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ミシェランでの事業1
以前から計画していた子供道場がミシェランに出来上がった。教える先生は元冒険者や元騎士に依頼し、現在は五人いる。そのうちの一人は女性なので、生徒は女の子も結構いるようだった。
週に五日の開催で、時間は一回二時間。五歳から十四歳までのミシェランに住む子であれば、わずかな金額で通うことができる。
マッドは無料で通えるようにしたかったが、財政を考えると難しいこともあり、三回セットで1千リラとした。この道場が成功したら、大人道場も作りたいとマッドは話している。
私は道場の見学にドナと共に出かけた。
「こんにちは!」
元気に声を掛けてくれたのは、シスターであるシイラの息子のトムだった。
「こんにちは、トム。元気に通ってくれていて嬉しいわ。この道場はどう?」
「僕は毎日通っているよ。先生もいい人ばかりだし、楽しいよ。でも友達はお金がかかるからたまにしか通えないんだ」
「そうね、毎日通うには大変よね」
「でも母さんが、世の中には無料のものなどないと言っていたから仕方ないよね」
以前よりトムは日焼けしたように思うし、男の子らしくなった気がした。
「トム、頑張って、強くなってね」
「うん、母さんを守れるように頑張るよ!」
そう言ってトムは道場に元気に走っていった。道場に通う子供たちは、元気で活発な子が多く、その将来が本当に楽しみだ。
私は現在、ある大きな計画を進めていた。ミシェランには領主持ちの肥沃な土地がいくつかある。そのうちの一つを子供農家として運営したいと考えている。幼い子供たちが安心して働けてわずかな金銭でも手に入れられれば、家族の助けにもなるし、農業の知識も自然と身につけられる。そして、収穫して得た収入は子供たちの教育資金として積み立てていき、将来は安く通える平民学校を建てるという、そんな大きな夢を私はマッドと語り合っている。
子供農家の運営は大人を三人ほど雇い、残りは日雇いの子供たちにお願いしようと考えている。そして休憩所には絵本を置いて、興味のある子が自然と手に取れるように文字を学んでくれると嬉しい。私もたまに赴いて先生をしてみてもいいかしら、なんて。実は、少しだけ先生に憧れている。
ミシェランの夫人会のメンバーにこの話をすると、大半の人たちが賛成してくれたので計画は着々と進んでいった。私はドナや夫人会のメンバーたちと、来月には子供農家を始めることに決めた。
年齢や適性により能力差は必ずあるので、子供たちの経験によって収入には差をつけるつもりだ。夫人会のメンバーもボランティアで手伝ってくれるので、上手くいけば予想以上の収入が見込めそうだ。
「キャロル、子供農家が順調にいけば繁盛しそうだな。それで相談なんだが、大人農家も作ってみないか?」
意外にも、お爺様がそう切り出してきた。
「農民たちは自分たちの土地を耕して収入を得るだろう。だが、天候などに左右されるからとても不安定なんだよ」
「お爺様、そうなるとギルドと同じではないですか?」
「ギルドから仕事を受けるのは抵抗がある者もいるんだよ」
たしかにあのギルド独特な雰囲気の中に入るのを躊躇する者はいるだろう。ルルソン村のギルドならまだしも、ミシェランのギルドには私も一人だったら出入りするのに抵抗があるもの。
「家族全員で農家をやるよりも、一人だけでも別の収入源があれば、いざという時には助けになるということですか?」
「そうだ。ミシェラン領主が雇い主であれば抵抗もないだろう」
私はナミさんのことが頭によぎった。
もしも転生した時に大人農家があればナミさんは怪しげな店で働かなくて良かったかもしれない。そんな風に考えてしまった。
それからお爺様との話は大いに盛り上がった。大人農家はお爺様が中心となり、ミシェランの街から少し離れた広大な敷地に作られた。馬車で三十分ほどかかるので、行きと帰りには無料馬車を準備するし、住居や休憩所も作る予定になった。
お爺様はワインを作りたいと言い、酒造スキルのある者を現在探している。
「マッド、お爺様は本当にすごいわよね」
「昔からワイン作りはしたかったみたいだ。でも忙しすぎてそこまで手が回らなかったんだろう。今は何だか生き生きしているし、俺もすごく嬉しいよ」
「酒造スキルのある人物は見つかるかしら?」
「どうだろう。俺が今まで見たことあるのはナミさんだけだ。そう考えると、料理スキル持ちが酒作りを始めたら、もしかしたら現れるかもしれないな」
「そうね、ナミさんも最初は酒造スキルは持っていなかったものね」
「ナミさんに頼んでみたらどうだ?」
「マッド、でもね、もしナミさんが手伝ってくれるとなると、今度はホテルが心配なのよ」
「確かにそうだな。ナミさんの食事目当ての客も多いらしいからな」
「ワインで有名なところならスキル持ちもいるんじゃない?」
私はマッドに聞いてみた。
「キャロルが言うようにワインの産地にはいるだろうな。でも絶対に領主が手放さないだろうし本人だって自分たちが育てた農地に愛着もあるだろう」
まあ、それは当然のことね。私も薬膳酒なら作れるのではないかしら? うん、うん、今度挑戦してみよう。
「キャロルはお酒は弱いから、作っても飲むなよ」
どうして考えていることが分かったんだろう。今更だけれど、悟られすぎではないだろうか?
「キャロルの考えることは俺には分かるよ。まあ、リオほどではないかもしれないけどな」
しばらくすると、お爺様は大人農家を始めた。広大な敷地の一部に葡萄畑も作ったようだが、まだ酒造スキル持ちは現れていなかった。
週に五日の開催で、時間は一回二時間。五歳から十四歳までのミシェランに住む子であれば、わずかな金額で通うことができる。
マッドは無料で通えるようにしたかったが、財政を考えると難しいこともあり、三回セットで1千リラとした。この道場が成功したら、大人道場も作りたいとマッドは話している。
私は道場の見学にドナと共に出かけた。
「こんにちは!」
元気に声を掛けてくれたのは、シスターであるシイラの息子のトムだった。
「こんにちは、トム。元気に通ってくれていて嬉しいわ。この道場はどう?」
「僕は毎日通っているよ。先生もいい人ばかりだし、楽しいよ。でも友達はお金がかかるからたまにしか通えないんだ」
「そうね、毎日通うには大変よね」
「でも母さんが、世の中には無料のものなどないと言っていたから仕方ないよね」
以前よりトムは日焼けしたように思うし、男の子らしくなった気がした。
「トム、頑張って、強くなってね」
「うん、母さんを守れるように頑張るよ!」
そう言ってトムは道場に元気に走っていった。道場に通う子供たちは、元気で活発な子が多く、その将来が本当に楽しみだ。
私は現在、ある大きな計画を進めていた。ミシェランには領主持ちの肥沃な土地がいくつかある。そのうちの一つを子供農家として運営したいと考えている。幼い子供たちが安心して働けてわずかな金銭でも手に入れられれば、家族の助けにもなるし、農業の知識も自然と身につけられる。そして、収穫して得た収入は子供たちの教育資金として積み立てていき、将来は安く通える平民学校を建てるという、そんな大きな夢を私はマッドと語り合っている。
子供農家の運営は大人を三人ほど雇い、残りは日雇いの子供たちにお願いしようと考えている。そして休憩所には絵本を置いて、興味のある子が自然と手に取れるように文字を学んでくれると嬉しい。私もたまに赴いて先生をしてみてもいいかしら、なんて。実は、少しだけ先生に憧れている。
ミシェランの夫人会のメンバーにこの話をすると、大半の人たちが賛成してくれたので計画は着々と進んでいった。私はドナや夫人会のメンバーたちと、来月には子供農家を始めることに決めた。
年齢や適性により能力差は必ずあるので、子供たちの経験によって収入には差をつけるつもりだ。夫人会のメンバーもボランティアで手伝ってくれるので、上手くいけば予想以上の収入が見込めそうだ。
「キャロル、子供農家が順調にいけば繁盛しそうだな。それで相談なんだが、大人農家も作ってみないか?」
意外にも、お爺様がそう切り出してきた。
「農民たちは自分たちの土地を耕して収入を得るだろう。だが、天候などに左右されるからとても不安定なんだよ」
「お爺様、そうなるとギルドと同じではないですか?」
「ギルドから仕事を受けるのは抵抗がある者もいるんだよ」
たしかにあのギルド独特な雰囲気の中に入るのを躊躇する者はいるだろう。ルルソン村のギルドならまだしも、ミシェランのギルドには私も一人だったら出入りするのに抵抗があるもの。
「家族全員で農家をやるよりも、一人だけでも別の収入源があれば、いざという時には助けになるということですか?」
「そうだ。ミシェラン領主が雇い主であれば抵抗もないだろう」
私はナミさんのことが頭によぎった。
もしも転生した時に大人農家があればナミさんは怪しげな店で働かなくて良かったかもしれない。そんな風に考えてしまった。
それからお爺様との話は大いに盛り上がった。大人農家はお爺様が中心となり、ミシェランの街から少し離れた広大な敷地に作られた。馬車で三十分ほどかかるので、行きと帰りには無料馬車を準備するし、住居や休憩所も作る予定になった。
お爺様はワインを作りたいと言い、酒造スキルのある者を現在探している。
「マッド、お爺様は本当にすごいわよね」
「昔からワイン作りはしたかったみたいだ。でも忙しすぎてそこまで手が回らなかったんだろう。今は何だか生き生きしているし、俺もすごく嬉しいよ」
「酒造スキルのある人物は見つかるかしら?」
「どうだろう。俺が今まで見たことあるのはナミさんだけだ。そう考えると、料理スキル持ちが酒作りを始めたら、もしかしたら現れるかもしれないな」
「そうね、ナミさんも最初は酒造スキルは持っていなかったものね」
「ナミさんに頼んでみたらどうだ?」
「マッド、でもね、もしナミさんが手伝ってくれるとなると、今度はホテルが心配なのよ」
「確かにそうだな。ナミさんの食事目当ての客も多いらしいからな」
「ワインで有名なところならスキル持ちもいるんじゃない?」
私はマッドに聞いてみた。
「キャロルが言うようにワインの産地にはいるだろうな。でも絶対に領主が手放さないだろうし本人だって自分たちが育てた農地に愛着もあるだろう」
まあ、それは当然のことね。私も薬膳酒なら作れるのではないかしら? うん、うん、今度挑戦してみよう。
「キャロルはお酒は弱いから、作っても飲むなよ」
どうして考えていることが分かったんだろう。今更だけれど、悟られすぎではないだろうか?
「キャロルの考えることは俺には分かるよ。まあ、リオほどではないかもしれないけどな」
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