた。
 
「初めまして、ランドといいます。僕の保護を考えてくれている方たちですか?」
 
 ランドは深々と頭を下げて言ってくる。その礼儀正しさは、彼の育ちの良さを物語っている。
 
「私たちの他にも貴方を保護したいという人がいるから、まだ決まっていないのよ。貴方の夢は何か教えてくれる?」
 
 ミランが尋ねると、ランドは顔を上げて答えた。
 
「僕はまだよく分かりません。ただ、病気で苦しむ人や、怪我をした人を癒せるようになりたいです。そして、皆が笑顔でいられるように、人の命を守る手助けがしたいです」
 
 その言葉は、純粋で真っ直ぐで、彼の揺るぎない心の芯を示しているようだった。彼の瞳には、未来への希望がキラキラと輝いている。
 
「素晴らしい夢だわ」
 
 ミランがそう言うと、ランドは礼を言って、再び子供たちの元へと去っていった。
 
 俺は父さんになんて話そうか……。ランドのこの姿を見たら、父さんも考えを変えるだろうか。
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