Erased Knight/Princess

藍沢 紗智子

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エピローグ

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「長年の夢が叶いました」

 結婚式のドレス選びというのはこんなに試着をするものなのだろうか。もう20着は着脱を繰り返している。スタッフさんもクタクタだ。

「なぁ、もう良い加減決めてくれないか?」

「まだです。これまで見られなかった愛乃さんのドレス姿ですからね。もちろん試着は全て姫乃さんにも写真を送っています」

「えぇ......」

 三隅の写真フォルダは既に私の写真でいっぱいだ。レースに刺繍、サテンにチュールと多種多様な素材で作られたウェディングドレスを一生分は着たのではないだろうか。

 姫乃から”4番目と17番目のドレスが似合ってる”と返事が来ていたが、最早私にはどれかわからない。

「さ、カラードレスとの相性もありますからね。スタッフさん、赤から順に5着ずつ持ってきてください」

「5着ずつ!?」

「ピンクは10着着ましょう」

 三隅のターンはまだまだ続きそうだ。

(でも、嫌じゃない)

 三隅とじゃなかったら、ドレスはきっと着なかった。特にピンクは。

「ほら、やっぱり、似合いますよ」




 クタクタになった私を三隅は久しぶりのバーに誘った。いつものカルアミルクを頼む私の隣で、三隅はソルティドッグを頼んだ。

「三隅ーーじゃない洋輔、お酒苦手なんじゃ」

「俺そんなこと言いました?」

「いやだって、ノンアル」

 三隅は珍しく目線を泳がせた。

「だって、今までは好きな人と二人きりだったんですよ。いつポロっと告白するかってヒヤヒヤしてて。もし誤って告白してしまったときに酔ってたら絶対に愛乃さんはマトモに取り合ってくれなかったでしょう?」

「それは......えっと、そう、なんだけど」

 私の記憶では大学時代に最初に飲みに誘ったときから三隅はノンアルしか飲んでいない。熱心に姫乃を売り込んだときも、人生相談をしたあの日も、ずっと。お酒のないお店に行こうかと言っても、それだと岸さんが呑めないからと断られた記憶がある。

「それに、一度は素面で告白したのに冗談だと思われましたし」

 “寂しかったんですよ?”と小指を絡めてくる仕草にドキッとした。最近、もう結婚するからと言って、スキンシップが増えて来ているように感じる。

「もしかして洋輔、私のことずっと前からめちゃくちゃ好きだったりする?」

 いつも飄々としている三隅がアルコールをまだ口にしても居ないのに真っ赤になった。

「今更!」



ーーおわり
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