異世界の片隅で、穏やかに笑って暮らしたい

木の葉

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ボンドンの馬 リオ視点

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リオ視点
 
 僕たちは、楽しみにしていた魔物飼育店へ馬車で向かっていた。今日は、新しい家族となる犬たちと、もし気に入る馬がいればボンドン用に、という算段だ。馬車の中は、目的地への期待感で少しだけ賑やかだった。
 
 店に着いて、まずは目当ての犬を見に行った。たくさんの可愛らしい子犬たちがいたけれど、僕たちが選んだのは、健康そうな丸々とした生後四ヶ月の子犬二匹。オスとメスなので、もし相性が良ければ、将来的に子犬が生まれるかもしれない。二匹とも狩猟犬の種類で、とても賢くなると聞いている。マッドが言うには、少しだけ魔獣の血が混ざっているから、きちんと躾をした方がいいらしい。元気いっぱいに尻尾を振る二匹を見ていると、早くも愛着が湧いてくる。帰りに山小屋に寄り、この二匹の犬の訓練を頼むことになった。彼らなら、きっと立派な狩猟犬に育ててくれるだろう。
 
 次に、ボンドン用の馬を探した。彼がもし気に入る馬がいれば、ぜひ購入してあげたかったんだ。
 
 ボンドンと一緒に馬を見ていると、ひときわ目を引く馬がいた。まるで牛のような白と黒のマダラ模様をした馬だ。ボンドンも同じようにその馬に目を奪われたらしく、僕に話しかけてきた。
 
「リオ様、牛のような馬がいますね。ちょっと見てきてもいいですか?」
 
「ボンドン、気に入ったの?」
 
 僕が尋ねると、ボンドンは少し首を傾げて、真剣な顔で答えた。
 
「いえ、乳が出るのか気になったんです」
 
 真顔で答えるので、面白くて言葉が出なかった。まさか、そんなことを考えていたなんて。隣では、マッドが僕と同じように不思議そうな顔で、その牛柄の馬をじっと観察している。おそらく鑑定してくれているんだろう。
 
 店員さんに話を聞いてみると、あの模様のせいでなかなか売れないらしい。それと、ひどく人を選ぶらしく、この前は客に軽い怪我まで負わせたという。だから、もしあの馬を気に入ったのであれば、安く売ってくれるとまで言ってくれた。そこまで聞くと、かえって興味が湧いてくる。
 
 ボンドンが、恐る恐る馬に近づき、何かをブツブツと喋っている。その様子を見たマッドは、なぜか店員さんに購入の意思を示した。もう、ボンドンの馬に決まったらしい。あの牛模様の馬に、何か特別なものを見出したのだろう。
 
 屋敷に着いて、僕はさっそくボンドンに、馬の名前を決めたか聞いてみた。
 
「任せてください!見た時から僕は決めていましたよ!モーモーです!」
 
 ボンドンは、満面の笑みで胸を張って答えた。……何となく、そうだろうなと想像していたので、何も言い返せなかった。彼の頭の中では、完全に「牛」のイメージが定着しているのだろう。
 
 隣では、ドナが大笑いをしていて、ジルは額に手を当てて、小さく頭を抱えていた。その光景が、あまりにも可笑しくて、僕も思わず吹き出してしまった。
 
 マッドが、そのモーモーについて僕に話をしてきた。
 
「モーモーは、魔馬と野生馬のハーフだ。だから、気性は普通の馬に比べたら荒いし、人も選ぶ。だけど、ボンドンとはなぜか相性がいいみたいだ。あの馬なら、ボンドンの乗馬の技術がなくても、馬が何とかしてくれると思うよ」
 
「ハーフだったら、魔法とか使えるの?」
 
 僕が期待して尋ねると、マッドは少し残念そうに答えた。
 
「いや、魔法はあまり使えないと思う。ただ、『危険回避』スキルを持っているから、ボンドンのことは守ってくれると思うよ。良かったな」
 
「うん、ありがとう、マッド」
 
 正直なところ、僕は少しボンドンが心配だったんだ。優秀なジルと、戦いに強いドナについて行くには、平凡なボンドンには大変なことだろうと思っていた。だから、いつか無理をして怪我でもするんじゃないかと、いつも気にしていたんだ。これで彼にも心強い相棒ができたな。
 
 ボンドンは、モーモーに楽しそうによく話しかけては笑っている。たまにモーモーに蹴られてはいるけれど、ボンドンは全く気にしていないようだし、モーモーだってじゃれているだけなんだろう、多分……。彼ら二人の間には、僕たちには理解できない、奇妙な絆が生まれているのかもしれない。
 
 翌朝、父さんと母さんに呼ばれて、僕は念を押された。
 
 これから魔法陣で王都に飛び、明日には陛下に新年の挨拶に伺う予定になっている。僕たちも一緒に行くことになっているから、王妃様の子であるカトリナ姫にも会うことになるだろう。父さんと母さんは、僕に「決して二人だけにはなるな」と厳しく言った。もしカトリナ姫が僕を見て気に入ってしまったら、何がなんでも婚約者にしようと躍起になるだろう。そうなった場合、王妃様が何を仕掛けてくるか分からないと心配していた。王妃様は悪い方ではないが、カトリナ姫を溺愛しており、元平民の僕たちがカトリナ姫に近づくのを力ずくでも阻止しようとされるだろう、と。
 
 それから、母さんはマリア姫と話す機会があれば、僕の方から積極的に会話をしてみるように勧めてきた。もしマリア姫が婚約者として、ルルソン村で共に暮らしてくれるのであれば、僕にとっても良い相手だと母さんは言っていた。母さんがここまで僕に勧めるのだから、きっと良い娘なんだろう。僕は少しだけマリア姫に会うのが楽しみになった。どんな姫なんだろう。
 
 僕がそんなことを考えていると、マッドとキャロルが、僕の顔を覗き込んできた。キャロルはなんだかニヤニヤしている。僕がマリア姫の話を聞いて、少しだけ頬が緩んでいたのに気づいたのだろうか。キャロルは絶対に面白がっているんだろうな。
 
 マッドはいつも通りの顔すぎて、考えが全く読めないが、まあ、なるようにしかならないだろう。
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