異世界の片隅で、穏やかに笑って暮らしたい

木の葉

文字の大きさ
75 / 174

思う事 マーカス視点

しおりを挟む
マーカス(ライケスタ伯爵)視点
 
 本当に驚くことばかりだ。あいつら8人、特にリオたち3人(マッド、リオ、キャロル)を最初に見た時から、ただ者ではないと感じていた。とはいえ、その並外れた美しさゆえだろうと、勝手に納得しようとしていたんだ。
 
 始まりはカルロからの依頼だった。
 
「見目が良く、非常に目立つ子供たちが、初めてミシェランのクエストを受けるから、どうか気にかけてやってほしい」と。普段、感情をあまり表に出さないカルロが、あそこまで言ってくるとは珍しいと不思議に思ったものだ。
 
 次に驚いたのは、親父が俺の元を訪れ、「何とかあの者たちを我が家で保護できないか」と相談してきたことだ。親父がそこまで言うとは、一体何があったのかと首を捻ったものだ。
 
 気づけば、カルロが保護どころか彼らを養子にしたと聞き、さらに驚いた。それだけでなく、陛下までリオたち3人を気に入り、マリア姫を跡継ぎでもないリオの婚約者にするという、貴族の間で一時期大いに話題になった一件まであった。
 
 今回はマリア姫も同行していたため、陛下から直々に要請を受け、精鋭部隊を率いてすぐに駆けつけた。
 
 駆けつけてみれば、どこから見つけてきたのか、あの側仕えの4人(ドナ、ジル、ボンドン、レティ)もとんでもなく強い。精鋭部隊に混じって共に戦うなど、常識では考えられないことだろう。
 
 精鋭の一人が「彼らは戦いながらどんどん強くなっているようだ」と言っていたが、そんな馬鹿な話があるものか。
 
 そして、キャロルの弓はまさに神業だ。あれほどの弓の達人を俺は今まで見たことがない。
 
 それにマッドの戦い方は、まるで戦場全体を見渡す指揮官のようで、リオの素早い動きとナイフ捌きは、一瞬で敵を仕留める暗殺者の領域だ。
 
 だが、俺が一番驚いたのは、やはりマリア姫の強さだった。
 
 一体どういうことだ、あの力は?病弱で何もできない姫だという噂は一体どこから流れたんだ。その剣術は、精鋭部隊の騎士たちと比べても遜色ない。彼女の真の力について、陛下はご存知だったのだろうか。だとしたら、なぜ今までその力を隠してきたんだ。彼女の婚約者として、リオを指名した陛下の真意は……?
 
 これほど規格外の者たちを野放しにはしておけない。そう思って、俺も彼らに同行することにしたのだが……。
 
 出発早々、この馬車には度肝を抜かれた。
 
 一体何なんだ、この馬車は。ありえないだろう、まさかトイレがついているなんて。しかも寝室まであるとは、どう考えてもおかしい。おまけにこの速度は、俺の魔馬よりも速いんじゃないか?このまま行けば、目的地まで一日半もかからないだろう。
 
 さらに信じられないことに、聖獣と呼ばれる存在が俺の隣でくつろいでいる。聖獣は神の使いとされ、伝説の生き物だぞ。伝説だ。御伽話の世界の存在だろうが。
 
 もう考えるだけ無駄だ。これ以上は、頭がどうにかなりそうだ。俺はとうとう、諦めて考えるのをやめることにした。こんなにも理解できないことが次々と起こるなんて、人生で初めての経験だ。
 
 それにしても、マッドは確かにカルロとミランによく似ているな。
 
 俺がぼんやりと考えていると、隣に座っていたキャロルがそっと話しかけてきた。
 
「マーカスさん、マールさんはお元気ですか?」
 
「ああ、元気だ。そうだ、マールの婚約が決まったぞ」
 
 俺の言葉に、リオ、マッド、キャロルの顔に、祝福の笑顔が浮かんだ。
 
「おめでとうございます! お相手を伺ってもいいですか?」
 
 キャロルが興味津々といった様子で尋ねるので、俺は包み隠さず答えた。
 
「グラン伯爵の正当な跡継ぎであるご子息、ロイドだ。毒の件は知っているだろう?実はしばらく俺の領地でロイドの面倒を見ていたんだ。マールが看病をしていたこともあったんだが、気づけば二人はすっかり仲良さそうだった。それでマールに聞いてみたら、ロイドと付き合いたいと言ったので、すぐに本人に確認したよ。ロイドは自分の身体が元に戻ったら、改めて婚約を申し込みたいと言ってきたんだ。それで俺はあいつに決めた」
 
「それで、どのぐらいで元に戻りそうなんですか?」
 
 リオが心配そうに尋ねる。
 
「ああ、随分回復してきたぞ。あとは身体から自然に毒が抜けていくのを待つしかないからな。だが、若いから来年には元に戻るだろう」
 
「そうなると、マーカスさんの領地は誰が継ぐんですか?」
 
 マッドが尋ねてきた。
 
「ロイドは我が家の入婿になるんだ。グラン伯爵領は王家預かりになることが決まったよ。そうでもしないと、グラン伯爵領の領民が納得しないだろうしな。ロイドも領民のために、その決断を受け入れたんだ」
 
 リオが眉をひそめた。
 
「ご子息はピエールやエイドのせいで、領地まで失ったんですね」
 
「領主の事情など、領民には関係のないことだからな。ピエールやエイドの領民に対する扱いは酷く、多くの民が犠牲になっていたことが調べで明らかになっている」
 
 リオが静かに頷いた。
 
「エイドの図書館での平民に対する態度を見た僕たちとしては、想像できるよ」
 
 マッドがそれに続いた。
 
「ピエールやエイドは、権力を振りかざし、自分たちの好き勝手にしていたということですね」
 
「その通りだ。権力は領民を守るためにこそ使うものであり、使い方を間違えば罰せられるのは当然だ。まあ、あいつらは人としての行いも間違っていたがな」
 
 俺がそう答えると、キャロルもマッドもリオも、真剣な表情で頷いていた。
 
 しばらくすると、小さな町が見えてきた。そこで今日は一泊することになった。
馬車から降りた途端、リオが深呼吸をして、「海の匂いがする!」と嬉しそうに呟いた。明日にはブレイブス港街に到着するだろう。
 
 そして、こいつらには新たな冒険が再び始まるんだろうと俺は思った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺に王太子の側近なんて無理です!

クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。 そう、ここは剣と魔法の世界! 友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。 ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。

転生先ではゆっくりと生きたい

ひつじ
ファンタジー
勉強を頑張っても、仕事を頑張っても誰からも愛されなかったし必要とされなかった藤田明彦。 事故で死んだ明彦が出会ったのは…… 転生先では愛されたいし必要とされたい。明彦改めソラはこの広い空を見ながらゆっくりと生きることを決めた 小説家になろうでも連載中です。 なろうの方が話数が多いです。 https://ncode.syosetu.com/n8964gh/

白い結婚を言い渡されたお飾り妻ですが、ダンジョン攻略に励んでいます

時岡継美
ファンタジー
 初夜に旦那様から「白い結婚」を言い渡され、お飾り妻としての生活が始まったヴィクトリアのライフワークはなんとダンジョンの攻略だった。  侯爵夫人として最低限の仕事をする傍ら、旦那様にも使用人たちにも内緒でダンジョンのラスボス戦に向けて準備を進めている。  しかし実は旦那様にも何やら秘密があるようで……?  他サイトでは「お飾り妻の趣味はダンジョン攻略です」のタイトルで公開している作品を加筆修正しております。  誤字脱字報告ありがとうございます!

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜

青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ 孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。 そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。 これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。 小説家になろう様からの転載です!

【完結】天下無敵の公爵令嬢は、おせっかいが大好きです

ノデミチ
ファンタジー
ある女医が、天寿を全うした。 女神に頼まれ、知識のみ持って転生。公爵令嬢として生を受ける。父は王国元帥、母は元宮廷魔術師。 前世の知識と父譲りの剣技体力、母譲りの魔法魔力。権力もあって、好き勝手生きられるのに、おせっかいが大好き。幼馴染の二人を巻き込んで、突っ走る! そんな変わった公爵令嬢の物語。 アルファポリスOnly 2019/4/21 完結しました。 沢山のお気に入り、本当に感謝します。 7月より連載中に戻し、拾異伝スタートします。 2021年9月。 ファンタジー小説大賞投票御礼として外伝スタート。主要キャラから見たリスティア達を描いてます。 10月、再び完結に戻します。 御声援御愛読ありがとうございました。

旧転生者はめぐりあう

佐藤醤油
ファンタジー
リニューアル版はこちら https://www.alphapolis.co.jp/novel/921246135/161178785/

処理中です...