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しおりを挟む フィジーメール王国とはそうした国であり。
そういうことで、ジェラルドもようやくわかった。
ルーナこそ、砂漠の国の次期女王なのだ。
だから、その婚約者になれるかも――だった、ジェラルドは「いつか王に」と話されていたわけで。
ルーナが産まれた後。
そうした王位の行く先も決まれば。
あとは近隣諸国からの「うちの子を婿にいかがですか!?」の売り込みが殺到して。
この国も、降嫁した王女に年頃があう男子がいたこともあり。
王の子はすでに婚約者がいて、ルーナとは歳も離れていた。これから産まれるであろうその王太子の子であると、逆に年下過ぎてお断りされるだろう。売り込み時期がズレてしまう。
そう、まさにジェラルドは王の甥っ子で公爵家の次男という、程よい位置の。まさに売り時!
ジェラルド自身も公爵家の次男で、この小さな国では余る爵位もなく、継ぐものがないのだから……それなら彼のためにもなると、親や兄や、伯父になる王も思っていたのだが。
最良の進路を用意しながら、なんてことか。
いまや砂漠の国でありながら、交易路の中心である華やかなフィジーメール国に行ってみたいと、ふわふわと夢見がちな王女であった母の気持ちが先走り。そうしたところが可愛らしいと、公爵は降嫁を喜んでいたらしいのがなんとも。そのままの君が好き――は、なんとも。この結末。
王女は二児の母とも思えぬ、なんとも可愛らしい方であり。
ジェラルドは良くも悪くも、母親似だった。
似た者なフローディアの母も。だから気が合う友人同士でもあり。
お兄さんはまともで良かったわね、なんてルーナは思いつつ。まぁ、他人事だから。他国の事だから。
婚約者を辞退をされたなら、ルーナが関わるのもお門違い。
ルーナは従兄弟のおかげで、王位につく成人――ルーナの国も十八で成人だ――まで、自由が与えられた。
もちろん、女王になるための勉強と準備期間ではあるけれど。その間に「王配の選定」という名目で、他国から売り込み――推薦された婚約者たちに会うことにした。それならあちこちの国に行く名目にもなるわけで。
この国にも半年前に。長居しすぎたからそろそろ他の国に行こうとしていたところ。
実は今宵は、そんなルーナの送迎会的な催しだったのに。
お花畑に住んでしまったジェラルドは。もしもルーナが態度をやわらげて泣いて謝ってきたらフローディアの次の、第二夫人なものにするつもりだったとあるから、呆れるばかり。
他国とはいえ、伯爵令嬢だからといって下に見すぎである。
まあ、ルーナの美貌は手放すには惜しくなったのだろうけども。
他の国でも、中にはジェラルドのように辞退をされる者もいたが、実家の野郎どもと同じく夢や好きなことがあるひとだったり――同じく好きな幼馴染がいるから誠実に、だったりもしたわけで。
「いやぁ、さすがにここまで立場わかって無い方はいなかったわぁ」
だからルーナには喜劇な状況。
――生まれながらにして、女王となる運命しかなかった少女には。
教育係りはいなかったのかしら、何てこともふと気になったけれども、そこまで気にしてやる義理はルーナにはない。
もちろん、いただろうし、その結果の現状なのなら。
喜劇、としてあげたから後は知らない。後はこの国の者たちが何とかすること。
ルーナのその恩情に気がついたこの国の王族たちは、ジェラルドの頭を押さえつけて、また自らも頭を下げた。
この室内限りに、内密に。
この国とフィジーメール王国がどう付き合っていくか。今はまだ、従兄弟にまかせるルーナであった。
故に、ジェラルドにかけた最後の言葉は、トドメではなく、ただ本当に何度も問いかけられた事への返答だったのだけれども。
「えらそうではなく本当にえらいんです、わたくしって」
――その重みがわかるからこそ、ルーナは微笑んだ。先祖である月の女神と謳われた女性のように。
ルーナはその重み、しっかりと受け止める――やはり生まれながらの女王でもあったから。
「わたくしはもちろん、フィジーメールの女王になりますけれども、ね?」
終
前作(いつか国のお外にほっぽりだされる、というのなら…。)から三百年くらい後の世のイメージで。良かったらそちらも読んでいただけたら嬉しいです。(ちょろっと、女王制になるのではと考えたら話が膨らんで。
ルーナさんは嫌々女王になるわけではなく、むしろ「やれやれだわこの野郎ども…わたくしに任せていらっしゃい!」と、実はめちゃんこ度胸あり腹括ってるタイプ。この国の女性はそんな肝っ玉タイプ。砂の過酷世界を生き抜いてきた遺伝子。
度量も広い。
だから喜劇にしてあげた。ので、他国からも感謝されまくりの善政を敷いた。
後にちゃんと婿さんもできたのでは。
ジェラルドくんのその後は、ルーナには関係ない他所様のことなんで触れないまま。まぁ、お察しで。
モ◯ハンワ◯ルズ…どすか?どうですか?楽しい?楽しいですよね、きっと…!
…私と同じくプレイできない方のせめてもの暇つぶしになりますように、と…。ゲームの休憩、コントローラーの充電時間にでも読んでいただけたら幸いです!(PCにはもう、ゲームを入れないと決めているので…
もちろんゲーム興味無い方にも、この砂漠の国をお気に召していただけると嬉しいです!
そういうことで、ジェラルドもようやくわかった。
ルーナこそ、砂漠の国の次期女王なのだ。
だから、その婚約者になれるかも――だった、ジェラルドは「いつか王に」と話されていたわけで。
ルーナが産まれた後。
そうした王位の行く先も決まれば。
あとは近隣諸国からの「うちの子を婿にいかがですか!?」の売り込みが殺到して。
この国も、降嫁した王女に年頃があう男子がいたこともあり。
王の子はすでに婚約者がいて、ルーナとは歳も離れていた。これから産まれるであろうその王太子の子であると、逆に年下過ぎてお断りされるだろう。売り込み時期がズレてしまう。
そう、まさにジェラルドは王の甥っ子で公爵家の次男という、程よい位置の。まさに売り時!
ジェラルド自身も公爵家の次男で、この小さな国では余る爵位もなく、継ぐものがないのだから……それなら彼のためにもなると、親や兄や、伯父になる王も思っていたのだが。
最良の進路を用意しながら、なんてことか。
いまや砂漠の国でありながら、交易路の中心である華やかなフィジーメール国に行ってみたいと、ふわふわと夢見がちな王女であった母の気持ちが先走り。そうしたところが可愛らしいと、公爵は降嫁を喜んでいたらしいのがなんとも。そのままの君が好き――は、なんとも。この結末。
王女は二児の母とも思えぬ、なんとも可愛らしい方であり。
ジェラルドは良くも悪くも、母親似だった。
似た者なフローディアの母も。だから気が合う友人同士でもあり。
お兄さんはまともで良かったわね、なんてルーナは思いつつ。まぁ、他人事だから。他国の事だから。
婚約者を辞退をされたなら、ルーナが関わるのもお門違い。
ルーナは従兄弟のおかげで、王位につく成人――ルーナの国も十八で成人だ――まで、自由が与えられた。
もちろん、女王になるための勉強と準備期間ではあるけれど。その間に「王配の選定」という名目で、他国から売り込み――推薦された婚約者たちに会うことにした。それならあちこちの国に行く名目にもなるわけで。
この国にも半年前に。長居しすぎたからそろそろ他の国に行こうとしていたところ。
実は今宵は、そんなルーナの送迎会的な催しだったのに。
お花畑に住んでしまったジェラルドは。もしもルーナが態度をやわらげて泣いて謝ってきたらフローディアの次の、第二夫人なものにするつもりだったとあるから、呆れるばかり。
他国とはいえ、伯爵令嬢だからといって下に見すぎである。
まあ、ルーナの美貌は手放すには惜しくなったのだろうけども。
他の国でも、中にはジェラルドのように辞退をされる者もいたが、実家の野郎どもと同じく夢や好きなことがあるひとだったり――同じく好きな幼馴染がいるから誠実に、だったりもしたわけで。
「いやぁ、さすがにここまで立場わかって無い方はいなかったわぁ」
だからルーナには喜劇な状況。
――生まれながらにして、女王となる運命しかなかった少女には。
教育係りはいなかったのかしら、何てこともふと気になったけれども、そこまで気にしてやる義理はルーナにはない。
もちろん、いただろうし、その結果の現状なのなら。
喜劇、としてあげたから後は知らない。後はこの国の者たちが何とかすること。
ルーナのその恩情に気がついたこの国の王族たちは、ジェラルドの頭を押さえつけて、また自らも頭を下げた。
この室内限りに、内密に。
この国とフィジーメール王国がどう付き合っていくか。今はまだ、従兄弟にまかせるルーナであった。
故に、ジェラルドにかけた最後の言葉は、トドメではなく、ただ本当に何度も問いかけられた事への返答だったのだけれども。
「えらそうではなく本当にえらいんです、わたくしって」
――その重みがわかるからこそ、ルーナは微笑んだ。先祖である月の女神と謳われた女性のように。
ルーナはその重み、しっかりと受け止める――やはり生まれながらの女王でもあったから。
「わたくしはもちろん、フィジーメールの女王になりますけれども、ね?」
終
前作(いつか国のお外にほっぽりだされる、というのなら…。)から三百年くらい後の世のイメージで。良かったらそちらも読んでいただけたら嬉しいです。(ちょろっと、女王制になるのではと考えたら話が膨らんで。
ルーナさんは嫌々女王になるわけではなく、むしろ「やれやれだわこの野郎ども…わたくしに任せていらっしゃい!」と、実はめちゃんこ度胸あり腹括ってるタイプ。この国の女性はそんな肝っ玉タイプ。砂の過酷世界を生き抜いてきた遺伝子。
度量も広い。
だから喜劇にしてあげた。ので、他国からも感謝されまくりの善政を敷いた。
後にちゃんと婿さんもできたのでは。
ジェラルドくんのその後は、ルーナには関係ない他所様のことなんで触れないまま。まぁ、お察しで。
モ◯ハンワ◯ルズ…どすか?どうですか?楽しい?楽しいですよね、きっと…!
…私と同じくプレイできない方のせめてもの暇つぶしになりますように、と…。ゲームの休憩、コントローラーの充電時間にでも読んでいただけたら幸いです!(PCにはもう、ゲームを入れないと決めているので…
もちろんゲーム興味無い方にも、この砂漠の国をお気に召していただけると嬉しいです!
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