異世界の片隅で、穏やかに笑って暮らしたい

木の葉

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マーカス到着 カルロ視点

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カルロ視点
 
 子供たちとの初旅行だというのに、まさかの事態に直面してしまった。今回の襲撃は、どう考えても計画的なものだろう。幸い、子供たちは皆、想像以上に強く、大事には至らなかった。送り出した山賊は総勢58名。ミシェラン侯爵である父が、この件を厳しく調査してくれるはずだ。だが、この異常な事態に、侯爵として、そして一人の父親として、私の心はざわついていた。
 
 トド町の町長から、山賊に捕らえられていた5人の被害者について相談を受けた。
 
「被害者とはいえ、彼らはこの町の者ではない。それに、もしかしたら山賊が被害者に化けているのかもしれん。この町では怖くて預かれんのだ」
 
 町長の言うことも、もっともだ。賊が被害者に紛れ込むことは少なくない。念入りに調べなければ、寝首をかかれることにもなりかねない。鑑定したところ、彼らに犯罪歴はなかったが、町長の言うように偽装している可能性も捨てきれない。
 
クレア 14歳 女 風属性、小さな魔道具
ランド 14歳 男 光属性、回復、浄化
バーン 22歳 男 土属性、解体
マーザ 21歳 女 風属性、採集
ナナン 20歳 女 水属性、清掃
 
 ランドは珍しい光属性だし、クレアも魔道具を持っているため、スキル目当てで誘拐された可能性が高いだろう。
 
 問題は残りの3人だ。3人とも顔立ちは悪くないが、どうにも拭えない違和感があった。特にバーンとマーザは、まるで貼り付けたような笑顔と不自然な落ち着きがあり、偽装スキルでごまかしているように俺には思えた。だが、俺の鑑定では確証を得られず、念のためマッドにも見てもらうことにした。
 
「バーンとマーザは山賊の仲間だと思います。偽装スキルを使ってかなり誤魔化しているようなので、リオを呼んで解除してもらいましょう」
 
 解除ができるとは驚きだ。リオがすぐに来てくれてスキルを解除すると、彼らの前には信じられないほどの犯罪歴がずらりと並んだ。
 
「父さん、どう? 見えたかな?」
 
「ああ、見えたよ。これはすごいな」
 
 名前も変わり、二人とも賞金首のかかった凶悪犯だった。窃盗、恐喝、殺人、詐欺……悪事の限りを尽くしているような奴らだ。
 
「バーンとマーザ以外は、俺は被害者だと思います。父さんはどう思いますか?」
 
「ああ、俺もそう思う」
 
 バーンとマーザはすぐに魔法陣で送ってもらい、残りの3人については後日改めて対応することにした。
 
 翌朝、キャロルが「元気になるから」と薬膳料理を作り、皆に振る舞ってくれた。これが実に素晴らしい。美味な上に、疲れが吹っ飛ぶようだ。
 
 残りの山賊たちの住処を放置するわけにはいかないので、再編成することになったが、戦える者が減ってしまい、今の状態では厳しい。あまり子供たちを参加させたくはないが、一緒について来てもらうしかないだろう。
 
 だが、山賊が仲間を取り返しにここを襲ってくる可能性も否定できない。トド町の警備も怠ることはできないのだ。どうしたものか……。
 
 決断しかねていると、マーカスが精鋭たちを10人引き連れて応援にやってきた。
 
「カルロ、待たせたな。状況はどうだ?」
 
「マーカス、早速で申し訳ないが、今から出発しようと思うんだ。そっちは大丈夫か?」
 
「ああ、問題ないと言いたいが、ほとんど休まず飛ばしてきたんで、少しだけ休ませてやってほしい」
 
「分かった、1時間後に出発する」
 
 マーカスと打ち合わせをし、精鋭のうち5人にはこの村の警護に残ってもらい、残りは出発することにした。マッド、キャロル、ジル、ドナは連れて行き、リオたちには町を守ってもらうことにした。
 
 精鋭たちは馬車でしっかりと休息してもらい、3時間ほど走ったところでマッドが言ってきた。
 
「父さん、30人ぐらいの敵がこちらに向かっています」
 
 やはりトド町を襲うつもりだったか。
 
「キャロル、弓使い二人が厄介だ。距離があるうちに倒してもらえるか? それから父さん、かなりの腕の者が6人もいます」
 
 キャロルは躊躇うことなく、すぐに動いた。馬の上にすらりと立ち上がり、肩にはピッピとモドキが止まっている。一本、二本、そして三本。矢は放物線を描いて勢いよく飛翔し、あっという間に敵の弓使い二人を射抜いた。
 
「マッド、弓使いの二人は倒したわ!」
 
 キャロルの放った矢が合図となり、戦いの火蓋が切って落とされた。精鋭たちは本能で強敵を悟ったのか、練度の高い者たちへと向かい、受け止めてくれたようだ。マッドとジルも精鋭たちの方へと駆けつけ、共に戦い始めた。そしてキャロルは、その間も冷静に弓を構え、次々と敵を確実に仕留めていく。キャロルはまるで教会に飾られた女神の化身のようだった。オレンジ色の夕焼けを背景に、悪者を制裁する女神の姿に見える。
 
 ドナはモドキをキャロルに預けたまま、まるで解放された猛獣のように唸り声を上げ、マッドたちの戦場へと突進した。鍛え抜かれた両の拳から放たれる一撃一撃は重く、山賊たちはまともに受ければ骨が砕けるような音を響かせ、地面に沈んでいった。
 
 子供たちに負けてはいられない。
 マーカスと共に戦うのはいつ振りだろうか。20代の頃は国境沿いで小競り合いが何度かあり、マーカスと俺はよく駆り出されたものだ。あれからも常に稽古はしていたつもりだが、やはり実戦は違うな。マーカスも同じように思ったのか、『まだまだ行けるぞーっ!』と、俺に負けじと大声で叫んでいる。
 
 マッドは身の丈ほどもある大剣を振るい、山賊たちを薙ぎ払っていく。その一閃ごとに複数の敵が宙を舞い、血飛沫が上がる。ジルの盾は、敵の攻撃を完璧に受け止め、時には自ら盾で敵を弾き飛ばし、その隙をマッドや他の精鋭たちが突く。彼らの連携は熟練の域に達している。
 
 強い奴らは精鋭に任せて、俺とマーカスは目の前の敵に集中して共に戦った。俺もマーカスも武術系のスキルは持っていない。だが、その辺の騎士よりはまだまだ強い。剣を構え、踏み込み、振り抜く。経験に裏打ちされた無駄のない動きで、次々と敵を斬り伏せていく。
 
「マーカス、まだまだ行けるぞーっ!」
 
「おおーっ!」
 
 山賊の奴らが逃げようとしているが、そうはさせない。
 
「一人も逃すなーっ!」
 
 俺とマーカスが大声で喚いた。戦場に響き渡る怒号。山賊たちは完全に戦意を喪失し、あちこちで投降の声が上がった。
 
 捕らえたのは35人だ。一体何人いるんだ? まだまだいるのだろうか。
 
「マーカス、一旦戻ろう。向こうも心配だ」
 
「ああ、こいつら一体どれだけいるんだ。おかしいだろう」
 
 マーカスが言うように、ただの山賊にしては確かに数が多すぎる。そして、その戦い方も尋常ではない。この数の山賊を組織し、操っている黒幕がいる。何かが裏で蠢いているような、嫌な予感が拭えなかった。
 
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